安倍昭恵はAO義塾の宣伝にも一役買っていた、という話

2017.03.19.21:36

 あまり話題にはなっていないようですが、週刊新潮3月23日号のトップ記事は「文科省に圧力電話する安倍昭恵は私人か!」で、これは新潮にしては珍しく文章はお行儀がいいが、すぐれた記事です。

 こういう記事が出るのは「妻は私人だ」と安倍首相が言い張るからですが、一連の報道を見ると昭恵夫人のアホさ加減には驚くべきものがあって、「総理夫人」の威光を利用して“善意で”社会の公正を害するようなことを、このオバハンは数々やっているようです。事は森友問題だけではないということで、彼女に関してはこれまで、左派メディアも概して好意的でした。理由は、夫の「方針」に反して反原発に肩入れしたり、有機農法の真似事をしたり、居酒屋を経営したり(中には芸能人に酔って抱き着いてチューなんて脱線もあったようですが)していたからで、「家庭内野党」などという言葉が使われて、「自由で独立した女性」というイメージがふりまかれたからでしょう。美人とは言い難いその容貌も、“庶民的”だとして好意的に受け取られた(元森永製菓社長の娘なので、どう見ても「庶民」ではないのですが)。

 そういうのがネトウヨ夫への風当たりを和らげたという側面はあって、「内助の功」効果を発揮していたわけですが、今回の森友事件をきっかけに、「そんなまとものものなのか?」という疑問が生まれて、数々の「疑惑」が出てくるようになったのです。たとえば、ビジネス・ジャーナル3月17日の記事には、ある「全国紙記者」の話として、次のような談話が紹介されています。

「可能性として考えられるのは、昭恵夫人が安倍首相への断りなしに〔森友学園に〕勝手に寄付していたというケースです。そもそも昭恵夫人はこれまで、自民党の方針に反する反原発の言動を繰り広げたり、さまざまな社会的な運動に参加したり、雑誌などのメディアに積極的に露出して発言したりと、これまでの首相夫人とは明らかに違い、自由な言動が目立ちました。
 ただ、昭恵夫人は何か確固たる思想的信条に基いてそうした活動をしているのかといえば、まったくそんなことはなく、悪くいえば“ただの思いつき”。たとえば、数回にわたり役人を連れて見学に訪問した森友学園が運営する幼稚園では、『この幼稚園でやっていることが本当に素晴らしい』と言って涙を流していましたが、要はその場その場の感情に流されて、勝手気ままに発言したり行動したりしているだけです。よって、そんな“共鳴した”森友学園の理事長から『寄付してください』とお願いされて、個人の判断で寄付している可能性は十分に考えられます。もしそうであれば、安倍首相が『私や妻が関係していたとなれば、首相も国会議員も辞める』と言った以上、辞めざるを得ないでしょう。
 昭恵夫人は騒動が大きくなり名誉校長を辞任した後も、出席したある会合で、『今、なんで私はこう注目を集めてしまっているんだろうかと、すごく戸惑っています』『今は嵐の中にいる。嵐は自分の力ではどうにもならない』などと語り、反省している気配はゼロです。そんな昭恵夫人のバカげた行動によって安倍首相が辞任に追い込まれることになれば、文字通り“身内に足元をすくわれた”ことになるでしょう」


 たしかに、森友学園風の「教育」に“感動”するなどというのはふつうではありません。いいとこだけ見せられてそうなったのだと擁護する人もいるでしょうが、ある程度教育というものに理解のある人なら、その見せかけから透けて見える裏というものは必ずあるので、いったん判断を留保して、調べてみるぐらいのことはするでしょう。全然そういうことはしないでほいほいその場で感じた自分の印象を口にし、それに基づいて行動する。しかも、「総理夫人」という自分の肩書がどういう影響を及ぼすかということに関しては全く無自覚なので、こういうのは「利用された」ですむ話ではない。

