「加戸」証言で「加計」認可正当化はどだい無理だという話

2017.07.20.16:00

 自民、民進両党は19日、学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画をめぐる安倍晋三首相出席の予算委員会集中審議について、衆院は24日、参院は25日にそれぞれ5時間ずつ開催することで合意した。両党が対立していた衆院予算委での質問時間の配分は、与党が1時間半、野党が3時間半と「与党3割、野党7割」で決まった。
 自民党の小此木八郎、民進党の笠浩史の両国対委員長代理が19日、断続的に協議し、確認した。
 参考人については「互いに呼びたい人を招致する」ことで一致した。民進党は獣医学部新設を促したと指摘されている和泉洋人首相補佐官と「行政がゆがめられた」と主張する前川喜平前文部科学事務次官、自民党は「ゆがめられた行政がただされた」と文科省の過去の対応を批判した加戸守行前愛媛県知事らをそれぞれ招致する。(産経新聞7.20)


 この記事の「加戸守行前愛媛県知事」は安倍にとってほとんど唯一と言ってよい「頼みの綱」で、同じ産経が喜色満面でインタビュー記事を載せています。

加戸守行前愛媛県知事インタビュー「四国4県ともとにかく獣医がほしいんだ!」「さすが民主党と思っていたら…こん畜生!」

 これ、見出しにしてからが紛らわしく、最後までお読みになればわかりますが、「さすが民主党と思っていたら…こん畜生!」は、「お笑いだけど、民主党政権がひっくり返って、今度は自民党政権に戻ったら進まない。こんちくしょう、と思ったよ」なのです。民主党政権に働きかけて、それでうまく行きそうだと思ったら、「今度は民主党が民主党獣医師議連を作ってしまった」りして、邪魔が入りかけたところで、自民に政権が戻り、すると話が進まなくなってしまった。今の安倍政権が強力プッシュするまでは、という話なのです。

 この前知事の「証言」、お世辞にも明快とは言いかねるのですが、それを整理すると、こういう話です。僕が話をねじ曲げているかは、記事と照らし合わせてご判断下さい。

 まず、今治市には初めから獣医学部新設に対する「熱い思い」があったわけではないということです。「都市再開発の構想が十何年も眠っていたまま」で、「高等教育機関を引っ張ってきて学生の街にしよう」という「都市学園構想」が浮上、「地元の松山大学が手を挙げて進めたが、経営学部の設置構想もできた段階で学内の左翼グループ教官の猛反対にあい、潰されてしまった」という前史があったのです。「学内の左翼グループ教官の猛反対にあい、潰されてしまった」という理由が、前知事の主観によるものか、客観的事実なのかは知りませんが。

 そこに、某県議が加計学園の獣医学部新設の話をもってきた。それに知事は「飛びついた」というのですが、「少子高齢化に悩む今治市にとってみれば、若者が来て、街が活性化すればよかった。ただ、愛媛県は学園都市よりも獣医学部が欲しかった。獣医師が欲しい、感染症対策をやってもらいたい、という思いだった」という話にすり替わってゆく。

 どうして「すり替わった」なんて言うのかといえば、「獣医学部」という話を聞いて、「愛媛県は学園都市よりも獣医学部が欲しかった」と思ったと言うのは、順序がヘンだからです。獣医学部を作ってくれる大学はないかというので必死に探していたら、加計学園が手を挙げた、というのなら話は分かりますよ。そうではないのだから、この前知事の話は眉に唾をつけて聞く必要があるのです。

 この前知事も加計学園から鼻薬をかがされていたのではないか?というのは邪推のしすぎかもしれませんが、常識的に考えてヘンだとは誰でも思うでしょう。ま、その「疑惑」はさておき、前知事のおしゃべりをしばらく拝聴しましょう。

 私の知事時代には鳥インフルエンザが発生し、米国では狂牛病が発生した。22年には口蹄(こうてい)疫が発生したが、獣医師が足りず大わらわだった。
 調べると、県庁への志望者が不足しているゆえに公務員獣医師を採用できない。そのため、鳥インフルエンザや狂牛病やらで獣医師が手いっぱいなのに人手が足りないのだ。
 しかも、愛媛県だけでなく、四国4県すべてがそうだった。定年の人にも定年延長して残ってもらって、悲鳴をあげている状態だ。農家が牛や豚が病気になったら頼りにする家畜衛生試験所の技師も獣医師だが、そこも人が埋まらない。
 調べてみたらなんてことはない。獣医学部の入学定員は、神奈川県以東が8割、岐阜県以西が2割となっている。私立大学のほとんどは東京にあり、圧倒的なシェアを持っている。
 だから、こっちで獣医学部を作るものなら、学生を奪われることになるから、「俺たちの縄張りを荒らされる」と反発するわけだ。


