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産経・元ソウル支局長「無罪」判決についての説得力ある意見

2015.12.20(20:31) 361

 これはヤフーのニュースサイトで見つけたもので、元産経新聞記者で今は弁護士の楊井人文という方の個人ブログの記事のようですが、僕は深く同感したので、ここにもご紹介しておきます。「新聞のモラル」を考える上で、非常に参考になるものです(元塾生で、新聞記者になったⅠ君、これ読みましたか?)

【訂正報道に現れるメディアの質】元支局長無罪判決 産経もすべきことがあるのでは

 無罪判決を受けたとはいえ、この記事にもあるように「無罪となった理由は、記事に問題がなかったからではなく、情報通信網という特別刑法の犯罪の成立要件である『誹謗する目的』を満たさないと判断されたからにすぎない。記事が言及したウワサの内容は『虚偽』と認定され(3月の公判で認定され、加藤元支局長も「異議を唱えない」と表明)、『虚偽かもしれない』という未必の認識があったとも判断された」のであって、「『誹謗する目的』を要件としない一般刑法の名誉毀損罪であれば危うかった」のです。

 実際あの記事はひどいものでした。僕もここに、2014.10.10付で「低次元のウワサ話が元でこの大騒ぎとは…」と題して書き、

 これ、書いたのが国内の週刊誌か何かで、対象が日本の政治家なら、ふつうにその政治家は怒ってそのメディアを名誉毀損で訴えるでしょう。いくら「ウワサ」だと断って報じたのだといっても、ウラをとったわけではなく、それを記事にするのは明確な悪意があってのことと解釈されるからです。そのあたりのことは、僕ら日本人もちゃんと認識しておかねばならないでしょう。産経の例の記事はそれほど低俗な、新聞としては本来記事にできるようなレベルのものではなかったのです。

 と述べました。同時に、

 ただ、産経支局長がこれを書くきっかけになったのは韓国の朝鮮日報の記事であり、具体的な人名まで挙げてまことしやかな嘘を広めていたのは韓国の政治関係者や「証券筋」であったわけで、ニッポンの「右翼の機関紙」である産経はもとより反韓、嫌韓で知られており、韓国の悪口を「紹介」するのをつねとしているとしても、虚偽のウワサを撒き散らしてまで「大統領を侮辱」しようとした手合いは、何より韓国民の中にいたということです。

 とも書いて、その“選択的”起訴が「公正」かどうかは疑わしいと言ったのですが、忘れてはならないのは「産経の例の記事はそれほど低俗な、新聞としては本来記事にできるようなレベルのものではなかった」ということです。

 ところが産経は、紹介した楊井氏の記事の冒頭に紹介されているような大々的な号外を出して、悪かったのはひたすら韓国検察で、自社には全く落ち度がないかのような演出をし、「無罪を大々的に報じた産経の18日付朝刊は、判決が『虚偽』認定をしたことには触れつつも、この記事が適切だったと考えるのかどうかは一切示さなかった。紙面にも社長談話にも、日韓の外交問題となり、大騒動になったことについて『極めて遺憾』というだけで『ご迷惑をおかけした』『我々にも反省すべき点がある』といった言葉はなかった」のです。

 産経は元から「右」の新聞ですが、昔は同じ右でももっと記事がしっかりしていたという印象を僕はもっています(韓国の朴正熙大統領暗殺事件に関する調査報道や、北朝鮮の「複数の金日成」を暴いた記事など、読みごたえがあったと記憶しています)。ところが近年はイエロージャーナリズムになり果て、「嫌韓・反中」を煽るだけの「ネトウヨ御用達」の三流メディアに堕してしまった。文化面、とくに教育問題などの取材記事には今でも見るべきものがあって、僕もこのブログで取り上げた記憶があるのですが、政治方面が最悪で、そして政治部がたぶん社内でも一番幅を利かせているのでしょう。大方は「初めに結論ありき」の、見出しを見ただけで中身は読む必要のないお粗末記事のオンパレードです。「何をエラそうに…」という感じの、夜郎自大な態度が目立つ。加藤・元支局長の「不適切な」記事も、そういう緩みきった雰囲気の中から生まれたものでしょう。朝日の「誤報」を痛罵嘲笑はしても、身内のお粗末には恐ろしく甘く、今回の一件も「異常な韓国」のせいにして終わりでは、日韓関係の悪化に「貢献」するだけです。ネトウヨには喜ばれるかもしれませんがね。

 そもそもこの判決自体、一種の「政治決着」だったという見方もされています。次は一昨日の毎日新聞電子版の記事。

 判決公判の冒頭、李東根(イ・ドングン)裁判長が韓国外務省からの文書を読み上げた。「日本各界の人から大局的に見て善処を求められている。12月18日が韓日基本条約発効50周年であることなどを勘案し、こうした要請を真摯(しんし)に考慮してほしい」との内容だった。韓国外務省は、日本側の要請を伝えただけだとする。
 しかし、韓国司法は世論や政治に影響されやすいとされ、裁判長がわざわざ文書を読み上げれば、裁判所が政府の意向を「考慮」したと受け止められかねない。


 他に「アメリカから圧力がかかっていた」という報道もあり、それも大きかったのだろうと僕は思いますが、産経のお粗末記事を書いたこの支局長の刑事告訴事件は、前々回とその前に書いたパク・ユハ教授の『帝国の慰安婦』をめぐるそれとは、同じ「言論の自由」の侵害といっても、質的には相当異なるものです。そこらへん、僕ら日本人はよく弁えておくべきでしょう。僕自身は、だから、朴教授には全面的に同情しますが、産経元支局長には「受け狙いのつまらない下ネタ誹謗記事を書いたおまえも悪いんだろうが」とひとこと言っておきたくなるのです。事実ならまた話は別ですが、全くの虚偽だったのです。「ウワサと断って紹介しただけだから、何の罪もない」と言い張るのなら、ジャーナリストなど誰でも務まることになるでしょう。前にも書いたように、あまりに程度が低すぎて、わが国では嫌韓のネトウヨの類以外、ほとんど顧みられず、従って朴大統領や検察が懸念するような悪影響がなかったのは皮肉な話ですが。

「韓国司法は世論や政治に影響されやすい」(これはそれ自体、大問題ですが)おかげで無罪判決を受けたに等しいわけですが、上記ブログ記事でも批判されているように、産経には謝罪とお詫びの記事を載せる意図はまるでなく、あたかも前支局長を「言論弾圧を受けた硬骨のヒーロー」のように扱うとすれば、僕は産経のような中韓の粗探しに熱心な新聞も、他紙では報道されない事実を発掘し、伝えてくれる点で価値があると思いますが、それが嘘か本当かは全くアテにならないイエローペーパーでしかないということを自ら宣伝しているのと同じになるので、まともな人間は誰も相手にしなくなってしまうでしょう。

 それでもいいのか、産経新聞、ということです。
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祝子川通信 Hourigawa Tsushin


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