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韓流検事ドラマ『秘密の森2』とリアルな現実

2020.10.15(16:38) 764

 最近これがNetflixで配信され、最初のシーズンが面白かったので時間はかかるが見てみたのですが、これは今韓国で揉めている検察と警察の捜査権争い(かんじんなところでは検察がすべて決定権を握っていて、その恣意的な運用が問題視されている)の問題なども取り込まれていて、よくできたドラマでした。『愛の不時着』みたいな荒唐無稽なおとぎ話とは設定が違うので、ひねたオヤジの鑑賞にも耐えるのです。同じNetflixには日本のドラマ『石つぶて』が入っていて、あれも見応えのある秀作でしたが、そういう系統のものが好きな人には面白いでしょう。紹介は次のサイトに委ねます。

秘密の森2

 ちょうどそれを見終えたところで、朝鮮日報の次の記事を読みました。あそこの記事は一週間ほどで消されてしまうので、少し長いが、URLではなく、コピーしておきます。

・【社説】捜査対象の李盛潤ソウル中央地検長に「ファンドゲート」の捜査は任せられない
 (10/14(水) 17:01配信)

 金融監督院が今年5月、オプティマスファンドの詐欺師らに対する捜査を求めると、大検察庁はソウル南部地検金融犯罪担当部署に事件を割り当てようとした。ところが、李盛潤(イ・ソンユン)ソウル中央地検長は自分から捜査を願い出たという。そして、李地検長は権力型の不正事件を捜査する反腐敗部ではなく、一般の告発事件を捜査する調査部に事件を割り当ててしまった。事実上「権力不正」には手を触れるなというに等しい。捜査を願い出たところから事件の割り当てまでもみ消しを念頭に動いたように見える。

 調査部は6月末、オプティマスの内部対策文書を入手した。青瓦台と与党を相手にロビー活動を行ったという内容が盛り込まれている。7月にはオプティマスの理事(取締役)が「政府および与党関係者が(ファンドの)受益者として参加」「権力型ゲート事件化を懸念」と書かれた文書を追加で提出した。政権の不正を暗示する重要な手掛かりだったが、まともに捜査しなかった。ファンド代表が「虚偽」だというと、供述調書も残さずにもみ消したという。捜査班は文書を李地検長に報告したという。ところが、李地検長は尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長に報告しなかった。隠蔽したのだ。

 ファンド関係者は金融監督院局長ら政官界に対するロビー活動を行ったと供述した。ファンド詐欺犯の妻である青瓦台民情首席秘書官室の行政官がオプティマスの株式を他人名義で所有しているのを隠していた事実も明るみに出た。行政官が筆頭株主となっている別のオプティマス関連企業にファンドの資金500億ウォン(約46億円)が流れた後、資金が蒸発したという供述や資料も出てきた。それでも全てをもみ消した。その間にオプティマス側のブローカーは大半が姿をくらましたという。ここまで来ると、捜査ではなく、隠蔽犯罪と言うほかない。捜査を指揮した李地検長は当然責任を負うべきであり、捜査も受けるべきだ。

 李地検長は文在寅(ムン・ジェイン)大統領が検察に植え付けた手足のような人物だ。政権の盾の役割を自負している。チョ・グク前法務部長官の捜査では、「尹錫悦抜きで行こう」と言い、尹総長がチャンネルA事件を独立捜査本部に委ねようとすると、露骨に反旗を翻した。青瓦台が介入した蔚山市長選挙工作事件の捜査は6カ月以上進展がなく、チョ・グク裁判担当の検事を大幅に減らすよう指示した。「無罪」にするという意味だ。朴元淳(パク・ウォンスン)前ソウル市長が告訴された事実を漏えいした疑惑もある。2カ月前に政権による「虐殺人事」に抗議して退職した文燦晳(ムン・チャンソク)前光州地検長は李検事長について、「検事だとは思わない」と語った。間違っていない。

 尹総長はこのほど、オプティマス事件の捜査班の大幅な増員を指示した。しかし、重要なことが抜け落ちた指示だと言える。重要なことは言うまでもなく、「李盛潤排除」だ。これに先立ち、秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官の息子に対する捜査でも政権側の検事が捜査班を補強すると言い、「補佐官による請託」という供述を調書に盛り込まなかった検事を再び招き、でたらめ捜査ショーを繰り広げた。結果は全て免罪符だった。検事の数を増やしたとしても、李地検長が捜査を指揮している限り、結果は見るまでもない。捜査をもみ消した李地検長と検事を完全に排除した独立的な捜査本部を設置し、捜査を委ねなければならない。さもなくば国民の信頼は得られない。


