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「政治都合」の民間試験延期、その他の問題

2019.11.03.18:54

 1日、新テストの民間試験導入延期が発表されましたが、その背後には次のようなお粗末な「政治事情」があったようです。

英語民間試験、首相官邸が見送り主導=「身の丈」で危機感強まる

 無責任かつ安易な制度いじりで現場に大混乱をひき起こし、それを反省して根本から見直すというのならともかく、全く無関係な政治事情で一部の延期を発表する。野党も野党で、前から反対していたのならともかく、ここに来て急に張り切るのは、やはり「自己都合」の政治利用のためなのだから、国民の共感は得られないでしょう。

 前回の引用記事とも関係しますが、新たにこういう記事も出ています。

大学入試新テスト 国語記述式にも課題 複雑な採点方法など批判高まる

 記述式は元々採点が難しい。二次の大学別個別試験では、それは各大学の裁量に任されるわけですが、それは大学への信頼関係に基づいていると言えるでしょう。たとえば英語の下線部訳や「~について百字以内で文中に示されている筆者の考えを述べよ」というような問題があった場合、それは努めて正確でなければならないが、個々の単語の訳だけつなぎ合わせて、全体としては意味不明の文章をつくり上げても、ほとんど点はもらえないよ、と僕は教えています。アルバイトを使って大量の答案を処理する模試では、便宜上これとこれとこれ、というふうに要素の指定がマニュアルにあって、それぞれ一つが何点、というふうになっているのかもしれませんが、本番では全体としてまともな文章になっているかどうかが重要視されるでしょう。それは当然のことだと、僕は思います。そしてそれについては大学側を信頼してよい。採点が甘い厳しいの差は大学によってかなりあるようですが、それはその大学の受験生のレベルにもよるでしょう。

 しかし、学力も極端なまでにマチマチの50万人分の記述式答案を短期間で採点し、それに「公正さ」を担保しようとなると、話はまた違ってくる。だから、前回引用した筑駒生が指摘するような、次のような問題が出てくるわけです。

<一文目は「確かに」という書き出しで、具体的な根拠を二点挙げて、部活動の終了時間の延長を提案することに対する基本的な立場を示すこと。二文目は「しかし」という書き出しで、部活動の終了時間を延長するという提案がどのように判断される可能性があるか、具体的な根拠と併せて示すこと。(筆者注:課題文は、架空の学校の部活動について)>
 設問条件をガチガチに固めておいて、与えられた文章、資料から必要な情報、キーワードを抜き出せるように誘導して、採点するわけです。これのどこが思考力を問う問題なのでしょうか。文科省は資料を読み取り、読解力を試すと言っていますが、しょせん、ことばの抜き出しにすぎません。このプレテストを見て、ある国語教師は「全文を読まず、斜め読みでも解答できる」と指導しているぐらいです。センター試験の選択問題を記述式にしただけの問題であり、採点はこちらのほうがかえって難しくなります。


 要するに、形式が記述になっただけの、ほとんど意味のない試験なのです。それなら従来のマークオンリーの問題の方がよほどすっきりする。通常の二次の国語の試験に見られるような、思想や文学の内容理解力と国語表現能力を問う問題ではなく、題材も実用重視で、「そんなクソ面白くもない架空の問題にいちいち頭を使わせるな」と言いたくなるような退屈なシロモノでしかありません(その頭の使い方も低級パズルを解くときのそれでしかなく、それならAIの方がずっとうまくやるでしょう)。

 これは「工夫次第で今後よくなる」という性質のものではありません。短期大量採点のため多数の大学生アルバイトを動員し、かつ「公正」を期さねばならない以上、特定の鋳型に流し込む半機械的作業という性質は消せないだろうからです。教育再生実行会議の「有識者」センセイたちが「記述式にすれば主体的な思考能力と表現力を問う試験になる」「そうだ、そうだ」というような安易な発想で提案して、文科省のお役人が「素晴らしいお考えですね」と揉み手で相槌を打ち、しかし、問題を作る側が「公正な採点」を念頭に作ると、こういう何のための改変かわからないようなものができてしまうわけです。ほとんどマンガに近い。

