大手メディアが報じない「第二の森友」事件の深刻度

2017.03.06.22:22

 なるほど、これは確かにすごいな、と驚きました。森友事件では政治家の口利きがあったかどうかが盛んに論じられていますが、学校法人などの許認可ではそこの理事長(たいていは政治家とのつきあいを自慢するような連中)が政治家に働きかけて…というのがむしろふつうでしょう。だからそれがあったかどうかより、その結果、常識的な見地から見て不正な土地譲渡や学校の認可が行われたかどうかが問題にされるべきなのであって、そこを間違えると「追及」はうやむやに終わってしまうでしょう。

「第二の森友」としてネットメディアが新たに報じ出したのは、岡山市に拠点を置く学校法人「加計学園」の問題です。この学園は幼稚園・保育園から大学まで、多くの学校を経営しているそうですが、調べてみるとこのうち大学は三つあって、岡山理科大学(東京理科大とは無関係で、河合塾偏差値40~47.5)、倉敷芸術科学大学(同37.5)、千葉科学大学(同35~40)です。岡山理科大だけは東京理科大の兄弟校みたいに見えるせいなのかどうか、偏差値はまあまあですが、後は世間でいう「Fラン大学」で、僕のような塾商売の人間ですら、千葉科学大なんて、見たことも聞いたこともありませんでした(人気のある看護だけ、偏差値が40ある由。ちなみに、偏差値40を切ると、落ちる方が難しいので、扱いは無試験の専門学校とほぼ同じになってしまいます)。

 この加計学園の現理事長、加計孝太郎氏は安倍晋三の「親友」で、

 14年には、加計学園が運営する千葉科学大の10周年式典に安倍首相が来賓として出席。「どんな時も心の奥でつながっている友人、私と加計さんもまさに腹心の友だ」と祝辞を送った。首相が防衛大学校以外の大学の式典に出席するのは異例のこと。森友学園の籠池理事長より、はるかに懇意なのは間違いない(日刊ゲンダイ)

 Fラン大学の記念式典に首相自らお出ましになるとは、理事長が「腹心の友」なればこそでしょうが、森友学園の「日本初の神道に則った小学校」の名誉校長に就任(騒ぎになって慌てて辞退)していた昭恵夫人は、この学園が経営する保育施設の名誉園長にもなっているそうで、「加計学園の事務局に事実関係を問い合わせたところ、『昭恵夫人に名誉園長に就任していただいたことは間違いない。現在も名誉園長のままです』」(同上)という返答が返ってきたとのこと。森友学園はおそらく、それを真似ようとしただけなのでしょう。

 問題は、しかし、こういうことではない。公私のけじめのないそうした対応は疑問視されて当然とはいえ、何より深刻なのは次の話です。引き続き、日刊ゲンダイからの引用。

 国会では連日、安倍首相の昭恵夫人が名誉校長に就任していた小学校の新設予定地として、評価額9億5600万円の国有地が大阪市の学校法人「森友学園」にタダ同然で払い下げられた問題が追及されているが、こちらはケタが違う。愛媛県今治市が、安倍首相と昵懇の学校法人に16.8ヘクタール、36億円相当の土地を無償譲渡することが分かった。
 譲渡されるのは、今治新都市第2地区の高等教育施設用地。市はこの無償譲渡を盛り込んだ2016年度補正予算関連議案を3日開会の3月定例議会に上程、本会議で可決すれば正式決定となる。この土地に新設予定なのが、学校法人「加計学園」が運営する岡山理科大の獣医学部だ。(中略)
「安倍首相に近い学校法人が今治市の土地をタダで手に入れ、しかも校舎の建設費や整備費まで市が負担するという。その額はなんと243.5億円と計上されています。規制の厳しい獣医学部が国内で新設されるのは52年ぶりですが、16年1月に今治市が国家戦略特区に3次指定されたことで可能になった。今治市を獣医学部の新設が認められない構造特区から国家戦略特区に変え、加計学園が参入できるようにしたのです」(今治市選出の福田つよし愛媛県議)
 今年1月、内閣府と文科省が獣医学部を新設する認可申請を受ける特例措置を告示、手を挙げたのは加計学園だけだったという。


 要するに、安倍の「公私混同、お友達ヤンキー政治」の真骨頂ともいえる、これは話なのです。スケールも、森友学園よりはるかに大きい。朴槿恵大統領の崔順実スキャンダルと同性質の「友人への利益供与」事件だと言って差し支えないでしょう。「16年1月に今治市が国家戦略特区に3次指定された」のも、「今年1月、内閣府と文科省が獣医学部を新設する認可申請を受ける特例措置を告示」したのも、ひとえにこの「腹心の友」が理事長を務める加計学園の獣医学部新設を実現させるためだったのです。

