ヤマカガシは神様ヘビ

2017.08.01.13:05

 こういうニュースがありました。以下、昨日付の神戸新聞電子版の記事。

 兵庫県伊丹市の小学5年の男子児童(10)がヤマカガシとみられる毒ヘビにかまれ一時意識不明になった事故で、一緒にいた同級生が「ヘビを捕まえるために山に入った」と話していることが31日、伊丹署への取材で分かった。同署は、男子児童らがヘビを見つけた場所は伊丹市内の公園ではなく、宝塚市切畑の山中だったと発表内容を訂正。男子児童が捕獲の際と友人宅で遊んでいた時の2回、ヘビにかまれたことも判明した。
 伊丹署によると、男子児童は29日午前10時半ごろ、友人2人と自転車などで宝塚市切畑の山道に入り、ヘビを発見。素手で捕まえてリュックサックに入れたが、その際、左手人さし指をかまれたという。
 南へ約2・5キロ離れた伊丹市内の公園で指の傷を洗った後、同市内の友人宅でヘビをリュックサックから出そうとして、今度は右手首をかまれた。夕方、自宅に帰っても出血が止まらなかったため母親が119番したという。
 発見場所が訂正されたことを受け、宝塚市は「ヘビを見かけても刺激しないように」などとホームページで注意を呼び掛けている。


 今ではヤマカガシは強力な毒蛇として知られるようになりましたが、昔は田舎でも一般にその認識はなくて、僕も大学生の頃、帰省していた際父親に聞いて驚いた記憶があります。それが実家に隣接する氏神様のところにいつもいた「神様ヘビ」のことだと知って二度びっくり。幼児の頃、そこで一人でよく遊んでいて、首に黄色い輪のある可愛らしいヘビを毎度のように見ていたからです。そこのお供えをしたり掃除をしたりしている祖母に聞くと、それは「神様ヘビ」というのだという話で、神様のおつかいだから、いじめたり殺したりしてはいけないという話でした。それは樫と椋の巨木が聳え立つ小さな社で、境内も縦長の狭いものでしたが、一度に何匹も見かけたもので、申し分なく可愛らしかった。今思えばそれはヤマカガシの幼体で、「ああ、これこれ」という写真をネットで見つけたので、ご覧ください。

ヤマカガシ 幼体写真

 可愛いでしょ? 子供はほんとにこんな感じなので、脇を細い用水路が走り、その先は田んぼになっていたので、好物のカエルがたくさんいるということで、ヤマカガシがその氏神様の周辺で子供を産んでいたのでしょう。大人になるとこの首の特徴的な輪は薄れて消えるようで、成体の方も、今思えば「そうか、あれがヤマカガシだったのか」と思い当たるのですが、当時はマムシ(これもヤマカガシほどではないが、かなりたくさんいた)は警戒しても、ヤマカガシは全く気にも留めなかったのです。マムシにかまれて死にかけたという話はあっても、ヤマカガシにかまれたなんて聞いたこともなかった。それは非常におとなしいヘビで、攻撃的なところがないからです。

 この坊やは、乱暴なことしすぎです。どんなおとなしいヘビでも、そんなことすれば噛みつくでしょう。まあ、昔の子供も、腕白坊主は尻尾をつかまえてブンブンやって投げ飛ばすなんてことをしてたもので、被害に遭ったヘビにはヤマカガシも含まれていたでしょうが、それだとヘビには噛みつくヒマもないわけです。あと、ヘビの死体は猛烈な悪臭を発するので、むやみと殺したりするものではないということは大方の子供もわかっていました。ほんとにあれはすごい臭いなのです。だからヘビ殺しは嫌われた。マムシは危険だから見つけたらすぐ大人に言って殺してもらわねばならない(そのあとはマムシ酒にするとか、皮をはいで遠火で焼いたり、日干しにしたりして食べるのです。香ばしくて非常においしい)が、他のヘビはむやみと殺すものではないとされたのです。

 マムシを食べるなんて野蛮じゃありませんか、と言われそうですが、昔の田舎ではふつうに食べていたもので、肝が据わっていてマムシとりの名人でもあった僕の祖母は、虚弱な孫によく炙って食べさせたので、僕の胃袋には何匹分かのマムシは入ったのです。やせている割には丈夫で、大きな病気一つしなかったのは、そのおかげかも知れません。

 話をヤマカガシに戻して、祖母が「神様ヘビだからいじめたり、殺したりしてはならない」と教えたのは、あれが毒蛇だということを知っていたからなのかどうか、今となってはわかりません。しかし、それは祖母の命名ではなく、昔からそう呼ばれていた(実際、神社の境内なんかでは多く見かける)ようだから、昔の人はおそらく知っていたのでしょう。そう教えて、おかしなちょっかいを出さないようにさえさせておけば、何も害はないからです。僕自身は、名前が「神様ヘビ」だし、そのヘビは小さいのからやや大きいのまでいつも見かけていたし、安心しきって、毒蛇の子供に囲まれているという自覚なんかはまるでなかったのです。

 今思うに、こういう教え方をするというのは一つの文化です。「あれは見かけはただのヘビだが、実は恐ろしい毒蛇なのだ」と教えるよりずっとエレガントです。子供の恐怖心を掻き立てることなく、危険な行為をしないように仕向けて、安全を守るのです。

「史上6番目の大量絶滅の時代(今回は人為的な原因による)」と言われる今は、他の生物同様、ヘビの個体数や種類も激減しているようで、僕はそれを憂慮する者の一人ですが、大体、自然の中にいるものを勝手につかまえてきたりするものではありません。僕は小学生の頃、ある家の軒先に雀の巣があるのを見つけてヒナを取り、母親が「放してやれ」と言うのも聞かず、それを飼っていたことがあるのですが、ある日庭の柿の木に吊るした籠の中の2羽のヒナに親鳥が餌を運んできているのを目撃して、ショックを受け、逃がしてやりました(もう飛べるまでになっていた)。こちらは可愛がっているつもりでも、野生の鳥には迷惑なのです。ましてやヘビなんか、ペットにするものではありません。毒蛇でなくてもそれは同じなので、「自然観察」にとどめておいてもらいたいものです(と、一応立派なことは書いたものの、僕も自分が好きなトノサマガエルがヘビに呑まれかけているところを見て、怒って棒で叩いて自然の営みを妨害したりしていたので、その資格があるかどうかは疑わしいところです)。

 近くにヤマカガシがいるという人は、子供たちに「あれは神様ヘビだよ」と教えてあげてはどうでしょうか?「科学の時代」の今の子供には効き目はありませんかね?
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