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情実認可「加計学園獣医学部」の未来

2017.11.13.15:54

「無理が通れば道理引っ込む」を地で行くこの問題でしたが、加計学園にとってはめでたいことに、岡山理科大獣医学部に「正式認可」が下りたようです。今治市は巨額の税金を投入し、校舎建設も進んでいる折柄、国も今さらダメとは言えないので、世論の反発を考慮して一時待ったをかけたものの、既定方針通り認可されたわけです。むろん、「疑惑」は丸残りで、大方の人はこれは「総理案件」だったから認可されたと思っています。

 この件を擁護する人たちはこう言います。首相のお友達だから認可されたわけではない。今治市はこれまで十五回も獣医学部新設を申請して、全部却下されていた。たまたま安倍政権のとき認可されたからあらぬ「疑惑」を言い立てられただけで、文科省の「岩盤規制」を「総理のご意向」によって突破した安倍さんは立派で、正しいことをしただけなのだと。

 日本獣医師会は一個の圧力団体で、これが文科省や族議員と「共謀」して認可を妨げていたというような見方をする向きもあるようですが、「獣医師は不足しておらず、問題は獣医の適正配置と待遇改善が進まないことだ」というのが獣医師会の関係者の共通認識のようで、もしも獣医師が足りていないようなら、ブラック動物病院(多数ある)の問題などは生じないわけで、公共機関の獣医師の待遇なども人手不足なら自然に上がっているでしょう。文科省には昔、歯学部を増やしすぎて、歯科医院の乱立を招き、ワーキングプアの歯医者を生み出してしまったという“前科”があります。大学の数自体、増やしすぎたので、地方の無名私大などは軒並み定員割れ(それも大幅なもの)して、自治体のお荷物になっているところが少なくありません。少子化が進むという予測はずっと前からあったのに、知恵の回らない自治体が「町おこし」のために右へならえで大学誘致に走り、文科省は安易にそれを認めすぎたので、こういう結果になってしまったわけです。

 そのあたり、文科省は無責任のそしりを免れませんが、最近の定員厳格化(守らないと補助金減額の脅し付き)の通達は、それは比較的人気の高い大都市圏の私大を標的にしたものですが、それによって定員割れ私大にも生徒が流れるようにするのが狙いで、おかげで今年あたりは僅かにその定員割れの度合いが“改善”したようです。

 獣医学部の場合は、文科省や日本獣医師会の意向はどうあれ、数が少なく、受験生の人気は比較的高いところから、ふつうなら定員割れする恐れは少ない。たしかに、政府が閣議決定した新規認可の四条件、「既存の獣医師養成ではない構想」「ライフサイエンスなど新たな分野の需要」「既存の大学では対応が困難」「近年の獣医師の需要動向を考慮」を加計の獣医学部はほとんど満たしておらず、それが「情実認可だ!」と言われる要因の一つになっているのですが、それが何だというのだ、「今治にとって黒い猫でも白い猫でも獣医学部を作ってくれるのが一番よい猫だ」(加戸・前愛媛県知事の迷言)ということになるのです。

 各種マスコミで何度も指摘されたように、建設費用も設備の割に坪当たりの単価が異常に高く算定されており、事実ならそれは体のいい「公金横領」に他ならないと僕は思いますが、「黒いネコ」なのだから、そのあたりは仕方がないということなのでしょう。

 問題は、しかし、それが税金をむさぼり食うだけの猫ではなく、「ネズミを捕る」有能な猫かどうかということです。つまり、学生集めに成功して、今治市に活況をもたらすようになるかどうか、です。獣医学部だから心配はない、と果たして言えるのかどうか。

 僕が住んでいる延岡市には九州保健福祉大という私大が一つあります。社会福祉学部、保健科学部、薬学部、生命科学部(2015年新設)という四つの学部をもつ大学ですが、これも実は「加計学園グループ」の順正学園というところの経営です。その「理事長・総長」は加計美也子氏、例の加計孝太郎理事長のお姉さんなのです。

 その最新の20017年度入学者数は317人で、定員充足率は61・6%です。「中でも保健科学部は定員170人に対し62人(36・5%)と減少が目立ち、新入学生の確保が大きな課題となっている」(地元紙の夕刊デイリー)というのです。コピペできないように加工されているようなので、詳しくは次のサイトをクリックして直接ご覧ください。

九保大の学生増に協力

 薬学部などは一時薬剤師国家試験合格率日本一を誇り、市役所の前に大きな垂れ幕が出ていたこともあるのですが、ネットにネガティブ情報が出たりしたこともあるせいなのかどうか、不人気らしく、この記事によれば、今も国試は合格率96%の高い割合なのですが、定員充足率は65.6%まで落ち込んでいるのです。薬剤師資格を取れば後が安泰、という薬学部ですらこれなのです。センター方式だけではなく、三教科入試、二教科入試、一教科入試、と入試方式はたくさんあって、指定校含めた推薦合格なども乱発しているようですが、うちの塾でここに進学したのは、十四年間でたったの一人で、それは関東地方の公立大にも合格していた、割と優秀な生徒だったのですが、薬学部の方が将来性があるし、自宅から通えるというので行ったので、ほとんどの生徒は行きたがらないのです(薬学部への進学者自体は他に何人もいる)。僕が一番信頼が置けると考えている最新の河合塾の偏差値ランキング表では、最高が「生命医科学-生命医科学前期二教科」の40で、薬学部も三教科・一教科入試は35しかなく、ランキングの一番下の欄にほとんどが並ぶという不名誉なことになっているのです(まさか薬学部でその偏差値はないだろうと言う人がいるでしょうが、そういう方は自分でご確認ください)。