 加計学園の獣医学部構想の話を聞いてから、知事さんは俄然熱心になり、あたかも昔からそれを考え続けていたかのようになったのですが、「こっちで獣医学部を作るもの(ママ)なら、学生を奪われることになるから、『俺たちの縄張りを荒らされる』と反発するわけだ」なんて、そこらのおっさん並の憶測にすぎません(私学であっても、伝統ある獣医学部が田舎の新設大に学生を奪われるなんて、ありえませんよ)。それなら地元の農学部のある国立にそれを作った方がいいのは、学費の点を考えても明らかです。私大の獣医学部の初年度納入金は大体250万程度、次年度以降も年額200万を下回ることはありません。国立なら初年度約82万、次年度以降は54万です。これは薬学部平均より高い。そして医学部と同じ六年制なのだから、貧しい地方の一般家庭にはしんどい。勢い、東京を初めとする大都市の富裕層の子弟が増え、彼らは卒業して獣医師資格を取得すると帰ってゆくでしょう。地方の国立医学部ですら、他学部と較べて大都市圏からの入学者が多く、地元の医師不足が解消されないと嘆いているのです。だから地域枠推薦制度なんてものを作ることになった。

 だから、加戸前知事の主張はほとんどナンセンスなのです。それで四国に獣医師が増えるという保証は何もないのだから。日本獣医師会は獣医は全体として足りていると言います。ペットの数も減っているし、畜産業も衰退しているから、全体として獣医需要は減少しこそすれ、増えてはいないのです。待遇が悪いから居つかないだけ。鳥インフルエンザや口蹄疫などの伝染病対策は重要でしょうが、質の高い獣医教育を行うには教員が足りていないという問題もある。率直に言って、160人もの大定員の加計獣医学部に、それに見合った質と量の教員が確保できているのかどうかは大いに疑わしいので、設備だけ新ピカでも、そちらが揃わなければまともな教育はできないのです。例の「獣医学部新設の4条件」は加計学園の認可のためにどこかへ行ってしまったわけでしょう? いい加減な話です。

 だから、次の言葉など、デタラメそのものだと言えるでしょう。

 国立大学はかなり充実した教育をしているが、1つの大学でも30人程度しか養成していない。獣医師不足を解消するには、獣医師をもって来る、しかも私立大をもって来るしかないとなった。

 ヤブでも何でもいいから、手っ取り早く獣医を増やせ、そしたら他では雇ってくれないから、地元に居着くだろう、みたいにしか聞こえないので、しかし、そんなヤブ獣医、ものの役には立たないでしょうよ。「しかも私立大をもって来るしかないとなった」は意味不明ですが、良心の欠落した私立学校経営者なら、「教育の質」にはこだわらず、大量養成してくれるからいい、ということなのでしょうか? しかし、すでに見たように、高い学費を支払えるような親は四国あたりには少ないから、卒業後地元に残る者は少なくなる。現実政治家としてそのあたりのことも考えていないというのは、いかがなものでしょう?

 安倍は「岩盤規制をぶち破るためにやった」と説得力のない主張を繰り返しているわけですが、この前知事も同じことを言います。

 加計学園の話が来て、四国4県の知事が連名で「四国に獣医学部を作ってくれ」「認可してくれ」と動いたわけだ。
 すると“壁”にぶちあたった。今度は獣医学部の定員を増やせないという。僕らは怒って「もし、薬剤師や医師や看護師は8割を東京で養成して、関西で2割しか入学定員がなかったら、暴動が起きるよ」と言ったら、ケンカが始まっちゃった。
 ところが、構造改革特区で申請してもはねられ、文部科学省に行っても「農林水産省がうんといわない」、農水省に行くと「いや、獣医師会が反対で」と言う。
 これまた、なぜなのか調べてみると何てことはなかった。日本獣医師会の政治団体「日本獣医師連盟」が自民党の獣医師問題議員連盟に政治献金し、パーティー券を買っていたんだ。


 正体見たり、既得権益!というわけです。巨大な「圧力団体」としての日本獣医師会が自民に献金し、行く手を阻んでいる…。そういう図式ですが、獣医師会にそれほどの力があるのなら、全体に獣医の待遇はもっと良くなっているでしょう。

