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韓国と日本の「民主化」運動の時期的なズレが生み出した問題→文政権のおかげで韓国の行き過ぎた「反日」は終わる?

2019.09.09.15:50

 韓国の文在寅大統領は大方の予想どおり、チョ・グク氏を法相に任命しましたが、彼はたいへん「読みやすい」人物です。元真面目なガリ勉特有の硬直した反応を示すので、状況の多様な側面や後先の面倒をあれこれ考慮して、臨機応変対応するということができない。自分の頭の中にある少数のファクターと、自分の「信念」以外は存在しないので、そのポイントを押えさえすれば、その対応は事前にたやすく予想できるのです。独善性の強い、硬直した原理主義者というのはつねに傍迷惑なものですが、わかりやすいのはわかりやすい。

 以上は無関係な前置きで、タイトルにした問題です。これは、あらためて考えてみると興味深いものです。韓国の場合、学生運動、「民主化運動」は1980年代になってやっと始まり、権力による弾圧や人権侵害がクローズアップされるようになったのですが、例の慰安婦問題や徴用工問題も、90年代になってから、この文脈で語られるようになり、同時に「政治利用」されるようになった。つまり、それは強烈な左翼イデオロギーによって歪められた歴史認識の文脈においてとらえられるものとなったのです。朝日の「誤報問題」などもありますが、他にこの種の問題の日本の研究者(在日朝鮮人学者も含む)には若い頃マルクス主義の洗礼を受け、それが考え方の基本になっている人が少なくなかったので、そのバイアスがかかった「研究」を取り込んで、さらに尖鋭化することになったのです(それを「修正」した成果は、彼らには不都合なので、採用されなかった)。

 日本の場合、左翼学生運動は60年、70年の日米安保条約改定に反対する運動として盛り上がったので、韓国よりずっと早かった。当時は左翼イデオロギー露わな労働組合や日教組が強かった時代でもあって、55年生まれの僕も高校時代、授業そっちのけで異様に偏った政治談議を重ねる、日教組の活動家の教師と喧嘩になった記憶がありますが、そういう生徒でも、毛沢東の伝記(今思えば、それは彼を美化するひどいものだったのですが)など読んで、感銘を受けていたのです。70年安保の後は、左翼学生運動は急速に下火になっていった(その断末魔の叫びのような、連合赤軍の浅間山荘事件が起きたのは、僕が高校生のときでした)ものの、70年代半ばになってもまだ頑固なマルクス主義者はかなりいて、教条主義的でまともな議論が成立しなかったので、僕には「宗教」としか思えませんでしたが、大学生協の書籍部の前には、まだ「朝日ジャーナル」専用の自動販売機が置かれていたくらいなのだから、左翼は元気だったのです(あれは今で言うと『週刊金曜日』でしょうか)。

 これは80年代になってもまだそうだったので、今から考えると笑い話ですが、社会党から自民党に移って、大平首相の急死でタナボタで首相になった鈴木善幸という人物がいました。彼は81年5月、アメリカのレーガン大統領と会談し、共同声明を出して鼻高々だったのですが、そこに、「同盟関係」という文言が入っていたのを、朝日新聞に「この同盟は軍事同盟を含む」と書かれて顔面蒼白となり、一転、あれは外務省の官僚が勝手に作文したものだと言い出した。これに憤慨した外相の伊東正義が辞任する、という騒ぎになったのですが、今なら考えられないことでしょう(同盟が「軍事」の意味合いを含んでいるのは、あたりまえと解されるからです)。

 いつからそうなったのか、その軌跡を辿った研究を僕は寡聞にして知りませんが、その後、バブル崩壊を境に経済が沈滞する中で世論の「右旋回」が顕著になり、「日本会議」的な右翼愛国思想がかなりの浸透を見る今のような状態にいたったのでしょう。要するに、韓国で民主化・学生運動が始まり、左翼反日ナショナリズムが大きな勢力になるのと時を同じくして、日本では左翼が衰退して、右翼ナショナリズムが勢力を増し、その対立軸が鮮明になったのです。

 左翼学生運動は経済成長と連動するのか? これも興味深い点です。一般に、わが国の高度経済成長時代は1955年からオイルショックが起きた73年までとされています。60、70年安保闘争はこの中にすっぽり入っているのです。韓国の経済成長は、あの国の民主化運動世代が憎悪してやまない朴正熙の軍政時代にスタートしましたが、いわばある程度の社会基盤とゆとりができたからこそ「民主化」要求も出てきたので、その後、韓国が「先進国」と自認するようになるまでの経済発展と手を携えて、左翼運動も成長したのです。「親北」「反日」イデオロギーが、むろんその左翼思想の中には含まれる。

