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宰相の顔

2011.06.28.05:37

 久しぶりに菅総理の顔をテレビで見ました。総理がテレビに出ていないということはないはずですが、僕の方がテレビを見ない(ウィンブルドンは見てますが)ので、しばらくそのお姿を拝見していなかったのです。

 それは内閣改造の記者会見の映像でした。話の内容の空疎さだけでなく、その表情の乏しさ、影の薄さにあらためてびっくりさせられました。小さな目を落ち着きなくしばたかせながら、「はよう要点を言わんかい!」と関西弁でせかしたくなるような、言葉だけがうつろにダラダラ続くその様子を見て、「一刻も早い退陣が望ましい」という意見が必ずしも辛辣すぎるものだとは思えなくなりました。あれでは、ほとんど亡霊です。

 リンカーンはかつて、有力な支援者が雇ってやってくれと紹介してきた人物の採用を拒みました。理由を問われて「あの男は顔が悪い」と答えたので、相手は怒り、「君は顔で人を差別するのか!」と迫りましたが、そのとき、のちに有名になったあの言葉が出たのです。
 「四十をすぎたら、人は自分の顔にも責任をもたねばならない」と。

 菅総理にもこれが当てはまります。あんな顔では、総理大臣どころか、社員数人の零細企業の社長ですら勤まらないでしょう。ふだん彼の顔を見慣れている人はその変化に気づかないかも知れませんが、久しぶりに見た僕にはかなりショッキングなものに映りました。「使用済“菅”燃料」とはよく言ったもので、ああいう人を非常時の最高司令官に据えたままにしていたのでは、うまく行く道理がありません。日本というのはつくづくツイてない国だなと思います。忙しいときには決してまともに相手にしてはならないような人間が、よりによって今の総理大臣なのです。これは日本を破滅させようとして悪魔がたくらんだ策略なのでしょうか? だとすれば、彼の異様な政権への執着ぶりといい、そちらの「人選」の方は悪魔らしく秀逸だったわけです。

 英語に、Every dog has his day.ということわざがありますが、政治家・菅直人にも栄光の時代はありました。彼が一番輝きを放っていたのは、あの薬害エイズ問題のときだったかも知れません。ウィキペディアから抜粋すれば、今から十五年前の「1996年、第1次橋本内閣に厚生大臣として入閣したとき、当時官僚が無いと主張していた行政の明白な過ちを証明する“郡司ファイル”を菅直人指揮の下にプロジェクトを組んで発見。血液製剤によるエイズに感染した多くの被害者たちに対して、初めて行政の責任を認めた」という件です。

 あのとき、菅さんは国民からやんやの喝采を受けました。さすが草の根の市民運動をやってきた人だけのことはあると言われた。市民運動家上がりだから政治センスがなくて駄目なのだという、今の論調とは正反対です。

 かつての“さわやかな市民運動家”というのも実は虚像で、早い時期から上昇志向の強い権力亡者・日和見主義者の一面を覗かせていたと言う人もいるようですが、不幸にして今はその悪い面だけが“全開”状態になってしまっているのです。人間、年をとるのは恐ろしいものです。頭のネジがゆるみ始めると共に、それまではうまく隠したり偽装したりしてきた隠れた本性が、意識の抑制をつき破ってしばしば無遠慮なまでに前面に出てくるからです(元々ないものが出てくることはない)。

 それでも分を守って、総理などにならなければ、菅さんもこういう窮地に陥ることにはなくてすみ、少なくとも一般国民の間の人気と信頼は維持できたのです。

 やはり英語のことわざに、Curiosity killed the cat.というのがあります。「好奇心は災いの元」ぐらいの意味ですが、政治家の場合には、Ambition killed the jackal.とでも言い換えるべきでしょうか。過度な権力欲や名誉欲は、空虚な内面を抱えた人にはつきものですが、力の衰えが目立つようになると、誰でもそれに引きずられやすくなるようで、過去にいい目を見たことのある人ほど権力や名誉に執着して“晩節を汚す”羽目になることが多くなります。菅総理もこの残酷な心理法則の犠牲になっているように見えるので、退陣を先に延ばせば延ばすほど、人心は離れるということをよくご認識いただいて、“可及的速やかに”resignいただきたいと思います。

 国民は誰がやってもこういう事態の舵取りは難しいのは理解しています。しかし、任にふさわしくないのが歴然としながらいつまでも辞めないのでは、かえって人々の怒りと侮蔑を買って、後世の評価も一段と低いものになってしまうでしょう。国全体が大変なこんなときに、一政治家の個人としての名誉などにかまっているヒマはないので、そのあたりが何よりstatesman(国家の人→政治家)としてふさわしくない理由なのです。

 問題は、しかし、それなら誰がこういう難局の宰相にふさわしいかということで、たぶん賛成してくれる人は少ないだろうと思いますが、僕は小沢一郎しかいないのではないかという気がします。こういうときは足が地に着いたテキパキした実務能力と強力なリーダーシップがないと勤まらないので、小沢氏が言われるようにほんとに「剛腕」かどうか、そこを見てみたいと思うのです。「しかし、あの顔はどうなんだ?」と言う人がいそうですが、むしろ「あれぐらいの顔でないとこの場は無理ではないか…」と僕は感じているので、リンカーンに意見を聞いてみたいところです。案外、賛成してくれるかも知れません。
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