劉暁波氏、中国共産党的虐待のうちに死す

2017.07.14.16:42

 これは世界的に大きなニュースになった(中国メディアは沈黙、と伝えられていますが)ようです。以下はそれについての毎日の記事。

劉暁波氏 死去61歳 中国の民主活動家、ノーベル平和賞

「私には敵はいない」がモットーだったそうですが、ダライ・ラマと並んで、中国共産党政府にとってはいくら憎んでも憎み足りない「体制の敵」だったことでしょう。笑うしかないのは氏は天安門事件後「反革命罪」で逮捕、投獄され、死の直前までは「国家政権転覆扇動罪」で十一年の懲役判決を受け、刑に服していたことです。天安門事件は大学生たちが中心となって「民主化」を求めて起こした事件でした。なのにそれが「反革命」と呼ばれるというのは、あの異様な独裁体制が「革命政権」を自称しているからで、当局によれば、今なお「革命」は「進行中」なのです。

 マンガみたいな話だと、笑う自由は当時も今も中国にはありません。「国家政権転覆扇動罪」にしても、ネットで中国政府批判をぶっただけでそれに該当してしまうので、恐ろしいことこの上なしです。習近平が敵とみなしている共産党幹部のスキャンダルなど流したのであれば、「正しい革命勢力」と認めてもらえるのかもしれませんが…。

 その点、日本はお気楽な国です。「安倍晋三は腐った馬鹿だ」と、それは事実だと僕は思っていますが、書いても逮捕・投獄されることはなくて済むからです。大手メディアの場合には脅しがかかるとしても、逆らったところで別に命の危険があるわけではない。官邸に人事を握られた(これはそれ自体、問題なわけですが)役人たちにしても、干されるか左遷されるかするだけで、別に大したことはない。「その程度」なのに保身にかまけて言いなりというのがいかにも情けないところで、中国の人権活動家たち(それはたくさんいる)とは「鍛えられ方が違う」のです。

 だから日本も苛烈な弾圧が行われた戦前の特高時代に戻せと言っているわけでは、むろんありません。それに戻りたくなければ、きちんと批判すべきは批判、阻止すべきは阻止して、権力の暴走を許さないようにしないと、あとで後悔しても始まらない、というだけです。

 僕に奇怪に思われるのは、産経などの右翼メディアはやたら中韓批判に熱心ですが、彼らが妄想する「神の国」は、同種の独裁・情実政治を実現して、社会を同性質のものにbackslideさせてしまうのがなぜわからないのか、というところです。いや、中国のような独裁軍事国家に対抗するには、同じ性質の国家でなければならない、ということなのかも知れませんが、頭が悪すぎると批判されてもまともな反論はできないでしょう。おかしな国家主義に同調しない連中は日干しにされたり、弾圧されて当然だというのでは、中国共産党の独善性、暴力性と何ら変わりはないのです。幼稚な安倍の「美しい国」というのは、まさにそういう国のことなのですが(森友学園幼稚園のあの運動会みたいなものが日常化する光景を想像すればよい)。

 話を劉暁波氏に戻して、僕は氏の思想については何も知りません。その非暴力を通じての徹底抗戦の姿勢、「私には敵はいない」の思想(英文著作にNo Enemies, No Hatredというのがありますが、それはこれのことでしょう)からして、「中国版ガンジー」という感じですが、この際だからそのNo Enemiesでも取り寄せて読んでみようかと思っています。それの翻訳かな、というのが一冊ありますが、日本語への翻訳点数は少なく、これは氏は獄中生活が長くて多くの本は出せなかったのも関係するのだと思いますが、その少ない日本語訳も絶版だったり、品切れだったりするからです。ウィキペディアの記事によれば、氏はあのアホなブッシュによるイラク戦争も支持したそうですが、独裁制への強烈な嫌悪からバイアスがかかっていたか、不十分な情報しか得ていなかったからでしょう。

 にしても、安倍政権は中国政府の「覇権主義」をとやかく言う割には、ノーベル平和賞(それは皮肉なことに、中国にとっては初のノーベル賞でした)まで受賞したこの「内側からの民主化」をはかろうとする反体制詩人には冷淡だった。今回もアメリカやドイツは治療を申し出たのに、中国政府の逆鱗に触れるのを恐れてか、そのような動きは全くなかったからです。これは「安全地帯でばかり吠えたがる」安倍政権の駄犬ぶりを示すと共に、体質的に、安倍はこの手の人物が嫌いだということも関係するのでしょう。

 前に人権派弁護士が一斉逮捕されたというニュースがあったときもちょっと書きましたが、世界にとって一番望ましいのは、中国内部の民主化勢力が増大し、「内側からの革命」が起きることです。覇権には覇権をもって対抗するというやり方をしていたのでは、いずれ第三次世界大戦は避けられなくなる。中国政府が最も恐れているのも、この「内部の反体制分子の増大」なのです。だから異様なまでに神経質になっているが、それは逆に共産党権力のアキレス健がどこにあるかを“告白”する結果になっているのです。

 こう言えば、あの「アラブの春」の事例にも見られるように、安易な「民主化」はかえって混乱を深刻化させるだけだと言う向きもあるでしょう。しかし、それは旧体制の積弊が混乱の主因となっているのだと見た方が正確なので、そのあたりの困難を乗り越えるには時間がかかるというだけの話で、方向そのものは間違っていないでしょう。北朝鮮も、中国も、ああいう異常な独裁体制は崩壊してくれた方がいい。

 にしても、共産主義(=中国)といい、主体思想(=北朝鮮)といい、理念とその現実との落差たるやすさまじいもので、政治イデオロギーというのはブラックジョークにしかならない運命をもっているかのようです。民主主義について、かつてチャーチルは言いました。

It has been said that democracy is the worst form of government except all the others that have been tried.

 これは有名です。「民主主義は最悪の政治形態だと言われている。これまで試されてきた他のすべての政治形態を別とすれば、だが。」

 政治体制というのは所詮そのようなものでしかないということを、僕らは忘れるべきではありませんが、皮肉屋の彼の格言にはまた次のようなものもあるそうです。

You have enemies? Good. That means you’ve stood up for something, sometime in your life. (君には敵がいるって? よろしい。それは君が人生で時には何かのために立ち上がったことがあるのを意味しているのだ。)

 むやみやたらと喧嘩するのはただの馬鹿ですが、この世は天国ではないので、ときには立ち上がって戦わねばならないこともある。望むらくは、それが利己的な目的のためでも、未熟な主観や偏見に根差すものではないことで、その場合は敗れても、劉暁波氏のように天に嘉(よみ)される存在になることでしょう。若者にはとくに、それは覚えておいてほしいと思います。

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