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自民「オウンゴール」で見えてきた安倍政権の崩壊

2015.06.07(17:57) 322

 まず順番に、事の経過を見ておきましょう。最初にこういうことがあったのです。6月4日、日経電子版の記事。

 衆院憲法審査会は4日、有識者3人から参考人として意見を聴き、集団的自衛権の行使を認める安全保障関連法案について3人とも「憲法違反だ」と表明した。
 自民党が推薦した長谷部恭男早大教授は「集団的自衛権の行使が許されるのは憲法違反だ。従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかない」と述べた。民主党推薦の小林節慶大名誉教授は「憲法9条は海外で軍事活動する資格は与えていない」、維新の党推薦の笹田栄司早大教授も「(従来の法制の枠組みを)踏み越えてしまう」と指摘した。
 審査会は立憲主義や現行憲法制定の経緯、憲法改正の限界などをテーマに議論した。


 これについて、下野新聞は次のように「解説」しています。

 4日の衆院憲法審査会で、与党推薦の憲法学者を含む3人の参考人全員が安全保障関連法案について「憲法違反」と述べ、自民党に激震が走った。党関係者は推薦した長谷部恭男(はせべやすお)早稲田大教授の発言に驚きを隠さなかった。
 長谷部教授を参考人に推薦した責任者の一人でもある自民党憲法改正推進本部長の船田元(ふなだはじめ)氏は終了後、「かなり厳しい意見だが、現実の政治の問題を考えるとそれだけで進む問題ではない」と法案の正当性を強調。「これ以上のコメントは差し控える」と言葉少なに党国会対策委員会へと報告に向かった。
 関係者によると、報告を受けた佐藤勉(さとうつとむ)国対委員長は「自ら選んだ人の発言で(今後の安保法制審議への)影響は大きい」と述べ、あぜんとした表情を浮かべたという。船田氏らに「なってしまったことはしょうがない」「今後はテーマや人選、日程に十分配慮してほしい」と指示した。


 この後、どうなったか。野党は勢いづき、自民は大混乱に陥ったのです。

 4日の衆院憲法審査会の参考人質疑で、自民党などが推薦した憲法学者が集団的自衛権の行使容認を「憲法違反」と表明したことを受け、自民党幹部は同日夜、人選に当たった船田元・党憲法改正推進本部長を厳しく批判した。
 政府・与党は、集団的自衛権行使を含む安全保障関連法案の今国会成立に全力を挙げており、推薦した参考人に足を引っ張られるのは想定外。この幹部は「たるんでいる。政府・与党が何をしているのか分かっていないのか」と船田氏を非難した。
 一方、民主党の枝野幸男幹事長は4日、国会内で記者団に対し、「自民党が推薦した先生まで違憲だと明言している。いかにでっちあげの論理で(安保)法案ができているか、自ら認めているようなものだ」と指摘。
 共産党の志位和夫委員長も記者会見で「(安保法案の)違憲性がより明瞭になった」と語った。(時事ドットコムより)


「自民党幹部」の苛立ちは次の産経の記事からもよくわかります。

 自民党の二階俊博総務会長は6日、TBS番組の収録で、与党推薦者を含む衆院憲法審査会の参考人全員が安全保障関連法案を「憲法違反」と批判したことについて「最終的には国会が決める。あくまで参考意見であり、大事として取り上げる必要はない」と述べた。一方で「自民党の方針は決まっているのだから、『憲法違反』と言う人を呼んでくるのが間違いだ」と、国会運営に苦言を呈した。

 しかし、自民の「安保法制」に賛成してくれそうな憲法学者を探すのは容易ではなさそうです。同じ6日に、東京・本郷の東大構内で開かれた「立憲主義の危機」と題するシンポジウムでは、憲法学会の重鎮、佐藤幸治氏が自民党を手厳しく非離したとして、それを紹介した「安保法制:憲法学者が不信感 シンポに1400人」と題された毎日新聞の記事が出ています。

