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「ほんとはトランプが勝っていた」というアメリカ大統領選陰謀説について

2020.12.02(14:07) 782

 ネットではこれがひそかに流行っているそうで、その陰謀説によれば、大手メディアは(日本のそれも)これに加担するか騙されるかして報道しないだけなのだという話です。本当はトランプが大勝して当選していたのに、大がかりな不正でバイデンの勝ちにされた。ああ、あのトランプが吹聴していたあれね、でもほとんどがガセネタだったんじゃないの、だから訴訟のほとんどが門前払いを食らわされているわけで、明確な証拠があるのなら受理されているはずだよねと言うと、それが今のアメリカの恐ろしいところで、関係諸機関が皆グルになっているのだという。嘘だというのならYoutubeの○○チャンネルなんかを見てみなさい、そう言う人がいたので僕はそれを見てみたのですが、驚いたのはそこではあの品性下劣なトランプが無欲な正義の人、アメリカの、ひいては世界の希望の星みたいにされていて、下には「これこそ真実だ!」という、それを絶賛するコメントが山のように並んでいることでした。一体どうなっているのか?

 この陰謀論はかなりの力をもっているらしく、プレジデント・オンラインにまで次のような記事が出ているほどです。下にコメントがたくさん出ているので、その反応を見る上からも、ヤフーのニュースサイトのものを引用しておきます。「危機管理コンサルタント」なる肩書をもつ人の文章です。

「大統領選の不正投票疑惑」いまだ真相が報道されない本当の理由

 この記事が便利なのは、ネットで「真実」だとされる“疑惑”が集約的に紹介されていることです。

 実際、判明しているだけで、有権者登録をしている人間の数が実際に投票資格を有する人間よりも数万も多いとか、1800年代生まれを含めてすでに死亡している人が投票したケースまで確認されており、組織的で大掛かりな不正があったのは間違いないようだ。

 いくつかの州では、明らかにトランプ氏が優勢であったところに突如十数万ものバイデン票が追加され、わずか数時間でトランプ氏が逆転負けするという異常な現象も見られたが、そのうちの一つのウィスコンシン州では現在、再集計が行われている。

 さらに、多くの州や郡で導入されている民間の複数の電子投票システムへの疑惑も指摘されている。電子投票システムの安全性には以前から多くの疑問が出されており、業者側もそれらの疑問にほとんどまともに答えたことはなかったが、今回の選挙ではそのシステムがバイデン氏を有利にするために細工されていたとも言われている。

 例えば、トランプ陣営と共闘するシドニー・パウエル弁護士は、ジョージア州が採用する電子投票システム「ドミニオン」が、実際よりもバイデン票を25%多く、またトランプ票を25%少なく集計するように設定されていたと主張している。このシステムを築いたドミニオン社に対しては、他ならぬクリントン家と関係が深いという指摘がなされた。民主党と関係の深い米大手メディアは、直ちにそれを「偽情報」と断じたが、最近になって同社は、過去にクリントン財団に献金していたことを認めている。

 また、カナダのトロントにある同社の本社は、反トランプでも知られる世界的な投資家ジョージ・ソロス氏と関係のある団体と事務所をシェアしていたが、最近になって急にどこかに引っ越してしまった。さらに同社の幹部の一人は、イギリスにおけるソロス氏の右腕とされる人物であると言われている。


 そう述べて、「これだけではない」として、さらなる“疑惑”が次ページで述べられ、「今、起こっているのは米国版『色の革命』」だと結論づけられるのです。ここに書かれていることが全部「真実」なら大変なことですが、結論はこうなっています。

 そんな米国で今後懸念すべきは、社会の深刻な分裂である。バイデン氏が勝てば、オバマ政権時に頻発したような、保守派を追い詰めて人々を銃規制支持に誘導する派手な銃乱射事件もまた増えるだろう。さすれば保守的な州は、あるいは「独立」を言い出す可能性すらあるだろう。一方でトランプ氏が勝てば、逆に左派が強いカリフォルニア州などが同様に「独立」を主張する可能性もある。ひいてはこれが「第2次南北戦争」のような内戦につながることを危惧する声もあるが、米国社会の分断修復にはまだ長い時間がかかるであろうことだけは間違いなさそうだ。

