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セコい嘘つきばかり

2016.03.18(15:43) 377

 今の日本の政治・社会状況を象徴するかのような話が目立つな、という感じです。

 一つは、大騒ぎになっているらしい、ショーンKこと経営コンサルタントのショーン・マクアードル川上(47)なる人物。これも週刊文春のスクープだったようですが、何のことはない、米テンプル大卒、ハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得、パリ第一大学に留学、なんて経歴は全部出鱈目(「年商30億」もむろん嘘)だったという話で、本名もそれとは別の純日本名、高校時代は熊本の二番手の私立高校で、「ホラッチョ川上」なんて呼ばれていて、元から虚言癖があったのだという。

 こういうのが国際関係・ビジネスの専門家としてテレビでもてはやされていたというのは、逆に言うと、テレビのコメンテーターというのがどんないい加減なものかということの裏返しで、「何となくわかったようなこと」を言うと、「へえー」と感心されるのでしょう。まともな人間は今どきテレビのそういう番組なんか見ないので、無事で済んでいたわけです。

 僕も二十代の後半、「学歴詐称」していたことがあります。就職もせず学生時代の延長でそのままアルバイト稼業を続けていたのですが、なまじ名の知られた大学など出ていると、「こいつは過激派学生のなれの果てに違いない」なんて警戒されて、大方は肉体労働に応募していたのですが、かなり不利になるとわかったからです。それで「高卒」にして、地方の郵便局か何かでずっと働いていて、都会に出たくなったので、辞めて上京しました、なんてストーリーを作って、それで工場の臨時作業員だの工事現場のガードマン、出稼ぎ作業員だのに雇われていたのですが、人もうらやむ有名企業に誘われていたのを断りました、なんて言っても意味はないし、過激派ではないと弁明するのも馬鹿げているし、実に疲れる話でした(それで二十代の末頃、怪しい人間でも雇ってくれる塾業界に入ったのですが)。

 しかし、まあ、アメリカの大学を出て、ハーバードのMBAをもってれば信用されるというような、そういう学歴信仰それ自体が馬鹿げているとも言えるので、日本は平和な国です。有名大卒や立派な肩書のお馬鹿さんに会ったことはないのでしょうか? 中には学力も見識もお粗末きわまりない、という人さえいるので、政治家センセイたちを見ただけでも、そのあたりはわかりそうなものですが…。

 もう一つは「新婚さんいらっしゃい」の桂文枝(72)の嘘です。何でも彼には「20年来の愛人」がいて、それはあまり有名でない演歌歌手だったそうですが、「娘というか、そういう感じで応援してきました。10年か12年ぐらいは会っていません」とコメントしたものの、それが実は大嘘で、愛人の方は「最後に会ったのは2カ月前です。私は所属事務所を辞め、…全てを失いました。なのに師匠は不倫の責任を負わず、逃げ続けるのでしょうか」と反論して、「愛人手当」の詳細についても暴露し、ついでに彼女の元でくつろぐ偉大な師匠の「全裸写真」まで流失してしまった、というのだから大変です。「44年間私のために一生懸命だった嫁さんを裏切ってしまって」と涙ぐんだりしたのも、妙に世間に媚び過ぎた印象で、よろしくなかった。長いこと「裏切って」いたのだから、今さらそんな殊勝な気持ちになるというのも不自然で、要はそれ自体が嘘なのです。

 僕は前にここで、クリシュナムルティという「聖人」の間男スキャンダルを暴露した本の紹介をしたことがあります。それは熱烈なクリシュナムルティ崇拝者を激怒させてしまったらしく、おかしな個人的中傷まで受けたのですが、僕があれを問題だと思ったのは、彼に愛人がいた、ということではないのです(そういうことは僕にはどうでもいい)。それが右腕と頼む親友の妻で、それは長く秘密にされていて、間男されている夫ですら知らなかったが、そのうちクリシュナムルティを崇拝する若い絶世の美女が出現し、この愛人はそれに嫉妬して、ついに夫にそれまでのことを話した。当然、彼は驚き、激怒しました。問題はそこからのこの「聖人」の対応で、嘘だらけの不誠実な対応を重ねて、三者間の人間関係を険悪にしてしまうのみだったというのです(それを書いたのは夫婦の一人娘です。彼女はその間の経緯を示す大量の手紙類を母親から譲り受けて所持しているが、それは著作権法の関係から出せないだけなのだという)。

