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「公」の感覚がない今の日本の組織人

2011.04.13(01:48) 68

 「言い得て妙だな」と思ったので、まずはそちらの記事から。

 【厚労省の元局長・村木厚子さん(55)の無罪が確定した郵便不正事件で証拠隠滅の罪に問われた元主任検事に対し、大阪地裁は12日、懲役1年6か月の実刑判決を言い渡した。判決を受け、村木さんは『被告は国民に対して責任を感じているのではなく、検察庁に迷惑をかけたことを申し訳ないと言っているとしか思えない』とコメントしている。
 判決を受けたのは、大阪地検特捜部の元主任検事・前田恒彦被告(43)。判決によると、前田被告は、村木さんの無罪が確定した郵便不正事件で、証拠のフロッピーディスクのデータを検察側に有利な内容に改ざんした。
 12日の判決で大阪地裁は、フロッピーディスクを村木さんの無罪を裏付ける重要な客観証拠と評価した上で、改ざんによって『村木さんに対して重大な不利益が生じるおそれがあった』と指摘。『我が国の刑事裁判史上、例を見ない犯罪』と述べ、懲役1年6か月の実刑判決を言い渡した】(日テレNEWS24 4.12より)


 タコツボ型の日本の組織の人々にとっては、しばしば最悪の罪は「自分が所属する組織に迷惑をかけること」であって、社会全体に対する責任の観念(それで社会的生命を奪われそうになった気の毒な個人に対してはもちろん)は抜け落ちています。官庁のお役人たちにとっても、重要なのは「省(庁)益」であって、「国民の利益」ではない。

 もちろんそれは自身の「保身」願望と密接に結びついているわけですが、今回の福島原発事故などの場合も、それだから「国民の利益」はそっちのけで、「組織防衛」と「保身」に追われ、いよいよ逃げ道がなくなると「責任はわれわれの組織にはない、他の組織が悪いのだ」という責任のなすり合いを平気でしたりするのです。

 原子力安全・保安院なるところは、今回の事故の評価を、一月も経った今、「国際基準に従って最悪の『レベル7』に引き上げることを決めた」そうですが、新聞各紙の報道によれば、

【評価に協力した内閣府原子力安全委員会の代谷(しろや)誠治委員は同日の会見で『3月23日の時点で、放出量がレベル7に該当する可能性が高いと分かっていた』と発言。それでも経済産業省原子力安全・保安院に暫定評価の見直しを勧告しなかったことを明らかにした。/保安院は3月18日、1~3号機について国内最悪の『レベル5』とする暫定評価結果を公表。約3週間後に2段階引き上げた。/安全委は3月23日、原発から出た放射性物質の拡散予測結果を発表。その際、放出量が最大で数万テラベクレルになるとのデータを得ていた。保安院に見直しを求めなかった理由について代谷委員は、データの精度が十分でなかったことに加え『評価するのは保安院の役割』と説明した。】(毎日)

 …そうです。要するに、「事故の深刻さは賢いわれわれが先に認識していた」が、「評価するのは保安院の役割」なので、「責任は保安院にある」と言いたいのです。

 それにしても、「内閣府原子力安全委員会」というのは何のためにある組織なのか?

 しばらく前にネットで見た『週刊ポスト』の記事によれば、「同委員会は原子力の安全確保のために内閣府に設けられた『原発の監視役』で、事故が起きれば専門家としての知見を国民に示す立場にある」が、「委員長以下、委員5人はいずれも常勤の特別職公務員。ただし、常勤といっても定例会議は週1回だけ。議事録を確認する限り、会合は最短で10分弱、長いもので1時間半だった。これで約1650万円の年収(月給93万6000円とボーナス)を貪っている」とあります。

 それで、委員のこの発言というのは、素晴らしい。委員長は元東大教授の斑目(マダラメ)春樹氏(63歳)で、この人は地震発生直後、管総理に呼ばれ、「原発が爆発するおそれはないのか?」と質問され、「大丈夫です。水素はありますが、爆発するようなことはありません」と答え、「水素があるんなら、爆発するだろ!」と総理を激怒させ、果たして翌日水素爆発が起きたという笑い話みたいなエピソードの中心人物で、その後も、「28日の会見では、建屋に溜まった高放射線量の汚染水処理について、『知識を持ち合わせていないので、東電と原子力安全・保安院にしっかりと指導をしていただきたい』と答えて周囲を唖然とさせた」(同誌)という豪の者です。

 いずれ劣らぬ頼もしい先生たちで構成された「機関」らしく思われますが、原子力安全・保安院やこの原子力安全委員会、それから原子力委員会というのも別にあるようですが、テレビに出てきて自信たっぷりデタラメを語ってくれた学者先生たちも含め、東電・官庁を中心として形成されたこうした「専門家」たちのネットワークについては、『週刊現代』4月16日号の「そんなに『安全』と言うのなら、テレビに出るのではなく、原発ムラの科学者たちは現場に行け!」という記事が「関係図」も掲載してくれて、たいへん親切なので、未見の方はそちらのご一読をお勧めします。この記事の最後は「原発事故でムラは崩壊寸前」という文で締め括られていますが、責任のなすり付け合いが、どうやら本格的に始まったようです。

 要するに、彼らの眼中にはタテマエはともかく、「原発の安全」も「国民の安全」もないわけで、あるのは「ムラの守り」と、それも守れなくなる事態に遭遇すると、その中の自分が直属する組織、最後はわが身の保身だけ、ということになるのです。

 「公の組織」の人間が、「内輪の利益」だけで「公人」の自覚を微塵ももたないようになってしまっていること、そのことを今回の原発事故は万人の目に明らかにしてくれました。これから先の日本社会の最大の課題の一つは、ここを変えられるかどうか、ということだろうと思います。

 アメリカやヨーロッパなら、こうした重大事故が起きると、関係組織の偉いさんたちは厳しく責任を問われ、懲役刑を課せられる人が幾人も出るでしょう。「甘い汁の吸い逃げは許さない」という社会的コンセンサスがあるからです。今回はわが国でも果たしてそういうことになるのかどうか、健全な社会であればなるのがふつうだと僕は思いますが、今後の成り行きを「注意深く見守り」たいと思います。
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祝子川通信 Hourigawa Tsushin


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