 うーむ。「バイデン氏が勝てば、オバマ政権時に頻発したような、保守派を追い詰めて人々を銃規制支持に誘導する派手な銃乱射事件もまた増えるだろう。さすれば保守的な州は、あるいは『独立』を言い出す可能性すらあるだろう」なんて、意味が全くわからないので、日本語的にそもそも文意が明確ではありません。それは「保守派を追い詰めて人々を銃規制支持に誘導する派手な銃乱射事件」のところで、ふつうに読むなら、追いつめられた保守派がやけのやんぱちで銃乱射事件を起こすと言っているように見えますが、それは「銃規制支持に誘導する」ために民主党があえてそういう事件が起きるよう仕向ける(それも「陰謀」の一部?)のだと言っているようにも受け取れるからです。そもそもの話、自分の政治的主張が通らないからといって「派手な銃乱射事件」など安易に起こされてはたまったものではありません。また、日本ではほとんど報道されないだけで、学校での銃乱射事件も後を絶たないようですが、そういうケースでは(大人の事件でも大部分は)政治的信条ではなく、精神的に病んでいるからそんな事件を起こすのです(むろん、銃規制が行われず、銃の入手が容易だからでもあるのは言わずと知れたことですが)。全体、言っていることが無茶苦茶です。

 この記事に書かれた“疑惑”のほとんどは、米メディアや裁判所などのファクトチェックによって大部分が否定されているもので、それは下のまともなコメントの中にも多くの指摘(直接お読み下さい)がありますが、問題はそれが虚偽であると指摘されても、それには頬かむりしたまま、この「危機管理コンサルタント」氏のように、懲りずにフェイク情報を撒き散らす人たちが日本にはいて、またそれを信じる人も多いということでしょう。次はコメントの中の、アメリカ在住の方の文章です。

・アメリカ在住のものです。この記事を書いた評論家は、一部メディアの発信している情報を基に記事を書くのではなく、米国で起こっていることを理解したうえで記事にするべきと考えます。ウィスコンシン州の再集計はすでに終わっています。手作業でカウントされ、ほぼ投票数が確認されたとのこと。この記事の内容は、トランプの主張をほぼうのみにしていますが、トランプとトランプの弁護士の主張の大半は証拠がないため、米裁判所は裁判として取り扱わないことを決めています。証拠なく、不正だと騒いでいるわけですが、民主主義の基本を揺るがしていることを多くの米市民が心配しています。

 上の引用文の中の、「シドニー・パウエル弁護士は、ジョージア州が採用する電子投票システム『ドミニオン』が、実際よりもバイデン票を25%多く、またトランプ票を25%少なく集計するように設定されていたと主張している」という話については、僕はそのニュースを初めて見たとき、一体この「25%」という数値はどこから出て来たのだろうと疑問に思いました。こういう妙に具体的な数値を持ち出して断言するというのは、妄想家の特徴の一つでもあるからです。そして、そのジョージア州でも僅差であったために手作業による再集計が行われたのですが、上のパウエル弁護士の主張が正しければ結果はひっくり返って確実にトランプ勝利となるはずでしたが、僅かな誤差はあったものの、結果は「ドミニオンによる大がかりな不正」が行われたはずの前回の集計結果とほとんど同じだったのだから、彼女の主張は間違っていたということになります。そして彼女は「不正の証拠はたくさんある」と言っていながら、それは出していない。そんなものは元々なかったからだと見るのが常識的な理解でしょう。

 自分に不都合なことは何でもフェイク呼ばわりするトランプという妄想家が、「左翼による国家的陰謀」観念にとりつかれた別の陰謀家を呼び込んで、騒ぎを大きくしたが、「release the Kraken(クラーケンを解き放つ)」と大見得を切っていた彼女の「クラーケン」とは、自分の妄想体系に基づくクラーケンだったわけで、その大ダコの被害を受けるのは敵側ではなくて信用を失う自分の側だとわかって、困ったトランプ陣営は「彼女はウチの弁護士ではない」と慌てて切り離しに出たのです(こういうことにもネットのトランプ応援団からはほとんど正反対の“前向き”な解釈が与えられるのですが)。

