安倍政権の危機意識よりはマシと言えるが…

2017.06.22.16:38

 以下、時事通信の記事です。

 石川県の谷本正憲知事は21日、金沢市内で行われた県内町長らとの会合で、北朝鮮による弾道ミサイル発射に関し「(県内の)北陸電力志賀原発を狙う暴挙をするなら、兵糧攻めにして北朝鮮の国民を餓死させなければならない」と発言した。制裁強化の必要性を強調したものだが、物議を醸しそうだ。
 出席者によると、発言は年内にも行う県内でのミサイル発射想定訓練をめぐる意見交換の際出た。
 谷本知事は会合後、記者団に対し「北朝鮮国民には大変迷惑がかかるが、(制裁強化により)同国民が目覚め『間違ったリーダーを抱えている』と理解させないといけない」と説明。発言の妥当性については「過激な発言にならざるを得ない。なぜわれわれが避難訓練までしないといけないのか」と述べ、撤回しなかった。(2017/06/21-19:09)


 前に安倍政権のこの問題に関する対応のお粗末については、「お笑い内閣官房『弾道ミサイル落下時の行動等について』」(4.22)で書いたことがあって、憲法改正がどうのとギャアギャア言う割には、危機管理がなっていないのに呆れたのですが、それと較べれば、この知事さんの方が切実感をもっているわけです。

 しかしながら、独裁国家北朝鮮の場合には、見てのとおり、民は飢えても上はへっちゃらなわけで、金正恩のあの見苦しいまでの「ムダ太り」を見てもそれはわかろうというものです。「同国民が目覚め」たところで、反政府的な行動はとれない。日本の場合だと、官房長官によって「私生活の秘密」を読売か産経にリークされて、信用を貶められる危険はありますが、「即死刑」というところまでは、まだ幸い行っていない。北朝鮮の場合だと、仮に「目覚め」たところで、公開処刑を食らうのが関の山なのです。

 洗脳教育の問題もある。わが国もそれは戦前戦中経験したところで、それプラス情報統制&大本営発表のおかげで、民族絶滅の瀬戸際まで行ったのです。「あの愛国教育は素晴らしかった」と郷愁にふけっているのが、今の安倍政権なわけで、森友問題の深刻さも、皆さんもうお忘れのようですが、本質はそこにあったわけです。ああいう騒ぎにならなければ、あの手の「教育勅語教育」を、日本会議の面々や安倍政権は「普及」させたかったのです。アッキーなんかは、それが「神様のお導き」だと本気で思っていた。その割には自分の身に害が及ぶとなると、関係者一同「手のひら返し」がすごかったわけですが。

 大体、昔の百姓一揆ではあるまいし、餓死寸前に追い込まれた国民が、どうやって近代的装備の軍隊をもつ国家権力を転覆できるんですか? 現実性にも乏しい論理で、北朝鮮との融和を掲げる文政権の韓国には、「これだから日本は…」ということで、「朝鮮民族を蔑視する本性がよく表われたもの」として、反日感情強化の新たな材料を提供することにしかならないでしょう。

 歴史を振り返ると、朝鮮半島では昔(日本の明治時代)、歴史教科書でおなじみの「東学党の乱」というのがあって、それは「閔氏政権の重税政策、両班たちの間での賄賂と不正収奪の横行、そして1876年の日朝修好条規(江華島条約)をはじめとした閔氏政権の開国政策により外国資本が進出してくる等、当時の朝鮮の民衆の生活は苦しい状況であった」(ウィキペディア)という時代背景の中起きた農民反乱だったのですが、その勢いに恐れをなした朝鮮政府は中国(清国)に軍事介入を要請し、日本はこれに対して、日本公使館と日本人居留民の保護を名目として、軍を派遣し、そこからややこしいことになって、日清戦争勃発へとつながるのです。そしてその戦争が日本の勝利に帰したのち、東学党の第二次蜂起が行われ、日本・李朝連合軍によって鎮圧、という展開になるのですが、朝鮮政府はそのリーダー全琫準を処刑する。しかし、こういうの、韓国の歴史教科書などでは、「とにかく日本が(中国も少し)悪かった」という話になっていて、文脈はかなり一方的なものになっているのではないかと思われるので、「いや、おたくの国民感情を遊離したアホすぎる政府にも、それ以上の責任があったのではないですか?」なんて言っても無駄なのです。そこらへん、「日本は侵略戦争なんてしたことがない。アジアに平和と秩序をもたらそうという一点の曇りもない美しい理想が誤解されただけだ」なんて言うネトウヨの逆バージョンと考えればいい。

