最大の「国難」、安倍を「突破」するための選挙

2017.09.29.15:29

 小池都知事が新党の立ち上げを宣言し、それに民進党の前原代表が「合流」を表明したことから、自己保身以外何も考えていない安倍のセコい目論見は崩れて、俄然話が面白くなってきました。

 言いも言ったり、安倍はこのどこをどう見ても大義のない解散を「国難突破解散」と命名したそうですが、「最大の国難はおまえだろうが」というツッコミがツイッターなどにはあふれたそうで、むべなるかなです。国会で「もり・かけ」問題を蒸し返されると(どちらの問題も何一つ満足な釈明はなされていないのだからあたりまえですが)、おとなしくしていたおかげでいくらか持ち直した支持率がまた下がる。そうなると次の選挙では自民は過半数割れして、安倍は退陣に追い込まれる。そうなると妄執と化した憲法改正(注意すべきは、彼の場合、それ自体が目的と化していることです)も安倍3選も可能性はゼロになる。最大野党の民進党があのていたらくの今なら「仕方なく自民」票が見込めるから、いくらか議席は減らしても、過半数は維持でき、総理の座を維持して、自分の代で憲法改正を果たして歴史に名が残せると、彼はソロバンをはじいたのです。

「不穏な北朝鮮情勢」を本気で心配しているなら、今頃解散に打って出たりはしない。十月あたりはまだ大きな動きはないだろうから、政治空白を作ってよいのは今しかないと彼は考えて「国家のために決断」した、なんてこっけいな「解説」をする向き(そんなたわけた話を真面目に載せるのは産経だけだと思いますが)もありますが、馬鹿も休み休み言うがいいので、金正恩は「外交常識」を覆すことばかり、これまでもしてきたのです。選挙期間中に何事も起きなくても、それはたまたまにすぎない。そう考えるのが安全保障のプロというものでしょう。

 そもそも、この問題で彼は何をしているのか? 存在感はゼロで、効果も意味もないのに、北朝鮮を毎度のように非難して強がることだけで、あとはトランプをヨイショすることと、Jアラートなるものを鳴らすだけです。中国やロシアに対しては何の影響力も振るえず、それが安全保障だというのなら、小学生でも総理が務まることになる。さすがともちんを防衛相に任命しただけのことはあると、その観念右翼らしい浅薄さにはほとほと感心させられます。周囲をイエスマンで固めて政治を私物化する“能力”はあっても、適材適所に人材を抜擢して強力なリーダーシップを発揮するなど、期待すべくもないのです。

 今のまま安倍に総理をやらせておくと、オウムの麻原が追いつめられて「ハルマゲドン」を自作自演しようとしたのと似たような、悲惨な結果になるでしょう。オウムは「毒ガス攻撃を受けている」と妄想を振りまいて信者の危機感を煽りましたが、安倍の場合は北朝鮮です。遠い海上ではなく、もっと近いところにミサイルを落としてくれないかな、そしたら憲法改正にも「はずみ」がつくのに、ぐらいは思っているでしょう。彼には金正恩というイカレポンチの独裁者が必要なのです。早期かつ平和裏に問題が解決したのでは不都合で、ミサイル発射や核実験が相次いで、国民に「もり・かけ問題」などの“些事”は忘れさせるように仕向けてくれないと困る。

 僕は別に北朝鮮が危険ではないと言っているのではありません。あれは危険です。しかし、安倍のような自己都合で危機感を煽りたがる手合いは無意識に危機を増幅させるように動いてしまうから、事態はさらに悪化するだけだと言っているのです。同じ理由で安倍政権下での憲法改正は許すべきではない。例によってお友達ばかり集めて、公正周到な議論はなく、拙速な改悪に走るのが目に見えているからです。それは長い目で見た「わが国の安全保障」をかえって危うくする。保守派の中でも、まともな人たちはその危険性に気づいているでしょう。