 こういうふうに、尤もらしい理由付けがされたトランプ側の主張は一つずつ虚偽として潰されていって、後にはほとんど何も残らないという悲惨な結果になっているから、訴訟も次々却下される羽目になっているので、それはバイデンを立てた左翼勢力とメディア、FBI、裁判所、海外の邪悪な勢力(たとえばソロスや中国共産党)などが裏で悪しき陰謀によって結託しているからそうなってしまうのだというわけではない。しかし、そうに違いないというので、次々新たな謀略説が考えつかれ、拡散されるという順序になっているのでしょう。

 にしても、どうしてアメリカ以上に日本ではこういう虚偽に基づく言説が拡散しやすいのか? 次のは11/30のハーバー・ビジネス・オンラインの記事です。

最前線から見た、日本の米大統領選不正選挙論。BBQ-BEER-FREEDOMおじさんとその背景

 米国メディアは素早くファクトチェックをするが、この陰謀論者たちの怖いところは、間違っていても謝らない、訂正しない。そしてそのまままた別のデマを拡散していく点にある。デマの波状攻撃、もぐらたたき状態。初めから嘘の伝言ゲームである。そして陰謀論を鵜呑みにしている人々は、既存のメディア自体が信用できないという状態に根本的な思考を乗っ取られているため、いくらファクトチェックしても届かない。ただファクトチェックの重要性というのは狂信的なデマの発信源に対してではなく、それを見て混乱してしまう層へ向けての道標としての機能なのだと今回のアメリカを見て実感している。

 死者が投票した。バイデンが不正選挙組織を作った。中国から大量の票が届いた。投票率が100%超えた。ドイツにあったサーバーを米軍が押収した。ドミニオンが集計を操作した。
 それらは瞬く間にファクトチェックされていった。そしてどの陰謀論にも共通するのが「バイデンはトランプを上回ったが、同じ投票用紙の議会選挙では民主党が苦戦している」という点の説明がつかないことだ。

 デマの発生源はQanon、共和党議員、スティーブ・バノン系メディア、法輪功、統一教会、幸福の科学、などなど、カルト揃い踏みというような有様だった。その辺りの解説は藤倉善郎氏によるこちらの記事に詳しい。


 冒頭に書いた○○チャンネルも、この記事を読む以前に、おかしいなと思って調べてみると法輪功関係者だったのですが、カルト宗教にはまりやすい人たちとこういうのは心理的に共通した面があるようです。上の記事に出ている藤倉善郎氏の記事は次のものです。

米大統領選をめぐるフェイクニュースと「新宗教系メディア」の関係

 BuzzFeed記事の記事は、〈バイデン氏と中国政府との関係を疑う根拠不明の記事〉を〈韓国の新興宗教系サイト〉とし、その他の宗教系については〈日本国内の団体関係者などのYouTube動画〉〈中国共産党政権を激しく批判する中国系団体〉としている。同記事はなぜか具体的なメディア名や宗教団体名を伏せている。

 フェイクあるいは根拠不明の情報の発信源として日本人のトランプ支持者などが拡散していたフェイクニュースの内、主な宗教系メディアは、統一教会系「ワシントン・タイムズ」と法輪功系「大紀元(EPOC TIMES)」だと思われる。また、日本の統一教会元会長で現在は分派団体「サンクチュアリ協会」の会長が関わっている日本のトランプ支持団体も、YouTubeで情報発信を行っている。

 藤倉氏のこの記事はなかなか公正なもので、媒体がカルト関係のものだからといってまともな記事が載っていることもあるから、頭ごなし全否定すべきものではなく、個別にきちんと見てゆく必要があるということで、僕もそれには全面的に賛成ですが、カルトと陰謀論がなじみやすいのは、あのオウム真理教事件を思い出してもわかることです。自分の方がサリンを撒きながら、「毒ガス攻撃を受けている」と彼らは主張していたのですが、それというのも、麻原とその配下の幹部たちは陰謀論に取りつかれていて、「善」であるオウム教団は、「悪」である巨大な陰謀によって潰されようとしていて、だから彼らは自作自演のハルマゲドンを起こさねばならなかったのです。

