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「チョ・グク事態」の今後

2019.09.20.17:59

 この「…事態」というのは、韓国の新聞記事の日本語版を読んでいると割とよく見かける表現ですが、日本語だと「…問題」に、「非常事態」のニュアンスが加わった感じでしょうか。ともあれ、韓国ではこの「タマネキ法相」に対する非難が、いかにも「火がついたら止まらない」韓国らしく、日増しに激しさを増しているようです。次のかなり激烈な弾劾文は本日付の中央日報の社説です。

墜落する文大統領の支持率…独走と独善から抜け出せよという警告だ

 青瓦台(チョンワデ、大統領府)をはじめ、与党では「チョ・グク政局」から一日も早く抜け出したい気持ちが強いだろう。だが、チョ長官への辞退要求は野火のように広がる模様だ。「チョグク氏の任命で社会の正義と倫理が崩れた」という声明に署名した全国教授の数字が日々急速に増加している傾向だ。昨日はソウル大学や延世(ヨンセ)大学、高麗(コリョ)大学の学生たちがチョ長官の辞退を促すろうそくを同時に手にした。
「文在寅大統領の傲慢と独善に厳しく警告する」という時局宣言文は法曹界に広がった。「最小限の法曹人の資格すら備えていないチョ・グク法務長官の任命に羞恥心と侮辱感を越えて込みあげる怒りを耐えられない」というのが宣言文の趣旨だ。複数の世論調査で立証された一般市民の民心も少しも変わっていない。
 常識通りならチョ長官はすでに退くべきだった。この政権発足後に起きた数多くの要人惨事の責任者であり、毎日のように明るみに出ている偽善や虚飾で彼が法務長官職についてはならない理由があふれている。何よりも朴槿恵(パク・クネ)政府は側近一人のせいで没落したが、長官一人のせいで政権が大きな危機に追い出されたことだけを見てもそうだ。だが、知らん顔する長官に「我関せず焉」の政権だ。


 この社説はついでに、「莫大な税金をつぎ込んで急造した高齢者アルバイトが増えたことを『雇用状況が量と質の両方で明確に改善されている』と包装するのは現実から目をそらした不通だ」と、文の「すべてはうまく行っている」という経済政策に関する“超ポジティブ”な自己評価、要するに大嘘を弾劾しているのですが、朴槿恵前大統領によく用いられた「不通(たしか読みはプルトンだった)」という非難用語が復活しているのも興味深い。

 同じ中央日報の別の記事によれば、

 この日(9/19)「社会の正義を望む全国教授会」は青瓦台(チョンワデ、大統領府)の前で記者会見を行って教授時局宣言署名運動の中間発表を行った。司会を務めた全南(チョンナム)大学歯医学専門大学院のイ・ウンジュ教授は「教授会は一週間前に時局宣言文を作成して署名を受け始め、わずか6日で290大学3396人の前・現職教授が参加した」と明らかにした。教授会側は時局宣言に参加した教授のリストは本人確認作業を経た後、来週公開する予定だ

 として、「時局宣言」というのはいかにも韓国らしく大げさですが、大学の先生たちも加わって非難の大合唱になっているのがわかるのです。こうした学生・教授たちの行動は、韓流歴史ドラマによく出てくる儒生たちの「王様、どうぞ王命を撤回して下さい!」という直接陳情を思い出させます。

 しかし、韓国の場合、こういうのも「バスに乗り遅れるな」心理がかなり強く働いていそうなので、彼ら教授先生たちが皆「まとも」だからそうしているのだとはかぎらない。9/18付のNEWSポストセブンの記事で、呉善花氏は、インタビューに答えてこう述べています。

曹国法相と韓国社会 「虚言と欺瞞」はなぜ蔓延するのか

──韓国は超学歴社会で名門校に入り、財閥企業に就職できなければお先真っ暗ともいわれているが。

呉:教育に関する不正が多く見られるのも、韓国特有の特徴かもしれません。2015年11月、韓国の大学が、過去に例を見ない一大スキャンダルに揺れ動きました。全国50大学の教授200人が、本の盗作で軒並み検挙されたという前代未聞のスキャンダルでした。この200人の教授たちはみな、他人が書いた本を、なんと表紙だけすり替えて自分の著書として出版していたのです。その動機は「研究者としての実績を上げたい」という出世欲です。韓国の私立大学では、国内で本を1冊出すと教授の研究実績表に5点加算されるからです。

