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蓮は泥の上に咲くと言うけれど…

2020.09.08(17:01) 752

 最近は故事成語の類を知らない人が多いので、まず先にこの言葉の説明から入ると、「泥中の蓮」という言葉があって、グーグルで検索すると、一番上に次のものが出てきます。

「泥中の蓮」の意味とは?仏教にまつわる由来や使い方・英語を解説

「泥中の蓮」は「いくら汚れた環境に身を置いていても、その汚さに染まらず、清く生きること」という意味を持ちます。つまり、蓮のように「煩悩の汚れの中でも決して染まらず、清らかで純真な心や姿を保っている人」をたとえる言葉です。

 また、言い方を変えれば「潔白な人は悪い環境にいても悪に汚されない」という意味にもなるでしょう。

 蓮はドロドロとした泥の中に生息する植物ですが、ピンク色の美しい花を見事に咲かせます。また、汚い泥の中でも豪華に輝く花としても有名で、そのような凛とした姿を素晴らしいと称えることわざでもあります。


 ということなのですが、これは人間の側からするいくらか勝手な解釈で、蓮は泥の池や沼に咲き、泥と水を養分として成長するのですが、泥そのものが「汚い」わけでは本来ありません。げんに子供は泥遊びを好むので、僕も小さい頃、田んぼや池、沼の泥の中で何時間も遊んだことがありますが、あれは不思議な感じがするもので、少しも汚いとは感じなかったのです(本当に「汚い」ところは本能的にわかるので、足を踏み入れなかった)。それが人間の文明の副産物たる重金属や有害な化学物質で深刻に汚染されていた場合、そこには鯉やドジョウなども住めず、蓮も育たないでしょう。だからこれは人間の「偏見」を利用した格言にすぎないのですが、とにかく上記のような比喩として用いられるのです。

 厳密に言うと、もしも泥が本当に汚染されていると、生き残った魚は奇形になるとか、仮に育つ植物があったとしても、それは食用や観賞には適さないものでしかないでしょう。廃棄物の不法投棄などで汚染された沼や池は、周囲の生態系を破壊する恐るべきものにしかならないのです。

 さて、僕がこういう話を思い出したのは、次の記事を読んでいたときです。

菅義偉氏“安倍官邸乗っ取り”の全内幕 二階幹事長と急接近

 森功氏は信用の置けるノンフィクション・ライターだと僕は思っています。こういうのは多数の「伝聞」を含む上、情報提供者の解釈も入っているので、それがどこまでその通りだったかはわからないとしても、「さもありなん」という感じで、かなり信憑性は高そうです(文中、一つ脱字があります。「渡り船」は「渡りに船」のミス)。

 すでに首相の椅子を約束された政権ナンバー2とアテ馬の候補者を連日テレビに出演させ、マスコミが一所懸命総裁レースを盛りあげる――。目の前で展開されている自民党総裁選のバカ騒ぎをひと言で表わせば、そうなるだろうか。

「安倍政権の継続に雪崩を打った」とか、「ダークホースが大本命になった」とか、いろいろ言われているが、選挙前から官房長官の菅義偉の総裁就任が決まっている。ただし、新聞やテレビが騒いでいるように、それは安倍晋三が8月28日に辞任会見したあとに決まった流れではない。


 むしろそう見た方が自然ですが、興味深いのはここに描かれた二階幹事長の動きです。彼は典型的な利権政治家で、政治的な理念などというものはないに等しく、いわゆる「政局」を見て、自分が有利な立場になるよう機敏に立ち回る。フィクサーとしての役回りと「彼に逆らうとどんな目に遭わされるかわからない」という恐怖心を利用して、長く権力を維持してきた男です。上のたとえで言えば、「重金属をたっぷり含む沼」みたいな人間です。彼に献金する企業や団体にとっては、「献金や支援に見合った見返り」が必ず得られる頼もしいポリティシャンでしょう。それが社会的公正を歪めることになっても、そんなことは気にしない。むしろ、それを歪められる自分の権力に酔っている、それが「政治家としての実力」を示すものだと思っている、戦前から続く二流の保守政治家の系譜に入る人間です。親分・子分の関係を重視し、逆らうとどんな目に遭うかわからないが、忠誠を誓った子分の面倒見はすこぶるいい。そのあたり、暴力団の組長と同じようなメンタリティの持主でもあります。その倫理観も独特で、権力の変動によってつく相手がコロコロ変わっても、それは政局によるものなので、裏切りだとは思わない。権力をもつ側が善で、それを失ったり、得損なったりするのはその人間が間抜けだからで、自業自得と考えているのです。

