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父子鷹ならぬ父子ネズミ

2021.02.23(13:19) 808

 総務省の計12人の職員が接待を受けており、会食数はのべ38件で、手土産などを含む総額は53万4000円、また首相お気に入りの山田真貴子内閣広報官(前にNHKに「総理は怒ってますよ!」と、インタビューで台本にない学術会議問題に関する質問をしたキャスターがいたというので“お叱り電話”をかけたことで一躍有名になった、早稲田のオフィシャルサイトにも登場する「日本はこうあるべき、という自分の素朴な正義感を大事にする」女性→こちら)も、総務審議官を務めていた19年11月に、首相長男らから約7万4000円の飲食の接待を受けていたとのこと。

課長から局長まで“接待漬け” 首相長男と総務省「密な関係」

 昔、子母澤寛(しもざわ・かん)の歴史小説に『父子鷹』(勝海舟とその父親・子吉がモデル)というのがあって、映画やドラマにもなりましたが、今回の菅首相長男の違法接待事件は、国が大変な時に、しかもコロナ禍のさなかに、よくもそんなアホなことやってましたねとしか言いようがないお粗末で、父子揃ってロクでもないなと国民を唖然とさせているのです。今どきの若者の表現を借りるなら、「脱力感ハンパない」ということになるでしょう。接待を受けていた役人がこんなにたくさんいるというのも驚きで、昨日たまたま電話で話をした元公務員の弟(政治的信条としてはどちらかといえば保守で、どちらかといえばリベラルな僕とはふだん意見が対立することが多い)によれば、どこであれ役人になると最初に訓示されるのが「民間人相手に絶対にタダ酒は飲むな」ということで、前に大蔵省(現財務省)の「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」があって以来、ことにそのあたりは役所関係では厳しくなっていたはずだということです。

 単純に「ありえない」としか思えないという話で、彼自身、一度昼食を「民間人(知り合いの税理士)」と一緒に食べて、食事代が千円だというので五百円は払わせてもらうと言って出して帰ったら、あとで上司に呼び出されて注意されたという。そういう通報がどこからかすぐ来るのだそうで、おたくの若いの(人物も特定済み)が誰それと飯を食って、五百円しか払わなかったと、そのあたりのことまで細かく把握してクレームが来たらしいので、その程度のことでも叱責の対象になりえたのです(むろんそのとき先方が関わっている会社の利害に関わるような話をしたわけではない)。だから、当時のことを考えると、綱紀がそこまでゆるむとはどういうことなのか、想像すらできないほどひどい話に思えるということでした(彼は勝手に送られてくる盆暮れの贈答品も自腹で送料を負担して全部送り返していて、そういうことをしているうちに来なくなったという)。タダで飲み食いさせてもらった上に、おみやげ(一体いくらなのか知りませんが、「高級食パン」なんてセレクトはヘルシーで泣けます)とタクシー代まで渡されているのです。

 とくに審議官なんて、下に説教する立場の人間で、通常は絶対そんなことはしないはずだという。大体、そんなことはすぐ発覚することなので(下っ端役人ですら上のようなことがふつうにあるのだから)、バレたらどうなるか、単純に自分の損得だけ考えても引き合わないのがわかるはずで、彼の想像によれば、東北新社は菅義偉と前からつながりの深い会社で、実は長男以前からそういう接待をやっていて、総務省の役人たちには悪くそれが“慣例化”していたのではないかという。たしかに、それはありそうな話です。でなければいくら「総理の長男」とはいえ、ここまでほいほいと接待に応じることはなかっただろうというのが彼の推測で、長男はそれに乗っかるかたちで接待攻勢をエスカレートさせたにすぎないのではないかと。もしも元からやっていたのだとすれば、モロに権力者である菅義偉とのコネを利用した会社側の接待だったということになって、それはそれで大問題です。何にせよ、今回の役人たちのだらしなさすぎるそれは、彼の感覚では懲戒免職になっても不思議ではないレベルのもので、信じがたいの一語に尽きるという話でした。

