トランプ相手にゴマスリ外交するのは考えもの

2017.02.01.03:39

 グーグル日本版のニュースサイトではこの問題がトップに来ていました。見出しが、朝日と日経では相変わらず「トランプ氏」で、「大統領」となっていないのが不思議ですが、計算したというより、心理的抵抗があって「大統領」と呼ぶ気にはなれないということなのでしょうか。ともあれ、話は次のようなものです。

 トランプ氏、司法省トップ解任 入国制限に反旗(日経)

【ワシントン=川合智之、平野麻理子】米ホワイトハウスは30日、トランプ米大統領がサリー・イエーツ司法長官代行を解任したと発表した。イエーツ氏が大統領令を支持しないよう司法省に指示したのを受けた措置。ホワイトハウスの声明はイエーツ氏について「米国民を守るための法的な命令を執行することを拒否し、司法省を裏切った」などと糾弾した。
 オバマ前政権時代に副長官に就いた同氏は、トランプ氏が指名したジェフ・セッションズ氏が司法長官に正式就任するまで司法長官代行を務める予定だった。米CNNなどによると、イエーツ氏は「現時点では、大統領令を支持することは、(司法省の)責任と一致しているという確信もなく、大統領令が合法であるかも確信を持てない」と文書でコメントしていたという。
 これに関連し、スパイサー米大統領報道官は30日の記者会見で「大統領は(テロ発生を)待つことはしない。全ての力を使って、国土と国民を守ろうとしている」「次の攻撃がいつ起きるかはわからない。最善の策は先手を打つことだ」などと大統領令の必要性を説明。トランプ氏も30日朝、ツイッターで「テロリストが入国する前に検査するより良いことはない。これは選挙戦中からの私の主張だ」と強調した。


 大統領令に正面から反旗を翻したのだから解任は当然でしょうが、司法長官代行としては、内外からこれほど批判のある措置に唯々諾々と従う方が、いずれ退任して別の人生を歩むことになる身には「不利益」だと判断したということもあるのでしょう。先にオバマは無人爆撃機(ドローン)を使って殺人(無関係な民間人も多数犠牲になった)に精出したことに関しては「並外れた実績」を残したという皮肉な報道もありましたが、サリー・イエーツ司法長官代行は「理想と現実の乖離」が甚だしかったその政権の一員だった人で、必ずしもそれは理想家肌だからしたこと、というのではなかったでしょう。

 トランプとしては「公約の実現」をアピールしたかったのでしょうが、この記事の最後の「大統領は(テロ発生を)待つことはしない。全ての力を使って、国土と国民を守ろうとしている」「次の攻撃がいつ起きるかはわからない。最善の策は先手を打つことだ」「テロリストが入国する前に検査するより良いことはない。これは選挙戦中からの私の主張だ」といったトランプ側の言い分には首を傾げざるを得ません。というのも、佐々木伸・星槎大学客員教授の次のような指摘もあるからです。

弱小のイスラム諸国を狙い撃ち、米入国制限はISの思うツボ(WEDGE)

 この記事によれば、「入国禁止の対象となった国はイランを除き“いじめやすい弱小国”が中心」で、

 9・11の主犯グループはサウジアラビア人だったが、サウジは対象ではない。また、エジプトはトランプ政権が過激派と指名しているモスレム同胞団の根拠地だが、エジプトも入っていない。サウジは米国にとって重要な石油大国、エジプトはこれまたアラブの盟主として米国の同盟国の1つであり、双方とも地域大国であることが対象国から除外された理由だろう。
 さらに大きな疑問がある。トランプ氏が事業展開していたトルコやインドネシア、アラブ首長国連邦(UAE)なども一切、対象国に含まれていない点だ。テロが頻発しているパキスタンやアフガニスタンも含まれていない。
 テロリストの入国を阻止する目的というなら、まず欧州各国を対象にしなければならない。パリやブリュッセルで相次いだテロ事件で明らかなように、フランスやベルギー国籍のイスラム教徒が犯行グループに多く含まれているからだ。こうしたことからも、今回の入国禁止対象国の選定が合理性のないことが分かる。


