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安倍‘忖度’政権に相応しい新元号

2019.04.01.14:20

 新元号が「令和」に決まったそうで、僕個人はふだん西暦を使って元号は使わないので、役所関係の文書で強いられる時以外は「関係ない」のですが、第一印象は、「何かやけに冷たい感じのする言葉だな…」というものでした。

 ネットの「漢字ペディア」によれば、「令」とは、

①いいつける。命じる。いいつけ。「令状」「命令」 ②のり。きまり。おきて。「訓令」「法令」 ③おさ。長官。「県令」 ④よい。りっぱな。「令色」「令名」 ⑤他人の親族に対する敬称。「令室」「令嬢」

 といったものです。冷たい感じがするのも道理です。おそらくこの④の意味を強調したいのでしょうが、①②③の意味の方が用例としても断然多く、④は影が薄い(上に、⑤もそうですが、「令名」だの「令嬢」だの、いずれも儀礼的で固い)。菅官房長官が万葉集から採ったものだと記者会見で説明していましたが、全体に万葉のおおらかな雰囲気ではない。「上からの命令には文句を言わずに従って、和を保て」と言われているみたいで、あまり愉快ではないのです。実は僕は「平成」も気に入らなくて、当時「これは平らに成る、つまり皆が揃って凡庸になって人間が平準化されるという意味なのだろう」と、当時勤めていた塾の月例通信に連載していたコラムに皮肉を書いた記憶があるのですが、ある意味でこれは当たったことになるでしょう。それは万事に創意や改革意欲の乏しい、停滞が続く「失われた三十年」になったのですから。

 もう一つ、僕がすぐ連想したのは論語の「巧言令色、鮮矣仁」という言葉でした。これは昔読んだ貝塚茂樹先生の読み下しでは、「巧言令色、鮮(すく)ないかな、仁」となっていて、今本棚の奥から引っ張り出してそこを確認すると、「弁舌さわやかに表情たっぷり、そんな人たちに、いかにほんとうの人間の乏しいことだろう」という訳が添えられています。

 解説文を読むと、「そのことばつきは孔子にしては激烈をきわめている。巧言令色で君主にとりいり、また甘い弁舌で世人を迷わせる佞人(ねいじん)が多かったので、孔子はずいぶん腹を立てていたとみえる。しかし、巧言令色のなかにもまったく真実が欠けているとはいわないで、『鮮(すく)ないかな』としたところに、孔子の心の広さがあらわれている」という、貝塚先生一流の含蓄に富む解釈になっているのです。

「令色」の箇所は上の訳文では「表情たっぷり」と訳されているわけですが、コトバンクでは「相手に気に入られようとして顔色をつくろうこと」となっています。要するにこれは、忖度して権力者の顔色をうかがい、お愛想たっぷりの顔をして見せることです。それによって「和」がもたらされるというのがこの「令和」の意味するところだとすれば、安倍政権には好都合というか、うすら寒い雰囲気が漂うのです。

 菅官房長官に記者会見でツッコミを入れて、すっかり嫌われてしまった東京新聞の望月衣塑子記者などは、今後、「あなたの存在自体が新元号に反しているのだ!」なんて官房長官に叱られるかもしれません(産経、読売、フジテレビなどを見習いなさい!)。「元号違反法」なんてものがそのうち新設されて、馬鹿な独裁者と「巧言令色」のゴマスリ政治屋、官僚、マスコミ、権力にヨイショして自分たちに好都合な政策・法令を実施させようとする企業家たちの天下となり、もうすでにそうなっているとも言えますが、それをとやかく言う者はすべてこの新法令で一網打尽にされるわけです。僕のこの穏やかなブログなども「閲覧禁止」の措置を受けて、闇サイトに引越しを余儀なくされるかもしれない。著しく「令色」の“美徳”に欠け、諸事において「和を乱す」ことが目立ちすぎるという理由によってです。

 安倍首相がその後「新元号談話」を発表するという話で、もうしたのでしょうが、興味がないので、僕はそんなものは見ません。能書きはどうあれ、この「命令の下での平和」を連想させる新元号は彼のフィーリングにはぴったりするものだったでしょう。「令和」は「零和」にも通じる。「本当の和はゼロになる」という意味かも知れず、それならミーイズム全盛の折柄、時代を先取りしたものだと言えるかもしれません。スピリチュアリズムの愛好家たちにとっては「霊和」と読み替えられて、「霊的次元での和合が実現する」と解釈できるのでめでたいということになるのかも知れませんが、それは「令による和」を克服したずっと先にあるものでしょう。

 人間はどんなものにも「慣れる」生きものなので、この新元号にもそのうち慣れて、誰も違和感を口にする者はいなくなるでしょう。今のうちだと思って書いた次第です。

【追記】候補が悪すぎる!

共同通信の記事によれば、

 政府が「元号に関する懇談会」の有識者や全閣僚会議などに示した六つの原案は、新元号に決まった「令和」のほか「英弘」「久化」「広至」「万和」「万保」だったことが分かった

 そうです。正直、ロクなものがありませんが、僕個人はこの中から選べと言われれば、開放感のある「広至(こうし)」を選んだでしょう。「広く至る」で意味も悪くない。「嚆矢」も読みは「こうし」だし、前向きの印象がある。「久化」なんて最悪ですが、考案者にもっと言葉のセンスのある人を選ぶことから今後は始めた方がよろしいでしょう。
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