宮崎県の県立高校 課外1コマ1800円の教員報酬?

2017.06.28.16:27

「延岡の高校」コーナーに日曜、新たにこういうコメントが入っていました。

 課外と模試は全員参加になっているのは不参加者が半分もいたら先生に払う課外と模試の手当が払えないから全員参加を強要するのでないかと思います。宮西は課外手当を便覧に公表しました。1コマ1800円と記載されてます。
 宮西は数学と英語の教科書を課外で進行させてます。国語は課外で古文漢文を進行させてます。
  延岡高校が不受講願を出させているから不受講願を大多数の生徒が出せないのは、授業と課外を連結してる証拠でないかと思います。


 この人の投稿文(Y君でしょ?)は句点が不足している上に、いつも微妙に「てにをは」がヘンなので、もっとよく頭を整理してから文を書いてもらいたいと思うのですが、とくに最後の部分は日本語になっておらず、意味不明です。それでその箇所を推測すると、延岡高校では「不受講届」というのをタテマエ上は出せるようになったが、大多数の生徒が出せないのは、「授業と課外を連結している」からではないか、ということなのでしょう。

 これについては、延岡高校の場合、今は一応正規授業とは「分離」するよう上から指示は出ているようです(守っていない先生はいるかも知れませんが)。分離はしていても、大方の生徒が受講するなら「受講しない」と言うのは勇気がいるし、仮にその届を出しても、担任の先生から翻意するよう説得されて、結局は受けさせられることになってしまう、という問題があるのです。だから結果として何も変わらないことになる。

 この高校の課外(とくに朝課外)は、去年の冬頃、テレビの「マツコ会議」でも取りあげられて、「そんなのあるの??」とマツコはもとより、他地域の多数の人を驚かせたらしい、という話を前についでに紹介しておきましたが、長く九州全体で広く行われており、それが一向改まる様子がないところから、「九州地方の宿痾(しゅくあ)」と化しているのです。

「宿痾」というのは「長く治らないしつこい病気」のことです。親もそれを経験して「あたりまえ」と思っている人が多いし(九州の外に出てみれば、それは「異常」だったとわかるのですが)、この制度は「塾や予備校の肩代わりをする」という名目で始まったようですが、課外費は徴収されていても、それは安い(在校生全員を顧客にできるのだから、あたりまえの話ですが)ので「助かる」と思っている親御さんはいまだにいるようです。

 むろん、「あんな課外では受験学力はつかず、目指す大学には受からない」と思っている生徒や保護者は多い。いわゆる「意識高い系」の親子はほとんどがそうでしょう。そういう人たちは、仕方なく課外に付き合いながら、塾に行ったり、通信添削を受けたり、スタディサプリの類を活用したり、あれこれ工夫しながら勉強しているわけです。朝課外で寝不足になり、疲れているから、塾に通う場合でも、効果はその分減殺されてしまうのですが。

 教員報酬については、一コマ50分1800円というのは、他の高校も大体似たようなものかなと思いますが、先生たちにとっては悪くない「副業」でしょう。朝早くからボランティアで先生方がやって下さっているのだから、文句を言うと罰が当たる、なんて無邪気に思い込んでいる生徒も少なくないようですが、それは違うわけです。よくある「サービス残業」でそれをやっているわけではなくて、休日に模試の試験監督をする場合でも、給料とは別にちゃんと手当は出ているのです。

 ちなみに、前にも書きましたが、課外の主宰者を名目上PTAに変えたのは、この課外の件は沖縄かどこかで裁判沙汰になったことがあって、学校主宰ではまずい、ということで、変更されたのです。何がまずかったのか? あらためて調べてみると、「教育公務員特例法」という法律の、次の条文に抵触すると恐れたからのようです。

第十七条=教育公務員は、教育に関する他の職を兼ね、又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと任命権者において認める場合には、給与を受け、又は受けないで、その職を兼ね、又はその事業若しくは事務に従事することができる。

 公務員は原則「兼業禁止」ですが、こういう「例外」が設けられていて、課外はこの「教育に関する他の事業」に相当するが、学校が自分で課外費を集め、主宰者としてやっていたのでは、公立の学校で税金から給料をもらいながら、同時に事業主体として「塾商売」もしていることになって、法令違反になってしまうのです。それでPTAを名目だけでも主宰者に立て、その「要請」に応じて、「それならやってあげましょう」というかたちで実施しているということにすれば、「教育に関する“他の”事業に従事」という体裁になって、「給与を受け」ても「違法」ではないことになる。そういう仕掛けなのです。この場合の「任命権者」というのは県なのでしょうが、そこに届を出しておけば足りる。

 それってインチキじゃありませんか、と言う人が多いでしょうが、たしかにインチキです。しかし、こういうかたちにすれば形式上「合法」にはなるので、「そういうまぎらわしいことを公教育に従事する人間がやっていいのか?」という疑問は当然ありますが、「課外を維持するにはこれしか方法がない」ということで、やっているわけです。

 本来この規定は、学校の優秀な先生が教科書や参考書を執筆したり、講演の依頼を受けて有料でそれを行うなどした場合、印税や講演料を受け取るわけですが、それもできないのでは困る、ということで設けられた規定でしょう。生徒の慢性睡眠不足の原因となる朝課外なんておかしな制度をバックアップするために作られたものでは毛頭ないのですが、それを「悪用」しているわけです。