 そういう理解を前提としてこの記事を読めば、いかにも二階俊博のやりそうなことだと納得されるでしょう。彼は幹事長という役職をとにかく手放したくない。今の政局でそれを死守するためには何が必要かということで動いた結果がこれなのです。石破への接近も、菅の支援に回ったのも、彼がいつもやっている「自己都合」の政局対応にすぎなかったのです。間抜けな岸田なんか喧嘩相手にもならない。この記事によれば、

 もとはといえば、首相の腹積もりが自民党政務調査会長の岸田文雄への政権禅譲だったのは、よく知られている。ところが、いつのまにか首相官邸は岸田から菅に乗り換えた。とりわけ安倍の心変わりとして挙げられる原因が、コロナ禍の景気対策「所得制限付き世帯向けの30万円の定額給付金」だ。安倍は、次の首相候補である岸田にハク付けしようと30万円の給付政策を発表させた。にもかかわらず党幹事長の二階俊博が撤回を迫り「全国民の10万円一律給付金」に落ち着いた。これは岸田の調整力の欠如が招いた結果だ、と官邸内の評価が下がり、安倍が岸田に見切りをつけたとされる。

 しかし、実態はそうではない。30万円の定額給付金は、経産省出身の今井尚哉首相補佐官を中心に財務省の太田充事務次官らで独自に打ち出した政策である。1人世帯でも5人世帯でも同じ30万円の給付、というあまりにわかりにくい制度だ。そして公明党やその支持母体である創価学会からの批判が殺到する。

 つまり30万円の給付は経産出身の官邸官僚が立案し、首相自身が彼らに任せた政策なのである。したがって本来、そこに不満が出たら、創価学会との太いパイプを自任する官房長官の菅や党幹事長の二階が抑え込む役割を担う。

 だが、その二階が逆に官邸にねじ込んだ。挙げ句、政策撤回を岸田のせいにしてしまったのである。なぜそんな事態になったのか。別の官邸関係者が解説してくれた。

「もともと岸田さんはこの秋の人事で幹事長になるつもりで、次の総理総裁を目指してきた。一方、二階さんは幹事長ポストを死守したい。で、この際、公明側の立場に立ち、岸田を追い落とそうとしたのでしょう」


 僕もあのとき、二階が突然あんなことを言い出したのは不思議でした。これを読んで謎が解けた。それにしても、岸田文雄というのはほんとに情けない政治家です。30万円の定額給付金は元々官邸官僚の案だった。それを、「安倍は、次の首相候補である岸田にハク付けしようと30万円の給付政策を発表させた」のに、恐ろしく不評だったために、逆効果になった。公明は創価学会員だけでなく世論の後押しもあって撤回を申し入れ、二階もなだめるどころかそれに乗った。それで「全員一律10万円給付」に切り替えられ、岸田の面目は丸潰れになった。元々官邸案だったのなら、官邸から発表すればよかったのに、「文雄ちゃん、これで点数稼いで」と言われて、彼は嬉々としてそれに乗ってしまい、世間では「岸田案」のように思ったので、撤回になったときはダメージが大きかったのです。

