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日朝首脳会談~功を焦ってただの“ミツグ君”になる?

2018.06.15.12:34

 米朝首脳会談、いわゆるTrump Kim summit に続いて、日朝首脳会談も開かれる見通しになったそうで、あの会談で中間選挙前のトランプが人気挽回をはかろうとしたように、「もり・かけ」問題で瀕死状態にある安倍首相も、何とか拉致被害者の帰国を実現して、これまでバラマキ外交に励んで無駄金を使うばかりで目ぼしい成果はなかった「外交の安倍」をアピールして、支持率の大幅アップと首相3選を実現したいと意気込んでいるようです。

 お困り独裁者との会談に、不信と不人気に悩む二人の国家リーダーが政権浮揚のきっかけを見出そうとするのは、どう見ても美しい図ではありませんが、これが政治というものなのでしょう。

 あの米朝会談については色々な評価がありますが、僕が直後に見た論評の中では次のブルームバーグの見解が、一番正鵠を得たものと思われました。

米朝会談、すべてが勝者中国の思惑通り-日韓は当惑、何も得られず

 この記事にも出てくる米韓軍事演習の中止については、会談後BBCの記者が、ツイッターに次のような投稿をしたそうです。

 Chinese Foreign Ministry announced that Trump would suspend US war games with South Korea before Trump announced it himself at the press briefing. That suggests Kim’s people were on the phone to Beijing straight after the meeting cos they recognized how big a concession it was.

 要するに、トランプが自ら記者会見で語るより、中国外務省が「米韓軍事演習が中止される見通し」と報じた方が早かったということで、これは、金正恩の側近が会談後すぐに親分の中国に「やりましたよ!」と大きな譲歩を勝ち取ったことをご報告に及んでいた証拠だ、というのです。裏にはつねに中国がいた。

 その共同声明の中身について、ニューヨーク・タイムズは、Joint statement promises bold change, but lacks details(共同声明は大胆な変化を約束するが、詳細な記述はない)と評していましたが、同紙は「反トランプ」だから辛口になったというより、西側メディアにはそういう醒めた評価が多かったようです。

 実際、「アメリカと北朝鮮は、朝鮮戦争中の捕虜や・行方不明の兵士の遺骨の回収に取り組むとともに、すでに身元が判明したものについては、返還することを約束する」(NHKによる和訳)という「アメリカ・ファースト」な箇所を除いて、具体的な記述は何もない。アメリカは直前まで、北朝鮮の「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」は断固譲らないと言っていましたが、共同声明には「北朝鮮が朝鮮半島を完全に非核化するために取り組むとした、4月27日の板門店宣言を再確認する」とあるだけで、「検証」のための調査団を受け入れるなどの期待されていた具体的な記述はどこにもないのです。たんなる「努力目標」にすぎないから、北朝鮮は気楽に応じることができた。

 いきなりではそこまで踏み込むのは無理だから、これから詰めていくのだろうと好意的な評価をする人はいるようですが、あのトランプにそんな骨の折れる交渉をする気があるのかどうか、かなり疑わしいところです。それよりも、いかにもトランプらしいなと思われるのは、次のAERAの記事にあるような発言です。

 トランプ大統領は会談後の会見で、今回の焦点だった非核化についての具体的な方法や過程を最後まで示せなかった。
 ただ、その一方で非核化に伴う費用をどう負担するか問われると、次のように明快に答えている。
「韓国と日本が大いに助けてくれるだろう」
「私たち(米国)が助ける必要はない。米国はこれまでも様々なところでコストを払ってきた。韓国は北朝鮮の隣国であり、日本もそうだ。彼らが北朝鮮を助けて、北朝鮮を助ける上で素晴らしい仕事を成し遂げるだろう」
 つまり、北朝鮮から求められる莫大な経済支援の費用は、日本と韓国だけで出すべきで、米国は「われ関せず」を決め込んだのだ。


「アメリカ・ファースト」の面目躍如ですが、トランプはその後、「これで北朝鮮の核の脅威はなくなった」と手柄顔で触れ回っており、これも大陸間弾道弾の開発を北朝鮮がやめれば、アメリカ本土に核ミサイルが飛んでくることはなくなるという「アメリカ本位」の話で、中距離ミサイルなどはすでに開発済みなのだから、日本などの周辺国にとっての「核の脅威」は何ら減っていないのです。

