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私立医大の入試不正、募集要項に明記したら?

2018.10.18.16:09

 東京医科大の不正に端を発したこの問題は、他にも飛び火し、新たに昭和大、順天堂大などでも常習的に受験生の得点操作が行われていたことが明らかとなって、世間の注目を集めています。大体は20点内の幅で、男子受験生には加点、女子と多浪生は減点、というようなもので、他は自校OBの子弟を補欠合格の際には優先する、といった情実主義的なものです。昔は願書を提出すると、ただちに「寄付のお願い」という文書が送られてきて、一口ン百万のそれを何口かしておけば、合格は保証されたようなものだという、露骨というか「わかりやすい」金権医大もあって、名前は言いませんが、「あそこ出身の医者がやっている病院には行かない方がいいよ」なんて話が囁かれたりもしたのですが、近年は医学部人気のおかげで、国家試験の合格率も低かったそうした「ヤブ医者製造工場」と見なされていた元三流医大でも、軒並み偏差値60を超えているのだから驚きます。

 地方の医学部受験生の場合、私学を受けるのは親が病院経営など金持ちの場合にかぎられていて、親がふつうのサラリーマン、公務員だと、学費の関係で初めから国公立オンリーです。わが零細塾でも、これまで医学部に進んだ生徒は何人かいますが、一人を除いて他は全員国立で、私大の選択肢はなかった。だからあまり関係はないのですが、一般論として書いておきます。

 それは、初めから入試要項に、受験生の属性に応じた加点、減点のその対応方針を具体的かつ詳細に明示しておけ、ということです。医学部には国から多額の補助金が出ていて、私立でも比率は違うとはいえ、出ているのは確かなのだから、その不公平さの度合いに応じて補助金の減額または全面カット等の措置は当然行うとしても、それが正直、明朗なかたちのものなら、ある程度認めてやってもいいのではないかと思うのです。

 わが国では不自然なまでに女性医師の比率が低くて、それは「医者は男の方がいい」という古くさい思い込み(女性の方が概してコミュニケーション能力が高いというのは心理学では常識なのですが)によるところが大きく、医師の労働環境が女性には適さないというのなら、そちらを変えればいいのですが、そういう取り組みはせずに、うちは旧態依然たる思い込みに基づいてやってる大学です、ということを天下にPRするのです。多浪の受験生にも、そこを受ける場合には20点は現役より多く取ることが必要だとわかって親切です。「そんな差別をする大学になんか行くか!」と思う正義派の受験生は初めから受けないので、加計のあの獣医学部だって、僕が親なら、あんな設立経緯にいくつもの疑惑があるところはわが子が獣医志望でも絶対に受けさせませんが、それでもかまわないと思う受験生だけ受けることになって、他に害は及ばなくなるのです。内々でこっそりやるから悪い。

 こんなことを言うと叱られるかもしれませんが、元々私立には裏口がつきものです。僕自身、新聞配達しながら浪人していたとき、店主から裏口の話をもちかけられたことがあります。その人はなかなかのやり手で、販売店をいくつももっていました。本社に対してかなりの発言力をもっていただけでなく、都内二つの私大に裏口ルートをもっていた。そのうちの一つは東京六大学の一つだったと言えば驚くかも知れませんが、僕が聞いたところではそれは事実なのです。もう一つも誰でも名前は知っている中堅大学でした。後者の方は、店で扱っているスポーツ新聞の営業部長がその大学のOBで、母校に顔が利き、毎年数人の個人枠があるということでした。げんにそのおかげでそこに入ったという先輩が僕が勤務する店にも一人いたくらいです。よく顔を見せるその恩着せがましい営業部長氏(内ポケットから手帳を出して「君の点数は…」なんて言ったりする)を、当然ながらその先輩は嫌っていましたが、販売店としては、あの業界は当時から人手不足に悩まされていたので、その代わり大学卒業までそこで働くという条件なら、利益になるのです。

 そのやり方は、どちらも実際の入試得点に10点か20点の下駄をはかせるというもので、東京医大や昭和大のそれと同じだったのです(300点満点でそれならかなり大きい)。むろん、それでも全然足りないという場合は落ちてしまうので、それで足りる程度には得点できなければならない。「君の場合には…」と店長は僕を呼んで言いました。その東京六大学の方が大丈夫だろうと。他の人が利用するのは気にならないとして、自分がそういうものに頼るのは好まなかった僕は即座に断りましたが、ではどこに行きたいのだと訊くから大学名を言うと、「うーん。あそこになるとちょっと無理だね。ルートがない」と真面目な顔で言ったので思わず笑ってしまったのですが、実はそこにもちゃんと(?)裏口が存在したことがその後何年も経ってから判明したのです。それは商学部の不正入試事件でした。

