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シリアの惨状と安保法制

2015.10.04(23:01) 351

「シリア内戦:各国介入 遠のく和平、市民失望感」と題された次の毎日新聞電子版の記事(10月4日7時30分)は、今シリアがどうなっているのかについての貴重な情報です。


【カイロ秋山信一、ワシントン和田浩明】内戦が続くシリアで9月末、ロシアやフランスが相次いで空爆に踏み切った結果、事態がより複雑化して、シリア国内では早期の内戦終結への期待がしぼんでいる。2012年に内戦が本格化して以来、政権側と反体制派の双方に外国人戦闘員が多数参加してきたほか、米軍主導の有志国連合が昨秋から空爆を続けている。各国が自国の利益のために介入を強めており、和平の機運が遠のいているのが実情だ。
 
 米国は同日、英仏独、サウジアラビア、カタール、トルコの6カ国と連名で声明も発表した。ロシア軍の空爆が民間人の死傷者を出している上に、ISを標的にしていない点を取り上げ、「深い懸念」を表明。穏健な反体制派や民間人への攻撃を即時中止するよう要求している。

 ロシアによるシリア領空爆に先立ち、米主導の有志国連合側でも、フランスが9月27日にシリア国内のIS支配地域への空爆に加わった。ペルシャ湾岸諸国やオーストラリアなどが参加する有志国連合は昨年9月に始めた空爆作戦を継続する構えだが、シリア国内では成果を疑問視する見方が少なくない。反体制活動家のハシバさんは「1年間でシリアの危機を1%でも解決できたとは思わない。空爆で紛争を決着させるなど不可能だ」と指摘する。

 有志国連合とロシアによる空爆は、双方が支援する勢力への「側面支援」の意味合いが強く、民間人の巻き添えも相次ぐ。シリア内戦の戦況を調査している在英民間組織の「シリア人権観測所」によると、過去1年間の有志国連合による空爆で、民間人200人以上が死亡した。また9月30日の露軍の空爆でも、民間人30人以上が死亡したと伝えられている。

 内戦初期の段階では、米露がそれぞれの支援勢力に譲歩を促したことから、シリア国内では和平の促進が期待された。しかし、そうした期待は完全に裏切られ、今では和平協議の開催すら難しくなっている。

 国連によると、人口約2200万人のシリアから周辺国に逃れた難民は400万人を超え、国内避難民も760万人以上に上る。ホムス県在住のジャーナリストの男性(27)は「国際社会はシリアに介入してくるが、紛争解決について沈黙したままだ」と憤りをにじませた。



 空爆については、きのう3日も、米軍がアフガニスタン北部クンドゥズにある「国境なき医師団」の病院を“誤爆”して、多数の死傷者を出したというとんでもないニュースがあって、はからずも「アフガンの泥沼」がまだ続いている(ブッシュのアメリカが「不朽の自由作戦」なるたわけた名前を付けて攻め込んで以来、もう丸14年にもなる!)ことを世界に知らしめる結果となりましたが、この記事からするとシリア問題の「出口」も全く見えないようです。

 ややこしいが、簡略化して言うと、こういうことでしょう。米国主導の有志連合軍(日本も英独仏などとともにアメリカ作成のそのリストにはカウントされている)はISを標的とした空爆を続けている(「誤爆」は珍しくないとしても)が、アサド政権(シリア政府)のことは嫌っていて、アサドの退陣を求めている。「穏健な反体制派」の味方を、彼らはしたいのです。

 ところが、プーチンのロシアは露骨な「親アサド」で、ロシア軍はそれを支援している。これまでも戦車や戦闘機などの兵器供与を行ってきたが、いよいよ自らも空爆に乗り出し、それでアサド軍の敵たる反体制派組織を攻撃しているが、もう一つの敵のISの方は空爆しないで、「よい反体制組織」の方ばかり空爆している、といって非難されているのです。

