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「核」の黙示録~DVD『放射性廃棄物』を観て

2013.05.23.07:20

 遅まきながら見てみました。テレビのドキュメンタリーの類は除き、この方面のものを見るのは『チェルノブイリハート』『10万年後の安全』に続き三本目だったのですが、これは原発依存率が世界で最も高い(75%?)フランスで制作されたもので、フランスは地震がないから原発も国民に疑問なく受け入れられているのかと思いきや、全然そうではないのがわかって、ナットクすると同時に、事態の深刻さをなおさら強く印象づけられました。チェルノブイリ以外の、今のロシアが抱えている深刻な放射能汚染の問題などもよくわかって、ひとくちに言えば、チェルノブイリや福島原発事故が仮になかったとしても、原子力と放射能による汚染は人類の存続を根底から脅かす大問題なのだということが、このドキュメンタリーを見るとよくわかるのです。

 僕はこれをレンタルショップで借りて見たのですが、3千円ちょっとで買えるようなので、自分で買って塾の生徒たちに見せてあげようかなと、しばらく思案しました。しかし、これは派手な、あるいはショッキングな映像などは全くないものの、それが含みもつ意味は恐ろしく深刻なものなので、彼らが未来に希望を失ってしまうのではないかと、そんな心配が起きてきました。

 僕などは生きてもあとせいぜい二十年前後です。しかし、若者は先が長いし、これから生れてくる子供たちはむろんたくさんいるので、このまま放射能汚染(事故がなくても危険な放射性物質は世界中で河川や地下水、海、大気中にたえず放出され続けている)が拡大を続け、行き場のない高レベル放射性廃棄物は増え続け、戦争や天変地異で原発や放射性廃棄物の中間貯蔵施設が破壊されるようなことになれば、一体どういうことになるのか? そこに出現するのは聖書の黙示録に描かれているようなおぞましい光景でしょう。安倍総理は日本経済の今後の成長政策の一環として、「培われてきたわが国の高度な原発技術」を東南アジアなどの発展途上国に「輸出」する支援を政府を挙げてなさるのだそうですが、政治家というのはいくら想像力に見放された人たちだとしても、お気楽が過ぎて言葉もないほどです(このドキュメンタリーでも、フランスの政治家たちのこの問題に対する恐ろしい無知が指摘されています。大統領自身がロクな知識を持っていない! 何でもあれは、フランスの理系エリートたちが決めて進めてきたことなのだそうです。あの国には有名な「天才学校」があって、理系はエコール・ポリテクニークとかいう名前だった気がしますが、そこの卒業生たちが「おまえら素人はどうせ何もわからないのだから口を出すな」ということでやってるのでしょうか? げんにその大ボスらしき人物はこのフィルムの中でも自信たっぷり「専門家への信頼」を説いていて、「信じる者は救われる」と説いて迷信を押しつけた昔の宗教家に似ていたので、思わず笑ってしまいました)。

 人間の知力には二種類あります。一つは計算的な知力で、いわばソロバン勘定の知性(平面的・機械的な屁理屈を並べ立てる能力も含む)です。もう一つは直観力、想像力を含む、生きた人間感情に裏打ちされたふくらみのある総合的知性です。前者は機械やコンピューターで代行できるが、皮肉なことに、コンピューターの発達と共に、それを制御し使いこなす力の方は退化して、人間の知力自体がコンピューターに似てきたのです。だから人間は、恐ろしく鈍感に、危機を察知する能力に乏しくなった。下らない目先のこと(とにかく経済だ!)には大騒ぎするのに、人類の生存そのものを脅かすような深刻な危機には鈍感になって、反応しなくなったのです。そういうのは「現実的でない」とかえってあざ笑うようになった。
 けれども、いつか何がほんとに「現実的」なのかを思い知るときは来るはずで、来たときはすでに手遅れなのです。

 よく使われる時計のたとえを用いるなら、今は深夜零時の2分前ぐらいでしょう。この深夜零時とは何を指すのか? むろん、「人類滅亡」のその瞬間のことです。縁起でもないことを言うなという人たちにもう一つ付け加えておくならば、それでいっぺんに終わってしまうのなら、まだいいのです。放射能の影響はあとあとが恐ろしい。断末魔の百年、二百年がそれに続くとしたら、どうなのでしょう? それが、これまで人類が経験した数々の大惨事とは性質の全くちがうところなのです。そしてそれは、人間の悪魔的な領域にまで達した科学技術と、それとは裏腹の安易きわまりない「ま、いいか、先のことは…」メンタリティ(心性)の産物だということで、紛うかたなき「人災」なのです。

 原子力の発見とその途方もない力の「解放」は、人類にとって「地獄の釜の蓋を開ける」ことを意味した。仮にもホモサピエンスを自称するなら、それだけは全員がもうはっきりと認めなければならないのではありませんか? そしてそれがわかったら、すでに地獄の内容物はかなり出てしまったとはいえ、できるだけ早く閉じるしかありません。そうすれば最悪の事態だけは何とか避けられるかも知れない。これは全然大げさな話ではないので、こういう言い方はむしろ少しばかり楽観的すぎるのではないかと感じられるほどです。

 YouTubeに予告編が出ているので、未見の方は下をクリックしてごらん下さい。

『放射性廃棄物~終わらない悪夢~』
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