 安全保障関連法案の衆院審議が続く中、京都大名誉教授で憲法学者の佐藤幸治氏が6日、東京都内で講演し、「憲法の個別的事柄に修正すべきことがあるのは否定しないが、根幹を変えてしまう発想は英米独にはない。日本ではいつまでぐだぐだ(根幹を揺るがすようなことを)言うのか、腹立たしくなる」と述べ、憲法を巡る現状へのいらだちをあらわにした。法案を巡っては4日の衆院憲法審査会で、自民党推薦の参考人・長谷部恭男氏を含む憲法学者3人全員が憲法9条違反だと批判。自民は当初佐藤氏に参考人を要請したが断られ、長谷部氏を選んでいた。
 佐藤氏は「(憲法という)土台がどう変わるか分からないところで、政治と司法が立派な建物を築くことはできない」とも語り、憲法の解釈変更で安保法制の整備を進める安倍政権への不信感をにじませた。
 講演は「立憲主義の危機」と題するシンポジウムで行われた。続く討論で安保法制について、樋口陽一・東京大名誉教授が「(関連法案の国会への)出され方そのものが(憲法を軽んじる)非立憲の典型だ」と、また石川健治・東京大教授が「憲法9条の論理的限界を超えている」と、憲法学の立場から政府のやり方を厳しく批判した。
 会場の東京・本郷の東京大学構内では、開始前に700人収容の会場から人があふれ、急きょインターネット中継を利用して300人収容の別会場が用意された。だが、そこも満員で立ち見が出る盛況ぶりで、最終的に約1400人が詰めかけた。開始20分前に着き、別会場へ誘導された埼玉県入間市の日本語教師の男性(66)は、「安保法制の進め方は民主主義とは違うと感じていた。それが確かめられ、すっきりした」と満足そうに話した。
 主催した「立憲デモクラシーの会」は昨年4月に設立され、樋口、石川両氏のほかノーベル賞を受けた理論物理学者の益川敏英氏など日本の代表的知識人約60人が呼びかけ人に名を連ねている。【林田七恵、太田誠一】


 要するに、「原発は絶対安全」と主張していた原子力ムラの御用学者と同程度のトンデモ学者でないかぎり、まともな憲法学者で自民の「安保法制」を支持する学者など、まず見当たらないということです。あのお粗末きわまりない(大体、日本語からしてなっていない!)自民の憲法改正草案(国民を馬鹿にした例の「低能改憲マンガ」はその“精神”をよく伝えている)も、今回の「安保法制」も、憲法の「根幹を変えてしまう」性質のものなのです。それは「改憲」ではなくて「壊憲」だというのは正しい。

 有権者の大部分がこれらに対する「政府の説明不足」を感じているという世論調査(どれも皆同じ傾向を示している)がありますが、「国際情勢が緊迫感を増している」「今の法制では海外の日本人を救出できない」というようなことを並べ立てるばかりで、説明も何もなしに「とにかく必要なんです」と繰り返しているだけなのです。「説明しない」というよりは「説明できない」と言った方が正確でしょう。これまでここでも何度も指摘したように、それらは安倍晋三個人の「妄想」に由来するものでしかないからです。彼の「妄想体系」の中では、それらは「必要不可欠」に見えるだけにすぎません。自民党全体がそれに乗っかっているというのは、いかに今の自民党に人がいないかを物語っています。

「学者には国際情勢は理解できない」なんてしたり顔に言う向きは、その一例として「中国の軍拡」を取り上げるでしょう。げんに南シナ海における「中国の横暴」には世界から疑惑のまなざしが向けられています。次の引用、ネトウヨたちが非難嘲笑してやまない朝日新聞からのものです。

 中国軍の孫建国・副総参謀長(海軍上将)は5月31日、シンガポールで演説し、中国が南シナ海で進める岩礁埋め立てや施設建設について「中国の主権の範囲内の問題だ」などと述べ、中止しない方針を表明した。埋め立ての目的については「軍事防衛の必要を満たすため」とし、軍事利用を含むことを明確に認めた。
南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島で中国が進める埋め立てをめぐっては、米国のカーター国防長官が5月27日に「即時中止」を求めた。その後、中国軍高官としては初めて、米側の中止要請には一切応じない中国の姿勢を国際会議の場で公に鮮明にした。
 経済発展と軍事力増強を背景に自信をつけた中国は、米国に対しても、これまでにない強硬姿勢に踏み込んだとみられる。中国が南シナ海での実効支配の既成事実化を進め、軍事利用にもつなげていくことになれば、地域の緊張はさらに高まる。
 孫氏は、日米や欧州、東南アジア諸国の軍や政府高官が参加した「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)」(英国際戦略研究所主催、朝日新聞社など後援)に、中国代表団を率いて出席。最終日の31日、約30分間演説した。


 こういうことも朝日はちゃんと記事にしているということですが、かの国の「南シナ海での実効支配の既成事実化」は戦前の日本軍の満州におけるそれと似ていて、前に僕は「中国はだんだん戦前の日本に似てきた」と書いたことがありますが、世界にとってこういうのが「憂慮すべき事態」であるのはたしかです。