 今のシリアはややこしい。アサド政府軍には反体制派とISという二つの敵がいるが、その反体制派とISも互いに敵対しているのです。いわば「三つ巴」の関係。ロシア軍がISを攻撃しないのは、それは米側の有志連合軍に任せておけばいいと考えていて、ISを潰しても反体制派が健在ではアサド政権はもたないから、有志連合側からすれば「よい反体制派」であるそれを潰すことに力を入れるということなのでしょう(その「よい反体制派」も、中東のつねとして一枚岩ではないのでしょうが)。

 ロシアは「ロクでもないアサド政権」をなぜ支援するのだと、僕ですら思いますが、それはロシアにとってはアサド政権が健在でいてくれた方が都合がよいからで、アサドなんて、北朝鮮の金正恩と大して変わらないだろうと言われても、それが「国益にかなう」と判断されれば、そんなことは気にしないのです。

 アサドが「最悪」だというのは別に言い過ぎではありません。こちらはハフィントンポストの記事ですが、「現在ヨーロッパに押し寄せているシリア難民の多くは、イスラム国が設立された2014年以前にアサド政権が原因でシリアを離れた人々だ、とオランド(仏)大統領は話している。彼らはトルコ、ヨルダン、レバノン、その他各地の難民キャンプを経由してようやくヨーロッパにたどり着いたのだ」と言われており、それはべつだんでっち上げとは思われないのです。

 アメリカもこういう非人道的な政権に肩入れするロシアに対してあまり大きなことは言えないわけで、この前のアフガン、イラク戦争の「不正」以前にも、弱小国のまともな民主政権を「赤化を防ぐ」という名目のもと、CIAを使ってテロリストを養成して暗殺で転覆させ、軍事政権を作らせたりと、あれこれ非道なことを重ねてきたのです。

 揃ってお粗末な覇権国家、米露の対立は冷戦終結後もなおも続く。そして国連は、気ままな常任理事国の「拒否権」制度のおかげで、かんじんなときはきまって役立たずです。戦闘のとばっちりで殺されたり、からだの一部を吹き飛ばされたりする民間人死傷者の数は積み上がるのみ。そして多くの人が家族と仕事、住居、故郷を失って難民化するのです。

 先日の国連総会の際、安倍が小間使いみたいな卑屈な愛想笑いを浮かべて、小走りにプーチンの元に駆け寄る姿がテレビニュースで何度も繰り返し放映されていましたが、彼は一体何を考えているのでしょう? 彼は「シリアやイラクの難民や国内避難民に対して、約8億1000万ドル、日本円で約970億円の支援を表明した。これは、去年の約3倍となる数字」(日テレNEWS24)だそうですが、対立する米露に同じように愛想を振りまいているのだから、かんじんの「シリアやイラクの難民や国内避難民」増大の原因について、彼が深く思いを致しているのではないことは明らかです。下らない「常任理事国入りへの意欲」など示しているヒマがあったら、もちっとは考えた外交をしろ、と言いたくなりますが、「安保法制整備で世界平和により貢献できる道筋がついた」なんて寝言みたいなことを言って自慢しているノーテンキな御仁に、そんな高級なことを求めるのはそもそも無理かもしれません。

 ロシアは最近「北方領土問題は存在しない」と言い出したそうで、「それだとボクの面目は丸潰れなので、プーチンさん、もっとボクの立場にも配慮してよ」と言いたい気持ちが会談時のあの卑屈な態度に表われたのかもしれませんが、哀れにもプーチンには無視された。安保法制でアメリカに媚びを売り、他方ではこれなのだから、一体あの国は何なんだと、世界の冷笑を買わずにはすまなかったことでしょう(拉致問題でも北朝鮮にコケにされたままですが、民主党政権時代なら、安倍は鬼の首でも取ったような勢いで、「政府のだらしなさ」を非難していたに違いありません)。

