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センター試験必勝法

2016.01.02(23:39) 365

「先生って、サル年生まれでしたっけ?」
「キキーッ、キィ!」
「……??」
「わかった?」
「わかりません」
「サル語で『ちがうよ』って言ったんだけど…」
「人語でお願いします。わかるわけない」
「君らはそうやって、努力もせずに諦める。近頃の若者の嘆かわしいところだよ」
「でも、そんなこと、わかろうとしてわかるものなんですか?」
「もちろんだよ。これが肯定的な響きで、キー、キキ…みたいな感じだと、『イエス』という意味なんだ。共感的にサルの相手をしたことがあれば、そういうのはすぐわかる。まあ、その、表情や仕草とか、総合的に見て判断するんだけどね」
「私ら受験生は、忙しくてそんなことしているヒマはありません。大体、どうしてこの塾は正月休みなんてものがあるんですか? ふつうは正月特訓とか、するもんじゃないですか?」
「一流の塾はそんな見苦しいことはしない。それは生徒を無益に焦らせるだけだってことをよく承知しているからだよ。別に僕が休みたいからではない」
「そうなんですか(疑惑のまなざし)…。だけど、受験生に『焦るな』と言う方が無理じゃありませんか? 塾で正月特訓なんか受けていると、不安も和らぐと思うんですが」
「甘いね。たとえば大学生の兄や姉が帰省して、いかにもショーガツってだらけた雰囲気を振りまくとか、中2の弟や妹がいて、騒ぎ立てるとか、そういう思いやりのない、無神経な家族の妨害の中で不動心を養いつつ、自分はコツコツ勉強に励むという姿勢が大切なんだよ。塾で正月特訓なんかやると、受験生からその貴重なチャンスを奪ってしまうことになる」
「ふーん。そういうものなんですか」
「そういうものなんだよ。この世の中は思いやりのない人間で満ちていて、協力は期待できない。そういうのに対して免疫をつけておくことが、将来君らが大事を為す上での予備訓練になる」
「じゃあ、先生が授業中に関係のないおやじギャグを連発して、私らの集中力を阻害しているのも、そういう意図から出てるんですか?」
「もちろんだとも! ま、僕の場合、そうしたギャグの中にも“知性の輝き”がいたるところに散りばめられているからして、生徒の教養増進に役立っているわけだけどね」
「あんまり、そんなふうに感じたことはないんですけど、まあいいことにします。先生自身はそう思っているということで…。ところで、今日は先生、センター試験への心の準備みたいなものを話してくれるってことじゃなかったんですか?」
「そうだった。君がいきなり『サル年ですか?』なんてヘンなこと聞くから、つい話が脱線してしまったので、中国四千年の知恵ならぬ、受験指導三十年の蓄積からなる貴重なアドバイスをする予定だったんだよ」