「事実は小説よりも奇なり」と言いますが、「現実はドラマよりすさまじい」のです。尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長は韓国でも高潔な人物と見なされ、実際そうであるようですが、「自分は法に仕えるのであって、政権には仕えない」と公言して、文政権は今さらクビにもできない(そうすれば自ら不正な政権であることを認めてしまうことになる)ので、その直属の部下を左遷させたり、あのタマネギ男の後任に秋美愛(これまた息子の問題で火だるまになっている)をもってきて、あれこれ人事をいじらせ、検察の独立性を骨抜きにしようと画策してきたわけですが、「腐敗検察」の代表のような李盛潤という男をソウル中央地検長に据えて「政権の盾」としているのも、その方策の一つだということです。それで政府要員やお仲間の不正についての捜査を妨げ、それをもみ消すことにこれまで成功してきた。

 検察が「権力の狗(いぬ)」であることは、これまでの韓国社会の常態で、むしろ尹錫悦検察総長のような人が例外なのではないかと思いますが、それで政権の不正は隠蔽されたままどんどん膨れ上がるから、政権交代すると、大統領とその親族、関係者は片っ端から逮捕されるというようなことにもなるのでしょう。これはそれ自体、権力の腐敗を助長するあり方ですが、そこにあるのは李氏朝鮮時代からずっと続いてきた前近代的な両班政治の同族団結メンタリティで、前にも僕はここに、韓国人には公正客観的なものとしての「公」の観念がそもそも欠けているのではないか、と書きましたが、彼らの正義というのは多くの場合、事の是非善悪を問わず「身内を守ること」なのです。だから御大層な理屈はこねるが、それは身内を守るか、敵対する勢力の追い落としを図るためであって、その「正義」はほとんどの場合、そのための道具で、タテマエ的なものでしかない。その典型はあのチョ・グクで、彼は言ってることとやってることがまるっきり反対でしたが、責め立てられて苦境に陥ったものの、それは内面的な深い葛藤から出たものではないので、「バレたからまずかったのだ」程度の思いしかないのでしょう。

 言行不一致はどこの国の誰にでもあって、それは韓国の専売特許ではありませんが、いささかそれが極端で、そこに深い葛藤や恥の感情が伴わないことが、あの国の政治家やインテリの最大の特徴であるように見えます。「あれだけ激しく人を非難しておいて、自分が裏でやってたことはもっと浅ましいものだったんですか?」というようなことが珍しくないのです。あの慰安婦問題を悪用した尹美香なんかもその典型ですが、それでも文政権はお仲間だから彼女を守るのです。検察はそれを察してか、それとも圧力がかけられているのか、世論の反発をなだめるためにお茶を濁す程度の捜査しかしない。あれが敵対する勢力のメンバーがやったことなら、容赦のないものになっていたことでしょう。

『秘密の森』の主人公の寡黙な検事や、その相方の人間味たっぷりの女性刑事は、そうした異様な韓国の集団・組織文化(ついでに言うと、韓国の上下、序列関係というのは儒教的な観念の支配が根強いのか、いまだに日本などよりはるかに厳格に保たれているようです)の中で、その圧力をはねのけて「正しいこと」を追求しようとするもので、そのあたり、韓国の人たちもそれが大きな問題であるということはわかっているわけです。

 こういうのは個人主義的なヨーロッパ人の目から見ると封建的な王政と集団的な「東アジア的稲作文化」の遺物で、中国などもいまだにそれが色濃く、日本にもそれは残っているのですが、最近の自民政権のやることなすことを見ていると、よっぽど「昔はよかった」と思い込んでいるのか、どんどん前近代的、党派的な方向に退行していて、このまま行くと韓国を追い抜いてしまうのではないかと懸念されるのです。むろん、そんなこと、自慢にも何にもならない。近代的な法治国家の理念を放棄して、権力者への忖度を当然視する人治国家へと後退するとき、そこに出現するのは閉鎖的で不活発な、公正の観念が欠落した腐敗社会でしかないからです。

 今回の学術会議任命拒否事件で、僕に一つ不思議なのは、自民党内部からの強い批判が全くと言っていいほど見られないことです。大方の議員は高等教育を受けてきた人たちなのだから、おかしいのは常識でわかるでしょう。石破議員なんか、「うしろから鉄砲玉を打つ」と党派的メンタリティ丸出しの非難を自党の議員たちから受けて、もっと政権に忖度しないと総理の座は夢のまた夢でしかないと方向転換したのですかね? それとも、「やっぱり日本学術会議には問題がある」と言うのでしょうか? そういうのはまた別の問題であるということぐらい、これまでの彼の言動からしてわかっているはずだと思うのですが、僕が見たこの件に関する彼の発言のニュースは一つだけです。「『(任命)拒否権までは否定しない。なぜこの人はだめなのかが分からないと、次の人の任命のしようがない』と述べた(産経新聞10/12)そうですが、野党は街頭に出てもっと騒ぐべきだと言いつつ、自分は自民党内でだんまりを決め込んでいるわけでしょう? 今度は「かんじんなときには役に立たない奴だ」と言われて、一般の支持まで失ってしまうかもしれませんよ。
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祝子川通信 Hourigawa Tsushin


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