 今回の新潮のこの記事などは、「利用された」とは言い訳できない、昭恵夫人の「積極的関与」を指摘したもので、彼女は「全国高校生未来会議」なるものに肩入れして、これを「主催するのは『リビジョン』という一般社団法人で、その代表は斎木陽平という24歳の青年だ」というのですが、その「イベントの打ち合わせに総理の官舎たる公邸を使えるように」便宜を図り、この青年のツイッターには「安倍昭恵です。全国高校生未来会議を応援しています。沢山の高校生が全国高校生未来会議に参加をして下さいます。この高校生たちがこれからの日本の未来を創っていくと、私は思っています。そのために、どうか多くのみなさまにご協力をいただきますように、私からもお願い申し上げます」という“応援メッセージ”まで寄せていたというのです。

 それの何が悪いのか? 記事は「ここで第1回未来会議がどんな内容であったか、確認しておく必要があるだろう」として、その詳細に入っていくのですが、これがかなり驚くべきものなのです。

 記事によれば、それは2016年3月23日から25日にかけて行われたのですが、「会場が衆院第一議員会館で、最終日は総理公邸まで使われた。そのうえ文科省と総務省が後援し、優秀者には総務大臣賞に地方創生担当大臣賞、そして内閣総理大臣賞までが贈られるという大盤振る舞い。常識的に考えて、弱冠23歳の若者であった若者が主催しうるイベントのスケールを、はるかに超えた様相だった」というものなのです。

 昭恵夫人からの支援要請があったことを文科省の関係者は認めているようですが、他にも夫人からは「いろいろなご相談が持ちかけられる」のだという。今、「第二の森友事件」として注目を集めている加計学園に関しても、「昭恵さんから省内にご相談をいただいたことがあるのは確か」だと語った由。

 要するに、昭恵夫人は自分が気に入ったものがあると文科省に「会ってあげてほしい」と頼んだり、「総理公邸に官僚が呼び出されることもしばしば」で、「そんな日常的“圧力”の一つとして、未来会議への支援を要請してきた」のです。

 当然ながら、お役人としては「総理夫人」の要請をむげに断ることもできないわけで、「一私人としての行動だ」と言うには無理があるのですが、そういう事実上の「職権乱用」には昭恵夫人はおかまいなしなのです。こういう非常識な総理夫人もめったにいないでしょう。

 文科省は夫人の「文部科学大臣賞を出すことを考えてほしい」という要請には抵抗して、何とか「踏みとどまった」そうですが、「後援」だけでも問題なので、省内ではその是非をめぐって議論になったという。それもそのはず、「高校生を支援するイベントは他にもたくさんあるのに、リビジョンなる14年に設立されたばかりの実績に乏しい団体が主催するイベントを後援していいのか」大いに疑問はあったからです。

 どう見てもそれは公平性に欠ける。しかし、ここで驚くべき話が出てくるので、別の文科省関係者の話では、「15年9月15日、当時の下村博文文科相から、全国高校生未来会議を首相直下の事業としてやってほしいという指示が下」ったのですが、「安保法案ですったものだの時期にいったいどうした、と誰もが思ったあとで伝えられたのは、リビジョンの斎木代表は安倍総理の親族だ、という話で、みな仰天しました」ということなのです。

 下村博文といえば、安倍の腰巾着の一人で、「博友会」なる塾団体からカネを吸い上げていながら、届は出さず、政治資金規正法違反の疑いをもたれたことは、前にここでも「下村博文・文科相の不正献金疑惑問題」(2015.3.4)として取り上げたことがありますが、いかにも公正観念の欠落した腰巾着らしい「指示」です。話を「親族」に戻すと、「山口県長門市のある市議」が語ったという詳細はこうです。

「斎木家は長門で代々医者の家系。陽平君の曽祖父は長門市長を務め、祖父は安倍総理の父親の晋太郎さんの後援会幹部でした。そのうえ、安倍家とは遠縁に当たるそうです」

 これは安倍事務所も認めているという話で、新潮記事は「要は、昭恵夫人は、親族かつ有力支援者の子弟に便宜を図るために、文科省に公然と圧力をかけ、大臣をはじめ政治家を動かしていたことになるのだ。その意味では、森友学園の問題よりも根が深いと言えよう」と指摘するのです。