 また週刊文春が都議選の直前、加計学園の秘書室長が元文科相の下村博文に200万円分のパーティ券の売却代金を届け、報告書への記載を怠っていたというスクープ記事を出しましたが、あれなど、巧妙にも加計自身は「購入」せず、とりまとめ役を行っていただけ、というだけになおさら、怪しさは募るのです。獣医学部新設で大活躍したと伝えられる萩生田が落選中、加計の千葉科学大で客員教授のポストをもらい、苦境を救われていた、なんておまけもある。安倍自身もしょちゅう加計理事長にはおごってもらっていたわけです。日本獣医師会の献金は、この手の各種業界団体には「ふつう」のことでしょうが、加計のこちらは「ふつう」とは言えない。

 むろん、当時の愛媛県知事はそういうことはご存じなかったのでしょう。このインタビューを受けた頃も、下村の件はまだ知らなかった。知ってても、次のように言うくらいだから意に介さなかったかも知れませんが。

 安倍晋三首相と加計学園の理事長が友達だと知ってたら、直訴してでも10年前に獣医学部を作ってますよ。安倍首相に「あんた、加計学園の友達でしょ。やってくださいよ」って。50年も東京の私学を守るために、獣医学部を地方に作らせないなんてふざけた話があるのかって直談判してましたね。

「加計学園の友達」だから認可しろって、ムチャクチャな話ですが、「われに正義あり」とこの御仁は思い込んでいるから、そんなことは気にしないのです。地方の獣医学部新設を認めないのは、「東京の私学」と日本獣医師会、その献金を受けている議員連中、そして農水省、文科省がグルになった既得権益団体の「岩盤規制」のせいだと信じている。自分自身、加計の獣医学部構想を聞くまでは、べつだんそんなことに関心はなかったのでしょうが…。

 もう一つ、付け加えておくと、産経は「民進またまたブーメラン」なんて冷やかし記事をよく書きますが、この記事にもその意図があるようです。

 21年に民主党政権になって、愛媛で白石洋一氏が民主党から衆院議員に当選した。彼に「自民党ができなかったことをやれば民主党の点数が上がるぞ」って言って、一緒に文科省に陳情に行った。彼が四国の議員らに声をかけてくれて、獣医学部を作るべきだと国会質問もやってくれた。
 そしたら、今までは構造改革特区で「対応不可」だったのが、鳩山由紀夫政権の終わりの頃には「実施に向けて検討」となった。
前に進んだよ、さすが民主党、と思っていたら、今度は民主党が民主党獣医師議連を作ってしまった。日本獣医師連盟は玉木雄一郎衆院議員(現民進党幹事長代理)に100万円の献金したとか…。お笑いだけど、民主党政権がひっくり返って、今度は自民党政権に戻ったら進まない。こんちくしょう、と思ったよ。


 産経はお得意の論法で、「民進の議員が元は加計の獣医学部新設のために運動していた。なのに、今は安倍政権攻撃に使っている。しかし、こうした過去を振り返れば、それはまたしてもブーメランなのだ!」とやりたいのです。

 しかし、いいかどうかはともかく、地方選出議員がその地方への利益誘導のために熱心に運動するのはありふれたことです。そしてそれが正常なプロセスを踏んで成功した場合には、一応は問題ない。今回問題なのは、安倍政権がそのプロセスを加計学園認可のために大きく歪めた、ということです。森友の件でもそれは同じなので、常軌を逸した「戦前回帰」教育を首相夫妻が賞讃し、とりわけ妻のアッキーは熱心で、100万寄付したのみならず、国有地格安払い下げや、小学校新設スピード認可を後押しした。籠池元理事長が言うように、明らかに「神風が吹いた」のです。森友では妻のアッキーの関与が大きく、加計では夫の晋三の関与が大きかった。僕が「韓国並の情実政治への堕落」だというのは、そこのところです。

 加戸守行前愛媛県知事の言い分は、すでに見たとおり、ご本人の主観によるところが大きく、説得力には乏しいと僕には思えます。が、それを論破するのは野党の議員先生たちの仕事です。今までの自民では駄目だったのに、安倍政権では進んだ。これは「岩盤規制打破」の「革新的」な安倍政権の手柄だ、と彼は主張しているわけですが、その「規制」には確たる理由があって、必ずしも規制が悪いとは言えない。そもそも加計の獣医学部新設で四国の獣医師不足が解消する保証は何もないのだし、安倍のその「岩盤規制打破」がたんなる名目上のもので、お友達への「便益」をはかるのが裏の真の目的だったという見方を崩すには、前知事の話は根拠薄弱であるということを示せばよいのです。

 それはそんなに難しくないでしょう。今度の集中審議でこの腐れ政権にとどめを刺してくれるよう、僕は期待しています。これ以上、こういう程度の低い政権に悩まされているゆとりは今の日本にはないはずです。早く安倍を退陣させて、先に進みましょう。

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