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心愛ちゃん虐待死事件に見る「亡国の兆し」

2019.02.08.02:39

 やっといくらかゆとりができたので、久しぶりに書きます。

「千葉女児虐待」「野田小4女児死亡」事件などとして連日ニュースで取り上げられているこの問題の恐ろしさは、そこにまともなオトナが一人も出てこないということです。モンスター・クレイマーを兼ねたイカレポンチのDV男を父親にもったがために、虐待の果てに殺されるしかなかったこの10歳の少女は、死ぬとき何を想ったのでしょう。ここは恐ろしい世界だ、どこに訴えても誰も助けてくれない。神様、あなたはどこにいるのですか?――そう思わなかったでしょうか?

 彼女はまず学校の、「ひみつをまもりますので、しょうじきにこたえてください」と保証されたいじめアンケートなるものに、家庭での度重なる虐待を訴えたわけです。以下はNHKのニュースサイト(2/1)からの引用。

 千葉県野田市で小学4年生の女の子が死亡し、傷害の疑いで父親が逮捕された事件で、亡くなった栗原心愛さんは、おととし11月、当時通っていた小学校で行われたいじめのアンケートに父親から暴力を受けていると回答し、担任に助けを求めていました。その直筆の回答のコピーを野田市の教育委員会が、1日、公表しました。
このアンケートには匿名でも回答できましたが、心愛さんは「栗原心愛」とみずから名前を記入していました。
 また、自由記述欄では、しっかりとした字で「お父さんにぼう力を受けています。夜中に起こされたり、起きているときにけられたりたたかれたりされています。先生、どうにかできませんか。」と書いていました。
 このほか回答用紙の欄外には、当時の担任が心愛さんから聞き取った内容として、「お母さんはみかたしてくれるが父は保護者だといって母のいうことをきかない。おきなわでは、お母さんがやられていた。きのうたたかれた あたま、せなか、首をけられて今もいたい」とか、「なぐられる 10回(こぶし)」などという書き込みも見られます。
 教育委員会は去年1月、父親からの強い要求を拒みきれずにコピーを渡していましたが、その際は担任が欄外に書いた記述は消したうえで渡したということです。
 今回、公表した理由について野田市教育委員会は「心愛ちゃんがお亡くなりになるという痛ましい事件が起き、父親が虐待を認めないなかで、心愛ちゃんの名誉のためには、心愛ちゃんの『いじめにかんするアンケート』の回答の写しを公表することが必要であると判断した」としています。


 全く、アホか…。「心愛ちゃんの名誉のためには」というノーテンキそのものの言い草にはつくづく呆れるので、父親にそのコピーを渡した時点で「ひみつをまもります」はあっさり反故にされていたわけです。しかも、虐待の主にそれを渡したというのだから、これ以上悪いことはない。
 
 アンケートを見て驚いた担任は、報告を上に上げ、校長や教頭もそれを知った。それはただちに市教委に伝えられた。そこで「県柏児童相談所は、回答内容などから虐待の可能性が高いと判断し、アンケートを行った翌日の11月7日から12月27日まで、心愛さんを一時保護した」(千葉日報1/31)。この辺までは問題がなかったわけです。

 しかし、児相や教委からの聞き取りに対して、父親の栗原勇一郎(41)は虐待行為を全面的に否定した。これはむしろ「ふつう」のことでしょう。「悪うございました」と素直に頭を下げるような人間なら、そもそもそんな非道下劣なことはしないはずだからです。

 にしても、虐待の当事者である父親にコピーを渡すなどという「絶対にしてはならないこと」をどうして彼らはしたのか? お役人の口癖は「規則ですから」です。それはこういうときにこそ使うべき言葉で、「規則ですからお見せできません」と言い張ればよかったのです。なぜそうしなかったのか、上記千葉日報の記事では、次のような「事情」によるのです。

