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山口二郎・法政大教授のハンギョレへの寄稿文

2019.07.16.12:43

 誰がどこの国の、どういうメディアに寄稿しようと、それは自由です。だからそのことについてとやかく言う気は僕には全くありませんが、次の文には首を傾げてしまいました。

[寄稿]今こそ国際協調を

 僕に引っかかったのは、次の箇所です。

 日本政治の最大の問題点は、主観が客観を駆逐している点にある。一国の内部でも世界においても、様々な人間が世の中を構成していることを認識することが政治の大前提である。自分とは違う見解を持った人間の存在を認めないというなら、そんな考えの為政者は独裁政治を敷くほかない。各国が自国中心主義に走る時、世界の緊張は高まる。しかも、自国中心主義はその国の為政者の威信を高め、人々の支持を、少なくとも短期的には高める効果を持つ。主観的な自己満足の追求は民主主義と平和の敵である。

 だからこそ言わなければならない。選挙に向けて自国中心主義を煽るのは、責任ある政治家のすることではない。この参議院選挙では、国際協調主義か偏狭なナショナリズムかが問われなければならない。日本の第2次世界大戦後の民主政治は、日本が自国中心主義でアジアの秩序を壊したことに対する反省から出発している。国際協調を目指す冷静な声を日本で持続しなければならない。


 ご説ご尤もですが、「日本政治の最大の問題点は、主観が客観を駆逐している点にある」とのたまうが、「韓国政治の最大の問題点は、主観が客観を駆逐している点にある」というのが、今回の一連の騒ぎのそもそもの発端ではないのか? 「国際協調主義か偏狭なナショナリズムかが問われなければならない」「自分とは違う見解を持った人間の存在を認めない」というのも、今の文政権に一番よく当てはまることです。ところが、それについては何も触れられていない。なぜなのか?

「選挙に向けて自国中心主義を煽るのは、責任ある政治家のすることではない」と言うが、僕個人は参院選でも自民や公明には投票しません。そこははっきり区別しているので、野党の支持者でも、「今の韓国政府のあれはちとひどすぎる」と思っていて、だから今回の日本政府の対応は支持するという人は少なくないでしょう。

 山口次郎氏のこの文章には、しかし、そこは伝えず、韓国政府の対応に対する批判は一切ない。ハンギョレ読者を喜ばせるものだけで、あたかも日本の野党支持者は皆文政権の横紙破りを支持しているかのようです。事実と全く違う。韓国側の誤解を助長するだけですが、そうなると事態はいっそうこじれることになる。

 こういう露骨な「党派的言論」をなぜするのか? 言論人は「国益」を第一にすべきだなどというつまらないことは僕は絶対に言いませんが、公正な議論をするなら、自国政府と同じく他国政府の対応も批判すべきでしょう。それが「学問的態度」というものです。それとも、文政権の一連の無責任、道義に反した対応には何の問題もないとでも言うのか? 日本の左翼が説得力を失ったのはこういうところが露骨だからで、それに対する反省が何もないというのは、僕には残念なことです。党派性が露骨で、「為にする議論」なのが見え見えだから、言っていることに一部の真実は含まれていても、信用を失うのです。ベクトルの向きが反対なだけで、ネトウヨの議論とレベルは一緒か、それ以下です。頭が悪すぎると言われても仕方がない。この先生、一体、法政大学ではどういう講義をしているのか? 今の韓国政府の対応には何の問題もなく、悪いのは「極右」の安倍政権だけなのだと、説得力豊かなレクチャーをして下さっているのでしょうか?

 この寄稿文の型にはまりすぎた議論からしても、とてもそうは思えませんが、こういう程度の低い言論は、「そんな馬鹿な話があるか」という感情的反発を招いて、かえって安倍政権を盤石ならしめ、あわせて韓国内の「悪いのは日本政府で、日本人でも進歩的な人は今の文政府を支持している」というとんでもない誤解を強化するだけです。右も左も関係なく、あまりにひどすぎると日本人の大多数が怒っているのだということは伝わらない。

 ネトウヨ連中は朝日と朝日的文化人を盛んに攻撃しますが、こういう党派根性丸出しの文を読むと、それが「正しい」ように見えてしまうから不思議です。せっせとオウン・ゴールを連発して、日韓対立や日本政治の「右旋回」をアシストしているのだということが、彼らにはどうしてわからないのでしょう? 僕にはそれが不思議です。

 それとも、山口教授は例の慰安婦合意の一方的破棄や、日韓請求権協定の反古が道義にもとるどころか、正しいことを詳しく説明した文章をどこかに書いておられるのでしょうか? 皮肉でなく、どこかにそれがあるのなら、お教えいただきたいと思います。僕はそれに反論を試みたいと思うからです。

 それとも深謀遠慮に富む山口教授は、暗に次のような読み替えをさせるつもりでいたのでしょうか? ハンギョレの読者にはそれは無理だと思いますが、最初の部分を次のように変えれば、それはそのまま韓国・文政権に対する的確な批判になるからです。

 韓国・文政権の最大の問題点は、主観が客観を駆逐している点にある。一国の内部でも世界においても、様々な人間が世の中を構成していることを認識することが政治の大前提である。自分とは違う見解を持った人間の存在を認めないというなら、そんな考えの為政者は独裁政治を敷くほかない。各国が自国中心主義に走る時、世界の緊張は高まる。しかも、自国中心主義はその国の為政者の威信を高め、人々の支持を、少なくとも短期的には高める効果を持つ。主観的な自己満足の追求は民主主義と平和の敵である。

 これは全く正しいと、韓国でも朝鮮日報や中央日報にはほめてもらえるでしょう。彼らはかねて繰り返し、それを指摘しているのですから。お粗末な安倍政権より、文政権はもっとひどいと、僕は思っていますが、山口教授は思わないのでしょうか?

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