「じゃあ、それをお願いします。何でも、それを知っておけば、本番での得点力が10%から20%アップする、というお話でしたよね?」
「そのとおり。昔はヘソの上に絆創膏で梅干を貼りつけておくといい、なんてのもあったけど、そういうのとは比較にならないほど有益なアドバイスだからね。大体、あれはデベソの人には難しくて、すぐにはがれ落ちてしまうものなんだよ。それに、落ちなくても机の角なんかに当たって実が潰れたりすると、悲惨なことになる。想像してみるとわかると思うけど、特に肉厚の梅干しなんかの場合…」
「わかりました。ゴー・アヘッド。早く要点をお願いします」
「まあ、そう焦りなさんな。まずね、『雑念を捨てる』、これが一番大事なことだよ。これは試験にかぎらず他のことでも同じだけど、結果を思い煩うとケアレスミスが増えて、逆効果になる。これはふだんの勉強でも同じで、勉強しているつもりがふと気づいてみたら、『失敗したらどうしよう?』とか『間に合うだろうか?』とか考えていて、勉強の手が止まっていることがあるだろ? 『下手の考え休むに似たり』という言葉があるけど、無意識にそういう妨害が働くとパフォーマンスが著しく低下する」
「でも、それって難しいですよね。無意識ですから」
「そうなんだよ。意識して抑え込めるってものではない。結局、開き直って、『結果は神様にお任せしましょう!』って心境になるのが一番いいので、『自分はやれるだけのことはやったんだから、後は神様がいいようにしてくれるだろう』と考えることだよ」
「でも、私の場合、それが難しいんですけど…。『あの頃もっと勉強しておけばよかった』とか、『勉強の絶対量が足りていない』って思いはいつもあるんです」
「それは大方の受験生には共通したことだと思うよ。とくに現役の受験生の場合には、勉強そのものが足りてないって思いは誰にでもあるはずだよ。でもねえ、自分なりに努力はしてきたわけだ。足りていないところはたくさんあるけど、それなりに努力はしたので、そこは自分でも肯定的に評価しないと。そうして、そのありのままの自分にできる最良のパフォーマンスを示すことができさえすればいい、そう考えて自分の頭を信頼すれば、頭はちゃんと働いてくれるよ。『こんなんじゃ駄目だ』と思っていたら、自分の頭がかわいそうだろ? 君が将来会社に就職したりして、部下をもつ身分になければわかることだけど、『こいつらは駄目だ』と思っていたら、部下は能力を発揮できなくなるんだよ。それと同じ。そういう場合、本人は『これは部下が駄目なせいだ』と思ってるけど、ほんとは信頼の欠如がそういう結果を生んでいるんだよ。だから自分の頭も信頼してあげないと」
「そういうの、わかる気はするんですけど、でもやっぱり、悔いは残りますよね」
「そうかもしれないけど、それは一種の甘えであって、現実はありのままに受け止めないとね。人は誰でも『今の自分の実力』で対処する他はないわけだから。そしてその結果は、潔く受け入れる他はない。そうすれば、今は失敗しても、それが教訓となって、次は甘く考えずに早くから必要な努力をちゃんとするようになって成功する。自分が甘かったと認めることと、それをいつまでもグチグチ後悔することとは別の話なんで、そこらへんの区別はつけないと。そうして『今の自分にできること』をするんだ」
「わかりました」

「それから、もう一つ。よく学校では生徒に『センター目標点』なんてのを書かせたりしているようだけど、あれもやめた方がほんとはいいんだよ」
「どうしてですか?」
「この科目でこれだけ取らなきゃいけない、と思うと、おかしな具合にリキんでしまって、とくに自分に苦手な問題が出たときなどは、焦ってしまって取れる問題まで落としてしまうことがあるからさ。できない問題が出た場合は仕方がない、でも、取れる問題だけは確実に得点していこう、というつもりで、いわば『下から積み上げる』心持ちで対処した方が結果はよくなる。これはとくに、得意科目について言えるので、絶対に9割、8割は確保しなきゃならないなんてリキんでいると、わからない問題が二つ、三つと出てくると、それだけで『どうしよう!』とパニックになりかねない。後で落ち着いて見直してみると、新傾向の問題というだけで、別にそんなに難しくないことがわかったりするんだけど、『見たことない!』というだけで焦ってしまうんだな。それで動揺してしまって、他でもケアレスミスを連発する。下手に『目標点』なんか作るから、それが裏目に出るわけだよ」
「こわいですね」
「こわいよ。こういうのも『結果思考』のマイナス面が出たものなので、君らがふだん勉強しているときでも、『千里の道も一歩から』で、一つ一つ弱点を潰していけば、得点はその分、五割、六割、七割と伸びてゆくはずだ、と信じて落ち着いてその場その場の勉強に集中するのが一番賢い。何とかして間に合わせなければと、気ばかり焦ると、目の前の勉強に集中できなくて頭に入ってこなくなる、ってことがあるだろ? 本番でも、目標点なんてものが頭にあって、それに届くか届かないかなんてことに気を取られると、気もそぞろになって、頭がきちんと働いてくれない。その結果、ミスを連発して、英語や数学で最低八割は確保するつもりが、『目標点』より何十点も低くなって、茫然自失、ということになりかねない」
「それだと、後悔しまくりですよね。私は泣きます」
「だから、泣かなくて済むように、そこは落ち着いて、『下から点を積み上げる』心構えでやりなさいということ」

