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高度なゲリラ戦術

2018.09.25.12:54

「うーん。これはうまいな」

 写真を見て思わずにんまりしてしまいました。文字もエレガントだし、構図的にも調和がとれている。ブルーシートをかけた無残な写真も一緒に出ているので、いくつか出ているニュース記事からとくにこれを選択しました。

新潮社の看板に「あのヘイト本、」Yonda?とラクガキ

 これは、記事の終わりの方にもあるように、器物損壊罪に該当します(可能性ではなくて、ふつうにそれと認定されるはずです)。しかし、犯人がわからないままではどうしようもないし、軽罪だから、騒ぎ立ててたとえつかまえても、「よくやった!」という犯人擁護の声の方が高くなってしまうでしょう。中には「言論へのテロだ!」なんて大袈裟なことを言う右翼も出てくるかもしれないけれど、この記事にも出ている痴的な暴言を連発した自称文芸評論家・小川榮太郎氏(『徹底検証「森友・加計事件」――朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』という朝日ヘイト&安倍ヨイショ本の著者)のやることよりははるかに上品で気が利いています。こういうのや、百田尚樹みたいなのが「ベストセラー本」の著者になるなんて時代は、アメリカ式「反知性主義」がわが国にもしっかり根付いたということなのかも知れませんが、恐ろしいなと僕は思っています(ああいうのが「論理的」だの「実証的」だのと言っている人は、今からでも遅くないから、少しは本物の文学や哲学書を読んで勉強し直すといいのです。ある程度の知的訓練を積んだ人なら、ああいうペテンじみた議論に騙されることはないでしょう。「左翼は好都合なストーリーをでっち上げる!」とネトウヨはよく言うが、今のエセ右翼はその点、もっと露骨で甚だしいのです)。

 話を戻して、その諧謔精神はお見事ですが、「どうやって作業したのだろう?」と不思議に思われるので、脚立か何かを使ったのですかね? 工事か何かを装って、大型トラックでも横付けして、その陰に隠れてささっとやったのか? 何にしても、なかなかに大胆かつ鮮やかな“犯行”で、そのあたりも頼もしく思われます。

 関西弁では、こういうのを「おちょくる」と言いますが、硬直した言論に対抗する方法の一つは、こうした「おちょくり」で、それはゲリラ的な弱者の戦法です。むろん、弱者というのは社会的なそれの意味なので、精神的な弱者ではない。夜郎自大な権力を、昔の気骨のある庶民はそういうやり方でからかい、彼らの面目を潰したのです。

『新潮45』は別に権力ではない、と言う人もいるかもしれませんが、3選を実現して、任期満了まで務めれば「最長不倒政権」となる今の安倍政権と、そのネトウヨ応援団の横暴は目に余るので、彼らはまさに「夜郎自大な権力」です。放置しておくと連中が理想とする戦前に本当に戻りかねない。「危機的状況」と言っても過言ではないのです。

 にしても、この小川榮太郎というセンセ、これを書くのにネットで検索したら、『小林秀雄の後の二十一章』なんて本も出していて、紹介文には「小林秀雄の正統な後継者として名乗りをあげ」なんて書かれていて、二度ビックリです(ご本人が勝手に「名乗りをあげ」ているだけなのではないかと思うのですが…)。版元はあの有名な「安倍出版社」の幻冬舎。僕は元々は小林秀雄の愛読者で、十代末から二十代半ばにかけて、小林秀雄全集を隅から隅まで読みました。『ゴッホの手紙』やドストエフスキー論なんて、何度読み返したかわからないほどです。彼は左右を問わず、イデオローグを嫌っていた人で、この種の人間とは全く異質な孤独な人だというのが僕の理解なのですが、悪用されそうな点はいくつかある。有名になった戦後の座談会での「利口な奴はたんと反省するがいいさ」という発言や、十二巻本全集の後で出た『本居宣長』(いずれも新潮社)などです(本居宣長の思想はかつて右翼国粋主義者たちに悪用された。あれは本来そういうものではないのだと小林秀雄がいくら書いていても、そんなことにはおかまいなしなのです)。

 この本を検索してみたら、出ている書評は「埼玉大名誉教授 長谷川三千子」氏が産経に書いているそれだけで、長谷川三千子といえば、熱烈な安倍応援団の一人で、極右イデオローグと断定して差し支えない御仁です。「文学書」なのに文学研究者の間で何の反応も出ていないのは、全く読まれていないか、うかつに批判などすれば、ご本人を始め、日本会議系の“論客”やネトウヨたちからどんな報復を受けるかわからないと、それを恐れるからなのでしょう。彼らは今やほとんどカルト(『新潮45』もそれに加入して信者の固定読書層を得ようとした)なので、それもわからないではありません。

 ちなみに、新潮社の社長はあの件で「あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現が見受けられました」と謝罪コメントを出しましたが、小川氏はそれにツイッターで、まことにヘンテコな批判を加えています( 9月22日の「拡散希望」記事をご覧ください)。

小川榮太郎

「イデオロギーや同調圧力」が問題なのではなくて、ご自身の論理・感情の硬直(それが文章にモロに出ている)と、その結果生じる何とも言えない無神経さが問題なのではないかと僕は思うのですが、こういう人を相手にするのは大変だなと思います。「個の言葉で立ち向かい」と勇ましいことを言いながら、「拡散希望」なんてのも、仲間の「衆の力」をアテにしているのが見え見えで、僕にはよくわからないところです

 何にせよ、今の日本社会が「ほとんどビョーキ」であることは間違いなさそうです。

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