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議席80減でも「信任を得られた」という安倍ロジック

2014.11.21(15:41) 286

 前々回の記事を書いた後、「ほんとに今頃解散なんてするのかな?」と、ある知人に言われました。新聞が憶測記事を書いているだけではないかと見たわけで、彼はまともな人なので「大義なき解散」は避けるだろうと思ったようですが、僕の方は「絶対に解散に持ち込む」と踏んでいました。うちわや明治座の件が問題なのではない。あんな些末なことではなく、その危険な極右ぶり(欧米のメディアはそれを正しく認識している)と、アベノミクスについての疑惑がこれ以上深まらないうちに解散に打って出た方が安倍政権にとってはトクだし、年末なら投票率は低くなって組織票の比重が大きい自公にとっては有利だからです。

 その後、彼は記者会見で「自公連立で過半数を維持できなければ、アベノミクスを進めていくことはできない。過半数を得られなければ、私は退陣する」と語ったとのこと。一見すると「勇気ある発言」のように聞こえるが、要は今より80議席減っても「国民の信任は得られた」と主張できるということで、あまりにも“控えめ”というか、今の「多弱」野党のていたらくを見れば、それを下回ることはまずありえないので、「うまいこと言ったな」と苦笑するしかありません。

 もう一つは、「消費増税先送りで信を問う」みたいなポーズを見せていることで、一般の国民感情としては、増税してくれない方がいいにきまっているから、そんな野党みたいなことを言われても困るわけです。政権与党としては論理が逆立ちしている。

 今の黒田日銀の「異次元の金融緩和」なるものは経済・金融政策としては本来は「禁じ手」で、麻薬のようなものだというのは正しいでしょう。そうやって人為的に株価をつり上げても経済の実需は変わらないわけだから、景気なんかよくなるわけがないので、金融資産をもつ人間と、それをもたない人間の格差が拡大するだけです。昔、小泉政権の時代、竹中平蔵(いつのまにか復活しているらしい)が「経済のトリクルダウン説」なるものをさかんに吹聴していました。要するに、金持ちが儲かれば、金を使ってくれるようになって、貧乏人もそのおこぼれにあずかることができるという「理論」ですが、それが不発に終わったことは誰もが知る通りです。彼らはいっそうの財テクに走り、経済構造をさらにいびつなものにするだけなのです(その見本が今のアメリカです)。

 アメリカも「経済好調」で株高になっているそうですが、その果実は富裕層がこれを享受し、雇用の改善といったところで、低賃金労働が増えただけのようで、今の日本もこれと同じです。正規社員は減り、その分非正規労働の「働き口」が増えただけ。トヨタをはじめとする輸出大企業は円安効果もあって顕著に利益が増えている(しかし、工場は海外にシフトしたまま)ようですが、デパートやスーパー、コンビニの売り上げが一様に落ち込んだままというのは、一般庶民は増税分以上に使う金を減らしたというか、減らさざるを得ない状況にあるということです。増税プラス円安で、食料品などは値上がりしているから、なおさら節約心理が強まるわけです。

 いつの時代でも金持ちは少数派で、貧乏人は多数派です。多数派が金を使うようにならないと経済はよくならない。しかし、格差が拡大して、貧乏人がいっそう貧乏になるようなことをすれば、景気がよくなる道理はない(昔公明党が発案してばらまいた「地域振興券」なるものがあって、自公はまたその手を使おうとしているという話ですが、あのとき心ある人は「人を乞食扱いするな!」と怒ったもので、そんな一過性のバラマキには何の効果もありません)。ホルモンの活動同様、本来若者は消費意欲も旺盛なはずですが、若年人口自体が減っている上に、低賃金に甘んじている若者が多く、かつ年金などの社会保障が全くアテにならないとなれば、貧しいながらも倹約貯蓄に励むということになって(実際、今の若い世代は僕らの世代では考えられなかったほど消費活動においても慎重、堅実です)、需要はさらに落ち込むのです。

 もう一つ、モノが足りていなかった高度経済成長時代と違って、今はひととおり行き渡っていて、別にこれ以上ほしいモノがないということもある。極貧の人たち以外はそうで、電化製品など、こわれたら買い替えるというぐらいのものです。

 だから、今の消費の停滞には、先行きが不安で消費しないという面と、そもそも買わねばならないモノがないからという、二つの側面があるわけですが、金持ちならなおさら買わねばならないものは少ないから、そちらの所得増加分はまた財テクに回るだけです。

