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憲法記念日に安倍自民の改憲マンガを見る

2015.05.03.18:26

 まずYahooのニュースサイトで、弁護士・渡辺輝人氏の

自民党の改憲漫画から「押しつけ憲法論」を考える

 を読み、びっくり仰天して、そこのURLを利用して、安倍晋三が指示して作らせたという改憲マンガ

ほのぼの一家の憲法改正ってなあに?

 に進みました。

 僕が自民党に提案したいのは、この漫画を英語に翻訳(但し、訳語をごまかさずに正確に)して、世界各国に配布することです。とりわけアメリカの反応が楽しみですが、フランスでも、はたまたドイツでも、「ナチスのプロパガンダよりひどい!」と呆れられてしまうのは必定です。その浅薄な「個人主義」理解にも恐るべきものがある。

 日本国民もナメられたものです。僕はかねてから「安倍晋三はオウムの麻原彰晃より危険だ」と言っていて、周囲に「いくら何でもそこまでは…」と笑われることがあるのですが、カルト宗教の教祖と一国の首相では、それが将来に及ぼす害悪は比較にならない。オウムもマンガやアニメを信者獲得に利用していましたが、その中身の調子のよさと愚劣さでは、麻原も顔色なしと言えるほどです(ちなみに彼ら二人は同学年)。

 それにしても、この「ほのぼの一家」とやら、「ほのぼの」なのはオツムの中身にかぎられているようで、こういう知的レベルが「日本家庭の標準」だとすれば、われらが日本民族滅亡の日もそう遠くはなさそうです。少なくとも僕の知り合いにはここまで程度の低い家庭は存在しません。

 しかし、これが安倍晋三の「頭の中身」なので、こういう男が首相をつとめていて、それがまだ5割近い支持率を維持しているというのは一体何なのでしょう? 最近よく「反知性主義」という言葉を耳にしますが、こういうのはたんなる「低能主義」と呼ぶべきでしょう。理性や知的誠実さを伴わない、戦争体験者の話に耳を傾けようともしない、無思慮なただの「観念愛国」はネトウヨの特徴ですが、それがそっくりこのマンガには当てはまります(ここに出てくる、憲法改正の話で急に勢いづいて元気になる92歳の老人のメンタリティは、実際は今の20代30代のネトウヨのそれでしかありません。「押しつけ憲法」に「敗戦国の屈辱」だと身を震わせて怒る80~90代の老人を探してごらんなさい。仮にいたとしてもそれは稀な例外にすぎないでしょう)。

「けなすだけで具体的な批判をしない」と文句を言ってくる人がいるかも知れませんが、僕がそれをしないのは、「あまりにもレベルが低すぎる」からに他なりません。

 最後に、それでも一つだけ、具体的に書いておくと、「その2 憲法改正でどうなるの?」の項に、こういうやりとりがあります。それは「国民の権利及び義務」をめぐっての一家の議論で、「公共の福祉」を勝手に「公益」に読み替えた上で、現行憲法の「国民の権利」の“規制”は不十分なものだという話に強引にもってゆき、馬鹿な29歳の嫁に、「公益に反してなきゃ、個人の幸福を追求するためなら何でもやっていいってこと?」と疑問(末尾※注)を出させ、ここで92歳のじさまが「く、国の安全…」と口にすると、さあ大変。最初は憲法改正反対だったはずの嫁はいつのまにか右翼になっていて(いともかんたんに洗脳されちゃうんですねえ…)、「日本じゃ、国の安全に反してもワガママOKだってこと!?」と激昂します。
 そこから、こういうやりとりに発展する。

「ちなみに、ドイツ基本法には『団体のうちで憲法的秩序もしくは諸国民のあいだの協調の思想に反するものは禁止される』とあるっ」(92歳・千造)
「結社とか宗教団体って、中には怖いものもあるからなあ…」(35歳・一郎)
「今の日本じゃ取り締まれないの?」(29歳・優子)
「犯罪行為は刑法で取り締まっているけど、憲法には具体的な規定がないってことか。それどころか人権で擁護されているとも取れるわけだ。だからどんなに危険な結社や宗教団体でも簡単には解散させられないんだ」(64歳・司郎)

 議論に参加できない2歳の翔太君以外はオールキャストです(それにしても、こういう幼稚な単細胞一家の洗脳教育で育てられた子供はどうなってしまうんですかね?)。

 まずドイツ基本法(憲法)のこの規定について言うと、これがナチズムを念頭に置いて書かれたものなのであるのは明らかです。一つ皮肉を言わせてもらうと、安倍政権の「集団的自衛権容認」解釈が現行の「憲法的秩序」に反するものであるのは大方の認めるところだと思いますが、それは最初は「憲法遵守」を誓って見せながら、その舌の根も乾かぬうちにワイマール憲法を実質的に無効化したナチスのそれと相通じるものです。ドイツ憲法のこの規定は、そうしたことを二度と許すまいという決意に発するものです。

