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「安定」という言葉が死語となった世界

2020.07.05(12:38) 735

 一昨日夜の大雨はこちらでもかなりのもので、雨音からもその凄まじさがわかりましたが、熊本県では球磨川の堤防があちこちで決壊して、大きな被害が出たようです。この場を借りてお見舞い申し上げます。先には地震で大きな被害が出ていたので、熊本の人たちは災難続きですが、今後どこを災害が襲うかはわからない。2011年夏には僕の郷里の和歌山県でも台風に伴う集中豪雨でいわゆる「山体崩壊」が起き、木々ごと崩れ落ちた山の大量の土砂が川を隔てた対岸の家々を呑み込み、上に逃げた人々をヘリで救出するという事態になりました。土砂は川を完全にふさいで天然のダムができ、やがて決壊した。その際、かつて道路があった箇所を数十メートルの深さでえぐり取り、そこを水が通り抜けたので、地形が変わってしまったほどでした。僕の父親はその集落の出身でしたが、過疎で人口が激減していたところにそれで、以後、その集落は無人となって、事実上消滅しました。

「異常気象」という言葉は三十何年かに一度という頻度のものを指すという話ですが、今やそれは日常的なものとなって、「異常が常態」になりました。この前書いた中国の三峡ダムの件も、やはり豪雨が収まらず、決壊を避けるための放流でしのいでいるようです。上下流でひどい洪水になっているようなので、ダムは「洪水調整機能」をもつどころか、決壊すれば大惨事になるということで、むしろ新たな脅威を増やしただけになっているようです。

 先週金曜にはアフリカの南部ボツワナで、ゾウが謎の大量死を遂げているというニュースが出ていました。頭数には報道によって違いがあります(250~400頭)が、まだ収まっておらず、現在進行形のようなので、下手をすると絶滅に近い状態にまで行ってしまうかもしれません(密猟によるものではない、とすれば何かのウイルスか?)。この前のオーストラリアの長期間にわたる大規模な山火事、アマゾン密林の急ピッチの減少、サバクトビバッタの大量発生等々、これに今世界中を悩ませている新型コロナウイルス禍が加わっているのだから、聖書の黙示録さながらです。関東で異臭がして、大地震の予兆ではないかという話も囁かれているようなので、関東地方の人たちは気をつけて下さい。とは言っても、自然はしばしば人の予測を裏切るものなので、南海トラフ大地震の方が先かもしれませんが。

 東西冷戦時代は、「核戦争」が最大の脅威みたいに言われていました。実際、米ソ両国が核戦争を始めれば、人類絶滅はほぼ確実だったので、放射能汚染だけではなく、いわゆる「核の冬」と呼ばれる現象が起きて、それは恐竜が絶滅したときの巨大隕石衝突後の気象変動のインパクトに劣らない。それが今では、核戦争以前に、地球温暖化とそれに伴う気象の異変による自然災害の多発、生物大量絶滅、新種ウイルスの出現などで、文明はたやすく崩壊するであろうことが認識されるようになったのです。僕が若い頃、『文明の生命力―テクノロジーからエコロジーへ』(ジャン・ドルスト著、宮原信訳、TBSブリタニカ 1981)という本が出て、それを読んで感銘を受けたことがあります。それは過去の幾多の文明の滅亡が「生態学的無知」によるものであることを説明したものでしたが、何のことはない、今の文明もそれと同じで、人類の「生態学的不遜」のために破滅の危機に瀕しているのです。

 しばらく前に、「古代マヤ予言による世界の終わり(2012年)」なるものが取り沙汰されたことがあります。あのとき僕は、「次のカレンダーの周期を計算する前にマヤ文明自体が滅んでしまっただけだろう」と言っていましたが、ナショナルジオグラフィックにそれに関連する記事が出て、これは慶大理工学部の英語の入試問題に少し語句を改めてそのまま出題されたのですが、そこにはそれを裏書きすることが書かれていて、やはりこれも元々は「生態学的無知」によったのです。マヤ文明は大がかりな灌漑施設を作って、初めはそれがうまく機能し、人口も増えた。しかし、それが機能不全になりかけたところに、気候変動も手伝って、繰り返し深刻な食糧不足に見舞われるなど、危機に陥った。この時点で人間の我欲と政治の無能が顕在化してきます。当時のマヤ文明は都市国家で、それぞれが王を戴く国家の集合体だったのですが、婚姻関係を通じて王族の数は増え続け、王は彼らのご機嫌を取り結ぶことなしには権力を維持できなくなっていた。彼らは民がどうなろうと自分たちのぜいたくな生活が維持できることが最大の関心事でした。しかし、経済システムそのものが機能不全に陥っているのだから、どうしようもない。それで戦争によって他の都市国家を攻め落とし、そこの財宝を分配し、そこの人民を奴隷化するなどの方策で、現状を糊塗し、配下の王族たちの支持をつなぎとめようとして、戦乱が続き、ついに滅んでしまったと、単純化して言うと、そういうことになったのです。都市国家間で協力して対策を協議し、生産システムをつくり替え、共生の道を模索しようとはしなかった。断じて既得権益を手放さまいとする富裕層の利己性と、「安きにつく」政治の愚かさが自らの破滅を招いたのです。