 だから四の五の言わず、センターそれ自体をさっさと廃止してしまえ、というのが僕の意見なのですが、日本のお役人や教育関係者の旧習墨守の性格上、それはできないでしょう。いったん作ったものは暴力革命でも起きないかぎり潰せないという社会的惰性の問題もあるので、大学入試センターも潰せない。それなら、今のセンター試験を同じマークでも問題の作り方を工夫しながらより「暗記重視でない」性質のものに変えていくぐらいがせいいっぱいで、そうすれば今より悪くなることはない。

 大方の受験生もそれなら納得するのではありませんか。ちなみに、韓国は日本以上の学歴社会で、「受験戦争の過熱」が以前から社会問題になっており、それを緩和するための方策として推薦入試が拡大され、今は推薦入学組が全体の7割に達している(最難関とされるソウル大は何と8割近い)という話です。それをあちらでは「随時募集」と呼ぶのだそうで、この前のチョ・グク問題でも、娘が二週間どこかの大学にインターンに行っただけで専門的な医学論文の第一著者になり、それが効いて名門大の推薦入試に合格したのだと報じられました。こういうふうに、推薦入学を狙う生徒は「他とは違う取柄(スペックと呼ぶらしい)」を競うことになって、それがあの法務大臣の娘の例に見られるような「不正(他にも大学教授が自分の子供や親戚の子を共著者にして箔をつけさせた、などという見え見えのケースもある由)」の温床になっているわけです。日本も推薦入試で大学に進学するケースが増えていますが、ほどほどにしないと今度はおかしな方向で競い合うようになって、入試の不透明さが増し、かつ大学生の学力レベルも下がってしまうでしょう。今の韓国の学校では日本のかつての日教組と似た左翼教組が猛威を振るっており、しばらく前には高3生がその度の過ぎた「反日」思想強要への抗議を表明したというニュースもありました。推薦では内申書(韓国では「学生生活記録簿」という)重視なので、学校の先生たちの覚えが悪くなるとアウトです(一般入試でも、日本のセンターに当たる「大学修学能力試験(但し、センターより難易度が高い)」があって原則大学別の学力二次試験はなく、面接や内申が重視されるようだから、軽視できない)。大部分の生徒はそれを恐れて何も言えないが、この生徒たちは時期的にその記述が終わったので、後輩たちのためにも黙っているべきではないと思ったと抗議声明を出したので、その心映えは立派なものですが、日本の場合、一般入試では内申書はたんなる添え物にすぎず、事実上合否には無関係だから、生徒が教師の従属物にならずにすむので、その意味でもよいシステムだと言えるでしょう(ついでに付言すると、日教組はそのイデオロギー的偏向ゆえに、教え子世代にかえって左翼嫌いを多く生み出すという皮肉な結果を招きました。そして力を失ったのですが、韓国の反日左翼教組も同じ運命を辿るかもしれません。だとすれば、今の子供たちが成人し、社会を担うようになった頃には、異常な「反日種族主義」も力を失って、歴史の冷静な見直しも可能になり、日韓関係はもっと良好なものに変化するかもしれません)。

 受験戦争緩和の目的で推薦を拡大したものの、韓国ではその推薦の「不公平感」に対する不満が高まって、今度は一般入試の比率を高めようという方向に議論が進んでいるようですが、こういうふうに事はかんたんではない。入試制度を変えるときは全体的視野が必要なので、部分だけ見てある箇所をいじると、それによって今度は別のより深刻な問題が発生し、受験生はさらに疲弊し、不公平感も増すといったことになりかねないのです。ヤブ医者に体をいじられるとよけいに悪くなってしまうのと同じなので、今回の件もその「ヤブ」ぶりが明らかになっているのだから、一から考え直すべきでしょう。

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