スマホもパソコンもハッキングされている?

2017.03.09.14:28

 昨日たまたまグーグルのニュースサイトを見たら、次の記事がトップに来ていました。


・「CIAに関する最大の暴露」ウィキリークスが公開(朝日新聞)

 内部告発サイト「ウィキリークス」は7日、米中央情報局(CIA)のハッキング技術に関する機密情報資料を入手したと明らかにし、一部をネット上に公開した。同サイトは、CIAが国外の情報機関などと協力し、携帯電話やパソコンなどをハッキングして情報収集する技術を開発していると主張している。
 同サイトによれば、今回公開されたのは8761点の資料。それによると、CIAのサイバー諜報(ちょうほう)部門によるハッキング技術が、米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」や米グーグルのアンドロイド携帯、韓国・サムソン製のスマートテレビなどを標的にしていると指摘。ウイルスや「兵器化された」ソフトなどを用い、昨年末までに1千以上のハッキング技術を開発したとしている。
 これらの技術により、携帯電話の持ち主の位置情報を把握し、会話やメールなどを傍受できるという。
 また、CIAが独フランクフルトの米総領事館を欧州や中東、アフリカ向けの情報収集の拠点にしていたと指摘。「ハッカー」は外交パスポートを使い活動する一方、英情報局保安部(MI5)との協力もあったとしている。
 同サイトは「CIAに関する最大の暴露だ」とし、今後も公開を続ける意向を示している。ただ、資料の真偽は明らかになっていない。一方、CIAの報道官は、文書の真偽についてコメントしていない。
 同サイトをめぐっては今年初め、米国家情報長官室が報告書で、大統領選でロシアが民主党のクリントン氏陣営などへハッキングを行い、入手した大量のメールが同サイトを通じて暴露されたなどとしていた。(ワシントン=高野裕介)



 これはガセネタではなく、「正しい情報」でしょう。電話は盗聴され、パソコンの中身も、メールも盗み見られている、そういう「超監視社会」に僕らは暮らしていると承知しておいた方がよさそうだなと僕が思ったのは、あのスノーデン(「アメリカ国家安全保障局 〔NSA〕 および中央情報局 〔CIA〕 の元局員である。NSA局員として、アメリカ政府による情報収集活動に関わった」とウィキペディアに紹介されているあの人物)の暴露があったときです。電脳社会の便利さは、裏にそういう「プライバシーの全的侵害」を含んでいる。無事なのは時代遅れの手書きの手紙のやりとりぐらいだというのは、全くもって皮肉な話です。

 僕はしばらく前、『スノーデン、監視社会の恐怖を語る~独占インタビュー全記録』(小笠原みどり著 毎日新聞出版)という本を、たまたま書店で見かけて買ってみました。前に「サンデー毎日」にその一部が出ていたのを読んだことがあったからですが、この本はいくらか羊頭狗肉で、著者の身の上話とインタビューにいたる経緯、スノーデンの暴露についての感想が大部分を占めていて、かんじんのスノーデン自身が語った言葉はごく僅かです。

 だから無価値かといえば、そうでもないので、新聞記者特有の文体(著者は元朝日新聞記者)と、書き手の思い入れの激しさを我慢すれば、今の日本のマスコミの妙な自己規制がどのようにして拡大したかや、監視社会化のプロセス全般についての情報・考察も含まれていて、「なるほど」と思わせるところはあちこちにあるので、僕には面白く読めました。買って読む価値は十分あると言えるでしょう。

 スノーデンは2009年に来日して、福生市にアパートを借り、米軍横田基地に勤務して、「主にハッキング対策を研究し」ていた。元々パソコンおたくのような青年だったらしく、要はその方面のプロなのですが、仕事を通じてNSAの違法かつ広範な諜報活動の実態を知り、義憤に駆られて大量の機密情報を持ち出し、それを暴露するにいたったので、アメリカ国家からは「指名手配犯」の扱いを受けるようになったわけです。