 2018年1月には、あきれ果てた論文不正事件が起きています。韓国政府が大学等の研究者7万人の発表した論文を調査した結果、子どもや親戚を共著者として記した論文不正が29大学で82件あったことが発覚しました。ソウル大学や延世(ヨンセ)大学などの著名な学校も入っており、なかでも、ソウル大学での1人の研究者は、数十本の研究論文すべてについて、まだ高校も卒業もしていない息子を共著者として記していました。なぜこんなことが起こるかというと、論文の共著者とすれば、その者は論文作成に貢献した実績があることになり、有名大学への進学がかなり有利になるからです。これは氷山の一角であり、海外留学の際にも不正が見つかり、2016年6月には米国留学に絶対必要な試験であるSATも開始直前に中止されたこともあります


 唖然とさせられる話ですが、これが本当だとすれば(本当なのだと思いますが)、チェ・グク氏の娘の「高校時代の二週間のインターン体験で、専門的な医学論文の第一著者」というインチキは、韓国では親が有力者だとべつだん驚くべきことではないのだということになります。「子どもや親戚を共著者として記した論文不正が29大学で82件あった」というのは、多くが「随時募集」と呼ばれる韓国の大学推薦入試で有利な箔をつけるために行なわれたのだろうから、この種の不正は常態化しているわけです(他にも色んな不正があるようですが)。チョ・グク氏とその妻にとっては、「両班仲間でふつうにやっていることをやっただけ」なのに、タテマエではいけないことになっているからといって、何でそんなに非難されなければならないのか、わからないというのがホンネでしょう。

 上の段落の、「この200人の教授たちはみな、他人が書いた本を、なんと表紙だけすり替えて自分の著書として出版していたのです」という話からすれば、多くの教授たちはわが子以前に、自分の保身と出世のために盗作を行ない、それを恥としていないのです。こういうのは三流大の先生にはとくに多いということなのかもしれませんが、その人数の多さには度肝を抜かれます。

 上の「時局宣言文」に署名した「290大学3396人」の先生たちは清廉潔白なのかも知れませんが、自分はバレていないから「高潔アピール」するためにそれに署名したという教授も、韓国両班の特性からして、きっとかなりいるだろうと僕は思うので、文在寅の激しい日本批判と、その裏返しの自己批判の完全な欠落を示す臆面もない自画自賛(長くなるので書きませんが、経済政策のみならず、彼は自分が「自由な言論の守り手」であるとまで言っているのです! 朝鮮日報に対するあの露骨な恫喝などは、では何なのか?)からしても、「自分のことはきれいに棚に上げて、他人のことのみ非難する」のは、韓国の知識人や政治家には珍しくないメンタリティであるように思われるのです。

 僕はこのブログで何度も「韓国は李氏朝鮮時代から何も変わっていない」と書いていますが、そのあたりのことにも、呉氏は触れています。

──それでは曹国氏の娘の件も全く不思議ではないと。

呉:韓国は世界的に見てもかなりの不正・腐敗大国ですが、その前身の李朝はといえばそれどころではなく、もはや不正・腐敗が慣習として根付いているといっていいほど酷いものでした。李朝末期には多額の金銭と有力な権力者のツテがなくては、官職にありつくことが事実上不可能でした。それどころか、管理の資格を得るための試験である科挙(高級官僚登用試験)の合否までが、金とツテのあるなしで大きく左右されたのです。
 こうした傾向はとくに18世紀から盛んになりはじめ、国王自らが官職、官位、学位(科挙及第資格)を公然と売ることが行われました。それに大臣たちが倣い、しだいに当然の慣習として根付いていったのです。今回の曹氏の一件も、韓国の歴史を遡れば、さもありなんといわざるをえません。


 見解が一致した(笑)。安倍の加計学園獣医学部新設ゴリ押し事件など、韓国社会的な不正のレベルに照らせば、「微罪」でしかないと言えそうです。僕は当時、それを「韓国並の情実社会化」だと批判しましたが、認識が甘すぎたようです(だからといって、「韓国基準」で居直られては困りますが)。

 そういうわけで、「チョ・グク事態」なるものは、韓国社会のありようからすれば本当は「ありふれたこと」だったわけですが、冒頭の中央日報の社説にもあるように、「文大統領は就任辞で『機会は均等で、過程は公正で、結果は正しい社会』を約束した」がために、「裏切りだ!」という若者や庶民の怒りを招き、韓国のいつものパターンで、「正義の旗は今はこっちだ」ということで、両班たちも白黒問わず、それに声を合わせ始めたのです。韓国の野党(保守派)はもちろんそれを非難していますが、彼らは「腐敗まみれ」だと一般に思われているので、若者の間ではとくに「おまえたちの非難には同調しない」という声が根強く、思うように野党の支持率は上がってくれないようです。