「今の話で思ったんですけど、ケアレスミスを完全になくす秘策ってあります?」
「ないよ(笑)。世の中にはほとんどミスをしない人間というのが例外的にいて、そういうのがセンター合計95%なんてのを取るんだろうけど、ふつうはよくできる子でも、信じられないようなミスは多少はする。見ていると、どうも難しい問題では気をつけるからしなくて、易しい問題でうっかりやらかすことが多いんだね。古文の『徒然草』に出てくる「木登り名人」の話は正しいわけだ。でも、それが『少し』なら別に大きな影響はない。ヤマ勘で当たったというのも多少はあるだろうし、それなら差し引きゼロだ。解答欄が全部一つずつずれていたなんてのは泣くに泣けないミスなので、そういうところはよく注意してもらいたいけど、多少のミスは仕方ないと思ってとりかかった方がいい。180点と190点、140点と150点では、そんなに違いはないよ。二次でそのあたりはふつうにカバーできる。問題なのは、180の目標点を掲げて、さっき言ったようなことで130点になってしまうような事態だよ。そういうのを防げればいい」
「先生は前に、センターの英語はスピードの問題が大きい、って言ってましたよね。私は模試でも時間が足りる時と足りない時があって、足りない時は、どこかで引っかかってしまったときです。ああいうのはどうすればいいんですか? 事前にわかればそこは後回しにするんですが、読んでみないとそれはわからないし、困ってるんですけど…」
「それはよく聞く話だけど、難しい問題だねえ。基本的には、単熟語や構文などの正確な知識が身につけば、自然に回答スピードは上がるので、やっぱり地道な勉強が一番ということになると思うんだけど、大方の人は長文にたどり着くまでに時間がかかり過ぎているので、その差が大きいかなとは思う。でも、それも今言った理由によるので、スピードを上げればそれに比例してミスも増えるということでは何にもならないし、長文でも人によって苦手なタイプの違いがあるので、一律にこうしたらとは言いにくい。これは国語もだけど、要領のいい人と悪い人がいて、その要領がわかれば、ああいう深く考えることを要求しないセンターみたいな試験ではそうひどい点数にはならないと思うんだけど、それをではどう教えるかとなると、割と難しいんだよ。結局、英語でも日本語でも、文を読むのが速くなれば、時間は自然と足りるようになるので、それは文法や単塾語の知識を身につけるのと合わせて一定量の文を読みこなして、自然にスピードが上がることを期待するしかないのかなと思う。それと、疲れていると集中力やスピードは誰でも大幅に落ちるので、寝るときには熟睡できるようにして、疲れを翌日に持ち越さないように気をつけて、本番当日にからだがしんどくなくて、頭がクリアな状態にもっていくことが、実は非常に大事なことかもしれない」
「私は前の晩、緊張と不安でよく眠れないような気がするんですが…」
「疲れを溜めてさえいなければ、それはそんなに心配いらないよ。僕は昔、気まぐれを起こして大学院というところの試験を受けたことがあって、塾商売なんかしていると、自然に夜型になって明け方から昼頃まで寝る生活をしているものだから、これは起きられないなと思って、仕方なく完全な徹夜で試験に臨んだんだけど、一日ぐらいはそれでもつもので、べつだん問題はなかった。センターは二日間だし、科目が多くて時間も長いから同じことはしない方がいいけれど、途中何度も目が覚めて、熟睡できなかった場合でも、蓄積した疲れがなければ、心配しなくても頭はちゃんと働いてくれる。今の時期だと、もうあんまり夜更かしはせずに、生活リズムを朝方に切り替えておいた方がいいけど、ふだんちゃんと熟睡していれば、大丈夫だよ」
「私はふだん、寝すぎているような気がするんですが、大丈夫でしょうか?」
「睡眠時間は個人差が結構大きいからね。ナポレオンみたいに四時間しか寝ない人もいれば、七時間は最低確保しないと頭がはっきりしないという人もいる。後者の人は、無理してナポレオン睡眠にしても、昼間ぼーっとして、勉強時間の割には能率が上がらないなんてことになったのでは意味がない。勉強は集中力が大事だから、十時間ダラダラやるより、五時間冴えた頭でやる方がずっと効果は上がるだろう。無益に生徒を慢性疲労に追い込む君らの学校のあの朝夕課外も、今の時期はなくなっているようだし、自分で勉強のリズムを作って、よけいな『結果思考』に妨害されず、残された貴重な時間を落ち着いてコツコツやることだよ。周りのことは気にしない」

「わかりました。あれですね、先生もたまにはまともっていうか、ちゃんとしたことを言ってくれることがあるんですね。塾に入って二年と五ヶ月、今日初めてそう思いました」
「キーッ、キキキキィーッ!」
「今のはわかりましたよ。『はげしく抗議する』って意味でしょ?」
「素晴らしい。それだけの落ち着きと文脈読解力を備えていれば、センターでも二次でも、君の頭は申し分なく働いてくれて、実力以上の成果が期待できるだろう。サル年を制する者は、まさに君のような人だと言える」
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