 そんなことはワシは知らん。依然として「脅威」を受けている韓国や日本は、自腹を切って北朝鮮のご機嫌を取り、うまくやればいいので、それはおまえらの仕事だろう、と言いたいのです。何せトランプは、駐留米軍費用を全額、日本や韓国に負担させると言って大統領になった男です。大統領就任後、周りに事情を聞いて、さすがにそれは引っ込めたようですが、元がそれなのだから、それぐらいのことは当然言う。

 それはともかく、そのトランプ様に当初から「臣下の礼」をとり、事あるごとに「ははあ、誠にご尤もで…」式の追従を無考えに繰り返して、そのおかげでトランプに気に入られている安倍首相は、彼の口利きのおかげ(これはかなり恐ろしいことですが、他のパイプは何もないのです)で日朝首脳会談にこぎつけられそうになったのです。産経によれば、

 米朝首脳会談で、トランプ氏は「完全な非核化を実現すれば経済制裁は解くが、本格的な経済支援を受けたいならば日本と協議するしかない」との旨を金氏に説明。その上で「安倍首相は拉致問題を解決しない限り、支援には応じない」と述べたとされる。

 ということで、「本格的な経済支援を受けたいならば日本と協議するしかない」というのがこわいところで、「拉致問題の解決」の見返りにどれほど多くのものを要求されるか、わかったものではないのです。「非核化」についても、北朝鮮に重い腰を上げさせるためにどんどん支援しなさいと、大旦那のトランプ氏から言われるのです。

 にしても、気に入らない側近を次々処刑してきた金正恩は、「平和な国の独裁者」に見事変身を遂げることができるのでしょうか? 好意的に見る人は、彼は環境ゆえにそうなるよう強いられただけであり、本質は違うのだと言うかもしれませんが、宗教的回心でもあればともかく、人間はそうそう変わるものではないので、僕は懐疑的です。父親の金正日と較べても、彼は一段と残忍さが目立つからなおさらの話。

 かつて韓国は金大中、盧武鉉時代、「太陽政策」というのを取りました。今の文大統領は同じ系譜に属する政治家ですが、南北融和を重視して、経済援助などを盛んに行ったのです。南北首脳会談もそれぞれの時代に、1回ずつ行われている。今回の文政権による板門店首脳会談は3回目で、同じ流れに位置付けられるでしょう。にもかかわらず、かつての「太陽政策」は目ぼしい成果を上げなかった。それどころか、北朝鮮は盧武鉉大統領の時代の2006年、国連の反対を押し切って核実験を強行したのです。そして今に至る。

 韓国にしてからが、「最終的かつ不可逆的」だったはずの慰安婦合意を、「あれは前の朴政権が民意を無視して勝手に行ったものに過ぎない」として、文政権になってから反故にすると言い出して、「そんなのありかよ」と日本人を唖然とさせたのですが、こう言っては「差別的」だと叱られるかもしれませんが、事大主義の李氏朝鮮の昔から、朝鮮半島国家の外交政策に一貫性のないことは有名な話です。

 歴史は繰り返すだけではなく、進歩することもあると見たいのですが、トランプが足元を見られたのと同じで、支持率低下の安倍政権も足元を見られて(やはり背後に中国の「助言」があるでしょう)、過大な経済援助の約束だけさせられて馬鹿を見ることのないようにしてもらわないと、将来に禍根を残すだけの結果になります。

「難しい隣人」をもった場合、個人なら引っ越すことができるが、国家ではそうはいかず、これは宿命みたいなものです。あれこれ考えていると溜息が出ますが、一市民がこういうことをとやかく言っても仕方がないので、政治家・関係官僚の深謀遠慮と粘り強い交渉力に期待するしかありません。安倍政権がこれで「得点」を挙げて、支持率を再び上げ、3選への道筋をつけるという展開は、僕にはゲンナリさせられる話ですが、失敗されるとモロに「国家の損失」なので、かなり複雑な心境です。仮にうまくやれたとして、それは「安倍だからできた」のではなくて、「あの安倍でもかろうじてできた」のだと理解すると、支持率に変わりはなくて、そのまま退陣ということになるかと思いますが、そういうところ、日本人はほんとに甘いですからねえ。

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