 一時保護の解除後に行われた三者会談〔引用者註:1月12と15日、二回行われた〕で、勇一郎容疑者は出席した校長や担任、市教委職員らに「名誉毀損(きそん)」「訴訟を起こす」「異議を申し立てる」などと威圧的態度で主張。アンケートの閲覧と複写を要求し、「家族を引き離された気持ちが分かるか」「解除はもう暴力がないということだろう」などとどう喝したという。
 厳しい要求に押し切られるように市教委は児相に連絡せず、独断で渡した。担当者は「重篤な危機感がなかった。渡すことで(心愛さんに)どのような影響があるか引っかかったが、(父親の)恐怖で追い詰められていた。私の判断で、守れる命を守れなかった。取り返しのつかないことをした」と悔いた。


 この「担当者」、別の記事によれば、正式の肩書は「野田市教育委員会・学校教育部次長兼指導課長」なのだそうで、ただのヒラではない。一説によれば、校長の経験もあるいい年したおっさんなのです。勇一郎の恫喝がそれほど激しかったから恐怖に駆られてつい渡してしまったという話ですが、保身大事のお役人心理からすれば、「名誉毀損で訴える」だの「異議を申し立てる」だのと脅されると、仮にそうなった場合、責任を問われるのは自分なので、大変なことになるとパニックになったのでしょう。私の今までの順調なキャリアが…というわけです。一応親から聞き取りはした。父親は虐待はしていない(今後も当然しない)と言っているし、それは嘘に決まっているが、一通り形式的な順序を踏んだ対応はしたのだから、言い訳はできる。別の記事によれば、

 対応した校長や市教委職員はいったんは拒否。しかし、勇一郎容疑者らは三日後、「アンケートを両親に見せていい」との内容を心愛さんが手書きで記したとする同意書を市教委に示し、改めて開示を要求。「娘が書いた」との母親の説明を信じ、心愛さんに直接確認しないまま、市教委指導課の矢部雅彦課長らがコピーを渡した(東京新聞2/1)

 とされているので、本人の「同意書」もあることだし、母親も娘がたしかに書いたと言っているのだから、申し開きもできるのではないかと考えたのです。今これを渡しさえすれば、この恐ろしいモンスター・クレイマー(父親)から解放される…。たぶんその一心だったのでしょう。可哀想な子供のことなどはどこかへ消し飛んでしまったので、後になってから「私の判断で、守れる命を守れなかった。取り返しのつかないことをした」などと言っても全く無意味なのですが、フヌケ役人の悲しいさがで、そういうことになってしまったのです。

 この事件で深刻なのは、上の記事には「厳しい要求に押し切られるように市教委は児相に連絡せず、独断で渡した」とありますが、その「児相」、児童相談所もまた、甚だアテにならない存在だったことがその後判明したことです。どういうわけでか?

 千葉県野田市で小学4年生の栗原心愛さん(10)が死亡した事件で、柏児童相談所は5日に会見を開き、逮捕された父親が嘘の手紙を示した可能性を認識しながら心愛さんを自宅に返していたことを明らかにした。
「お父さんに叩かれたというのは嘘です。小学校の先生に聞かれて思わず言ってしまいました。お父さん、お母さん、妹にたくさんの迷惑をかけてしまいました。ごめんなさい。ずっと前から早く4人で暮らしたいと思っていました。児童相談所の人にはもう会いたくないので来ないでください。会うと嫌な気分になるので今日でやめてください。お願いします」
 心愛さんが書いたものとして、父親の勇一郎容疑者が柏児童相談所に示した手紙。手紙を見せた後、勇一郎容疑者は「これ以上家庭を引っかき回さないでほしい。これ以上引っかき回すようなことをする場合、児童相談所という組織としてではなく、職員個人として訴える。名誉毀損も検討している」と圧力をかけたという。児童相談所側は「この場で心愛さんを帰すことはできない」として、会議で検討することを伝え面会を終えた。
 柏児童相談所の二瓶一嗣所長は会見で「基本的には父親に書かされている可能性が高いと認識していた」と説明したが、面会が行われたわずか2日後の去年2月28日に、心愛ちゃんを自宅に戻すことを決定。そして、3月上旬に心愛さんは自宅に戻った。3月19日には児童相談所の職員が小学校を訪問し心愛さんと面会したが、心愛さんから手紙に関する決定的な事実を聞いたという。
「本児(心愛さん)が小声で『言っていいのかな?』と(児相職員に)話をしている。『親族に頼んで、お母さんしかいないときにアパートに連れて行ってもらったりしていた』と。そのときに父から母にメールがあり『本児にこういう手紙を書くように』と内容を伝えていて、本児がそれを見ながら書き写した」
 勇一郎容疑者から強要されて手紙を書いたことを認めていた心愛さん。児童相談所の担当者が「じゃあそこに書いてあったのは心愛さんの気持ちとは違う感じ?」と聞くと「でもお父さんとお母さんに早く会いたい。一緒に暮らしたいと思っていたのは本当のこと」と答えたという。手紙の内容への疑いが確信に変わってもなお、児童相談所は適切な対応をせず、その後も心愛さんと面会することなく対応を学校に委ねていた。(AbemaTIMES 2/6)


