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こりごり五輪への経緯と、開いた「地獄の釜の蓋」の見方

2021.07.25(14:25) 850

 今年は政府が後で勝手にカレンダーをいじって、五輪の開会式前後を連休にし、菅政権は連休中だと検査数が減るから、コロナ感染者数が一時的に減ったように見えるので具合がいいとほくそ笑んでいたのでしょう。にもかかわらず東京都の感染者数は五日連続千人超になったそうで、医療現場はピンチを迎え、オリンピックは開催するのに何で国民は自粛なんだということで、連休からお盆にかけて、人の移動も激しくなるから、地方の感染者数もこれでまた増加に転じそうです。とくに変異株が猛威を振るいそう。

 開会式をめぐるドタバタは各種メディアで既報のとおりですが、どの件を取っても「日本人の人権感覚の乏しさ、モラルの低さ」を世界に宣伝するものばかりで、恥の上塗りになりました。日本の選手たちも無観客の上にこれでは、士気が上がるはずもないので、自国開催のアドバンテージなんてものは何もなく、すでにその兆候は表われて、番狂わせの予選落ちなども続出し、有力選手・チームの参加辞退などがあっても、メダル獲得数は自国開催の五輪とは思えないような数字になりそうです。

 自然も味方はしてくれないようで、台風は九州・四国・近畿あたりに接近・上陸するというケースが定番なのに、今回小笠原諸島近辺で発生した台風8号は「今後、発達しながら北西へ進み、27日頃には東日本や東北に接近し、上陸するおそれ」があるとされています。最悪のタイミングで五輪開催地を狙い撃ちにする感じで、今回の五輪が発する瘴気がそれを呼び寄せているかのようです。「ガースー台風」と呼んだらどうでしょうか。彼はそういうものを引き寄せる力だけは「持っている」のです。

 そういうところで、次のビデオニュース・ドットコムの鼎談は面白かった。この御三方の感性と意見に、僕は大いに共感しました。

コロナと五輪で機能不全ぶりを露呈した政府がそれでもなお権力の座に居座り続けられるカラクリを斬る /古賀茂明氏(政治経済アナリスト)

 こういう理解が根底にあれば、今後の社会見通しも明るくなると思いますが、芸能人化したテレビ文化人(ほんとにロクなのがいない)の類にはこういう視点は皆無だし、大手新聞などの論説も、表面の波、目先の現象だけ見て、その下にある潮の流れそのものを見ることはないので、表面的な政局がらみ解説だけで終わってしまうので、国民レベルでこうした理解が共有されることはまずないでしょう。だからいつもここで言っているように、日本は「落ちるところまで落ちる」しかなくなるので、問題は覚醒がまだ間に合う段階で起きるかどうかです。せめて野党政治家がもう少ししっかりしていればいいが、明確な政治哲学は示せず、その時々、受け狙いのパフォーマンスで騒ぎ立てだけだから、信を得られないし、奥にある事態の深刻さについての理解もかえって妨げられるのです。

 安倍にしても、菅にしても、麻生や二階にしても、またその取り巻きにしても、ほんとに人としての教養や良識がない。絶望的にそれが欠落しているということを本人たちも国民も見落としている。それはたんに失言が多いということや、しゃべりが下手ということではない。教養というのはむろん、ガラクタ知識や情報のことではありません。昔、斎藤緑雨は「教育の普及は浮薄の普及なり」と言いましたが、国民全体の学歴は昔と較べれば比較にならないほど上がったのに、かえって教養は乏しくなり、人を見る目もなくなっているのです。それがあれば、安倍や菅、麻生や二階は、「馬鹿丸出し」であるのがわかるはずで、そんな連中に国家の舵取りを任せているのがどんなに恐ろしいことかわかるでしょう。