 ただ、誰も言う人がいないようなので言っておきますが、これはそうしてもなお「法令違反」になっている疑いはあるのです。それは「本務の遂行に支障がないと任命権者において認め(られ)る場合」という但し書きがついているところで、先生たちはそれで多忙になりすぎて、本来教師に不可欠な自己研鑽を怠り、教科学力や指導力を伸ばせず、「本務の遂行に支障」をきたして、低レベルの授業しかできなくなっている可能性があるからです。

 僕はしばらく前にここで、延岡高校の文法プリント、「ベーシック・グラマー」に低レベルの嘘の解説が載せられていることを指摘しました。あれはMS科・普通科共通の教材で、解説の間違い以前に、無駄に量だけ多くて半端でなく退屈なシロモノ(その名に反して文法力自体がつかない)なのが問題なのですが、長くあんなものを使い続けているというのはたんなる教師の怠慢と学力のなさを示すものでしかない、と言えるわけです。すなわち「本務の遂行に支障」が出ているわけです。課外なんて余計な「副業」に励んでいるヒマがあったら、正規授業の中身をもっと工夫しろ、と言われても仕方がないのです。

 もう一つ、そもそもの話、ふつうの公立高校の先生に「塾や予備校の肩代わり」を求めること自体が無理なのです。彼らはその道のプロではありません。教員採用試験はそういうことを採用基準にはしていない。中にとびきり優秀な先生も数は少ないが混じっていて、そういう先生たちなら受験指導もできる、というだけの話なのです。宮崎県の課外制度は、しかし、「塾や予備校の肩代わり」を教師全員に押しつけることになる。そこにも無理があるわけです。

 むろん、塾や予備校にも無能な教師はいますよ。しかし、こちらには自由競争による「淘汰の法則」が働いて、僕は関東で中学生相手の集団塾の校長というのも三十代の頃していたことがあるのですが、生徒たちは無遠慮に「あの先生、わけがわからないから替えて」なんて言ってくるのです。一応本部で「研修」なるものを受けてから配属されることになっていたのですが、それでもそういうのはいるので、仕方がないから生徒と一緒にその講師の授業を受けてみて、あとで改善点をアドバイスしたりするのですが、中にはそれでよくなる者もいるとして、駄目なものはやっぱり駄目で、大方はクビになる以前に自分からやめていく。もしもそんな「わけのわからない」教師をそのまま雇い続けていれば、塾の激戦区ならなおさら、潰れるしかなくなるのです。そういうシビアさがこの業界にはあって、そこが破廉恥罪で逮捕でもされないとクビにはならない親方日の丸の公立学校とは違うのです。

 だから、学校の先生が塾の真似事をしたいのなら、知り合いにでも頼んで学校の外に塾を作ってもらい、そこで雇われている形式にしてやればいいのです。つまり、塾と同じ土俵で勝負すればいい。それなら紛らわしさはなくなるし、生徒の自由・自発性も担保されるでしょう。朝課外に相当する「早朝塾」というのをやればいいのです(怠惰かつ朝寝坊の僕などは、殺されてもそんなものはやりませんが)。眠い目をこすりながらでも、あの先生の授業ならぜひ受けたいと生徒が思えば、そこに行くでしょう。全員がということにはむろんならないから、希望者は激減して、費用も今よりはるかに高くしないと先生に時給1800円も払えませんが、それは仕方がないので、それでも生き残れれば、それは本物です。

 本筋から言えば、それが正しいのです。そして正しいことをやるのが公教育に携わる者の責務なので、生徒たちの多くには「絶不評」の朝課外を正面切っては釈明もできないようなやり方で全員に押しつけ、ずるずるそれを続けるのは姑息というものでしょう。

 僕のところには、ここのコメント欄だけでなく、ブログ経由でメールが届くこともあって、それがまともなものなら、返事はきちんと書いているのですが、他の塾経営者、保護者、生徒たちからのそれはあっても、当の学校の先生たちからのそれは絶無です。学校のホームページの類に反論が出ていた、という話も聞いたことがない。それは生徒たちが全校集会の話し合いのテーマに課外問題をとりあげてほしいと要望しても、ムニャムニャ言って拒絶してきたのと同じでしょう。そこらへん「もり・かけ」問題での安倍政権の対応と似ています。安倍は質問されると逆ギレしたり、説得力に乏しい意味不明の言い訳を並べたり、挙句の果ては全然違う話を持ち出して、国民にそれを早く忘れさせようとしているのですが、こちらの方が歴史が古いので、安倍政権はそれを真似たのかもしれません。つまり、宮崎県の県立高校のこの問題に関する対応は「国政をリード」しているわけで、学校の先生たちは生徒に、「今の安倍政権のやり方はうちの真似をしているのだ!」と自慢できるのです。

 おおっ、と生徒たちから感嘆の声が上がるかどうか、僕の知るかぎり、今の高校生たちはもっとずっとまともなので、安倍政権が支持率を大きく下げたのと同じ結果になるでしょう。いずれにせよ、学校には教育機関にふさわしいもっと正直、誠実な対応を望みたいものです。「いや、うちの子は何でもいいから強制されないと勉強しないので、あの課外は有難いんです」なんて言っている親御さんには、大学受験はそんな甘いものではないし、それでは主体性も何もない頼りないオトナにしかなりませんよ、とだけ言っておきましょう。

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