 時系列に沿って言うと、児相による「一時保護」は2017年の11月7日から12月27日まで、市教委がコピーを渡したのが翌2018年1月15日です。しかし、この記事では「去年2月28日に、心愛ちゃんを自宅に戻すことを決定。そして、3月上旬に心愛さんは自宅に戻った」とあって、それなら2017年12月28日から2018年3月上旬までの間、彼女はどこにいたのか、という疑問が出てきます。「市や親族らのサポートを得られる見込みになった」として一時保護は解除されたそうなので、親族の誰かに預けるかたちになっていたのでしょう。

 先の東京新聞の記事によれば、「同課は勇一郎容疑者にアンケートのコピーを渡したことを市上層部や柏児相に報告しておらず、周知したのは1月24日に心愛さんの遺体が発見された後だった」そうなので、市教委の課長らは「知られては具合が悪い」というのでアンケートを父親に渡してしまったことを隠し、児相はその重大な事実を知らず、その児相は児相で、「お父さんに叩かれたというのは嘘です」という心愛ちゃん自筆のそれが父親に書かされたものだという確信を得た後でも、何もしなかったのです。

 オトナの側のわが身大事の保身と事なかれ主義が少女を殺した。母親もその後逮捕されたそうですが、DV夫の完全な支配下に置かれていた彼女に、娘を救い出すことなどハナから期待できなかったはずで、今さら逮捕してどうするのだという気がします。

 にしても、この栗原勇一郎という男はサラリーマンだったそうですが、よくもこういう畜生以下のクズにサラリーマンが務まるものだと、それが僕には不思議なので、会社では全く別の顔を見せていたのでしょうか? DV男には外面(そとつら)のいい奴が多いと聞きますが、この男もそうだったのでしょうか?

 たしかにこういうきちがいは何をしでかすかわからないとしても、僕の経験則上、女性や子供に暴力をふるうような奴に喧嘩の強い人間は一人もいません。度胸もないので、甘やかされた座敷犬のように際限もなくキャンキャン吠えたてるだけです。だからビビる必要は何もないわけで、女性の場合は仕方ないとして、大の男が何人もいてこの程度の奴一人にも対抗できないというのは男の恥ではないかと思うのですが、いかがなものでしょう? つまらないことで事を構えるのはただの馬鹿ですが、かんじんなときには男はからだを張らねばなりません。別に殴り合いが強くなければならないということはない。「訴える」と息巻けば、「どうぞお好きなように。勝手にいくらでも訴えて下さい」と言ってやればよく、「何を!」ということで暴力を振るわれれば、もっけの幸い、警察に暴行届を出せばいいわけです。それで相手を刑務所にぶち込むことができる。別にそれで殺されるほどのことはないわけです。その程度の覚悟もなくてオトナが務まるか。

 この事件の場合、心愛ちゃんのからだのあざなど、虐待の証拠は十分にあった。最初のアンケートに書かれた内容が真実でないと疑う証拠は何もなく、逆に、父親が本人に書かせた文はどれも疑わしいものだった。DV父に虚偽の申し立てをするこういう腐れが多いことも、プロならよく知っていたはずです。だから事は十分にシンプルだったのに、面倒を避けたがる当事者意識のないオトナどもが問題をややこしくしただけなのです。そして一人の少女を見殺しにした。