 しかし、昭恵夫人にはそんな自覚はない。少し長くなりますが、そのあたり、記事を引用させてもらうと、

 第2回未来会議には文科省の後援はつかないが、昭恵夫人は相変わらず、公邸という「公の場」に主催者たちを呼んでは打ち合わせをさせ、未来会議の後押しをしている。また、今回も会場に総理公邸を使えるように、現在、尽力しているという噂もある。
 この期に及んで、なにゆえに未来会議に、公人然として関わりつづけるのか。昭恵夫人に連絡しても、梨のつぶてだったが、彼女は昨年12月には、本誌の取材にこう答えていた。
「陽平君は主人の父の後援者のお孫さんでもあって、非常に頑張っているので応援してきました。遠縁といえば、遠縁だと思います」
 と、総理夫人が公の力を使って支援すべきではない対象であることを認めながら、悪びれずに、続けた。
「陽平君だけじゃなくて、誰に対しても、良いことをやろうとするときは、私は“利用していいよ”と言っているので、若くて名前がない人たちは、信用を得るためにはすごく努力をしなくちゃいけない。それはすごく無駄なことだったりもするので、私が信用のために使えるのだったら、使ってもらって全然いいと思ってるんですね」
 かわいい子にこそ旅をさせることの見事な逆張りであるのはともかく、「利用していいよ」と言うが、なぜ昭恵夫人は利用するに足る存在なのか、それは、肩書に「総理」という冠がつく「公人」だからに他なるまい。


 常識的見地からすれば、こういうのは試験のカンニングやコネ入社などと同じなので、自分の親戚や接近してくる団体に「良いことをやろうとするときは、私は“利用していいよ”と言っている」というのは、進んで社会的不正に加担するのと同じ結果になるのに、ご本人にはそうした自覚が全くないということです。大体、森友学園のような戦前教育の復活にも「感動して涙を流す」ほどなので、その場合も「良いこと」というのは夫人自身の幼稚な主観による判断でしかないので、なおさら問題なのです。

 記事の内容とは順序が変わりますが、僕が読んで呆れたのは、

 しかし、それでも、主催した斎木氏が、若者の政治意識を高めるべく真摯に行動したのなら救いがあるが、現実に行っていたのは、自分が経営する塾への勧誘だったのである

 というくだりです。記事には「未来会議参加者の君へ」と題されたビラの写真が出ていますが、「これはAO義塾なる塾への誘いで」「なんのことはない、斎木氏は総理夫人の尽力で不自然に大掛かりになったイベントを利用して、参加者を自塾に勧誘していたのである」というから、驚くのです。

 何でも、この斎木という青年は、10年にAO入試で慶大法学部に入学したらしいのですが、早くもその年末にはこの塾を立ち上げ、ある塾講師が語るには、

「私が作った教材やノウハウを勝手に使い、苦情を言うと逆ギレする。うちの生徒がAO義塾を見学に行けば、私についてのウソの情報を流し、“うちに来た方がいい”と勧誘する。また、うちの塾に話をしに来て、うちの塾生に自分の名刺を配ってAO義塾に引き入れた。とにかく倫理的に逸脱しているのです」

 という輩で、「塾業界に詳しいジャーナリスト」によれば、「自塾の生徒を未来会議の運営に関わらせ、彼らが自主的に活動をしたかのような志望理由書を書かせてAO入試対策とし」たり、「イベントに集まった優秀な子に声をかけて誘導するため、東大の推薦入試でそれなりの結果を出す」のだそうで、この斎木という青年は明らかに「未来会議」なるものを悪用しているのです。

 それが「良いこと」だと思っているのは昭恵夫人と斎木青年だけのはずで、文科省が「再三、宣伝活動をしないように伝えてきたのに、事後に宣伝をしていたという情報が出てき」て、「頭を抱え」たというのは尤もなのです。