 日本と韓国の違いは、日本では、わけのわからない村山政権なんてものはありましたが、左翼の、とくに過激派と言ってよい勢力が政権を取るということは決してなかったことです(あの民主党政権も政治イデオロギー的には「中道」でした)。しかし、韓国ではそれが起きて、それが廬武鉉政権を悪くヴァージョンアップしたような今の文政権です。正気の沙汰とは思えないあの北朝鮮べったりの姿勢なども、彼らの左翼民族主義的イデオロギーからすれば、あちらに朝鮮半島国家としての「正統性」があるのだから、それも当然だということになる。昔の日本の左翼が共産主義ソ連や中国を讃美し、その醜悪な裏面が外部に知られるようになっても、長くそれを否認していたのと同じで、彼らには北朝鮮のきれいごとにすぎない「主体思想」なるものが何より好ましく思われるのです。きちがいじみたその非人間的な独裁の実態は見ない。イデオロギーに頭がやられてしまった人間というのは、そういうものです。日本に対しては逆で、とことん悪者にする。イデオロギーが史実に優先し、むしろイデオロギーに合わせて史実は書き換えられるべきだとするのです。資本家や支配層はすべて悪で、労働者・人民は無条件に善だとして、「階級闘争史観」で歴史を書く歴史学者は、左翼全盛時代は日本にもかなりいたはずですが、それの民族対立ヴァージョンです。

「南北統一すれば日本に勝てる」という文在寅の妄想はマンガですが、日本の左翼が辿ったのと同じ運命を韓国左翼も辿るとすれば、今がピークで、歴史認識なども、今後は変わってくる可能性は大いにあります。左翼過激派が政権を取ると、外交が滅茶苦茶になるだけでなく、経済政策も誤って、若者の「ヘル朝鮮」の声がますます大きくなる。文政権の取り巻きたちは韓国経済が一番調子のいいときに当たっていたのが、今はそうでなく、彼らが「悪いのはあの日本だ!」と外に責任転嫁し続けても、「何か違うのではないか?」と疑惑をもつようになり、『反日種族主義』のような本も売れて読まれるようになると、今まで自分が受けてきた歴史教育も相対化できるようになって、洗脳が解け始めるのです。

 日本で左翼が若者の支持を失っていったのも、竜頭蛇尾のあの反安保闘争に、共感がもてない日教組教師の言動、スト連発の国鉄(現JR)の左翼過激派労組(幹部たちは「労働貴族」と呼ばれていた)など、いくつもの要因があります。僕などもその一人でしたが、彼らの活動が逆効果になって、かえって「左翼嫌い」を増やしてしまったのです。僕は批評家の小林秀雄と哲学者の田中美知太郎のファンでしたが、どちらも左翼イデオロギーに辛辣な見方をし、田中美知太郎などは政治的な発言も多く、明確な保守派の論客でした。学生運動世代とは違って、サルトルなども、批判の対象として読んだ記憶しかない。エドマンド・バークの『フランス革命の省察』などは好きで読んでいたから、僕自身はどちらかと言えば右翼(しかし、自民党は嫌い)だったわけです。

 その後、僕自身は左翼にもいくらか宥和的になり、硬直したイデオロギー的側面を除けば、そちらにも学ぶべきことが多いのに気づいたのですが、韓国でも同じような「反動」は起きうる。今の韓国の大手労組グループは、日本のかつての国鉄労働組合や日教組とよく似ているし、左翼市民団体、それに支えられている文政権は、イデオロギー亡者の集まりと言ってよく、日本の左翼知識人やマスコミが支持を失っていったのと同じプロセスを今後辿りそうだからです。公的な発言と私生活上の行いに差がありすぎる偽善反日左翼学者の典型、チョ・グク氏の法相就任で、そのあたりはいよいよ疑わしいものとなり、「左翼離れ」のきっかけとなるかもしれません。

 だとすれば、あと二、三十年我慢すれば、韓国の歴史認識ももう少し公平な、マシなものになって、日韓の宥和も可能になるかもしれない。こんな嘘の歴史を信じ込んでいたのでは駄目だということになって、歴史教科書自体がいい方向に書き改められるのです。病的な「反日」の度合いはそれに応じて薄まる。むろん、それは日本の「ネトウヨ史観」とは一致しないでしょうが、そこは問題ないのです。非現実的な「日本人性善説」に基づくそれは、今の韓国反日左翼とベクトルが反対なだけで、同質のメンタリティの産物なのだから。

 北朝鮮の反応からしても、「南北統一」は望み薄のようなので、文政権は日本やアメリカとの関係を危機にさらし、中国やロシアの策動の余地を増やし、東アジアの国際政治状況を不安定化させるだけの「成果」(それが傍迷惑なものであることは言うまでもありません)しか挙げられないでしょうが、こういう言い方が許されるとするなら、露骨な「裏表のない反日」によって、かえってその妥当性についての疑問を韓国民に起こさせる可能性があるということです。そして経済失政もこのまま続けば、八十年代以降の「民主化運動の成果」としての、いわば完全な「反日左翼政権」が自国の未来にとって何を意味するかを韓国の一般国民は理解するようになり始める。それは劇薬、一種のショック療法として作用し、韓国の人たちは極端から他の極端に走る傾向があるので、そこは心配ですが、良識的な判断ができるなら、おかしな「北朝鮮幻想」と一緒に「反日」という熱病も冷め始める可能性があるということです。

 文政権は、つまり、その意図とは反対の結果を生み出すということで、その意味では結果的に日本にとっても「よい政権」だったということになるかもしれません。反日を煽るだけ煽っている御用新聞のハンギョレなども、一緒に信用を失うわけで、「文在寅ショック」のおかげで韓国社会は「成熟」へと向かうのです。これを僕は全くの皮肉で書いているわけではないので、そうなればよいのだがと思っています。

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