 「カジノ資本主義」の現代では、株価が上がったから景気もよくなるなんてのは馬鹿げた幻想なので、需要が増加しなければ企業の設備投資も行われず、雇用も増えない。輸出大企業の従業員の給料やボーナスは多少増えたでしょうが、それ以上にそれらの企業は内部留保なるものを増やし、設備投資するときは、今後経済成長が望めそうな発展途上国に対して行うのです。国内で作ってそれを輸出するのではない。せめてそれで国に納める税金を増やしてくれればいいが、法人税は下げる、というのがアベノミクスの既定方針なのです。

 収入が増えない「その他大勢」組の一般庶民にとっては、「インフレ目標」なるものを掲げて、何としてもそれを達成するのだ、なんて政治は迷惑なだけです。「いや、賃金はこれから上がるので、少しタイムラグがあるだけです」なんて安倍が言ってるのは嘘の皮なので、インフレ気味になってモノが高くなればなおさら売れなくなるから、それを作っている会社の、売っている店の経営は悪化して、そこの従業員の賃金は減りこそすれ、増えることはない。そうなると無理してでも元の安売り競争に戻るしかないが、今は度の過ぎた円安で原材料を輸入している会社は価格転嫁もままならず、それでなくても経営体力がなくなっているから、倒産するしかなくなって、こちらはこれから本格的に増えるだろうと言われています(当然それらの会社の雇用は失われる)。「タイムラグ」があるのはそちらの方で、安倍の言う「賃金上昇」の方ではないのです。

 僕が腹立たしく思うのは、彼は自慢げに株高(と円安)で年金の運用利回りが大きくプラスになっているなんて言ってることで、その程度のことであの問題が解決するか(そのうち暴落すれば逆になる)、とその認識の甘さに呆れるのですが、そちらの抜本改革をやるというハラはないのです。このままだと今の三、四十代以下の年齢層(本来の消費牽引役)に「老後の安心」なんてものはまるでない。だから消費を手控えるマインドになるので、何でそれがわからないのでしょう。

 経済に関しては、僕はゼロ成長を前提に極端な貧富の格差が生じないように、ワークシェアリングの手法なども活用して、所得分配をうまくやればいいだけだ(過労死や過労自殺がこんなに多いのは先進国としての恥です)と考えていますが、安倍はバブル経済かそれ以前の高度経済成長の再来のようなものしか考えられないようで、そんなことは不可能だし、望ましくもないのです(前にも書いたように、僕は消費税が仮にうんと上がっても、それで基礎年金部分をまかなうなど、社会保障がきちんとすればいいという立場です。そこらの見通しが全く示されないからこそ、人々は安心して金が使える心理にならないのです)。

 僕がゴチャゴチャ言うまでもなく、アベノミクスは実は「アホのミックス」であったことが早晩判明するでしょうが、それ以上に問題なのは彼の政治・外交です。集団的自衛権に関しても、秘密保護法、憲法の解釈改憲についても、「あれは聖戦」と言いたげな過去の歴史解釈に関しても、幸い賛成しているのは一部のおかしな人たちだけなので、「選挙で信を問う」というのなら、きっちりそれも争点として明確化して戦え、と言いたいのですが、彼はそこをごまかそうとするでしょう(原発再稼働に関しても同じです。論点としては弱いが、彼が中教審の答申に基づいてやろうとしている「大学入試改革」と来た日には、僕は一応その方面のプロなので断言しておきますが、愚劣無責任としか言いようのないシロモノです)。

 野党はそのあたりもしっかり批判するといい。彼はすぐにキレて、ネトウヨの本性を丸出しにして(フェイスブックの「いいね!」が増えると本気で喜ぶという程度の御仁です)、支離滅裂な論理を並べ立てるだろうから、そういうことを重ねていけば、あのむやみと態度がデカいだけでわけのわからない(元からそうだった)みんなの党の元代表、渡辺某といい勝負だと思われて、自民は大打撃、「議席80以上減」も夢ではありません。そうして彼には約束どおりご退陣いただく。

 そうすれば僕も安眠できるようになるので、野党の候補者たちには大いに頑張ってもらいたいものです。僕個人としては、とくに民主党左派と共産党に期待しています。しけた「政治とカネ」の問題なんかいつまでもネチネチ言っているようでは駄目なので、「きっちり本丸を突け!」と言いたいのです。
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祝子川通信 Hourigawa Tsushin


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