FC2ブログ

低次元のウワサ話が元でこの大騒ぎとは…

2014.10.10.17:30

 それでなくとも悪化している韓国と日本の関係が、この事件で一層険悪な様相を呈しているようです。例のソウル地検が「情報通信網違反の名誉毀損」の疑いで産経新聞の加藤達也ソウル支局長を在宅起訴した、という事件の話です。誰の名誉が傷つけられたかといえば、それは韓国の朴槿恵大統領。

 事件になってから初めてその産経電子版の記事を見たという人が多かった(従って、その「名誉毀損」記事は日本ではほとんど影響力をもたなかった)ようで、僕も騒ぎになってからその『朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に……誰と会っていた?』と題された記事をネットで初めて読みましたが、「おそらく“大統領とオトコ”の話は、韓国社会のすみの方で、あちらこちらで持ちきりとなっていただろう」といった調子の下世話な週刊誌ネタで、もしも事実なら国家的大事件のときに大統領が愛人と“密会”していて一時連絡すら取れなくなっていたということで、大スキャンダルですが、根も葉もないデマだったというのだから、朴大統領が怒るのもある意味あたりまえなのです。

 これ、書いたのが国内の週刊誌か何かで、対象が日本の政治家なら、ふつうにその政治家は怒ってそのメディアを名誉毀損で訴えるでしょう。いくら「ウワサ」だと断って報じたのだといっても、ウラをとったわけではなく、それを記事にするのは明確な悪意があってのことと解釈されるからです。そのあたりのことは、僕ら日本人もちゃんと認識しておかねばならないでしょう。産経の例の記事はそれほど低俗な、新聞としては本来記事にできるようなレベルのものではなかったのです。

 ただ、産経支局長がこれを書くきっかけになったのは韓国の朝鮮日報の記事であり、具体的な人名まで挙げてまことしやかな嘘を広めていたのは韓国の政治関係者や「証券筋」であったわけで、ニッポンの「右翼の機関紙」である産経はもとより反韓、嫌韓で知られており、韓国の悪口を「紹介」するのをつねとしているとしても、虚偽のウワサを撒き散らしてまで「大統領を侮辱」しようとした手合いは、何より韓国民の中にいたということです。

 僕は韓流歴史王朝ドラマが好きで、NHKで放映された『イ・サン』や『トンイ』は全部見ましたが、そこに登場する自己とその派閥の保身や権力伸長のためにはどんな卑劣な陰謀も辞さない悪辣きわまりない重臣たち(そこには本当の意味での「公」の観念などは微塵もない)の姿には恐るべきものがあって、「こういうのは主人公の素晴らしさを際立たせるための演出なんだろうな」とは思うものの、その執拗さにおいて、日本のドラマなら、いくらなんでもひどすぎてかえってリアリティを損ねてしまうだろうな、と感じられるほどのものです。

「陰謀渦巻く王朝劇」は、ひょっとしたら今も韓国の政界では繰り返されているのかも知れません。韓国政府はメディアの政権批判に敏感で、よく告訴されるので韓国メディアは萎縮しがち(その代わり「反日報道」でうっぷんを晴らす?)なのだそうですが、それは歴史王朝ドラマに出てくるような種類の、「しつこく、相手を倒すためには手段をえらばない」政敵に対する強い疑心暗鬼と警戒心が働いているからで、それがしばしば「過剰防衛」となってあらわれるのだ、とも解釈できるかも知れません(もう一つ、「熱しやすく冷めやすい」日本人に輪をかけた韓国人の極端な性向、熱狂的に支持するかと思えば、何かをきっかけに手の平を返したかのようにいっせいに非難に転じる、そういう国民性に対する政治家の恐怖も関係していそうに思えますが)。