 こういう「裏」は通常の新聞報道では全くわからない。たとえば日経新聞はこれを今年1月21日、次のように報じました。

 岡山理科大学などを運営する学校法人加計学園(岡山市)は20日、愛媛県今治市と広島県でつくる国家戦略特区に開設する獣医学部の事業主体に認定されたのを受け、設置計画を発表した。今治市に2018年4月、岡山理科大の7番目の学部として獣医学部を開設する。総事業費は192億円を見込む。
 文部科学省に3月設置申請する獣医学部は、6年制の「獣医学科」(入学定員160人)と4年制の「獣医保健看護学科」(同60人)で構成する。獣医学部の新設は1966年の北里大学以来となる。獣医学科には卒業後の四国での就職を条件に、30人の四国出身者向けの地域入学枠を設ける方向で調整している。
 今治市が無償譲渡する方針の同市いこいの丘の約17万平方メートルの敷地に「今治キャンパス」を整備する。7階建ての学部棟や4階建ての教育病院などを設け、2期工事の大動物実習棟を含めた施設の延べ床面積は3万6000平方メートルを計画。4月に着工する予定。
 特区に新設する獣医学部として、学部長に就任予定の吉川泰弘千葉科学大学教授は「動物由来の感染症対策や、創薬プロセスにおける動物実験を用いた研究の推進など新たな需要に対応できる獣医師の養成をめざす」と話した。


 こういうのは全くの提灯記事で、当局から記者クラブに配布されたペーパーを記事用に書き直しただけのものでしょう。サルでもできる仕事で、「飼いならされたメディア」の面目躍如ですが、次のLITERAの記事はこの「獣医学部の新設」そのものが日本獣医師会から「不用」だとして強く反対されていたものであることを明らかにしています。

安倍に第二の森友学園疑惑!

 読売新聞2008年4月28日付(大阪版)の記事によると、日本獣医師会が「現状で充足されている以上、定員を堅持すべき」と今治市の大学誘致に反対、2008年3月には国も「獣医師の供給不足は起きていない」として申請を却下したという。同市はその後も構造改革特区を利用した獣医学部誘致を15回にわたって提案したが、ことごとく却下されている。

「ところが、安倍首相が政権に返り咲くと、その状況は一転」ということになってしまうので、「これはどう見ても今治市と加計学園ありきの進め方だ」とLITERAの記者は憤るのですが、尤もな話で、首相が率先、「お友達への便宜」を図ろうとしたことは明白なのです。

 いや、日本獣医師会は自分たちの「既得権益」を守ろうとしてそんなことを言っているだけで、「規制緩和はよいことなのだ」という論理で安倍と加計学園の癒着を正当化しようとする向きもあるかも知れません。LITERAの記事には続けて、こうあります。

 この動きに、日本獣医師会は、地方獣医師会会長に向けた文書のなかで〈(今治市の)構想の内容はいずれも既存の16獣医学系大学で既に取り組んでいるものばかりであり、新規性はな〉い上に、2015年に閣議決定された「日本再興戦略」における獣医師養成系大学・学部の新設の4条件にも〈全く該当いたしません〉と批判。獣医師は不足しておらず、〈地域や職域における不足解消のためには、6年制教育修了者への魅力ある職場の提供、処遇改善等が必要です〉とし、こうまとめた。
〈仮に今治市の提案が採択された場合には、国際水準の獣医学教育を提供することは勿論、当該獣医学教育施設及び体制がその設置目的である上記の4条件を満たすものとなるよう、内閣府、文部科学省等において厳しく審査する必要があります〉


 かつては歯学部の定員を増やしすぎて、「歯科医院の数がコンビニより多い」事態を招いてしまったのは有名な話で、文科省もその轍を踏むまいと規制してきたわけです。近いところでは法科大学院の大失敗があって、合格者を増やしたが、法曹の質は劣化するし、弁護士余りが深刻で、奨学金の借金を背負ったまま、法律事務所への就職もままならず、数が増えすぎたあおりで弁護士の平均年収そのものが大きく下がったというので、今度は合格者の数を減らそうという話になり、あれやこれやで法科大学院の入学希望者は激減、大学レベルでも法学部は不人気になり、優秀層が他学部にシフトするなんて事態になっているので、そういうことを考え合わせると、こうした日本獣医師会の反対には一定の「合理性」があるわけです。

 専門家の意見がつねに正しいとはかぎりませんが、万事において不勉強な“デンデン総理”(これはむろん、「云々」を彼は今でもそう読んでいるというので有名になったところから来た呼称です)が現場の人たちより賢明だとはとうてい思えないわけで、お友達を助けて喜んでもらいたいという一心で、こういうゴリ押しをしたとしか考えられない。

「権力の私物化」の典型例で、LITERAも言うように、これは森友学園以上に深刻な癒着を示す問題なので、メディアや政治家はこちらも取り上げて、しっかり追及すべきでしょう。最新の世論調査では、安倍内閣の支持率はまだ61%もあるという話ですが、安倍政権の支持率の高さはマスコミの妙な自己規制(大手メディアのお偉方はよく首相との「お食事会」に呼ばれている)による「報じるべきことを報じない」態度によって守られてきた点があるのは明白なので、産経みたいな完全な安倍御用新聞(昔は右なりにもう少しまともだったと思うのですが、今はほとんどイエローペーパーです)にそれを期待するのは初めから馬鹿げていますが、他はもっとしっかりしてくれないかなと思います。野党も、非本質的な些事には拘泥せず、国会で的を射た批判をしてもらいたいと思います。
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