 要するに、今の最大の「国難」とはネトウヨ幼児人格の安倍自身なのです。解散を宣言した際の演説文も読んでみましたが、アベノミクスについての臆面もない自画自賛ぶりにもあらためて驚いたので、彼には現実を直視する能力がまるで欠けているようです。以下をご覧ください。

「国難突破解散だ」 安倍首相が解散を表明。会見で何を語った?【全文】

 アベノミクス3本の矢を放つことで、日本経済の停滞を打破し、マイナスからプラス成長へ大きく転換することができました。
 今、日本経済は11年ぶりとなる、6四半期連続のプラス成長。内需主導の力強い経済成長が実現しています。雇用は200万人近く増加し、この春、大学を卒業した皆さんの就職率は過去最高です。


 バラ色の現実が広がっているかのようですが、「内需主導の力強い経済成長が実現してい」るなんて話、僕は聞いたことがありません(あの日銀ですら言っていないはず)が、そんなノーテンキなこと言ってるエコノミストが今どき誰かいるんですか? それとも僕は田舎に住んでいるせいで、「大都市圏の輝かしい繁栄」を知らないだけなのでしょうか? まあ、ゼネコンあたりは「東京オリンピック特需」(その後がこわい)で潤っているのかもしれませんが…。

 株式市場が「堅調」なのは、景気がよくなっているからではなく、それが「公的資金」で買い支えられている「官製相場」だからだし、失業率が下がっている最大の要因は、アベノミクスのおかげではなく、少子高齢化による深刻な人手不足という“自然現象”によるものでしょう。団塊の世代がどっと抜け(これは年金受給者の激増=年金会計の一層の悪化を意味しますが)、若者は減っているのだから、何もしなくても大学生の就職率はアップする。しかも今の若者は将来の生活に強い不安を覚えているので、「何が何でも就職」ということで、企業が余裕を失ってどんどん職場が「ブラック化」していても、えり好みしている心理的余裕はないのです。

 日銀の「異次元の金融緩和」にもかかわらず、一向「2%のインフレ目標の達成」ができないのも、貧乏人が増えていて、値段を高くすればモノが売れないからです。かろうじて残った「中流」も、将来が不安だから、少しでも蓄えを多く残しておこうと貯蓄性向が強くなって、購買意欲はその分低下する。目端の利いた人は投資で増やそうとするのでしょうが、企業の売上はそういうわけで伸びないのだから、それが続いても投資バブルに帰着するだけです。

 必要なのは「百年安心」なんて大嘘のスローガンで糊塗している、実質的に破綻した年金制度の抜本的改革に着手し、「過去最高」を記録し続ける医療費(当然労働人口世代の健康保険料負担は増大し続ける)にどう対処するのか、明確な処方箋を示すことですが、原発再容認と同じで、安倍政権はそうした肝腎かなめなことには何一つ手をつけてこなかった。彼はやたらと何とか「革命」という言葉を使いたがりますが、これほど旧態依然とした、「面倒なことは何でも先送り」の「反革命」政権も珍しいのです。

 安倍のこの「解散演説」には「人づくり革命」なんて噴飯ものの表現も出てきます。それは少子化対策として打ち出されたもので、

 2020年度までに、3歳から5歳まで、全ての子供達の幼稚園や保育園の費用を無償化します。ゼロ歳から2歳児も、所得の低い世帯では全面的に無償化します。
 待機児童解消を目指す安倍内閣の決意は揺らぎません。本年6月に策定した子育て安心プランを前倒しし、2020年度までに32万人分の受け皿整備を進めます。


 大学等の「高等教育」に関しては、こう言う。

 どんなに貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば専修学校、大学に進学できる社会へと改革する。所得が低い家庭の子供達、真に必要な子供達に限って、高等教育の無償化を必ず実現する決意です。
 授業料の減免措置の拡充とあわせ、必要な生活費をすべて賄えるよう、今月から始まった給付型奨学金の支給額を大幅に増やします。