 冒頭の記事のコメント欄にもそういうのがありましたが、「2020年、善と悪の決戦が行われる」という説もあったようで、そういう思い込みから、トランプの選挙不正の主張は、「悪と戦う英雄」のシンボルみたいに一部のスピリチュアルな人たちには受け取られたという側面があったのでしょう。あんな薄汚い悪徳不動産屋の成れの果ての一体どこが「善」なのかと思いますが、先の○○チャンネルなんかでもトランプは「正義の闘士」扱いになっているのだから、一体どこに目玉をつけて人を見ているのかという感じですが、彼らに言わせれば、僕みたいなのは「メディアに洗脳されて善悪の区別がつかなくなった」愚か者の代表なのです。「見かけに騙されて本質が見えなくなっている」そのような人間こそ、彼らが言う「巨大な陰謀」が深刻な影響を及ぼしている証拠なのです。

 僕自身はアメリカの共和党も民主党も、チョムスキーなどが言うように「ウォールストリートの使い走り」でしかないと思っていて、下品で並外れて利己的なトランプも、そのあたりうまくやってきたからお目こぼしいただいているだけの話なのだと見ていましたが、彼らによれば、トランプはアメリカのエスタブリッシュメントに果敢な戦いを挑み、国民のためになることをしようと孤軍奮闘してきた英雄なのです。むろん、世界のためにもなっている。あの悪辣な中国に対する強い対応を見なさい!というわけです。

 かなり馬鹿げた話だと僕には思われますが、オウムの信者たちにはあのトドの親玉みたいな不潔感と性欲だけの麻原が高度な悟りに達した神に近い存在に見えたのと同じく、トランプも神話的英雄で、あのセコい見かけは、マスコミが作り出した悪意ある幻像に他ならないのです。そうは言っても、彼のトンデモ発言・行状のニュース映像や、彼自身のツイートまでマスコミはどうやって「工作」したのかと思いますが、突っ込んでみると、実はそういう詳しいことはろくすっぽ知らなくて、自分が信奉するインフルエンサーの伝える「トランプ像」だけでそう思い込ようになったにすぎなかったりするのです。

 僕はこういうのが流行るのは、やはり社会的な閉塞感が強くなっているからだと思います。世界に明るい見通しはあまりない。そうなると人は近場に「偽りの希望」を見つけて、そこに光を見出したくなるのです。僕のこのブログなんかには、そういう人を奮い立たせるような明るい希望は何もなく、むしろ暗い未来予想ばかりなので、読んでも元気にはなれないのです。その割にはけっこう読んでくれている人がいるらしいのはむしろ不思議なのですが、僕がここで繰り返し言っているのは、そういう安手の希望はインチキなので、そういうものに振り回されると世の中の混乱をさらに募らせるだけで、世界は悪くなりこそすれ、よくはならないということです。そういうものとは手を切らないと何も始まらない。それがわかっている人たちが数は多くないが、読んでくれているのかなと思います。

 人間は愚かな生きもので、僕らのこの文明世界はそれを反映した浅薄でかなり陰惨な世界です。それを一足飛びに変えられるようなことを言う人は、詐欺師か狂人に他なりません。それが認識できる人はヒトラーみたいな政治家や麻原みたいなカルト教祖に引っかかることはないでしょう。皆がそうなれば、この現実世界はもっと混乱と危険が少ない場所になって、地道な世界の改善もそれだけ容易になる。今の文明世界が直面している深刻な環境危機に鑑みて、それが間に合うかどうかはわかりませんが、僕らは足を地に着けて自分にできることをするしかないので、焦っても仕方がないのです。「完全な世界」を望見することはできるが、それはこの世界にはない。それとも、それが見えないからこそこの世界にその代替物を求めてしまうのでしょうか? だとすれば、そういう人たちは次元を間違えて別のところにそれを探すという過誤に陥っているわけです。そのあたり、注意が肝要かと思います。

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