 他力本願で政権に就こうとした岸田は、これは前回記事でも触れたことですが、昨年7月の参院選でも大失態を演じた。自派のベテラン議員、溝手顕正を落選させてしまい、その後公職選挙法違反で逮捕された河井案里の方が当選したのです。安倍はかつて「もう過去の人」と溝手に言われたのを恨んでいたと言われますが、菅官房長官はこれを「岸田潰し」の好機と見ていたとも言われ、表向きは「自民二議席独占」の目標を掲げていたが、ホンネは「自民の議席を溝手から案里に変える」ことだった疑いが濃厚です。だから、自民党本部から支給された選挙資金は河井が破格の1億5千万、溝手はその十分の一の1500万ということになり、菅や二階は公明党票が河井案里に流れるよう画策もした。こうしたことに岸田は何も文句が言えなかっただけでなく、選挙戦終盤には「次期首相」と安倍におだてられるまま、案里の応援演説までやってしまい、溝手は前回票を半分に減らして落選、オヤブンとしての無能ぶりを天下にさらしたのです。

 こういうのは全部、彼が安倍からの政権禅譲を期待して迎合・追従に終始したところから来ているので、昇進を上司からの引き立てに頼るおべっかサラリーマンと同じです。彼は優しい人なのでしょうが、状況の認識能力に乏しく、部下も守れないことがはっきりしてしまった。政治理念や政策がどうのこうのという以前の問題で、反対や抵抗を押し切ってそれを実現する胆力などおよそありそうもない。さっきのたとえでいえば、「泥の中に咲く」どころか、泥に呑み込まれてその養分にされて終わってしまいそうなタイプです。悪によく通じた知恵のある側近も、彼にはいないのでしょう。

 このあたり二階とは好対照で、二階の方は石破を担ぐそぶりで安倍を脅したり、菅と官邸官僚との確執を利用して、菅と組んだり、それもこれも「国家の行く末」ではなく、自己の権力温存を狙ってのものですが、狡猾に立ち回ったのです。石破を総理にするのが得策と判断していれば、彼はそう動いていたでしょう。相場師と同じで、それが途中で「菅で行くのが一番堅い」と思い定めたのです。そうすると、今度は一時は秋波を送っていた石破をどう阻止するかという問題になって、それには党員票の比重を減らせばすむということになり、「私としても残念ですが」などと心にもないことを言いながら、「両院議員総会と都道府県の党代表による緊急選挙にすればいい」ということで、そうなり、飴玉を見せられて「二階の支持」が得られそうだと思った石破は肘鉄を食らうかたちになったのです。

 こうした自民の権力闘争のありようは「泥沼」そのものです。二階や菅、官邸官僚たちはその泥沼に巣食う魑魅魍魎の類で、岸田や石破はそれにいいようにしてやられたのです。とても彼らが太刀打ちできるような状況・相手ではない。河野太郎があっさり引いたのは、そのあたりよく観察しているからでしょう。

 それで問題は、「庶民性」をさかんにアピールして、世論調査でもトップになった菅義偉ですが、彼は「泥中の蓮」になれるのか? 汚染された泥の中の怪異な植物が蓮に果たして変貌することがあるのでしょうか? 絶対にない、とは言い切れないと思いますが、かなり疑わしいのは確かでしょう。次のアエラの憲法学者へのインタビューは、結論は「すんなり菅総理に決まるとはかぎらない」で、僕は「すんなり」決まってしまうだろうと読んでいますが、安倍政権がどういう性質の権力だったか、そのおさらいと、その中で番頭としてうまく立ち回ってきた「政治家・菅」の今後を占う上では大いに参考になりそうな記事です。

菅首相”なら安倍政権以上に「メディア対策が徹底的におこなわれる」と憲法学者

「『病気の人を批判するな』というのは、『公』のトップである内閣総理大臣には成り立たない」というのはそのとおりでしょう。しかし、「日本式国民情緒法」が支配する世界では一気に支持率が上がるといった珍現象が起こるのです。そしてそれがそのまま「菅支持」につながる。これまでの数々の疑惑、コロナ対応の不手際はどこかに消し飛んでしまったのです。