 しかし、だからといって日本が腐敗・堕落した「世界の警察官」アメリカのパートナーとして、「近隣諸国防衛」のために南シナ海に自衛隊を派遣して…というようなことは実際的ではないでしょう。それは中国にさらなる「軍拡の口実」を与えるだけです。それよりは、「中国さん、だんだんと戦前のウチに似てきましたね」と言って、戦前の日本の「カン違い大国幻想」ぶりについて縷々(るる)説明し、その「悲惨な末路」についても共に語り合う、といったことの方が現実的だし、賢いでしょう。そういった過去の日本の「愚かさ」を断じて認めたくない安倍政権にはそれは無理でしょうが。

「テロとの戦い」を掲げて、国際法上違法なアフガン、イラク戦争に打って出て、かえってテロリストの異常増殖と拡大を招いてしまったアメリカの愚行については、これまでもしばしば書きました。アメリカの強大な軍事力とその行使は「テロの撲滅」に何の役にも立たないどころか、逆に事態を悪化させて「世界の不安定化」をもたらしたのです(アメリカの軍需産業とそれに投資する「死の商人」たちは大儲けできたのですが)。小泉政権は愚かにもイラク戦争を支持(そうしないと「アメリカさんは日本を守ってくれない」という理屈でした)して、「安全な地域」に自衛隊を派遣し、「安全」だったにもかかわらず、帰国後自衛隊員の自殺が異常に増えるという羽目になったのですが、今後は「現に戦闘が行われていない地域」にそれを拡大し、いりもしない戦争協力を容易にしようというのです(ついでながら、アフガン・イラク戦争の帰還米兵の自殺者数が戦死者数を上回ったという驚くべき事実が報じられたのは、もうかなり前のことです)。

 いや、対アフガンやイラクの戦争のようなものには自衛隊を派遣することは「絶対にない」(安倍答弁)という話ですが、それならそもそも、今回国会に提出されているような「安保法制」は必要がないのです。彼は明白に嘘をついている。

 憲法学者たちの反対は、学問的に正しいだけではなく、現実を考慮しても妥当だということです。こういうものを通したのでは、「戦後の平和国家としての日本の歩み」は灰燼に帰してしまうことになるでしょう。安倍の「戦後レジームからの脱却」は「戦前への回帰」に他ならないというのは、別にこじつけでも杞憂でもないのです。

 それにしても、なぜこういう極右のイカレポンチ政権がまだ5割を超える支持率を維持しているのか? 原発再稼働反対の世論も完全に無視しているのに、です。

 理由は、アベノミクスが「成功」しているように見えるという、その一事にあるのでしょう。23か月も連続して続いた実質賃金の低下がとうとう止まったそうで、株価も2万円を堅持、上場企業の夏のボーナスもかなりの大盤振る舞いで、大卒の就職率も格段に良くなっている。つまり、景気は回復したので、これはアベノミクスの手柄だと言う人がいるのです。

 ついでだから、それについても一言させてもらいましょう。物価はたしかに上がって「デフレを脱却」しつつあるのはたしかです。これは円安が続いた(そのため輸入原材料費が上がった)せいで、輸出企業の儲けを為替数字のマジックで押し上げた(それで株価も上がった)ことの裏面です。製造・小売業は「景気がよくなった」というアナウンスを待ちわびています。それで「消費者マインドに明るさ」が出てくれば、我慢に我慢を重ねてきた値上げ抑制をやめて、売り上げ減の心配なしに値上げに踏み切ることができるからです。

 しかし、人々の財布の紐は依然として固く、国内消費は低迷を続けています。値上げすれば、その分買う量や品目を減らすということで消費者は対応し、安売り店で買えるものはできるだけそちらで買うというふうに、生活防衛にこれ努めているのです。だから、スーパーなんかは相当しんどそうです。

「雇用が改善」しているというのは、要するに人口減少効果です。前々から団塊の世代の大量退職に伴って深刻な人手不足が起きるということは言われていましたが、今はちょうどその時期に差しかかっているのです。少子化で大卒者の人数は減っている。退職者が増えて、就職希望者数が減れば、何もしなくても「雇用は改善」します。売り手市場になれば、「採れないと大変!」という企業の競争心理も働くから、新卒者に対する扱いも自然よくなるのです。