 というのです。ご都合主義も極まれりで、それでどうして「米国民を守る」ことに貢献するのかがわからない。そもそもの話、非人道的な上に合理性は何もないこういう措置は国を問わずイスラム教徒全般の憤慨をひき起こすだけで、佐々木教授が指摘しておられるように「ISの思うツボ」でしかないのです。

 要するにこれは、弱者の犠牲の上に立つ「見かけ倒しのパフォーマンス」でしかないわけで、妙に姑息な利害打算が透けて見えるこの手の「派手なふるまい」は今後もトランプ政権について回るでしょう。「メキシコとの壁」建設についても、トランプと同類のイスラエルのネタニヤフ(その独善性と身勝手な遣り口にイスラム諸国民が腹を立てているのは無理からぬところ)なんかは賞讃していますが、メキシコ側がその建設費用を負担するわけはなく、20%の関税をかけて実質負担させるのだという屁理屈は、初等経済学の教科書に照らせば、最終的には価格に転嫁されることになるのだから、やっぱりアメリカ国民が負担させられるのです。

 わが国の保守派には対中国、北朝鮮で、トランプに及び腰のオバマ政権時代とは違った「毅然とした対応」を期待する向きもあるようですが、こういうところからしてもトランプに過大な期待を寄せるのは考えものでしょう。ロシアのプーチンと協力体制を作って、ISを攻撃すると同時に、中国封じ込めをはかる、というような戦略でも描いているのかなと思ったりもしたのですが、何かテキトーな思いつきだけで動いていて、途中で風向きが変われば「アメリカ・ファースト(ほんとはトランプ・ファーストなのですが)」を理由に全然違うことをやったり言い出したりしかねないなと、それがこわいのです。大体、この調子では四年もつかどうかも疑わしい。

 国際政治の先生たちはむろん、そんな素人の心配は無用で、しっかりしたブレーンがつくから、トランプをアホ扱いするのは間違いだとおっしゃるでしょうが、ブッシュ・ジュニアが大統領になったときは、「あいつはアホなことしかしない」と僕は予言していて、それは不幸にして的中したのです。イラク戦争のときは、いくらブッシュがやりたがっても、あまりにも根拠薄弱すぎるから、周りの反対でできなくなるだろうと思ったのですが、「理性的」なはずのコリン・パウエルまでその片棒を担ぐ羽目になった。つまり、予想したよりもっとまずいことになったのです。信じがたいことが、今のアメリカでは“ふつうに”起きてしまう。

 たしかにトランプにはブッシュと違って商才はありますが、それだけに「詐欺まがい不動産商法」の政治版をやる可能性は高い。げんに今回のおかしな移民排除例の中身にもそれははっきり表われているわけです。若くして糖尿を患っている北朝鮮の孤独な独裁者、金正恩は発狂寸前だし、政治経済共に絶不調の韓国は反日妄想にとりつかれた重篤な神経症患者(先を見通して対応を考えるなんて余裕はそういう人にはない)、世界第二位の経済大国になった中国は自我膨張シンドロームにかかっているというわけで、わが国としては頼みの綱のアメリカさんまでこれなのだから、日本船の今後の航海は困難をきわめるだろうと予想されるのです。

 安倍政権は、首相が「云々」を「でんでん」と読んでいても、防衛大臣のともちんが蓮舫ネエサンにいじめられて泣かされても、その程度のことではびくともしないと思いますが、トランプおじさんの扱いには気をつけた方がいいと思われるので、あんまり手放しでもたれかかると危ないよと言っておきたいのです。途中交代もありうる旦那だと考えて、複眼思考で対処していただきたいと、日本国民の一人としてお願いしておきたいと思います。

 まあ、ブッシュの時代、あの驚くべきイラク攻撃にわれらが小泉総理(当時)はまっ先に支持を表明して、アメリカのご機嫌を取り結び、僕などは「日本の恥だ!」と怒りましたが、それでも政権支持率は下がらず、今にいたるも小泉さんは人気者なので、僕には日本国内の政治家の評価基準もよくわからないのです。だから、そんな人間の言うことは気にしなくていいかも知れませんが…。
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