 偏差値35で国試合格率96%は凄いなと、僕などそれには素直に感心するのですが、先の塾生のように、地元の高校から行った生徒にはかなり優秀な生徒も含まれているので、それに助けられているのかなと思いますが、薬学部の場合はおそらく猛勉させられるのでしょう。何にせよ、そうした高い合格率も外部からの呼び水にはならないわけで、この惨状なのです。

 開学は1999年だそうで、その経緯を僕は知りませんが、「加計の呪い」なのかと、笑えない冗談の一つも言いたくなります。ちなみに、同じ加計学園グループの倉敷芸術科学大なども、九保大と同種の学部・学科を多くもちますが、最高でも40しかなく、35が大半で、全私大同系学部・学科の中でも仲よく最下位争いを演じているのです。それはたんなる偶然なのか? 千葉科学大なども偏差値は最低ランクの35なのです。今度の獣医学部は岡山理科大(有名な東京理科大とは無関係)の新設学部としてスタートするわけですが、あそこも最高が47.5で、多くは30台です。こちらは開学は1964年と割と古く、昔はそれなりの評価を得ていたようですが、上がる大学と下げる大学がある中で、後者に入ってしまったようです。内を固めてしっかりした教育を地道に積み上げるのではなく、二代目の今の理事長がそれをないがしろにして「拡張路線」に走りすぎたきらいがたぶんあるのでしょう。少子化が進む中で地方私大はどこも苦戦を強いられているとしても、その中でも評価を上げる大学と下げる大学はやはりあるわけで、経営母体のやり方はそれと無関係とは言えないからです。

 加計の新設獣医学部に話を戻して、あれは「総理案件」だから通ったのであって、獣医学部の新設は今後はなさそうだから、競争相手がいないことも幸いして当初は偏差値55程度にはなるでしょう。加計学園は韓国で獣医学部のPRを熱心に行っていて、留学生枠を確保して、国内枠をそれだけ絞り込もうとしているようなので、なおさらです。この獣医学部には「獣医学科」の他定員60名の「獣医保健看護学科」も設けられるようですが、こちらはすぐに定員割れを起こすようになってしまうでしょう。獣医学科も獣医師の国家試験が通らなければ何にもならないので、「先進的な教育」はたんなる宣伝文句にすぎないとしても、こちらはかなり必死に受験対策をやるはずで、市や県もバックアップに乗り出して、明文化すると不公平のそしりを免れないのでそれはしないが、公的機関の獣医師採用などには「優遇条項」を設けて優先採用するなどするでしょう(その是非はともかく、この種の「不正」はどこの地方自治体にもあります)。

 問題は、開学当初からこれだけの悪評が立って、それがどの程度影響するかです。既存の国立・私立の獣医学部には学力不足で入れないが、志は高いという熱心な学生が集まればうまく行くでしょうが、そうは問屋が卸しますか、どうか。僕自身はああいう学校経営者には疑問をもつので、生徒に「ダメならあそこがある」とは言わず、勉強してちゃんとした獣医学部に入れるよう頑張るように言い、学力で届かなければ志望学部を変更するようアドバイスすると思いますが、学校関係者にも同じような考え方をする人はかなりいそうで、今治市は「やはり猫をえらぶべきだった」と後悔の臍(ほぞ)を噛む羽目になるのではないかという気がしてなりません。五年、十年とたつうちに、そのあたりは自ずと明らかになるでしょう。数ある安倍政治の「負の遺産」(まだそれに気づいている人は少ない)の一つに数えられる可能性はかなり高そうだということです。

【追記】次は毎日新聞電子版11月15日 22時06分の「加計 ノーベル学者『輩出』? 削除へ 韓国留学生パンフ」という見出しの記事です。ノーベル賞もいかさまなら、「日本で有名な名門学校法人」も聞いて呆れるので、同じ有名でもそれは notorious の方でしょう。この分では僕の上記の懸念はほぼ間違いなく的中するはずで、教育をこの学園は何と心得ているのか? 中には良心的な教育者や職員もいるだろうに、経営陣がこういう香具師(やし)の集まりでは、その人たちの地道な努力も報われず、明るい未来など期待する方がまず無理というものでしょう。

 学校法人加計学園が韓国で配った岡山理科大獣医学部の留学生募集パンフレットで、同大は2010年にノーベル化学賞を受けた鈴木章北海道大名誉教授らを「輩出」し、「世界が認める研究成果を挙げている」と記述されている。鈴木氏は北大教授時代の1979年に発見した有機化合物合成法でノーベル賞を受け、北大退官後の94年に岡山理科大教授となったが、在任は1年間にすぎない。
 岡山理科大での業績と誤解を招きかねない表現について、同学園広報室は取材に15日、毎日新聞の指摘を受けて当該部分を削除するとした。
 加計学園は獣医学部定員140人のうち20人を留学生枠とし、14日の設置認可前から韓国でパンフレットを配っていた。毎日新聞が入手したカラー6ページのパンフレットは「(獣医師は)日本の会社員の2~3倍の高収入」とし、学園のホームページでもハングルで「日本で有名な名門学校法人」とアピールしている。
 パンフレットによると志願資格は来春までに高校を卒業し、所定の日本留学試験を受けていることが条件。日本語600字の志望理由書などの提出も求めている。学園の系列大はアジアや中東などから留学生を受け入れている。【福永方人、金秀蓮】

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