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「実用的な思考力」とムーミン

2018.01.16.17:23

 大学入試センター試験は13日、全国695会場で2日間の日程で始まり、初日は地理歴史・公民、国語、外国語の順に試験があった。地理Bの問題にアニメの「ムーミン」、日本史Bには各地の自治体のPRを担う「ゆるキャラ」が登場。教科書に載っていない題材を使った問題を、基礎的な知識を生かして解く「実用的な思考力」を試す近年の傾向が今年も見られた。(毎日新聞)

 このうちムーミンについては、「舞台は架空のムーミン谷であって、それがフィンランドにあるとの確証は何もない」という指摘がネットにあふれ、「大阪大大学院のスウェーデン語研究室は15日、ムーミン谷がどこにあるかは原作に明示されていないとして『舞台がフィンランドとは断定できない』との見解を明らかにした。正解とされたフィンランドの在日大使館は『皆さんの心の中にある』としている」(日経)という騒ぎになっているようですが、いい年したおじ・おばが“柔軟な”ところを見せようとして無理するとこういう結果になる、という見本みたいなものです。

「厳密な思考力」の持主はかえって迷うかもしれないわけで、結局のところ、この「実用的な思考力」なるものは、「出題者の意図を忖度する能力」ということでしかないでしょう。将来官僚や政治家になって、安倍晋三のような幼児人格のボスに仕えることになった場合、その「忖度」能力が重要になってくるから、早いうちからそれを養成しておきましょう、というようなものです。

 国語の現代文なんかは「出題者の考え」をどう見抜くかが一番重要になってくるわけで、僕も時たまセンターの国語も解いてみることがあるのですが、150点を切ることはまずないものの、一番失点が多いのは解きやすいはずの現代文なので、古文や漢文ではあまり落とさない。現代文はそれだけ微妙な解釈にわたることが多くて、「全部違うような気がするが、自分の解釈に一番近そうなのはこれかな」というのでえらんだら、それが間違っているわけです。学校の国語のテキストには「作者の意図・心情を読み取る」なんてコーナーがありますが、あれにしても、作者のそれというより、テキスト編集者が解釈した「作者の意図・心情」なので、作者本人に聞けば、「へえー、私はそういうふうに思ったわけですか?」というようなことになりかねない。げんに、「入試問題に使わせてもらいました」というので、作家のところにその問題が送られてきたので、作者本人が解いてみたら、多くが不正解だったなんて実話もあるのです。

 今年のセンターの英語でも、僕が間違えた大問3のBなど、大学生の議論にしては型にはまりすぎた平板な議論(いくら何でも程度低すぎでしょ?)が展開されるわけですが、映画といえばふつうはフィクションで、なのに大学生が作るものだからか、ドキュメンタリー制作の提案で始まり、ドキュメンタリーなのかフィクションなのかは曖昧なまま最後まで行っているように思われるので、㉚は1か3か迷うし、㉜は1か4で迷うことになるのです。こういうのは、むしろ「実用的な思考力」がある人ほど疑問に思うところではないかと思うのですが、いかがなものでしょう? 迷わせるにしても次元が低すぎる。「作成者の意図」からして、あれが正解だということはわかるとしても、です。いずれにしても、どうでもいいようなことに頭を使わされるだけで、こういうのは「英文を的確に読み取る能力」や「考える力」とはほとんど関係がないのです。大問5も、僕には笑えて面白かったが、昨日塾で生徒たちに聞くと、「タコ型宇宙人」が出てくるとは「想定外」で、途中でわけがわからなくなって、その動揺が尾を引き、いつもは全問正解できる大問6でまで失点してしまった、という生徒が複数いたので、予期せぬエイリアン登場(しかもタコ型というのは火星人の実在が信じられていた頃の話で、非科学的すぎる上に、今の若い子にはあんまりな話でしょう)でダメージを受けた受験生は相当数いたようです。あのへんは全部6点で配点が大きいので、そこで合わせて4~5問も落とせば、「死にました」となるのは当然です。そういう受験生は文字どおり「タコにされた」と諦めるしかなく、二次か私大の一般入試で「復活」してもらうしかない。今度は幽霊が出てくるかも知れない(実際、過去にその例はある)ので、今度は落ち着いてもらわねばなりませんが。

 ちなみに僕もムーミンがどこの国かは知りませんでした。作者はトーベ・ヤンソンで、北欧だということは知っていたが、それ以上のことは知らない。「フィンランドにきまってるでしょ、そんなことも知らないわけ?」とあるおばに呆れられましたが、世代が違うので、僕ぐらいのおじは『チロリン村とくるみの木』の世代なのです。おばはそんなものは知らないという。それで僕は、昔NHKの子供向けの人形劇にそういうのがあったのだと説明しました。『ひょっこりひょうたん島』の前がそれだったのだと言うとようやくわかってもらえましたが、当時はムーミンなんか子供の世界にはまだいなかったので、知らないのです。日本史か何かで、「ようやくテレビが庶民の間にも普及し始めた頃、NHKで放映されていた人形劇は次のどれか?」というような問題が出ることはありませんかね。たんなるクイズのレベルですが、それなら「ゆるキャラ」も同じでしょ? 受け狙いで、あんまり程度の低い迎合はしない方がいいように思うのですが…。


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