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終わった国に暮らすということ

2020.08.22(13:22) 746

 このタイトルを見て、「そこまで言わなくてもいいのに…」と思った人がいるかもしれません。そう思った人は、この「終わった国」というのは日本のことで、口の悪い僕がまた安倍政権率いる日本の悪口を書いているのだろうと思い込んだのでしょう。

 たしかに、「日本も終わりかけている」とは思いますが、日本が終わっているとなると、世界の多くの国も終わっていることになって、それも真実だとは思うのですが、「終わる」度合いにも様々あって、中には「議論の余地なくすでに完全に終わっている」と見られる国もあるのです。そういう国の場合、エスタブリッシュメント(支配層)が腐敗の極致に達していて、それに代わる勢力もまるで育っていないので、打つ手がなさそうに見える。しかし、人間の世界もそういうところまで行ってしまうことはほんとにあるのだなとわかって、憂鬱ではあるが、教訓的なのです。

 次はどちらもJBpressの記事です。

哀れなほどに荒れ果てた国レバノン~多重危機に爆発事故が追い打ち、世襲のエリート支配を絶てるか

 しばらく前のベイルート港のあの途方もない爆発事故は大きなニュースになりました。保釈中に木箱に隠れて海外に逃走したニッサンの元会長ゴーンの自宅も被害を受けたという話でしたが、天罰でゴーンが吹き飛ばされたとしても何ら問題はないが、残念ながらそんなことにはならなかったようで、代わりにゴーンのような欲深男ではないふつうの善良なベイルート市民がたくさん亡くなったのです。上の記事には、

 死者は170人前後(多くの人の行方がまだ分かっていない)に達し、負傷者は6000人。30万人が住む家を失った。

 とあって、あるニュースサイトには「まるでこの世の地獄」というキャプションの付いた爆発後の悲惨な写真が何枚も出ていましたが、死者・負傷者の多さのみならず、危険物をそれと知りながら長年放置した挙句、「30万人が住む家を失」うところまで行ってしまうというのがすごい。しかも、「外部の専門家によるこの悲劇の調査を絶対に回避する決意でいる」というのだから、救いようがない。これは元々はフィナンシャル・タイムズの翻訳記事のようですが、お読みになればわかるように、あの国は政治経済のシステムそのものが無茶苦茶なのです。ゴーンの悪質な会社私物化や横領なども、こういうのを見て育っていれば当然かなと思えるほど(ゴーンはブラジル生まれだが、両親はレバノン人で、6歳のときベイルートに転居し、そこで中等教育を受けた)で、国家の屋台骨が腐りきっているのです。淡々とした記述の内容は人を唖然とさせるものばかりで、どれを見てもひどい話しかない。

「筆者はこの災難の後に、この打ちひしがれた国の繊細な感覚の人々から話を聞いているが、これで新しい時代が始まるかもしれないなどと惑わされている人にはまだ一人も出会えていない」とありますが、それは尤もな話です。これに対抗できるのはあの「偉大な将軍様」の国ぐらいかも知れないと思っていたら、翌日、近藤大介氏の次の記事が出たのです。タイミングがよすぎる。

北朝鮮に異変!平壌在住者が語る「進行中の危機」

 こちらは多くの日本人には「想定内」の話だとしても、その悲惨な政情の度合いがレバノンに劣るというわけでは決してない。中国では自国の洪水被害や三峡ダム決壊のおそれのニュースより、九州豪雨のニュースの方が詳しかったほどだったそうですが、北朝鮮の場合は、情報そのものが存在しない。しかし、今月上旬にやはり洪水で大被害を受けていたわけです。中国では農家の男性がスマホで撮った水没した自分の田んぼの映像が、絶望的なメッセージと共にSNS投稿されて、そういうのは国家イメージに有害だというので、ネット警察の手で見つけ次第削除されるのですが、僕も見たぐらいなのだから、検閲が追いつかない。しかし、北朝鮮では、そういう情報自体がほとんど出てこないのです。

 北朝鮮は、アジアでは文句なしの最貧国家です。それが夏のこの時期に主要な穀倉地帯も洪水にやられたとすれば、壊滅的なことになって、秋の収穫シーズンに収穫すべきコメはないということになってしまう。ミサイルや核開発に大金をつぎ込むヒマがあったら、何で洪水対策や民生向上にもっと力を注がないのかと言いたくなりますが、民は飢えても核ミサイルで強がる方が大事だと思っている国(過去には核実験による放射能汚染で深刻な人的被害が出た、という脱北者情報もあった)なのだから、今さらそんなことを言っても仕方がない。コロナを世界に撒き散らした中国の習近平に泣きついたり、「北朝鮮愛」に満ち溢れた南(韓国)の文政権を脅し上げたりして、「緊急援助」を得れば何とかなると思っているのかもしれませんが、中国も大洪水で広範囲にわたって農地が水没し、食糧生産に大打撃をこうむったのは疑いがないし、韓国も経済的余力は全くないはずなので、そうそう気前のよい援助は期待できないでしょう。記事によれば、「北朝鮮は、10月10日に朝鮮労働党創建75周年を迎える」そうですが、それが「体制崩壊」を告げる記念日になりかねないことを、この記事は示唆しているのです(健康不安説のあった金正恩はすでに死んでいて、今のはそっくりさんの影武者ではないかという憶測まである)。

 北朝鮮というのは、誰がどう見ても、最低最悪の国家です。文在寅みたいな左翼民族主義的イデオロギーに完全に頭をやられた病人にはそう見えないというだけにすぎない。従って、その体制が崩壊することはそれ自体としては喜ばしいことですが、金日成の昔から、批判者や反対勢力は片っ端から政治強制収容所送りにして殺してきたのだから、代わりが務まる人がいるわけでは全くない。そのあたりも最低最悪なので、その先が大変です。

 悩ましいのは、愚かな為政者の国はボロボロになるが、そのボロボロになった国にも多くの人々が暮らしていて、多くの場合、彼らに罪はないのに、愚かな為政者のために塗炭の苦しみを味合わされるということです。

 僕に一番理不尽に感じられるのは、そのことです。日本の場合、それを日本人がうまく活用できているとは思えませんが、政治的自由も、思想の自由も、言論の自由もある。だから愚かな政治家を国家リーダーに選んでしまったとしても、それは自分たちが悪かったのだと言えますが、北朝鮮のような独裁国家にはそんなものは初めからないのです。システムというものはやはり重要で、いったんレバノンや北朝鮮のような国になってしまうと、人材が育たない。だからあらゆる面で駄目になってしまうので、不正と貧困が深化しても、そこからの脱出口が見つからなくなってしまうのです。

 それはそれらの国々の人々が元々愚かだからなのではない。恐怖政治や、腐敗した社会システムがよいものの伸長を妨げているからで、下々の人々の間では無力感と諦めが支配的になり、活力を失ったその上に、ますます不正と悪がはびこるのです。人間は可塑的な存在ですが、方向を間違えると、この世は本物の地獄になる。上の二つの記事はあらためてそのことを考えさせてくれます。
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