「水に落ちた犬」に手を差し伸べる「朝ナマのじさま」の慈愛

2017.08.02.16:45

「安倍一強」も今は昔、身から出た錆で支持率は落ちっぱなし、内閣改造も人気回復の手立てにはなりそうもなく、「頓死」を待つだけになった安倍首相にとって、どんな「起死回生の秘策」が授けられたのかと憶測を呼んだ田原総一朗氏の「提案」の中身ですが、日刊ゲンダイによれば、それは「9月電撃訪朝」である可能性が高い、ということです。

 何でも、田原氏は「政治生命をかけた冒険をしてみないか?」と誘ったそうで、この人は今では大御所みたいになっているものの、その都度その都度結構お気楽な思いつきを口にする人です。その「軽さ」が時代にマッチした。「右とも左とも話ができる」無節操と紙一重の「融通無碍さ」も、テレビジャーナリストとして長く息を保てた秘訣でしょう。

 それはともかく、まずそのゲンダイの記事を見てみましょう(これはニフティのニュースサイトのものですが、こちらの方が全文表示で読みやすい)。

田原総一朗氏が提案か 安倍首相「9月電撃訪朝」の現実味

 田原氏は2007年に訪朝するなど、北との独自ルートを持っている。安倍首相が前向きなのも、田原氏が訪朝の実現性を具体的に伝えたからではないのか。
 金正恩は狂ったようにミサイル発射を繰り返している。28日には米西海岸を射程に収める可能性のある大陸間弾道ミサイルを発射したばかり。トランプ米大統領の堪忍袋の緒がいつ切れてもおかしくない。さらに北朝鮮は庇護役である中国の説得にも聞く耳を持たず、対北融和を掲げて当選した韓国文在寅大統領の対話の呼びかけには返事すらしなかった。
 一方、日本の安倍政権はこれまでトランプの威を借るだけで、特段、対話を呼びかけてこなかった。それだけに、対北交渉にプレーヤーとして途中出場し、“流れ”を変えられるポジションにいるとも言える。
「コリア・レポート」編集長の辺真一氏は、「田原提案が訪朝なのかは分からない」と前置きした上でこう続けた。
「トランプ大統領の露払いとして、安倍首相が訪朝する可能性はあります。金正恩にこぶしを上げているトランプがいきなり訪問するわけにもいきません。つまり、安倍首相は難しい交渉に関与するのではなく、トランプの意向を伝えるだけのメッセンジャーの役割です。金正恩の悲願は米朝首脳会談。安倍首相が仲介してくれたとなると、拉致問題についての譲歩の可能性も出てくる。安倍政権の支持率もV字回復するかも知れません。今年の9月17日は02年の小泉初訪朝からちょうど15年。動きがあってもおかしくない」


 これがゲンダイの推測です。思えば安倍政権は北朝鮮にコケにされっぱなしです。例の拉致被害者再調査の件でも、安倍はそれを点数稼ぎに利用しようとしたのですが、まともな調査は何も行われず、一方的に打ち切られてしまった。しかし、落ち目の今、頼れるのは「北朝鮮カード」だけで、小泉政権時の拉致被害者一部帰国のひそみにならって、トランプと金正恩の首脳会談をお膳立てし、拉致問題に関しても何らかの「譲歩」を引き出せれば、「大きな業績」として世界にも国内にもアピールできるというわけです。

「別にそれを安倍にやらせる必要はないでしょう」と僕などは思いますが、田原氏はお優しいので、「これで逆転ホームランを狙え」と助け船を出したという解釈です。それで、藁をもつかみたい心境の安倍はこれに飛びついたと。

 仮に田原氏の「提案」なるものがこれだったとして、金正恩が安倍の訪朝を“許可”する可能性はかなり高いでしょう。ミサイルを打ちまくっている意図は、「アメリカを交渉のテーブルにつかせる」ことにあると考えられるからです。むろん、これは金正恩がまだ正気を保っていれば、の話ですが、北朝鮮が戦争を始めたとしても最終的に勝てる可能性はゼロなのだから、金王朝の温存と、経済制裁解除プラスしかるべき援助の確約を引き出せれば、それが彼にとっては「望みうる最大の成果」なのです。ほんとのところ、それでは問題の解決にはならないが、「差し迫った危機」は回避できたということに、一応国際世論ではなるでしょう。手詰まり状態のままミサイル発射を続ける他なくなっている金正恩は、安倍が「仲介の労」をとったということで、見返りに「拉致問題での何らかの成果」を与える。

「4年ももつはずがない」と言われている、トラブル続きの超不人気大統領トランプにとっても、これは人気挽回の大きなチャンスとなりえます。米朝首脳会談で北朝鮮の「核開発の凍結」が約束(守られる保証はありませんが)され、見返りに体制容認と経済援助が与えられるということになれば、「平和裡に事態が収拾」されたということで、「好戦的な大統領」というイメージも払拭できるからです。外交手腕もなかなかのもの、だという評価になる。

 要するに、三者とも自己の地位保全に役立つ、大きな利益が見込めるのです。別の言い方をすれば、「揃ってロクでもない連中を救済する妙案」だと言える。良識からすれば、金正恩はもとより、トランプも安倍も、早くもう少しまともな人間と交代した方がいいのですが、これによって三者の政治寿命は延びるのです。

 それでも北朝鮮が暴走を続ける今の状態よりはマシでしょうが、何か釈然としないのは僕だけではないでしょう。トランプと安倍に関しては、仮にこれが成功したとしても、それは一時的な効果しかもたず、地は偽れずにすぐにまた問題が発生する(元の問題もそのまま残っている)可能性が高いが、われらが総理大臣の場合、少なくとも「退陣の花道を飾る」ことだけはできるのです。

 仮にこれが本当だったとしたらの話ですが、田原氏は安倍の復活を期してというより、せめてみじめな終わり方をせず退陣に踏み切れるよう、慈悲心からこの「提案」をしたということなのでしょうか? それならよしとしましょう。但し、これが成功して支持率が10ポイントほど戻れば、カン違いのやたらと多い安倍は「まだやれる!」と執着を見せて政権にしがみつきそうなので、そうなると困ったことになるわけです。田原氏はそこまで読んでいるのでしょうか? そしてそうなって安倍が拙速な憲法改正まで行き着けるのが望ましいと考えているのか? そうだとしたら、傍迷惑な政治老人の世話焼きだったという批判は避けられなくなるでしょう。
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