 こういうのは通常野党が言うことで、自民はそれに対して「財源をどうするのだ?」と嘲罵を浴びせるのをつねとしてきました。どうせ話全体が選挙対策としてブレーンの誰かに吹き込まれたものなのでしょうが、その問題の「財源」は「消費税10%」なのです。「増税分を借金の返済ばかりでなく、少子化対策などの歳出により多く回すことで、3年前の8%に引き上げたときのような景気への悪影響も軽減できます」とのたまうのです。

 甚だ漠然としていますが、要するに、GDPの倍以上に積み上がった赤字国債を減らすのはひとまず先送りして、少子化対策や介護人材の確保(それにも触れられている)に増税分を回す、ということです。だから文句言わないでね、ということなのですが、子育て・老人世代の票を集めたいという熱意だけはよく伝わってきます。

 こうした「少子化対策」の多くは、しかし、新種の「生活保護」制度でしかありません。「所得が低い家庭の子供達、真に必要な子供達に限って、高等教育の無償化」「授業料の減免措置の拡充とあわせ、必要な生活費をすべて賄えるよう、今月から始まった給付型奨学金の支給額を大幅に増や」すというのは、一般的なものではありえないからです。それが適用されるのは前者と後者を平均して、大学生・専門学校生をもつ家庭の一割にも満たないでしょう。そのへんのことは隠して、選挙用のアドバルーンとして利用する。大方の家庭はその恩恵を受けないだろうにもかかわらず。

 年金制度の破綻や医療費の高騰にどう対処するかといった根本的な問題は放置して、周辺的な問題でお茶を濁すだけに終わるのです(「3歳から5歳まで、全ての子供達の幼稚園や保育園の費用を無償化」というのには僕は反対しませんが、その段階での教育費が深刻な負担になっている家庭というのはむしろ少ないでしょう)。

 そもそも、安倍が言うように、アベノミクスがほんとに「大成功」を収めているのなら、人々の生活水準は上がっているはずで、貧困対策でしかないこういう「人づくり革命」(よくも恥ずかしげもなくそんな大げさな名前つけたものです)は本来必要ないわけです。その矛盾に頭の悪い彼は気づいていない。すべて小手先のことでしかないので、こういうことで少子化に歯止めがかかることは期待できません。

 安倍の言葉だけ大仰で、中身は全くない演説については以上ですが、こういう嘘八百のカス政権に人々が不満を募らせても、これまでは「受け皿」がなかったのが、小池新党の出現で状況は変わってきたわけで、安倍政権はかなり怯えているでしょう。僕自身は小池新党にさほど期待するものではありませんが、同じ「右」でも今の安倍政権よりはマシな政策が示されるでしょう(「原発ゼロ」も公約に含めるという)。少なくとも安倍を退陣に追い込める力だけはありそうだと、その点では大いに期待しています。

 民進党の左派は、すでに見る影もなくなっているとはいえ、社民系の人たちと合流して、新党を立ち上げればいいだろうと思います。足が地に着いた一貫性のある筋の通った主張をすれば、リベラル層は今でもかなりいるのだから、一定数の議席は確保できるでしょう。今までの民進党はそのあたり、何が何だかわからなかったので、元々一つの党と言うには矛盾がありすぎたのです。共産主義者ではないのだから、共産党に吸収されるのは無理で、共産党と並び立つリベラル政党を一つ作ればいい。まとめられる人がいればの話ですが、そうすればうまく行くのではないかと、僕は見ています。

 何はともあれ、今度の選挙は「国難」である安倍政権を終わらせる選挙になってもらいたいものです。そうすれば、安倍のあのネーミングも、皮肉なかたちで実現したということになって、弱い野党につけ込むつもりが、逆に自分が「突破」されてしまった解散総理として、彼は歴史に名を残すことになるのです。

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