 問題の産経記事は最後をこう結んでいます。

【ウワサの真偽の追及は現在途上だが、コラム(注:朝鮮日報の)は、朴政権をめぐって「下品な」ウワサが取り沙汰された背景を分析している。
 「世間の人々は真偽のほどはさておき、このような状況を大統領と関連付けて考えている。過去であれば、大統領の支持勢力が烈火のごとく激怒していただろう。支持者以外も『言及する価値すらない』と見向きもしなかった。しかし、現在はそんな理性的な判断が崩れ落ちたようだ。国政運営で高い支持を維持しているのであれば、ウワサが立つこともないだろう。大統領個人への信頼が崩れ、あらゆるウワサが出てきているのである」
 朴政権のレームダック(死に体)化は、着実に進んでいるようだ。】

 実はこのあたりが一番「頭に来る」箇所だったのかも知れません。政権が弱体化しているからこそ、権力のしめつけが厳しい韓国メディアもそんなウワサを記事にすることができたのであり、あちこちで公然とそのような「はしたない」話が語られるようにもなった。だから「もうこの政権も終わりだ」と言いたげなその論調が、何より朴政権の癇に障ったのです(このあたりも韓流歴史ドラマと似ていて、王権が健在なときは鳴りをひそめていて、何かあって弱体化したと見るや、ここぞとばかり陰謀をたくましくして攻め立てるのが悪徳重臣派閥のつねなのです)。

 朴政権はそこで、「弱体化」を否定すべく、「反韓、嫌韓報道が目に余る」産経にお灸を据えることにした。これだと国内の「反日」世論にもアピールすることができ、「悪意ある日本メディアに毅然とした対応をとった」ということで支持率上昇も期待できると考えたのです。

 しかし、「報道をめぐって外国メディアの記者を起訴するのは極めて異例」(朝日)なことなので、日本から抗議が来るのはもとより、他の海外諸国からもいっせいに非難の声が上がる結果となり、「それでも民主国か!」というので逆に韓国を孤立させる恐れが出てきて、いっそう「政権の弱体化」に拍車がかかりそうな雲行きになってしまったのです。「朴大統領のやることはいつも子供じみている」と言われる羽目になり、「心ないウワサ」を撒き散らした彼女の政敵たちはほくそ笑んでいるかも知れません。韓流歴史王朝ドラマさながらの展開になりつつあるのです。

 この先どういう展開になるのかは知りませんが、朴大統領は就任以来「反日アピール」に徹して、日本国内の「右傾化」勢力のさらなる伸長に大いに貢献してきました。それは日本国内の右傾化を憂慮する側の人たちには迷惑な話でした。ネトウヨレベルの歴史認識しかもたない安倍も困るが、そのしつこい日本非難で日本人全体の嫌韓感情をさらに強められたのでは融和の方向にもって行きたい心ある日本人は発言力が弱くなって、ほんとにやりにくくなっているのです。

 僕自身は、朴大統領は個人としては悪い人ではないのだろうと思っていますが、政治リーダーというのは同時にすぐれた心理学者でもなければならず、そこらへんのやり方がほんとに下手だなと思います。よく「韓国では『反日』でないと政権がもたないのだ」とも言われますが、それが事実だとすれば、そういう社会風土も問題です。それに加えて、歴史王朝ドラマにあるような“前近代的”な醜悪な権力闘争体質まで背後にあるのだとすれば、かの国で大統領を務めるのは恐ろしく困難だということになるでしょう。

 こういう見方もたんなる「嫌韓」感情の発露でしかないのでしょうか? いずれにせよ今回の件で日本と韓国の溝はさらに深まりそうで、安倍と朴、両方が政権の座を去るまで、日韓関係の修復はほぼ不可能になってしまったのではないかと案じられます。

 にしても、元はといえば下らないゴシップが原因で外交上の大問題にまで発展したわけで、あまりにも情けない話だと思うのは僕だけではないでしょう。産経の記事も低級すぎるが、それを告訴する方も、その心ないウワサが元は自国民の一部が撒き散らしたもので、すでに虚偽だと皆にわかってもいるのだから、利益があるとは思われない。相互の国益を害し、相互の国民感情を悪化させるのに役立つだけなのです。
スポンサーサイト



プロフィール

大野龍一

Author:大野龍一

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR