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加計「首相との面会なし」コメントの読み方

2018.05.27.17:37

 日大アメフト部の事件をめぐって、監督・コーチの記者会見がひどすぎたというので、「危機管理能力の欠如」がとやかく言われましたが、これもお粗末さにおいてはひけを取らないものです。まず、「安倍応援団」産経の「加計『首相との面会なし』愛媛県に『誤った情報与えた』とおわび」と題した記事から。

 学校法人「加計学園」は26日、愛媛県今治市の獣医学部新設に関し、安倍晋三首相と学園の加計孝太郎理事長が平成27年2月に面会したとの記載がある県の新文書について「当時の担当者が実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と市に誤った情報を与えた」とするコメントを発表した。
 その上で「担当者の不適切な発言が関係者の皆さまに迷惑を掛け、深くおわびする」とした。 
 コメントでは、不適切な発言をした担当者が「当時は獣医学部設置の動きが一時停滞し、打開策を探している状況の中で活路が見いだせるのではないか」と考えたと説明している。
 愛媛県の新文書によると、27年2月25日に首相と加計理事長が面談。加計氏が同県今治市で国際水準の獣医学教育を目指すと説明したのに対し、首相は「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」とコメントしたと記載されていた。


 もう一つは、反安倍メディア、朝日の「愛媛知事『偽りあるなら謝罪を』加計学園コメントを批判」という記事です。

 学校法人「加計(かけ)学園」が、愛媛県今治市への獣医学部新設を巡り、加計孝太郎理事長と安倍晋三首相が面会したと記されている愛媛県の文書について「誤った情報を与えた」とするコメントを発表した問題で、中村時広・県知事は27日、報道陣の取材に応じ、「県に連絡がない。県としては正式にいただくまではコメントを控える」と話した。
 県が21日、参院に提出した関連文書には、安倍首相が15年2月25日に加計氏と15分程度面会したという学園から県への報告内容が記されていた。首相が「そういう新しい獣医大学の考え方はいいね」とコメントしたという記述もあった。
 これまで首相と学園は面会の事実を否定してきたが、今治市の菅(かん)良二市長も25日、市職員が学園から面会について聞いていたと明らかにしていた。学園は26日、「(当時の担当者に確認したところ)実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と市に誤った情報を与えてしまったように思うとの事でした」というコメントを報道各社にファクスで送ったが、記者会見は開いていない。
 中村知事は「一般論としては、偽りがあるなら市と県に謝罪し、責任者が記者会見するものと思う」と学園の対応を批判。「県としては話した内容をそのまま(文書に)載せた」と話した。(前田智)


 これをもって安倍シンパは「やはり首相は会っていなかった。この件を安倍降ろしに悪用しようとした左翼メディアの卑劣さを見よ!」なんて言い出しそうですが、加計学園がそう言ってるからといってそれが正しいという保証はないわけだし、仮に本当だったとしても、総理の後ろ盾を強調して事を実現しようとした加計の魂胆が明らかになり、認可プロセスが「公正」なものではなかったことを自ら白状したようなものです。

 わかるのは、「腹心の友」と呼び、ゴルフや会食をしばしば共にするだけでなく、自分が経営する大学(深刻な定員割れが取り沙汰される千葉科学大学)の記念式典にまで出席して祝辞を述べるなど、学校経営者としての地位を大いに高めてくれた安倍首相に対する加計孝太郎氏の、これは「恩返し」のようなものだろうということです。こういうコメントを発表すれば、「会っていない」という首相答弁が正しかったことになる。そうすれば、これまで安倍は取り繕いようのない嘘をさんざん並べ立ててきたわけですが、それらが真実であったかのような印象を与える効果も期待できる、というわけです。

 有名な「オオカミ少年」の寓話があって、ウィキペディアの説明ではこうなっています。

 羊飼いの少年が、退屈しのぎに「狼が来た!」と嘘をついて騒ぎを起こす。だまされた大人たちは武器を持って出てくるが、徒労に終わる。少年が繰り返し同じ嘘をついたので、本当に狼が現れた時には大人たちは信用せず、誰も助けに来なかった。そして村の羊は全て狼に食べられてしまった。

「日本ではイソップの話であるとして、狼に食べられるのは羊ではなく『羊飼いの少年』とする寓話がいくつも存在する」とあって、僕も小学生の頃読んだのはそちらのバージョンだった気がするのですが、いずれにせよこれは「人は嘘をつき続けると、たまに本当のことを言っても信じてもらえなくなる。常日頃から正直に生活することで、必要な時に他人から信頼と助けを得ることが出来るという教訓を示した寓話」なのです。安倍晋三少年は一度もこのためになるお話を読んだことがなかったようですが…。

 何にせよ、この加計学園の不可解なコメントは、「疑惑の払拭」を可能にするようなものでは全然なくて、「総理がらみの不正」を明白にするものでしかないということです。悪いのはひとえに「不適切な発言をした」「当時の担当者」であって、加計理事長や学園本体は関係ないと言えば、腐敗した組織によくある「トカゲのしっぽ切り」でしかないと批判されるでしょう。上に見たような理由で「総理を守る」こともできないし、無意味としか言いようのないコメントです。

 ついでに、経緯はどうあれ、加計学園=岡山理科大学の獣医学部は受験生が殺到して大成功ではないか、と言っている人にも反論しておくと、あんなもの、「成功」のうちには入りません。塾商売をしている人間の目からすると、スベリ止めのスベリ止めに利用する受験生が多かったのと、従来なら学力的に獣医は無理な受験生も受けたこと、「一体いくつあるのだ?」と呆れるほど試験の回数を多くして、一回ごとの定員を少なくしたから、見かけ倍率が高くなっただけの話です。「推薦C方式」なるものでは、定員21人に対し、193人もの合格者を出して話題になりましたが、 それはほとんどの合格者に蹴られると読んだからです。

 韓国でも嘘まじりのパンフレットまで配布して大募集したそうですが、結局、定員200名に対する実際の入学者は186人(獣医学科147人、獣医保健看護学科39人)にとどまった。獣医学科の定員は140人なので、そちらは充足しましたが、前にここでも「間違いなく定員割れする」と“予言”しておいた獣医保健看護学科の方は60人の定員に対し、初年度から39人の入学者しかいなかったのです(海外からの留学生は、獣医のみで、韓国7人、台湾2人)。全体に占める四国出身者は約12%の22人で、特別推薦の「四国で活躍する獣医師を積極的に育てる目的の『四国入学枠』の合格者が4人にとどまり、当初『最大20人程度』とした枠の5分の1だったことが分かった。志願者が6人だけで、大学側は『四国に獣医学部を置く目的の一つであるだけに残念。2019年度は周知を徹底したい』としている」(毎日新聞3/21)といったお粗末な内情も加わるのです。

 これに「愛媛県は今年度から3年間で計約31億円を支援」させられることになり、「今治市は学園が示した校舎建設費約192億円の半額までの補助を決め、その3分の1(約32億円)を上限とする支援を県に要請」していたのであり、今治市の負担は県の倍額になるということですが、むろん国も私学助成金を支出するのです。「獣医は足りている」のに、こういう余計なことをする。元々は加計理事長の長男が獣医師だったところから、「獣医学部なら設立も学生集めも容易だ」とその新設を彼は思いついた(元々今治市がそういう考えをもっていたのではない)のだと言われ、息子を教授の一人にして、ゆくゆくは学長にでもするという魂胆だったのでしょうが、そういう彼個人の「私意」に振り回されて、自治体も国も莫大な出費を強いられることになったのです。全体が傍迷惑な、馬鹿げた話に思われます。

 加計学園本体にとっても、この件で悪名をとどろかせたために、経営する大学全体の志願者・入学者をさらに減らす羽目になった。元々無名私大のほとんどは定員割れで、前途が危ぶまれるところも少なくありませんが、加計学園系列の大学は定員を充足していないものがほとんどです。それに加計理事長の行動は拍車をかけたわけで、まともな組織なら理事長追放運動が起きても不思議ではありません。それで経営が悪化すれば、立地自治体もその尻拭いを強いられ、税金がまた無駄に使われるわけで、安倍の「腹心の友」はたいそうご立派な人だと言わねばなりません。

 巷間、加計の獣医学部の入学者は全国の獣医学部学生の「最低辺」でしかないので、獣医師の国家試験で苦労するだろうと言われていますが、それにはスパルタ式対策授業や、受かりそうな学生しか受験させないという戦略で「高い合格率」を示せるようにするでしょう。それが低かったら、とたんに見かぎられてしまうからです。だからそちらはそれなりの結果を出すでしょうが、教員もかき集めのようだし、「先進的な獣医学教育」など期待すべくもない。安倍晋三と加計理事長の「うるわしい友情」によって実現したこの新規獣医学部のプラスとマイナスはどちらが大きいか、現実的に考えれば誰にでもその判断はつけられるでしょう。僕が一番同情するのは今治市民で、それで財政赤字が深刻化することになれば、他の面で色々とばっちりを食うことになってしまう。「黒い猫でも白い猫でも、獣医学部を作ってくれるのがよい猫だ」という加戸・前愛媛県知事の迷言(全くもって、あれはたわけたじさまです)がありましたが、やはり猫はえらぶべきだし、今治市は少子化が進む中、大学の誘致それ自体のリスクをもっと考えた方がよかったのではないかと思われるのです。


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