――長期政権では、さまざまな汚職疑惑がありました。それでも安倍政権が選挙に勝ち続けてきた要因はなんでしょうか。

 得票率からすれば一度も勝っていない。野党に負けなかっただけです。安倍政権には5つの統治手法があります。

 1つ目は「情報隠し」。政権内部の「不都合な真実」は決して表に出さない。野党やマスコミから迫られると、文書の改ざんまでやる。

 2つ目は「争点ぼかし」、3つ目は「論点ずらし」です。集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法で批判を浴びると、「消費税増税の先送りの是非について国民の信を問う」として衆議院を解散した。選挙の争点は完全に見えなくなりました。17年には森友・加計学園問題で追及されると、今度は北朝鮮のミサイル問題や少子高齢化を理由に「国難突破解散」と銘打って選挙を行った。争点なき選挙で記録的な低投票率をつくりだす。国会で野党に追及されると、まったく別の問題を持ち出して論点をずらしていく。「ごはん論法」もその一つです。今回の辞任も、コロナ対策の失敗や河井夫妻の公職選挙法違反の責任を追及されるべきところを、「病気」によって論点をすりかえたのです。

 4つ目は「友だち重視」。法制局長官やNHK会長などの重要ポストにお友だちをつけ、加計学園監事の弁護士を最高裁判事にする。あげくに官邸に都合よく動いた黒川氏を、定年延長してまで検事総長に据えようとした。コロナ対策の持続化給付金のトンネル団体にしても、「アベノマスク」の委託先にしても、安倍政権の政策を突き詰めていくと必ず自分の親しい仲間や金が絡んでいます。「Go To トラベル」を強行したのも、全国旅行業協会の会長である二階俊博幹事長らに数千万円もの献金が渡されているから。「構造的な汚職」といってもいい。

 最後の5つ目は「異論つぶし」。安倍首相はこれまで自分と違う意見の人を徹底的に潰してきました。その最たる例が先に述べた「溝手つぶし」です。総裁選で言えば、出馬を表明している石破茂氏が、森友学園をめぐる文書改ざん問題で自殺した財務省職員の手記が新たに出てきたことに対し、「調査が必要か白紙で検討したい」と述べてしまった。再調査を否定してきた安倍首相にしてみれば、石破氏が総裁になっては都合が悪いのです。だから自民党は、地方票に強い石破氏には不利な党員・党友による投票を省略した形式での投票に固執している。

 なぜここまで長期政権を築けたのか。それは、これら5つの統治手法を支える「前提崩し」が成功してきたからです。国の最高法規で、ルールの中のルールである憲法を蔑視し、「集団的自衛権行使は違憲」という政府の憲法解釈を閣議決定で強引に変更する。党運営の基本である党則の80条4項(総裁は連続2期まで)を、安倍首相は自分のために「3期まで」に変更した。国民からの支持率が高かった小泉純一郎首相(当時)でさえ、「人気があっても任期で辞める」という大原則をしっかり守ったというのにです。


 うーん。忘れかけていたが、言われてみればたしかに全部当たってるよな、と思いませんか? 僕はこの前「安倍晋三の強運」について書きましたが、それにはこうした数々のペテンも関係していたのです。菅や二階は、むろん、こうしたペテンにじかに関与してきた。麻生もそうですが、今回の「菅後継総理」の立役者たちは、安倍政権の暗部を象徴する人物ばかりなのです。利権政治と情報隠蔽、メディア・コントロールの中心人物たち。支持率低下の中、安倍政権は打つ手なしの窮状にあったのですが、「持病悪化のため辞めざるを得ない」という辞任会見が奇蹟のように作用し、去りかけていたネトウヨたちも戻ってきて、かつてと同じようにアンチ安倍を見つけると罵倒を浴びせかける、という構図が復活したのです。むろん、彼らは熱烈な菅支持派で、全体の絵図を描いたのが彼らが嫌う親中派の二階だということは忘れている。「かんたんでいいなあ」と黒幕たちはほくそ笑んでいるでしょう。

 問題は、汚染された泥の中から出てきた菅義偉という人物が、今まではやむなく不正の片棒を担いでいただけで、本当は心ばえすぐれた人物で、蓮のように見事な花を咲かせるのか、それともこれは汚染に適応した奇形植物で、それが開花したときに現われるのはグロテスクな見るに堪えない花でしかないのか、ということです。どちらなのか、僕らはいずれそれを知ることになるでしょう。前者であればいいが、とは思いますが、僕個人としてはあんまりそういう期待はしない方がよさそうに思います。
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