 彼の本を何冊か訳したことのある僕はショックを受けました。財団を初めとする関係者(わが国におけるクリシュナムルティ紹介者も含めて)の人間的な醜悪さには辟易させられていたものの、ご本尊はそういうのとは全然違うのだろうなと思っていたので、とりわけ応えたのです。俗世間のことは「超越」しているのだから、それは騒いだ愛人とその夫だけの問題だ、などとは言えるわけがないので、問題解決能力が全くないのに、下半身に引きずられておかしなことになり、まともな謝罪も申し開きもせずに事態をこじらせ、愛人を苦しめ、間男された右腕を頑なな対立に追い込んでしまった(ついには財団運営を巡るゴタゴタは裁判沙汰にまで発展する)。世間では全く通用しないが、スピリチュアル・リーダーとしてはそれは何らの瑕疵にもならない、などとは僕は思いません。逆に、その程度のことも適切に処理できずに、「高度な教え」もヘチマもあるか、ということになってしまうでしょう。桂文枝のやってることと、似たような話なのです。違いは、その愛人と夫が事を表沙汰にするのを差し控えたので、違った文脈でその対立が説明されるようになり、ずっと後になってから、両親の不名誉を晴らしたいと娘が本を書いて、それで初めて裏の事情が明らかになった、ということです(彼女が嘘を書いているということはありえますよ。しかし、書簡類が失われず、いずれ公開される日が来れば、そのあたりは明白になるでしょう)。

 話を戻して、この種の「嘘」が問題にされるのは、ネット社会で増幅された野次馬根性というのはむろんあるとしても、それがいかにも「セコい」からでしょう。嘘にも色々あって、人をかばうための嘘とか、相手を傷つけないための嘘なら、そういう醜悪な印象は与えない。しかし、ここにある嘘は出世や保身のための嘘であり、専ら自分のための嘘なのです。

 むろん、そういう嘘つきは、世の中には掃いて捨てるほどいます。ショーンK氏の場合には、これは典型的な虚言症患者だと思いますが、この種の人の嘘は、自らが創ったフィクションの中に呑み込まれてしまって、それを現実として生きようとするので、調べればすぐにバレてしまうが、あまりにもリアルにその空想上の人物を演じるので、かえって騙されやすい。僕も実際、その種の人に会ったことがあるので、このあたりはよくわかります。途中でどうもおかしいなと調べてみると、大嘘をついていることがわかったのですが、「実はもうバレてしまったんだよ」と言うと、青菜に塩みたいにぺしゃんこになってしまって、見ていてかわいそうなくらいでした。周りはあまりのことに唖然としていましたが、それは小道具まで用意して、彼がその嘘を演じきっていたからです。K氏もそれと同じでしょう。

 われらが桂文枝師匠の嘘は、これとは違うので、これはヤバいと思ってついた嘘が、墓穴を掘ることにつながったのです(嘘も方便とばかり、この手の嘘を連発する人を僕は一人知っています。次元が低すぎるし、バラすと生きていけなくなるだろうから、哀れと思って黙っているだけなので、それをいいことに人を悪者にするなよ)。こちらは誰でもその罠に陥りやすいような、そういう嘘ですが、落語家のユーモアはどこに行ってしまったのでしょう。たぶん彼の見せかけの自由闊達さは営業用のものにすぎず、それが妙なところでバレてしまい、「晩節を汚す」ことになったわけです。

 政治という「大きな嘘(安倍晋三なんか、よくもああいう嘘を次々平気でつくなと、怒るのを通り越してかえって感心させられますが)」の前には、こういうのはものの数ではありませんが、学校なんかでもよく嘘をつく教師がいるようで、生徒が「○○先生がこう言って自慢してました」と言うので、「よく言うよ」と笑うことがあるのですが、重んじられたい、尊敬されたいという一心で、いい年こいたオヤジが手柄顔で見え見えの出鱈目を言ったりするのは、教育上すこぶる有害です。

 政治でも、テレビでも、学校でも、嘘つきが雁首並べて駄ボラや嘘をつくというのは、オトナになるというのは、恥も何もなく嘘がつけるようになることだと、子供や若者が了解する原因になるかもしれないので、今の日本社会は大した教育をやっているわけです。

 アメリカでも、トランプが共和党の大統領候補になりそうだというので、共和党主流派はあわて、何とかそれを阻止しようとしているようですが、あれなんかも、今の嘘で凝り固まったアメリカ政治に民衆が大きな不満を持っていて、少しぐらい下品でも極端でも、ホンネを言う(少なくとも言っているように見える)トランプに魅せられた、ということなのかも知れません。あの国も、本格的に焼きが回っているわけです。

 何にしても、同じ嘘ならもう少しマシな嘘がつけないものかなと思いますが、品性も知性も下がりっぱなしのこのご時世には、それがお似合いということなのでしょうね。
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祝子川通信 Hourigawa Tsushin


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