 塾教師の僕からすれば、こういうのは許しがたい手合いです。ここまで悪質ではないが、僕も自分の息子を延岡の某数学塾に「広告塔」代わりに利用されて腹を立てたことがあるので、ついでにそれを書いておきましょう。息子は割と礼儀正しい人間なので、合格後、挨拶に行ったのですが、そこの塾の生徒たちの前で話をしてやってくれと頼まれて、話をした。そこまではまだ許せたが、大学入学後も、お土産をもって行こうと電話したら、また似たようなことを頼まれたという話で、後で話を聞いて驚いた僕は「もうそういう要請に応じるのはやめろ。高校でなら、商売ではないからいいが、おまえにその気は全くなくても、そこの生徒たちや保護者はおまえがその塾にとくに世話になったと恩に着ているから、そういうことをしていると思うだろう。お人よしにもほどがあるので、宣伝の片棒を担がされているのと同じになる。事実は、おまえは最後まで数学が一番苦手だったし、二次試験では仮に数学が零点でも受かっていた〔今は成績開示のおかげでそういうこともわかる〕のだから、月謝以上の恩恵を受けたわけではさらさらない。大体、塾商売をしている人間が生徒をそういうかたちで利用するというのはまともな人間のやることではないので、実にふざけた野郎だ」と言ったのです。

 元々、彼がその塾に通い始めたのは、高1の時、数学の定期テストのクラス平均点が他のクラスより20点も低いというトンデモ教師に当たってしまったからです。文系でも、これはまずすぎる。中学までは数学が得意だったはずなのに「数学の授業がさっぱりわからない」と言うし、話を聞いているうちに、それは新米だからではなく、永遠にまともな授業ができないタイプの教師だなと判断したので、塾で数学塾に通っている生徒から電話番号を聞き、通わせることにしたのです。そのとき、そのトンデモ教師に当たった生徒は多くが緊急避難的に数学塾に通い始めたらしいので、塾としては一気に生徒が増えて大助かりだったようですが、その中にはそれまでその塾にはいなかったような優秀層が混じっていたので、大喜びしたのでしょう。

 僕自身は、元塾生にそんなことを頼んだことは一度もありません。たとえそれが塾を持ち上げるものではなく、公正客観的な「勉強の仕方」についての話でも、「効果」や「印象操作」の見地からして「えげつない」と感じるからです。それは生徒を利用したのと同じになる。息子は京大と早稲田4学部を一般受験して、全部に合格したので、そういう生徒がわざわざ何度も塾にやってきて話したとなると、その塾の印象はずいぶん影響を受けるでしょう。「そんなつもりはありませんでした」とそこの塾(他の数学塾が迷惑するかもしれないので、イニシャルだけ明示しておけば、S塾という名ですが)の経営者が言っても、それは通用する理屈ではない。もっとまともなやり方で勝負しろ、と言いたくなるので、一度このSという塾長は僕のところに息子が高校在学中に電話を寄越して、「おかげで助かってます」なんて言ってましたが、それは成績のいい子がいると塾としては間接的な宣伝になって「助かる」という意味だったのでしょう。だから、それを最大限に利用しようとした(そのときの電話も、手に負えない心理的問題を抱えた生徒をこちらに押しつけるためだけだったと後でわかって呆れたので、僕はまだ彼を信用していた頃、数学塾を探している生徒を何人か紹介しましたが、その逆はゼロだったのです)。

 こういう妙に調子のいいジコチューの御仁はどの業界にもいるものですが、このAO義塾の斎木という青年の場合には、詐欺のレベルに達していると言わねばならないでしょう。ノーテンキな昭恵夫人はそれをしも「良いこと」だと言うのか、直接会ってきいてみたいくらいです。

 世の中には「善意」を装って、あるいは極度の自己欺瞞から、人を利用することを恥としない手合いがたくさんいるので、権力者の妻たるもの、その片棒を担いでおきながら「そんなことは知りませんでした」ではすまないのです。私は馬鹿なのでいつまでたってもその見分けがつきませんというのなら、初めから出しゃばるなと言う他はないでしょう。
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