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香港の若者

2019.11.19.16:14

 李栄薫編著『反日種族主義』日本語版を買って読み、「確かにこれはいい本だ」と感銘を受けたので、それについて書くつもりだったのですが、先にこちらを書いておきます。

「妊婦に催涙スプレー」「出歩くだけで逮捕」荒れ狂う香港で若者に広がるある言葉

 一読するだけでそのすさまじさがわかり、逮捕者もすでに3400人に達している(大半が若者)という話ですが、記事の見出しにある「ある言葉」というのも尋常ではない。

「国際的な支援を求めてはいますが、香港は大国間のせめぎあいのゲームの駒にされているようで、過度な期待はしていません。とはいえ、ツイッターなどSNSを使って香港の状況をより多くの世界の人々に伝える努力はこれまで以上に重ねます。いつの日か、警察や官僚が、今犯している人道、国家犯罪に関して、国際法廷で裁かれる日を夢見ながら」

 そういった厳しい状況の中、若者たちのなかで広がりつつあるのが「攬炒(ラムチャオ)」(死なばもろとも)という覚悟だ。

 これは、警官を巻き込んで死んでやるといった意味ではない。習氏が香港人の「自由と民主」を認めないなら、中国経済にとっても欠かせない香港の国際金融センター機能を麻痺(まひ)させ、失業、給与カットなど、たとえ自分たちが不利益を被ることになっても、香港内の親中的な富裕層や中国政府に多大な打撃を与えてやるという覚悟だ。


 中国共産党、習近平と刺し違えても「自由と民主」を守る覚悟だというのです。これはたんなる「血気にはやった行動」というのではないでしょう。彼らはあの天安門事件などもよく知っているはずだからです。中国共産党政府がどんなえげつない手を使う権力かということもよく承知した上での「覚悟」です。また、抗議活動は若者、大学生が中心でも、一般市民の厚い支持がある。

 習近平が人民解放軍(この名称はほとんどブラックジョークですが)を使えばかんたんに制圧できるが、世界注視の中、それをやったのでは国際的非難が一気に高まるだけでなく、中国の世界覇権戦略も大ダメージを受ける。あんな国の経済援助を受けたり、その資本を受け入れたりすると、後でどんな目に遭わされるかわかったものではないと、すでに「中国ファースト」的態度が露骨すぎて警戒されるようになっているのに、悪評は決定的なものとなる。米中経済戦争のさなか、それは痛すぎるダメージです。

 かといって譲歩すれば、中国本土内の民主派が勢いづき、これまで従順だった一般国民も政治的な自由を求める方向に動きかねない。一党独裁の“共産党王朝”が揺らぎかねないのです。独裁国家特有のメンタリティからしても、譲歩すればボスとしてのメンツが潰れて、習近平では駄目だ、という動きが共産党内部から出かねない。強権に頼ってきた“孤独な独裁者”は、KGB上がりのロシアのプーチンなども同じですが、コワモテをやめれば同時に失墜するという危険を抱えているのです。

 原因を作ったのは「一国二制度」の約束をなしくずし的に反故にしようとした“驕れる独裁者”習近平の方なので、彼に同情するいわれは全くありませんが、その愚かさを認めることはなおさら彼にはできないでしょう。心臓発作でも起こして死んでくれれば、後継者は自分のメンツを気にせずに、香港に大きな自治権を認めることができ、それで騒乱は終息するかもしれませんが、習近平が病気だという話は聞かないので、それは望み薄です。

 結局はケチくさいエゴとメンツの問題で、家庭や学校、職場でも、それが原因で自分の非を認めることができず、トラブルが発生するのは日常茶飯ですが、こういう問題でもそれは同じなのです。韓国の文在寅なども、GSOMIAの破棄でアメリカを怒らせてしまい、これはまずいことになってしまったと内心狼狽しながら、しかし、それを引っ込めたのでは面目が丸潰れになるので、先に貿易規制を仕掛けてきた日本政府がけしからんのだから、それを撤回すれば考え直してやってもいいとカッコをつけて見せるのです。その前に自分がやらかした国際常識に照らして自己チューかつ非常識きわまりないことはきれいに棚上げして、とにかく自分のメンツを保とうとする。一国の外交より、自分のメンツが大事なのです。ここでうかつに譲歩すれば支持率が下がって、今度の選挙で負けてしまうということなのでしょうが、それもたんなる「自己都合」にすぎません。彼の場合、何ら明確な先の見通しもなく悪手を打ち続けるという点で、とくに頭が悪いとは言えるでしょうが、大本の問題はエゴなのです。

 中国の場合、今のあれはそもそも共産主義でも何でもありませんが、元からあの面妖なシステムには無理があるので、どこかで政治的・思想的自由を認めて一党独裁をやめる方向に舵を切らねばなりません。中国のゴルバチョフがいつか出現する必要があるのです(尤も、あれはその後がエリツィン、プーチンと来て、よろしくなかったのですが)。しかし、そんな気配は全くなさそうなので、今回の香港騒乱は軌道修正のきっかけになりうるものですが、かえって中国共産党幹部たちの恐怖心を強めてしまったようです。それゆえに彼らは身動きが取れなくなっている。とくに習近平は根が小心な人であるように思われるので、ここで折れると先々何が起きるかわからないという恐怖心を強くもっているのでしょう。

 これから先どうなるのか、僕のような素人にはわかりませんが、中国共産党政府は人民解放軍(抑圧軍と名前を変えた方がよさそうですが)を入れて正面から制圧することはできないので、今後も汚い手を次々繰り出して反対派の疲弊、解体をはかろうとするでしょう。元が巨大国家権力を相手の戦いなのだから、抵抗派に勝ち目は薄い。しかし、ここまで長引いているということ自体、中国共産党には大きなダメージで、印象戦では勝利に近いでしょう。

 翻って、今の日本は平和で、若者もおとなしい。例の「桜を見る会」がけしからんといった程度の話だけで、大学生たちはシューカツにいそしみ、受験生たちはセンターまであと二ヶ月で、他のことどころではありません。塾教師の僕も、眠そうな顔をしている生徒に、「ちゃんと寝ろよ。寝不足では頭が働かず、勉強の能率が上がらない」なんて言っているのですが、同じ惑星上に生きていても、所違えば意識もやっていることもまるで違うのです。

 これはいい、悪いの問題ではありませんが、これからやってくるであろう激動の時代、無風状態の中で、内向きの意識の中、十代、二十代を過ごした彼らがそれにどう対処するのか、できるのか、いくらか心配になることはあるのです。今の日本の若者は「安全意識」が発達していて、将来の生活設計なども怠りない一方、広い文脈でものを考えることが苦手で、思考の幅が狭すぎると感じることが少なくないので、せめて視野を広くもって、あれこれ考えながら、自分の勉強の意味づけをしてくれればいいのですが。

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