 僕の両親は、その後青年学校というのに一年か二年通ったそうですが、正式学歴は尋常小学校卒でした。それでも人を見る目は確かだったし、投票行動を見ても、田舎特有の組織票の依頼などはつねに無視して、いつぞや知事選で、町役場が現職知事の票の取りまとめ工作をしていたときなどは、「そんな馬鹿な話があるか!」と本気で怒っていた。いつも自分で考えて判断していたので、中学の時だったと思いますが、両親が国政選挙の投票から帰ってきたとき、どこの政党の候補者に入れたのかときくと、社会党だと言ったので、あんたたちは社会主義者なのかと問うと、そうではないが、自民が票を取りすぎると勝手なことをしでかすから、最大野党(当時)である社会党の議席を減らさないようにして、牽制できるようにしておかねばならないのだ、という答えでした。そんな言葉は知らなかったでしょうが、チェック・アンド・バランスの考えをよく理解していたのです。それが昔の庶民の知恵でした。当時の自民党は今よりはマシでしたが、それでも信用はしていなかったのです(ついでに言うと、あの一人しか当選できない小選挙区制は改めた方がいい。それで安定した二大政党制ができるなんて、根拠のない能書きを垂れてああなったのですが)。

 笑える話もあったので、金正日の時代、北朝鮮で飢餓が深刻化していると報じられていた頃の話ですが、電話で母が「アメリカのCIAは何をしとるんや。はようあの腹ボテを暗殺したらんかい!」と大声で言うので、母さん、いくらここは日本でも、北朝鮮のスパイがいるかもしれないので、そんなこと大声で言ってたら殺されるよ、と言うと、この年になって殺されて何のつらいことがあるか、あの腐れのおかげで飢え死にする北朝鮮の人たちがかわいそうやないかと言っていたので、いくらか過激(関西では珍しくもないことですが、両親揃って口が悪かった)とはいえ、国際問題にも無関心ではなかったわけです。父はすでに亡く、母も今は認知症で施設に入っているのですが、今の政治状況を見れば、「戦後、ここまで政治がひどくなったことはなかった」と嘆息するでしょう。少しずつ積み上げてきた日本社会の良質な部分を、ここ十年ほどで完全に破壊してしまったのです。

 たぶん5割前後の人が、「やるべきでなかった今回のオリンピックは早く終わってほしい」と思っているでしょうが、並外れた愚昧さと、にもかかわらず国民はどうにでも操れると思っている傲岸不遜な自民は、今度の選挙で「ちょっと減らす」程度で、絶対多数は余裕で維持できると思っているのです。その通りになれば、いよいよ日本は行き着くところまで行くことになるでしょう。マンガ『ゴルゴ13』を国際政治の教科書にしている麻生などは、安倍政権時代、憲法改正の進め方について、「ワイマール憲法を骨抜きにしたナチスのやり方に学んだらどうか」などと平然と言って(彼の教養レベルでは、その経緯の詳細など知っているはずもありませんが)、それでもお咎めなしで今でも政権の中枢にいるのですが、今回の東京五輪強行などは、まさにナチス的なやり方で、それはすでにかなりの程度実現していると言えるでしょう(民意を完全無視しても政権は倒れないことを実証したのですから)。北朝鮮の愚かな挑発行為を安倍政権はうまく利用したのですが、他にも意固地な韓国政府(あれも完全な病気です)に、中国の覇権主義的な軍事戦略と、お粗末きわまりない内政への不満と憤りを「外敵」への憎悪に転換しやすい環境は整いつつある。現実的な洞察力、判断力はまるでなしの観念右翼が一緒になってその危機を大いに煽ってくれることでしょう。

 実に楽しみなことで、かくて地獄の釜の蓋は完全に外れるのです。中から何が飛び出すか、想像力のある人ならある程度察しがつけられるでしょう。今度の総選挙はその意味で重要ですが、それを理解している人がどの程度のパーセンテージになるのか、NHKや民放は空虚な「さあ、みんなで盛り上がりましょう!」的な五輪特番に一生懸命で、それにつられて大事なことは忘れる(そもそも初めから認識していない?)人もかなりいそうだから、投票率が上がるかどうかも疑わしいし、いささか心もとない感じです。「金メダルが5個もあれば選挙は勝てる!」という今どき自民の愚民観の正しさを、日本の有権者は証明してしまうのでしょうか? 「感染者は増えても重症者は減った。これは菅政権のワクチン政策のおかげだ」という宣伝が、オリンピック後は御用マスコミや文化人によってさも重大なことであるかのように広められるのでしょう。それも接種が終わるのは遅れに遅れてなかなかそうはなりそうもないから、総選挙はギリギリまで延ばして…ということなりそうですが、その姑息さが有権者を怒らせるのか、それともナチス的な世論操作にいいようにされるのか、注目したいところです。

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祝子川通信 Hourigawa Tsushin


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