 彼によれば、「日本で近年成立した(特定)秘密保護法は、実はアメリカがデザインしたもの」で、名前からするとこれは「プライバシー保護法」のように見えますが、話は逆、これで守られるのは「国家機関の秘密」だけで、関係者やマスコミがそれを暴露すれば最高懲役10年の厳罰に処せられる、というものです(注意すべきは、それまでも「公務員の守秘義務」規定に見られるように、処罰規定はすでに存在したということです)。「つまり、国にとっては都合の悪い文書を秘密指定すれば、事実を合法的に闇の中に隠しておける」わけで、どうしてこのようなものが必要かといえば、その理由の一つは、国民のプライバシーを平気で侵害する違法な情報収集活動(この後、「盗聴法」という呼称で知られる通信傍受法改訂が行われた)であっても、「秘密」指定すれば、知られなくて済むからです。表向きの説明は、「国家機密がダダ漏れするようでは安全保障上困る」ということですが、裏にはそういう事情がある。NSAのように違法な盗聴、ハッキングを日常的に行って、テロなどとは無関係な人々のプライバシーを関係部局の職員たちが平気で盗み見していても、それが「秘密」として表に出なければ、国民は「知らぬが仏」で、そういうことには全く気づかない。また、「こいつは政府に反抗して、めんどくさい奴だな」と思ったときは、そうして知りえたプライバシー上の「恥」となりそうなこと(たとえば僕がネット通販で女性用の下着をこっそり買っているとか、セーラー服を収集しているとか、二股不倫を行なっているとか)を「匿名の民間人」を装ってネットに流して、信用を失墜させることができる。「こんなヘンタイの言うことなど信用できるはずがない」という状況を意図的につくり出すのです(手頃な材料がない場合はでっち上げ情報を流す?)。

「そうか、じゃあ、ネットでバイアグラを買ったり、アダルトサイトを見たりするのも危険なんだな」とおじさんたちが恐れ「反省」して、国民の「道徳的品行」の向上にそれは役立つだろうと考える真面目人間もいるかも知れませんが、それは例外でしょう。ともかくこの種の法律によって、ドサクサ紛れそうした違法収集情報も「秘密」として隠してしまえば、違法な監視の事実そのものを隠せるわけです。

 オバマ政権下、アメリカの情報機関が友邦のドイツ、メルケル首相の携帯電話をかなりの長期にわたって盗聴していたことが発覚して、メルケルを激怒させたことは有名ですが、この本によれば、日本政府や省庁は(場合によっては関係者個人の自宅電話まで)アメリカによって日常的に盗聴されていて(従って、日米交渉の際も、日本側の腹は事前に全部読まれている)、にもかかわらず、それがわかっても日本政府はほとんど無反応で、「どうして日本政府は公に抗議しないのですか? もし抗議しないなら、それは自ら進んで不適切な扱いを受け入れているのと同じことでしょう? 自分で自分に敬意を払わないで、どうしてだれかに敬意を払ってくれるよう頼むことができますか?」とスノーデンも呆れているという。「なめとんのか、おまえは!」とメルケルおばさんに怒鳴りつけられて、狼狽したオバマは「ボクは知りませんでした」と必死に言い訳したのですが、タカ派気取りの安倍政権も、アメリカ様に対しては恭順一辺倒で、国内の左派や野党に対するあの傲慢な態度とは全く違うのです。

 こっけいなのは、こうした違法ハッキングや盗聴によって得られた膨大な情報が、かんじんの「テロ防止」にはほとんど何の役にも立っていないらしいことで、その理由の一つは無駄に情報が多すぎること、集めるだけで満足してしまって、危険な人間の情報をキャッチしても、それが防止行為に結びつかないで終わることにあるようです。情報が足りないから防げないのではない、逆に多すぎるのです。「あいつらがやるだろうということはむろん把握していましたよ。うちは優秀な諜報機関ですから」と胸を張っても、迅速に防止の手立てが講じられないのでは、何のためにそんなことをしているのか、わからないわけです。

 否、目的は実は別のところにある。こうした違法な情報収集の「標的にされているのは政府や企業だけではない。報道機関、ジャーナリスト、そして市民の抗議、請願、署名、調査といった民主主義に不可欠な政治行動も狙われている」ので、スノーデンも、「テロに関する情報収集は、実はNSA監視システムの最小部分でしかなく、人々の安全には全く寄与していません」と言っているのです。この本には「英国のGCHQ〔諜報機関〕が世界的な人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルを違法にスパイしていたことも、スノーデンの告発をきっかけに発覚し、英裁判所がこれを2015年7月に認定した」とありますが、この団体がテロを画策するなどまずありえない(僕が銀行強盗をする確率の方がずっと高い、と言えば、警察に盗聴されるかもしれないのでやめときますが)話で、国家権力やそれと結びつく大企業などにとって、この手の人権団体は何かと目障りだという理由しか考えられないでしょう。

 アメリカの「愛国者法」にしても、フランスの通称「ビックブラザー法」(例の「シャㇽリー・エブド」事件の4か月後に議会で可決)にしても、わが国の「秘密保護法」「盗聴法」にしても、それはメディアや市民による国家の暗部へのアクセスを困難ならしめ、国家権力によるメディアと国民の監視を正当化して、「委縮効果」を狙ったものだと解釈できそうで、テロ防止、国家安全保障などは名目にすぎないのです。それで世界が「安全」になることはまずない。不正行為を働く国家権力の「安心」が高まることはあっても、です。

 少し長めに引用させてもらいましょう。権力にとって邪魔な、従ってターゲットにされやすいものにはどんなものがあるか?

 日本でいえば、アムネスティのような人権団体や、原子力発電に反対するネットワーク、平和運動、労働組合、天皇制反対、死刑反対、反貧困、海外援助、歴史認識・教科書問題、性差別反対、障害者差別反対、民族差別反対などに携わるグループ、政治の対応を求めるあらゆる動きや人間の集まりが対象となる。いや、すでになっているだろう。
 スノーデンはさらに具体例を挙げた。
「諜報機関はあなたのメールを読み、フェイスブックの書き込みを見て、電話の内容を聞いているだけではない。JTRIG〔GCHQ内の「合同脅威調査諜報グループ」〕はネット上の世論調査、投票、評判、会話の操作にも知恵を絞っています。どうやったら世論調査に影響を与えられるか、どうやったら投票行動を変えられるか、新聞記事へのフィードバックやオンラインのチャット、あらゆるネット上の議論の場に潜入しようとしている。世論に影響を与えそうなリーダーが現われると、その人物のアカウントに入り込んで写真を取り替えたり、仲間内で評判を落とすようなネット行動を取ったりもする。気に入らない企業に対しても同じことをします。これが表現や報道の自由の世界チャンピオンを名乗ってきた西側民主主義国のやっていることです。英国政府が税金を投入している事業です。サイエンス・フィクションではない。現実なのです」(p.145)


 こういうのを読むと、中国みたいに人権派弁護士を一斉逮捕したり、共産党当局が気に入らないネットのサイトをアクセス不能にしたりといったやり方は、露骨すぎてむしろ正直な印象を受けるほどですが、日本がここまで“進んで”いるかどうかはともかく、アメリカ様の指南を受けて、秘密裏にNSAの弟分みたいなのが作られて、似たようなことを始める、あるいはすでに始めているということは、大いにありそうな話です。

 じゃあ、どうすればいいのか? サーバーがすでに裏でそうした政府系諜報機関に協力しているとなれば、個人に防止の手立てはない。一ついい方法は、全員が「怪しい」と思わせてやることで、そうすると監視対象が増えすぎて、情報が膨大なものになり、監視する側がノイローゼになってしまうかも知れません。そこは人手が足りずに、完全な“ブラック職場”になってしまって、職員の過労死や過労自殺が続出するのです。毎日一回、ツイッターでも、ラインでも、ブログでもいい、「原発反対」とか、「安倍のうんこ」とか書いてやれば、たぶん「危険分子」とみなしてもらえるので、監視対象になるが、数が多すぎて、監視も大変になってしまうのです。それで監視していても、ハゲ薬の特効薬のサイトとか、メタボの治し方とか、女性の場合だと、いくら甘いものを食べても太らない方法だの、目を大きく見せる化粧法だの小ジワの消し方だの、格安海外旅行のサイトだの、どうでもいいものばかり見せられて、監視する側はだんだん気が滅入ってくる。中には巨大アナコンダの動画とか、謎の古代遺跡の記事とか、犬の足裏の肉球で触ると一番気持ちのいいのはどれかとか、宇宙人の目はどうしてあんなに黒くて大きいのか、なんてことを大真面目に論じたサイトを熱心に見ていたりする人もいて、神聖な「国家安全保障」に挺身する職員としては、モチベーションを維持するのが困難になってくるのです。そういうのばかり監視していると、「一体こいつの精神構造はどうなっているんだ!」という疑惑が生じて、最悪の場合は発狂してしまう。

 僕の場合には「連絡が取りにくくて不便だ!」という周囲の非難にもめげず、煩わしいのでいまだにケータイもスマホも使っていないので、それが盗聴してもらえないのは残念ですが、全員が怪しく見えればこうした監視システムは自壊する。そのように思うのですが、いかがなものでしょう? けっこういい戦略ではないかと、僕には思えるのですが…。
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