 大体、下心なしに何かくれるなんてことは大人の世界ではまずないわけです。塾みたいな利権とは結びつきにくい隙間産業ですら、昔、私立高校の塾相手の説明会なんてのがあって、そこに行くと、ジュースとサンドイッチぐらい出るのは何でもないとして、交通費と称する五千円入った封筒(電車やバスなら往復千円もかからない)と、ワイン一本と他に何か入った紙袋を渡されるなんてことがあって、学校によって「おみやげ」は違う(交通費と合わせて計一万の範囲内に収められていた気がする)のですが、タダで帰されることはまずなかったので、そういうのは「いい生徒をうちに回して下さい」ということなのです。官民の関係ではないので、法には触れないとしても、長くて二時間もかからない説明会(塾側も情報を仕入れるために仕事で行っている)なのだからいかがわしいのは確かで、僕は学校の進学実績や内実をシビアに見て、商売柄、色々な評判も自然に耳に入ってくるので、そういうのも考慮して、「おみやげ」ごときには関係なく、生徒の利益第一でやっていたつもりですが、許認可の大きな権限をもつ役所となると、利益が大きいだけに、当然こういうのとはスケールが違ってくるわけです。だから「瓜田(かでん)に履(くつ)を容(い)れず」で役所はとくに厳格になっているはずが、上が率先してそれをやっていた。腐り切っているわけです。

 どうもこれが「菅政治の本質」なのだろうなという気がします。舞台が、自分が所管大臣を務めて、強い影響力をもつ総務省だったというあたりも象徴的です。二階と仲がいいのも道理で、彼の典型的な利権政治屋の体質が出ているので、父親の手で大臣秘書官になって直接その仕事ぶりに学んだ長男も、それが悪いことだという感覚はほとんどなかったのでしょう。権力は公器ではなく、私利実現の手段としてあるのです。「世襲はしない」そうですが、こんなのが二代目になったら最悪なので、そんなことされたらたまったものではありません。

 もう一つ深刻なのは、先の弟の話ではないが、役人の堕落ぶりで、安倍政権時代の森友事件では文書改竄や証拠隠滅に抵抗した真面目な公務員が自殺に追い込まれたわけですが、そのうち、コネや袖の下がなければ何も通らない国になって、ルールの公平性なんてものはたんなる見かけだけになってしまうでしょう。権力を握った人間が自立心とモラルを失った忖度役人を従えて、一族やお友達企業の利益最優先で、政治や行政の私物化がとめどなく進む。悪代官が仕切る社会で、新しいものは何も生まれず、古い利権構造だけが温存されて社会は活力をなくし、前近代的な完全な三流国家になり下がるのです。ドラマ『水戸黄門』なら最後に黄門様が出てきて正義の鉄槌が下るが、最高権力者が忖度と黙従を要求する当の悪代官なのだから、お話にならない。それが菅義偉です。僕はかねて二階俊博と竹中平蔵を「和歌山県の恥」と呼んでいますが、菅義偉は「秋田県の恥」です。彼の政治家人生をスタートさせた地ということでは「横浜の恥」でもある。

 菅とその長男は「父子鷹」ならぬ「父子ネズミ」で、じっさい彼の顔はネズミに似ている気がしますが、家の柱をかじったり、蔵の米俵に穴をあけてしまうネズミか、元気のない野党に恰好の攻撃材料を与えたという点でネギをしょった親子ガモです。株だけ意味不明に上がっていますが、実体経済はさっぱりなので、こんなアホな政権は問題山積の今の危機的な社会の状況とは全く釣り合わない。あのしょぼしょぼした目も虚ろな顔を見ているだけでイラついてくるという人は少なくないでしょう。何用あって今時分、コネ入社のアホな息子まで出てきて、二流会社のセコい利益のための違法接待事件なんか起こして騒ぎになっているのか? それで本来もっとまともな議論に費やすべき国会が空転して、議員歳費がまた無駄になる。それ自体が災いなので、たんなる無能ではなく、この政権は社会に大きなマイナスを生み出しているのです。取り巻きも無能なイエスマンばかりで冴えたのが全くいない(器量が小さいからそうなるわけです)。

 僕の周囲では、菅政権の支持率はついに零パーセントになりました。前は15%程度あったが、今は消極的支持すら消滅した。何の未来ヴィジョンも力強さもなく、海外に出しても、みすぼらしさをさらすだけで、語るべき政治哲学なんてものもゼロなわけです(脱炭素社会なんて、トレンドだから官僚に言われて口にしているだけで、具体的な実現の見通しが立っているわけでも何でもない)。身内のセコい不正で突き上げられて右往左往しているだけの総理大臣なんて、海外の首脳は誰もまともに相手にはしません。自民党内に危機感が乏しいのも驚くべきことで、国が駄目になるときというのはこういうものなんだろうなと、過去の歴史(世界史)に照らして納得する部分もあるのですが、日本国民の一人としては他人事ではない。この夏のオリンピックはどうしてもやるのだと言うが、それ自体が努力の向きをはき違えているので、ほんとにどうしようもないなという感じです。いつまでこんな三流政治屋に政権を預けておくのか、自民がもはや公党の体をなしていないのも、見ていればよくわかります。今度の総選挙で思いきり灸を据えてやらないと、ほんとにこの国は終わってしまいますよ。

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