 僕は長く塾商売をしていますが、塾内で子供同士のいじめを発見したときは放置したことは一度もないし、保護者から持ち込まれる学校をめぐるあれこれの相談(なかにはかなりとんでもないものも含まれる)にもいつも誠実に対処してきたつもりです。前に塾の生徒の一人が学校から塾に来る途中、コンビニで出くわした三人組のヤンキーにからまれて連れ去られるという珍事件が起きたことがあって、そのときは報せを受けて即座に救助に駆けつけた。塾は勉強を教えるところですが、塾生の身の安全を守る責任が塾にはあるので、それを忘れたことはないのです。仮に刃物をもった暴漢が塾に乱入するというような事件が起きれば、僕は命がけで生徒を守るでしょう。それは何も特別なことではなく、あたりまえの話なのです。

 話を戻して、「先生、なんとかできませんか」という心愛ちゃんのアンケートに対して、彼らはこう答えたということです。

「それはできないのよ。なぜって、君のおとうさんって、あれこれややこしい人で、僕ら公務員はみんなそういう人が苦手ですからね。『親権の侵害だ!』とか『訴える!』とか凄まれると、マスコミに被害者のふりして垂れ込まれたりすると責任を問われて困るって不安が先に立って、何もできなくなってしまうわけ。君のおとうさんが君に無理に書かせた文をもってきて、『この前のあれは嘘です。家に戻りたい』ってそこに書いてあったら、ふつうはそんなの信じる方が馬鹿だけど、信じたふりをして君を家に返せば、面倒なあのおとうさんの相手、もうしなくてすむでしょう? それで一応『必要な対応はした』って申し訳も立つし、他の仕事も色々あって忙しいから、そういうときはそうするのよ。君はまだ子供だからわからないだろうけど、オトナになると、とくに公務員になると、そういうふうにしないとしんどくてやっていけないのよ。君がそれで殺されるかも知れないと内心わかってても、今の世の中ってそういうものなのよ。だから期待されると困るので、ああいうアンケートなんかも、君らを助けるためにあるんじゃなくて、『ちゃんといじめや虐待を把握するためにやってます』って世間に向けてアピールすることが隠れたほんとの目的なんですからね。そういうオトナ世界の事情、ちゃんとわかってもらわないと…。正直なところ、君のおとうさんのような親をもった不幸な子供の場合、もうそれでおしまいなのよ。今度生まれ変わってくるときは、もっとマシな国と時代に生まれてくるよう、関係者一同陰ながらお祈りしています」云々。

 冗談ではなく、今の日本はそういう国になっているわけです。こういうクソみたいなオトナがやっていることを、子供たちはよく見ていて、自分もオトナになったらああいうわが身大事で他はどうでもいいというなおざり対応をするのが「ふつう」なのだと学習する。政治家先生の大嘘も、忖度役人の「記憶にございません」も、学校のいじめ自殺事件のたびに繰り返される「いじめとは認識していなかった」も、今回の不祥事も、根は同じなのです。

 どこに人間としてのハートや気概があるのか? こういうのはもはや人間の世界とは言えません。仏教には「六道輪廻」という考えがあって、僕らは天道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道の六つのうち、今は上から2番目の「人間道」に一応いることになっているのですが、それはいつのまにか修羅と畜生、餓鬼の入り混じった世界に格下げされていて、心愛ちゃんの場合には、どこにもまともな対応をしてくれる人を見つけられず、地獄そのものと化していたのです。

 この分では、われらが日本民族が滅びる日もそう遠くはないはずです。そういう危機感が欠落したまま、やれ組織がシステムの欠陥がどうのといった呑気な「説明」をしている人が少なくないのは、それ自体が驚くべきことではないかと、僕には思われるのです。

 最後に一言。今どきの公務員は辻褄合わせの下らない書類仕事にばかり多忙になっているようですが、子供を守る仕事を任されながらそれができないのなら、たんなる月給泥棒なので、さっさと依願退職しろ! それが世のため人のためというものです。



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