 話を戻して、この問題は厄介なので、日本やアメリカとしては今の金正恩体制が崩壊して、民主的な政権が誕生すれば一番いい、その上で朝鮮半島が民主政権の下、統一されれば、それは朝鮮民族にとっても喜ばしいことだろうと考えますが、この問題で鍵を握ると言われる中国の習近平政権はそれでは面白くないとたぶん思っているでしょう。そういうことになると、韓半島全体がアメリカ寄り政権になるだけではなく、それに刺激されて、弾圧を続けてきた国内の民主化勢力が増大しかねない。北朝鮮が崩壊すれば難民が流れ込んでくるというだけでなく、自国の共産党一党独裁体制が揺るがされるおそれがあって、恐怖としてはおそらくそちらの方が大きいでしょう。

 だから金正恩体制の崩壊を中国は望まない。できればもう少し「よい子」になって、こちらの言うことを聞いてくれればいいと思っているだけです。あるいは、こいつはもう駄目だとなったら、彼を排除して傀儡政権でも立てたいでしょう(日本も昔、「満州国」なんて傀儡国家を作ったことがありますが)。しばらく前の「朝鮮は歴史的に中国の領土」発言からもわかるように、習近平の意識の中では、南も北も「属国」以上ではありえないのです(だからTHAAD配備をめぐって、何のためらいもなくああいう露骨な「韓国いじめ」もやる)。

 そういうふうに、北朝鮮をめぐる思惑は様々(韓国文政権の出現は事態をいっそう複雑にしました)で、北朝鮮はそうした「国外不一致」をいいことに勝手な真似を続けているので、そういう意味ではかなりしたたかです。アフガン、イラク戦争で大ミソをつけたアメリカ政府が、国内世論を北朝鮮強硬策にもっていけないことも承知しているでしょう。

 冷静に考えれば、今の北朝鮮が日本にミサイルを撃ち込む可能性は低い。一線を超えないようにそのあたりは注意しているはずで、自画自賛するように本当に「核強国」になればまた話は別ですが、明日あさってミサイルが国内原発めがけて飛んでくるようなことはないでしょう。

 だから考える時間はまだあるわけで、知事さんもイラつかずに、もう少し冷静に問題を考えたらいかがでしょうか? にしても、その「避難訓練」とやらは、安倍政権が指示したものなんでしょうかね? ほとんど意味のないそんなことをさせるなら、もっと他に政府レベルでやるべきことが沢山あるのではないかと思うのですが、前にも書いたように、観念右翼の安倍政権には僕個人は全然期待していません。さんざ危機を煽るのも、集団的自衛権や憲法改正正当化のためなので、緻密な多方面外交や、地に足の着いた有効な国内対策など、同時にとれるわけないなと思っているからです。北朝鮮を非難してさえいれば、「毅然とした対応」として有権者の支持が得られると思っている。先にはISに日本人の人質がとられているさなか、いい気になって中東歴訪に乗り出し、「IS対策に2億ドル支援」とぶち上げ、直後に人質惨殺を招くという不祥事がありましたが、一事が万事で、そのノーテンキなアホさ加減に国民はそろそろ気づいてもいい頃だと思うのですが…。
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