 ま、何でもいい、各国財政が苦しい中、8億ドルを超えるカネを出すというのは助かるから、あの馬鹿な国もその意味でだけは使い道があると思われているのです。日本国民としては、よくそんな大金が出せるなと驚きますが、1000兆を超える財政赤字(今も気前よく赤字国債を増発し続けている)と較べれば大したことはないので、借金がそれで「ほんのちょっと」増えるだけにすぎない、ということなのでしょう。いりもしない法案を通し、外遊のたびに大旦那ぶって援助金の大盤振る舞いをしてくるこういう浅薄きわまりない総理大臣に、「おまえ個人のエエカッコしいのために、借金を次々増やされてたまるか!」と怒る家族(国民や官僚)はいないのでしょうか? 何? これも国連常任理事国になるための布石なんだって? そんなものになって、どうするわけ? 別に理事国になったって、誰も「尊敬」なんかしてくれませんよ。どんなに借金まみれでも、おだてればあの馬鹿な国はほいほいカネは出すからと、利用されるだけ。「売り家と唐様で書く三代目」という有名な川柳がありますが、三代目政治家のお坊ちゃま安倍にはわが家困窮の自覚がない(アベノミクスで大丈夫だもん!)から、分を弁えることもせず、いずれ国家破産かハイパーインフレで国民が塗炭の苦しみをなめる日が来るであろうことも想像できないのです。

 冒頭の毎日記事に戻ります。要するにこの記事が言わんとしているのは、「軍事力で平和は買えない」ということです。従って、安保法制で自衛隊をいくら海外派遣しても、それで「世界平和に貢献」することはできない。「戦争をしない国」として、「皆さん、こういうふうにいくら殺し合いを続けても、それでは平和はやってこないから、違うやり方を考えましょう」と呼びかけて、話し合いの場を設けることに奔走するのが今後の日本のやるべき国際外交です(それがかんたんなことでないのはわかりきったことですが、やるべきなのです)。アメリカに軍事従属し、他方でロシアにもゴマをすって、「何の理念もなく、要はご都合主義で動いているだけ」と世界の笑いものになることではない(複雑な中東情勢には一般人ほどの理解もなく、カネは出しても難民問題にはほんとは関心がないのは安倍の言動から明らかなので、そのあたり完全に見透かされているのです)。一方、韓国・中国に対しては、妙に「上から目線」でものを言って関係を悪くするだけなのだから、やることが稚拙というより、ほとんど馬鹿です。

 結局のところ、新安保法案の成立で「世界平和により貢献できるようになった」とか「抑止力が高まった」とか思っているのは国内の一部の保守派やネトウヨだけで、海外(とくに中東)には特異な「戦争をしない国」の看板を下ろしただけ、という受け取られ方をしたにすぎないでしょう。「力による制圧」が機能しなくなった時代に、オルタナティブを提示するのに最もよいポジションにいた国が、自ら進んでそれを放棄したのです。

 安倍の言う「積極的平和主義」なるものが各地の紛争をかえって長引かせ、テロを世界に蔓延させるのに“加勢”する結果にならないことを祈るのみです。ISが日本を“正式”に「十字軍」の一員と認定し、「日本人攻撃」への呼びかけまですでに出していることからして、今後、海外でのテロリストによる日本人襲撃事件は確実に増えるでしょうが、そうなると安倍政権はそれを「存立危機事態」だと煽り立て、他国の紛争への軍事的なコミットメントを強めるおそれがあるので、その種のマッチポンプ的な「危機の創造」に安保法制が悪用されないよう、監視すべきです。もちろん一番いいのは、あの法案を廃止することですが、今の野党のていたらくでは、政権奪取も難しそうなので、次善の策はそれを「行使」させないようにすることでしょう。

 それにしても、「貧すりゃ鈍する」とはよく言ったもので、国が傾きかけたときは、それをさらに「引き下げ」て“沈没”に導きかねないお粗末な政治リーダーが出現するもののようで、こういうのも「歴史法則」の一つなのでしょうか? 嘆かわしいことです。
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祝子川通信 Hourigawa Tsushin


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