 こうなってくると、文政権の逃げ道は一つしかない。それは言わずと知れた「反日」で、今、韓国はWTOに提訴していますが、「日本に勝った!」という宣伝材料を何としてでも手にして、そちらで「文政権すごい!」の評価を上げて、支持率の低下を食い止めるしかないのです。それも難しいとなると、今度は手の平返しで、「日本との関係修復」を模索することもありうる。それは中道層の支持を取り付けるためで、「現実的な外交能力」をアピールしようとしてですが、いずれにせよ、文政権のそれは「自己都合」から出た方便にすぎないので、そこに誠実さは全くないと見ておくべきです。

 ひどい言い方だと思われる読者がいるかもしれませんが、これは真実です。あの政権がこれまでやってきたことを総体的に見れば、これは言い過ぎでも何でもない。従軍慰安婦問題でも、徴用工問題でも、彼らは日本と結んだ約束を一方的に反故にしたのですが、それは一部の日本左翼が誤解しているような、慰安婦や徴用工の人たちに対する強いシンパシーのなせるわざなどでは全くなくて、保守の朴親子政権や日本に対する憎悪と、彼らの異常なイデオロギーのためなので、それが外交関係上、何を意味するかなどは全く考えていなかったのです。むろん、日本人一般の心理など、顧慮しているわけがない。福島のあの原発事故まで政治利用しているので、その対応の薄汚さは限度を超えている。他方、北朝鮮への恋慕は熾烈なもので、あの異常な独裁国家に呑み込まれての「統一」が彼らの隠し持った「夢」だと見て差し支えないでしょう。中国の異様な「共産党一党独裁下での資本主義」がたぶん彼らの現実的モデルになっているので、独裁を正当化する道具にすぎなかった金日成の「主体(チュチェ)思想」こそが彼らの理想なのです。

 要するに、この政権は初めから「現実離れ」していたので、今回の「チョ・グク事態」であらためてあぶり出された韓国社会の常態化した不正と腐敗に対する絶望感の裏返しで、韓国民は自分たちにとっても危険極まりないこういう政権を誕生させてしまったのです。しかし、悲しいかな、実態は何も変わっていないことが暴露された。看板が右から左に変わっただけの話で、しかも文政権は経済運営に完全に失敗し、外交関係も破綻させ、孤立に追い込まれかねない事態となったのです。このまま素直に(?)潰れてくれればまだしも、任期いっぱいまで粘られると、延命と人気挽回のために次々ロクでもない策動をして、日本としても厄介事が増えるばかりになるでしょう。

 先にも書いたように、文政権は早く「反日カード」を使い過ぎてしまったのと、安倍政権の強硬対応のために、それでは成果が上げられないと見て、今後は戦略を変え、「融和」ポーズを見せるようになるかもしれません。その兆しはすでにありますが、日本が全く応じないと、「日韓関係悪化は日本政府のせいだ」と非難して、自分の立場をよくするのに利用するのです。彼らにとって日韓関係は初めから「関係」ではなく「手段(方便)」でしかないのですが、韓国は宣伝は巧みなので、強硬一辺倒で行っているとはめられてしまう。日本政府はそのあたりよく考えて対応しなければならないので、今の韓国政府に誠実さはないのでそのへんは信用してはいけませんが、第三者の立場から見て良識的と解される対応を取らないと、国際社会的に分が悪くなってしまうので、賢く対応しなければならないのです(どのみちまともな関係は次の政権になってからでないと作れませんが)。

 チョ・グク氏は辞任に追い込まれるのかどうか、しばらくはそれが韓国政局の焦点になりそうですが、いまだに一定の支持があるというのも、上に見たような韓国社会の李氏朝鮮的腐敗体質が続いていて、ホンネからすればそれは「ありふれたこと」だからなのでしょう。野党も、頭丸刈りパフォーマンスなんかしても、元々がそのズブズブの腐敗ぶりが嫌われて支持を失ったので、「おまえらが言ってもなあ…」というところが韓国民の間にはあるのかもしれません。お粗末な話で、前に「朝鮮民族ほど為政者・支配層に恵まれなかった民族も珍しい」と書きましたが、今もそれは同じなのです(李氏朝鮮など、それで民衆反乱が起きて対応できなくなると外国の軍隊に頼って鎮圧しようとしたので、無責任極まりないのですが、そういうことを学校の歴史でちゃんと教えているのですかね?)。

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