 ここで行われている議論は、「日本じゃ、国の安全に反してもワガママOKだってこと!?」という優子の安直きわまりない言葉を受けて始まっていることからもわかるように、政府が「国の安全」に反すると解釈する結社や団体は、その存在を許すな、ということです。これにはおそらく「愛国」的な右翼団体などは含まれていないことでしょう。政府を真っ向から批判し、憲法改正など必要ないと主張する個人や団体は、この後におきまりの「戦争を放棄さえすれば、戦争がないと思っとるのか? もし明日、どっかの国が攻めてきたらどうするんじゃ(92歳・千造)というお粗末な議論が控えているのですが、政府とひいては「国の安全」を脅かすものなので、禁止されねばならない、ということになるわけです。

 言論や政治活動の自由は、「公益」すなわち「国の安全」に反すると認められれば、禁止されなくてはならない(団体・組織なら解散を命じられる)。それは政府の考えるそれなので、戦前の大政翼賛体制のようなものを作って、それに反するものは「非国民」扱いして、弾圧するのが妥当だと、暗に言っているのです(今の政府のマスコミに対する恫喝姿勢から見ても、これが悪意の解釈では決してないことがおわかりでしょう)。

 マンガのこのやりとりを見て思うのは、オウム事件の悪用です。あれが防げなかったのは憲法のせいではなく、警察の捜査能力の問題で、刑法の範囲で十分対応できたのですが、それをあたかも現行憲法の「不備」によるものであるかのような印象操作を行っているのです。非常にタチが悪い。

 透けて見えるのは「戦前回帰への願望」です。「国体」に反するとみなしたものは治安維持法(当時)を乱用して徹底的に取り締まる。「憲法に照らして」それは合法だと、そう言えるようなものに憲法を変えたいのです。例の盗聴法(「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」)や特定秘密保護法は、かつて治安維持法が数次の「改正」をへて恐るべき国民弾圧の法律に姿を変えたように、憲法「改正」が成った暁には、同種のものに変質させられるでしょう。

 それにしても、民間の右翼団体ならわかるが、政府がこのような低級なプロパガンダのためのマンガを作ってばらまくというのは、相当に深刻な事態ではありませんか? 低級すぎてまともに相手にする気も起らないというので放置すれば、歴史や法律に無知な、いわゆるリテラシー能力に乏しい人間は遺憾ながら増えているので、それが予想しなかったほどの「洗脳効果」をもつということもありうるのです。

 今月号の文藝春秋に、「安倍首相よ、正々堂々と憲法九条を改正せよ」と題した、舛添要一・小林節・三浦瑠麗三氏の鼎談が載っていました。これはいたってまっとうな議論で、こういうものなら僕は聞く耳をもちますが、“本質的に”安倍自民の改憲の意図はこういうものではない。賛成派・反対派の壁を乗り越えて、彼の危険すぎる目論見を打ち砕く共闘が行われることを、僕は期待しています。でないと大変なことになってしまうでしょう。さっき、「安倍は麻原より危険だ」と言って笑われることがあると書きましたが、それが正しかったことが後で証明されても、僕は少しも嬉しくないのです。

※注 「公益に反してなきゃ、個人の幸福を追求するためなら何でもやっていいってこと?」というのは、近代憲法ではごく「あたりまえ」のことです。問題は、こういうことです。政府が「公益」だと主張することが、実際は「公害」にすぎないことがある。だから何が真の公益であるかについてのオープンな議論が認められねばならないのですが、今の安倍自民は集団的自衛権もアベノミクスも「公益」だと主張して、それを批判する者を排除したり黙らせようとやっきになっています。マスコミもその「要請」に応えようとしている。
「個人の幸福を追求するためなら何でもやっていい」という表現は、意図的に個人の「自由」や「権利」を貶めようとする言い方です。「公共の福祉」という言葉にしても、それが権力者によって恣意的に解釈され、乱用されると個人の正当な自由や権利弾圧の道具になりますが、「政府に反対する」自由や権利は「公益に反する」「ワガママ」だということにしたいのです。政治と道徳の次元を故意にごっちゃにし、それを国民統制に利用しようとするのは全体主義国家の常套手段で、戦前戦中の日本も例外ではありませんでした。
 こういう論理のペテンは非常に悪質なものです。まともな政治家ならこうしたペテンを恥じることもなく行うことは決してないので、今の安倍政権が危険な領域に足を踏み入れていることはこうしたことからも明らかだということです。それが「故意」ではないというのなら、恐ろしく頭が悪いわけで、どのみち危険なのは同じなのです。
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