 今の文明も同じことになりかねない。過去の文明と今が違うのは、経済のグローバル化によってそれが事実上、単一文明化していることです。中国のような共産党一党独裁国家も、西側の民主主義諸国(尤も、一部の富裕層の支配になって、民主主義が行われているかどうかは甚だ疑問ですが)も、経済的に深く結びついているので、たとえば中国の三峡ダムが決壊して、中国経済が壊滅的な被害を受ければ、西側諸国も市場や生産拠点を失って、大打撃になるのです。尤も、今の経済システム、大量消費のあり方は、「持続可能」ではないことがはっきりしていて、コロナで経済活動が後退を余儀なくされたことも、地球環境全体から見ればプラスに働いている側面があるので、「おまえら、これを機に考え直せよ」と自然が言っているように感じられますが、とにかく大混乱になる。昔の文明は局地的なものだったが、今はそうではないので、その崩壊も局地的なものではすまなくなるのです。また、人類は核兵器をすでにもっている。貧すりゃ鈍するで国家間の摩擦が増え、敵対心が募って戦争になったとき、その使用をどこまで忍耐できるかは疑問です。テクノロジーは確かに発達したが、精神的に人類が進歩し、賢明になったかは疑わしいので、少なくとも文明国家では、これほど自閉的、利己的なメンタリティが蔓延したことはかつてないほどだと思われるのです。

 コロナがなくても、自然災害の多発がなくても、今のままでは自然資源が枯渇して、人類はその生物的生存の基盤を失う。それは明白なことで、この文明は「持続可能性」をもたないのです。そこを明確に認識して、人類は英知を結集してそれを乗り切らねばならないが、トランプでも習近平でも「自国ファースト」「自己権力ファースト」丸出しで、世界の二大大国の首脳がそれでは、見通しは暗いのです。北朝鮮みたいに、経済がどん詰まりで、いつ暴発するかわからない国もある。今どき国家の世襲体制なんて犬も食わないので、それを維持することが最優先課題だなんて馬鹿げ切った話ですが、現実にはそうらしいので、体制崩壊が避けられないとなると、何をしでかすかわからなくなる。悪いことに、あの国はすでに核をもっているのです。

 何にせよ、今の世界は非常に際どいところに立たされている。元々人間は、平和な時代でも明日何が起こるかわからないもので、昔、禅の坊さんたちは「無常迅速、生死事大」と言いましたが、今後はそういう外部環境からも、多くの人にそれが実感されるような時代になるでしょう。僕自身は若い頃から、長生きはしたくないとずっと思っていて、すでに六十五年も生きたので、べつだんこの世に名残惜しいということは何もないのですが、子供たちや若者の未来を奪うようなことはしたくない。オトナたちは近視眼的な既得権益や自己保身などの見苦しいことにばかりかまけるのはやめて、「今後の世界には何が必要か」ということを今少し真面目に考えるべきでしょう。若者たちも、沈みかけた泥船のどのポストに入り込めるかというような後ろ向きのセコいことばかり考えずに、自分たちで未来を作っていくことを考えてもらいたいものです。危機の時代には人材が出てくるものなので、これからはこれまでにはなかったタイプの大人物が出てくるかもしれません。そのためにはいい意味でのアウトサイダーでなければならない。こんなクソみたいな世の中に後ろ向きに「適応」することしか考えられないのではお先真っ暗でしょう。

 僕自身は自分にすることがまだ何かあるのかと考えると悲観的にならざるを得ないのですが、書き残しておきたいことが少しはあるので、それを書いておこうかと思っています。いくら言っても通じないなと思うことが多くて、だから言うだけ無駄だと思って書いていないことがあるので、それを書いてみようかと考えているのです。今度出る予定のジョン・マックのエイリアン・アブダクションの研究書の翻訳もそうですが、僕は「知のパラダイム転換」を要請するような本ばかり、えらんで紹介してきました。根本的な自己認識、世界理解の仕方が変わらないとどうにもならないと考えたからです。翻訳紹介というかたちでそれをやってきて、自分はその背後に隠していたのですが、それもだんだんめんどくさくなってきた。だから今度は自分で書きたいことを書いてみることにします。「無常迅速、生死事大」なら、生きられる時間をただ漫然と過ごしてはならないと、珍しく殊勝な心境になりかけているのです。皆さんもそのあたり、仕事の性質を見直すとか、自分の他者や世界との関係を見つめ直すとか、お考えになってはいかがでしょう?
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祝子川通信 Hourigawa Tsushin


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