いよいよ「衆愚政治」本番?

2015.12.16.11:43

「反知性主義」なるものはアメリカが本場のようですが、こういうニュースがありました。

【ラスベガス=大木聖馬】2016年米大統領選の共和党指名候補争いで首位に立つ不動産王ドナルド・トランプ氏(69)がイスラム教徒の米国入国禁止を求めた今月7日の発言後、支持率を大幅に伸ばし、14日発表の世論調査では自身最高の41%を記録した。
 発言は海外でも批判の的となったが、米国内では保守層を中心に支持が広がっている。
 調査は米モンマス大が10~13日に行った電話調査で、トランプ氏は10月中旬の前回調査から13ポイント増。2位のテッド・クルーズ上院議員(14%)、3位のマルコ・ルビオ上院議員(10%)を大きく引き離している。
 トランプ氏は14日の集会でもシリア難民に言及。「私が大統領選に勝ったらシリア難民は(シリアに)戻るだろう」と発言した。(読売新聞)


 まさか彼が次期大統領になることはないだろうと思いますが、なぜこういう状況になったのかという歴史的文脈などはきれいに無視して、イスラム過激派テロへの恐怖心に訴えて暴論を吐き、それが高支持率につながるなどというのは、「終わったアメリカ」を象徴しているかのようです。「アメリカ政治史上最低最悪の大統領(知能も事績も)」と謳われたブッシュ・ジュニアの跡継ぎには、たしかにふさわしい男に見えますが…。

 他の国も相当ヤバそうで、フランス議会では露骨な「移民排斥」を訴える極右・国民戦線(FN)の「大躍進」が伝えられました。議会第一党の地位を奪取しかねないという話でしたが、その後どうなったかと言うと、

[パリ 13日 ロイター] - フランス地域圏議会選(2回投票制)の第2回投票が13日実施された。開票率84%時点の公式発表によると、第1回投票で躍進した極右の国民戦線(FN)は本土13地域圏のいずれでも勝利を逃した。2017年大統領選出馬を目指すルペン党首にとって手痛い結果となった。
 サルコジ前大統領が率いる共和党を中心とする右派連合が7地域圏、オランド大統領の社会党が5地域圏を制した。しかし全敗したとはいえ、国民戦線の得票率は同党としては過去最高を記録しており、右派連合、社会党ともに勝利を祝うムードではない。特に、2010年の前回選挙では22中21の地域圏を掌握していた社会党の退潮は鮮明だ。
 6日に行われた1回目の投票は、パリ同時多発攻撃を受けて国民の間で治安や移民をめぐる警戒感が高まっていたことを背景に、移民の排斥などを訴えるルペン氏の国民戦線が全国得票率1位に躍進した。
 危機感を募らせた社会党は、ルペン党首が候補者となっている北部と、ルペン党首のめいが立つ南東部で第2回投票を辞退。国民戦線の勝利を阻むため、右派連合に投票するよう呼び掛ける「奇策」に打って出た。
 バルス首相(社会党)は「安心したり、勝利に酔ったりする場合ではない。極右が突き付けた危険が去ったわけではない」と強調した。
 サルコジ前大統領も、国民戦線が高い得票率を集めたことについて「われわれを含むすべての政治家に警告となった」と述べ「国民が心配していることについて、真剣な議論を行うべきときだ」としている。
 開票率84%時点では、北部地域圏における得票率は、右派連合が57.2%、国民戦線が42.8%。また、南東部地域では、右派連合の得票率53.7%に対して、国民戦線は46.2%にとどまった。
 ルペン党首は、国民戦線への追い風は選挙のたびに高まっていると強調。南東部と北部で社会党の勢力が「完全に絶えた」ことを歓迎したほか、社会党などが展開した「反ルペン」キャンペーンを非難した。


 というわけで、一応「最悪の事態」は回避できたようですが、世界のあちこちで「反知性主義的衆愚政治」の勢いは危険水域に達しているのです。

 わが日本の場合はどうかといえば、安倍政権を見ればわかる通り、すでに「極右の手に落ちて」いるので、最近支持率は再び上昇しているそうですが、これは安倍政権がどういう性質のものなのか、理解していない人が多いということに他なりません。いっとき「違憲」の安保法案で大騒ぎになったから、ネガティブイメージが強くなって支持率を下げたが、近頃は静かだから、また“何となく”いい政権のような気がしてきたのでしょう。すべては「気分」の問題。医学や心理学で、病気の自覚がないことを「病識がない」と言いますが、それは病気の自覚がある場合よりもずっと深刻なのです。

 最近、「政界を引退」したはずの橋下徹がツイッターでさかんに安倍政権の「消費税軽減税率」対応をほめそやし、「安倍政権・官邸、恐るべしの政治。これが政治か。軽減税率でここまで妥協するとは」「目的達成のための妥協。すごすぎる。僕はケツが青すぎる」などと気色の悪い露骨なゴマすりをして、そう言えば安倍・菅が「好意的に反応」するのはわかっているので、彼が中央政界進出を考えているのがよくわかるのですが、関西でも「知性的」な人には彼の正体はよくわかっているから誰も支持しないとしても、そうでない人たちの間では相変わらず大きな人気を誇っているようなので、近い将来「安倍&橋下」の腐れタッグが国政レベルで実現し、それが“好感”されて大きな支持を集め、「決められない」野党を罵倒嘲笑しながら、トンデモ独裁政治にさらに拍車がかかる、ということにもなりかねません。デマゴークの特徴というのは、古代ギリシャの昔から、民衆の不安や激情に訴えて、その場その場の思いつきでしかないことを並べ立て、妙に歯切れだけはいいが、嘘は平気でつくし、前後矛盾していてもそんなことはおかまいなしで、ワーワー言って民衆の一時的な人気を博し、結果としてとんでもないことになるが、責任は何も取らない、というところにあります。そういうのは精神医学的には立派な病人なのですが、混迷の時代にはそうした異常な政治屋に社会が翻弄されて、結果として彼らを支持した民衆自身が後で塗炭の苦しみを舐める、ということが少なくない。

 デマゴーグのもう一つの得意技としては、自分の施策の成果が上がらず、それで社会がさらに深刻な状態に陥っても、それは反対・妨害する勢力のせいで、だからこういうふうになってしまったのだと、敵対勢力を非難する道具にたちまち仕立ててしまうことです(さもなければ、そういうことは起きていないものとして否認する)。逆に、自分の施策とは無関係な要因でプラスが生じた場合には、大げさにそれは自分の手柄だと言う。冷静に事態を分析する人にはそういうのは全部嘘だとわかるが、その場その場の感情や気分だけで動いている人にはわからない。そうして真の敵が誰なのかもわからないまま、デマゴークのご都合主義的なレトリックや情報操作に踊らされるのです。自分が熱烈に支持するその相手こそが深まる混乱の主因なのだということには気づかない。

 そうしたデマゴークの嘘を、証拠を上げてロジカルに説明してくれる人はいるのですが、そういうのは読んできちんと理解する手間がかかり、集中力も思考力も必要なので、それができる人は一部にとどまり、大衆的人気を博すことはない。早い話が、こういうことを書いただけでも、「あいつは偉ぶったイヤな奴だ」ということで、憎悪の対象にされかねず、考えない大衆におもねって、「あんたが大将!」というようなおだてを得意とするデマゴーグの方が好ましく思われるのです。彼らはあなたを利用することを考えるだけで、ほんとはあなたの身の上のことなど知ったことではないのですが。

 これから世の中はどういうことになりますやら…。
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