 就業者全体からすれば、正規雇用者の数は減って、派遣やパートなどの非正規雇用が増えている。新卒の正規雇用の比率が少しぐらい増えても、その構造自体に変わりはなく、非正規が正規に吸収されて消滅する見込みは全くないのです(今国会に出ている「派遣法改正案」も、これは「改正」ではなく「改悪」だという声の方が多いが、この流れの中で企業に使い勝手のいいシステムを強化しようという意図から出てきたものです)。

 デフレの反対がインフレで、このインフレにもコストプッシュ・インフレとディマンドプル・インフレの違いがあって、今のインフレは後者の、需要が増えて物価が上がり始めたという好景気による「よいインフレ」ではなくて、円安で原材料が値上がりしたためのネガティブ要因による「悪いインフレ」だと言われています。景気がよくなっていると感じるのは一部の個人投資家などマネーゲームで儲かっている人たちと、円安の恩恵を受けて収益がよくなった輸出大企業の賃上げされた正社員たち、あるいは「円安効果」で海外からの観光客は増えているようなので、そういう人たち相手に商売しているような人たちだけで、それ以外の人たちにとっては物価が上がって暮らし向きが悪くなっただけの話なのです。中小零細企業の社員や非正規雇用の人たちには景気がよくなっているという実感は当然ない(輸入原材料が円安で値上がりして、価格転嫁すれば売り上げが減り、二進も三進もいかなくなっているという中小企業経営者は少なくないでしょう)。パートの賃金なんかも少しはよくなっているようですが、それは上に見た人口構成の変化による人手不足のためであって、景気の好転のおかげでは別にないのです(その時給アップも「消費意欲を増進」させるほどのものではない)。

「出口戦略がない」と言われる黒田日銀の「異次元の金融緩和」はたしかに円安効果はもたらした。しかし、デフレからインフレに転じたのは、景気がよくなったからではなくて、円安による輸入原材料の値上がりのためなので、運よく原油の世界的値下がりがあったからよかったものの、そうでなければ円安の弊害の方が目立っていたでしょう。また、雇用の改善は少子高齢化による人手不足によるものなので、別にアベノミクスとは関係がない。

「金融緩和」とは、日銀がせっせと赤字国債を買い上げ、札をじゃぶじゃぶ刷ってそれを市中に出回らせ、新規投資を増やして景気を良くしようというものですが、そうならなければダブついた資金は実体経済を活発にするのではなく、株式や不動産、あるいは海外投資に流れるだけに終わるのです(80年代後半のバブルはその典型でした。このときは1985年9月のプラザ合意を受けての円高で輸出産業が大打撃を受け、不況に陥ったので、日銀は内需拡大のために金融緩和に踏み切ったが、それが実体経済の回復にはつながらず、融資先が見つからない銀行の余ったカネが株や不動産投資に流れて、そちらの天井知らずの高騰につながったのです。バブル崩壊後の悲惨な後遺症については周知のとおり)。

 輸出企業の業績好転は円安による数字のマジック、人手不足は実体経済の回復→雇用の増大のためではなく、労働力人口の自然減少によるものだとすれば、「アベノミクスは成功した」なんてことは言えないはずです。そもそもモノ余りの今は、モノが足りていなくて「作れば売れた」戦後の高度経済成長期とは違うから、内需拡大なんてかんたんにできるはずがない。いりもしないモノやサービスを売りつけられても有難迷惑なだけです。安倍政権は儲かっている企業の法人税を下げたり、企業に使い勝手のいい雇用システムを強化するなど「大企業に優しい」政策は次々打ち出しているが、それはアメリカと同じで、大企業経営者と投資家だけが儲かって、大多数の労働者や社会的弱者はいっそう困窮化するという「格差の拡大」を結果するにすぎないでしょう。安保法制だけでなく、経済政策においても愚かなアメリカ追随を強化しようとするもので、低成長の下でも極端な貧富の格差なく、所得の公正な再分配を可能にするような税制や経済システムを作っていく必要があると僕は思いますが、いまだに昔ながらの「経済成長神話」に囚われているようで、だから「浦島太郎の経済学」なんて揶揄されるのです。原発だって、あんな危険なものに頼り続けるより、廃止を決めて新技術の開発に注力した方がのちのち輸出の有力な担い手が増えて、経済的にも大きな支えになってずっといいでしょう(原発を売り込むなんて無責任もいいところで、言語道断です)。政治・経済、どれをとっても安倍政権の「革新性」はゼロなのです。「危険性」の方は申し分なくありますが。

 一体こんなお粗末な政権を日本人はいつまで支持し続けるのでしょう? 僕には不可解そのものです。
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祝子川通信 Hourigawa Tsushin


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