 真偽は不明ながら、その後大学生になってから、アルバイト先で麻雀の負けが込んでバイトを余儀なくされたという慶応医学部の大学院生と会って、その人は名古屋大を出てからそこに入ったという話でしたが、慶応の医学部にも裏口はあるという話を聞かされたことがあります。慶応医学部は当時から私大医学部のトップでした。ほんとかなと思いましたが、それはあるので、多額の寄付金の見返りに金満医者の馬鹿息子などを入れるのだという話で、しかし、そういうのは大方落第していずれ中退することになるから、大学としても傷はつかず、慶応らしいたいへんスマートな集金方法なのだとその院生は説明しました。なるほどねえ。1980年に発覚して大騒ぎになった早稲田の商学部のあの事件にしても、一人1千万なら、一学部あたり10人ずつそれを入れれば、学部単位1億の増収になって、貧乏大学(当時、金持ちの日大に借金していて、大隈講堂がその抵当に入っているという噂が学生間でまことしやかに囁かれていた)としては大いに潤う。公然とそういう枠を設けていいのではないかと、僕は事件当時悪友どもと話した記憶があるので、そういうのがあると、あまりにもアホな学生は、「あいつは例の裏口組だな」と言われてしまうので、少しはまともになるかもしれない。そういう内部の引き締め効果も期待できるので、メリット満載ではないかと思われたのです。それはせずに、ヒロスエだの東国原だのを、何の実益もないのに、不透明な何とか入試で入れるから「あんなのと一緒にされたくない」心理が働いて、逆効果になる。「裏口定員枠各学部10名。必要な寄付金は、そのときの倍率、または学部の偏差値等によって多少変動する場合がありますので、専用窓口にお電話にてお問い合わせ下さい。☎ 03-○○○○-9696」と募集要項に明記すればいいのです。

 アメリカの有名な、いわゆるアイビーリーグの大学は全部私立ですが、有力者やOBの子弟が優遇されていることは明らかで、たとえば、あの非道なイラク戦争の元凶、元大統領のブッシュ・ジュニアなどにしても、彼は名門イェール大学の出身ですが、彼の知能・学力からして実力で入れたわけがない。大学OBのパパ・ブッシュの口利きで入ったことは明らかで、日本式に言えば完全な「裏口」なのです。その後、ハーバードのロースクールに入ったのも、父が裏から手を回したからで、アメリカでそれが糾弾されたという話は聞いたことがありません。ああいうのは皆が初めから奴は裏口だと承知していて、一般のイェールやハーバードの基準で見ることがないから、実害もないわけです。

 そこらへん、「わかりやすい」わけで、アメリカの猿真似ばかりしたがる日本は、そのあたり、もっと正直にわかりやすくしたらどうかと思います。権力者なので、あるいは寄付をたくさんしたので入れました、ということが世間にわかりやすくなればいいのです。それが全体の数パーセントにとどまり、それが守られ、外部にも周知されているかぎり、その大学の一般学生の評価が下がることはない。

 そうしたことを明らかにせず、公平無比であるかのように装って、裏でこっそり加点したり、減点したりするから悪いのです。そういうのは詐欺なので、昔は短大などで、推薦で大部分の入学者を確保しておいて、それを告知せず入試をやって僅かな合格者しか出さず、偏差値を釣り上げ、文科省に「改善」を命じられたけしからんところがありましたが、正直明朗にデータ提示をしないのは卑怯というものです。そういうことをやっているから医療費の不正請求を平気でするような医者が続出するので、こういうのは大学がそのお手本を医者の卵に示しているのと同じです。

 ということで、正直にそれを明示しなさいね。たとえそれで受験者が減っても、それは仕方のないことで、加計の獣医学部と同じで、今の医学部人気からして、その減り具合は大したものではないでしょう。また、そういう不正が行われているのを承知で受験し、合格した女子学生や多浪生は、とくに優秀だった、少なくとも余裕で合格したことが明らかになって、入学後も鼻が高いわけです。世間からも立派だとほめてもらえる。それでいいではありませんか。英語の諺にもあるように、Honesty is the best policy です。

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