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イノシシ談義

2013.02.12.02:51

 僕はつねひごろ人間よりも野生動物に親近感を抱いている者ですが、このニュースには思わず笑ってしまいました。追いかけられた子供たちにとっては恐怖の体験だったかも知れませんが…。

【11日午後0時半ごろ、(埼玉県)ふじみ野市苗間の駐車場で、富士見市の小学5年生の男児(11)がイノシシに襲われ、両足の太ももをかまれて軽いけが。イノシシは約10分後、近くを警戒中の警察官に捕獲された。この際、警察官が手をかまれて軽傷を負った。
 東入間署の調べによると、男児は友達と計3人で近くの公園に遊びに行く途中で、突然、イノシシに追いかけられたという。友達にけがはなかった。現場周辺ではイノシシの目撃情報が寄せられており、同署が警戒していた。
 イノシシは体長約1メートル30センチ。現場は、東武東上線のふじみ野駅の東方約500メートルの住宅地。】(朝日新聞デジタル)

 最近はイノシシもよく街中に出てくるようで、前にテレビで長崎の市街地だったか、アスファルトの道路をイノシシ親子が夜間に仲良く並んで走っているのを見たことがあります。イノシシの子供のウリ坊は大人気ですが、親イノシシとなると、可愛いよりこわい。

 それにしても、イノシシって噛むの、という人がいるかも知れませんが、噛むのです。僕が子供の頃、小学校の裏手の山をイノシシが下りてきて、遊んでいる子供たちを尻目にグラウンドを猛烈な勢いで横切った後、町なかに入り、逃げ惑う小学生の女の子の一人が噛まれ、商店街を縦走してひっくり返るような大騒ぎをひき起し、新聞販売店のサッシ戸を壊した後、近くの鉄工場に突っ込み、そこの人の太ももに噛みついて、たまらず鋼鉄のハンマーか何かで必死に叩いたら死んだ、という事件がありました。

 翌日の新聞の地方版にはその記事がでかでかと出て、その見出しは「イノシシ、町を暴走 住民ら殴り殺す」となっていて、僕はそれを小学校の職員室で見たように記憶しているのですが、恐ろしく野蛮な人間が住んでいるところだと誤解されかねないので、他にもう少しマシな見出しがつけられなかったのかなと、可笑しくてなりませんでした。そのイノシシにかまれたのは僕の同級生の妹で、幸い軽い怪我ですんだようでしたが、足に大きな包帯が巻かれていました。同級生にも学校の裏山でそのイノシシと鉢合わせしたのがいて、彼はトリモチでメジロを取りに行っていたらしいのですが、ガサガサという音がしたので、茂った萱を掻き分けるようにして見ると、目の前に面長のイノシシの顔があって、悲鳴を発して転げるようにして無我夢中、山を下ったのだそうで、顔じゅう切り傷擦り傷だらけでした。彼は学年一の俊足だったので、逃げ足も速かったはずで、でなければ噛みつかれていたかも知れません。

 しかし、そのイノシシには大いに同情の余地があった。猟師に追われていたのです。昔はそういうことでもなければ、イノシシが昼間里に下りてくることは決してなかったので、僕みたいにオク(奥)と呼ばれるとりわけ辺鄙なところに住んでいて、年中野山を駆け回っている子供でも、日中イノシシと出会うなどということは一度もありませんでした(あれは本来夜行性の動物です)。サルだって、よほどの奥山に行かないと見かけることがなかった。松茸を取りに行って遅くなり、暮れかけた山道を慌ててかけ下っていたら、ムササビが突然目の前を横切って肝を冷やしたことはありますが。危険な生き物といえば、よくマムシには出くわしたもので、「見つけたら殺せ」と教えられていましたが、おじけづいているので、狙って石を投げても「頭を潰せ」と言われたその頭にはなかなか当たらない。失敗して、マムシがサッと身構え、するするっとこちらに向かってくると、必死に逃げるのみでした。あれに噛まれると命取りになりかねないということはわかっていたので、心底こわかったのです。稲刈りのときなど、さして広くもない一つの田んぼに悪くすると三匹もマムシがいることがあって、大人はそれを残さず退治してしまうのだから、大人というのは偉いものだと、畏怖の感情を抱いたものです(今どきの大人が子供に尊敬されない理由の一つは、この種のことで「えらさ」を示す機会がなくなってしまったからでしょう。子供は株で儲けたといったようなことでは尊敬してくれないので、このような「わかりやすいえらさ」が必要なのです)。

 話を戻して、今はイノシシでも熊(これは北の地域に限られるようですが)でも、平気で人家近くに出没する。僕の実家の周辺には、昔は奥山の崖っぷちにしかいなかったカモシカまで住み着いてしまい、悪くすると石段で鉢合わせしたりすることもあるという。舗装した道路に澄ました顔で立っていて、ケータイで写真を撮ろうとすると、ポーズまで決めてくれるという慣れ具合だそうで、ほとんど「自然動物園」状態です。むろん、ふつうのシカもそこらじゅうにたくさんいるので、サルと来た日には、傍若無人も甚だしく、庭の柿の実まで全部食べてしまうのはむろん、下手すると家にも上がりかねない。他に、タヌキ、アナグマ、キツネ、ウサギ、そしてイノシシと、勢ぞろいしていて、それが競うようにして畑と田んぼを荒らすので、僕の母親は、「あれたちのために作物をつくっているようなものだ」と嘆いています。野生動物のためのボランティアの食事係みたいなものだなと、聞いていつも笑ってしまうのですが、こうなったについては農水省の責任が大きいので、むやみやたらと植林を進めすぎて、原生林を激減させてしまったので、彼らは里にやってきて、来てみたら畑や田んぼで効率よく食料が調達できることがわかって、皆近くに住み着いてしまったのです(カモシカまで現れるようになったのは、増えすぎた鹿に縄張りを奪われてしまったということが原因の一つにあるようで、元々は、あれはそれほど珍しい動物なのです。こ存じのように、名前はシカでも実はウシ科の動物なのですが)。

 延岡近辺でも、イノシシはたくさんいるようで、僕はよく夏に鮎とりに行って、川岸にイノシシの「ぬた場」を見かけます。この「ぬた場」というのは僕の田舎の方言なので、正式には何というのか知りませんが、イノシシがからだをこすりあわせた跡で、泥っぽいぬかるみみたいなのがあちこちにあるのです。地元の人に聞くと、やはりイノシシだそうで、稲がやられて困るのだという。夜間、川に沿ってイノシシは移動し、田んぼにかけあがって荒らすのでしょう。ちなみに、イノシシはものすごいジャンプ力があって、助走なしでもかなりの高さを越えられます。動物のオリンピックがあれば、イノシシはカモシカと並ぶ、ハイジャンプの優勝候補かもしれません。

 それにしても、その埼玉のイノシシは、何だって日中町を走ったりしていたのでしょう? よほどの事情がなければそんなことはしないはずで、僕にはそれが謎です。人家近くに住むうちに、人間の世界に毒されて、「昼夜逆転」してしまい、夜活動するはずが、昼に動き回るようになってしまったのでしょうか? できるものなら、イノシシ本人にじかにその理由を聞いてみたいところです。僕の田舎では、「イノシシには山の神がついている」という言い伝えがあって、あれはたいそう賢い動物だと言われていました。きっと何か「やむを得ざる事情」があって、昼間そんなところにいたのでしょう。

 今はおまわりさんたちも大変です。人間の指名手配犯を「特別警戒」していたというのならわかるが、イノシシまで「警戒パトロール」しなければならないとは…。

「警戒中のイノシシ発見。ただちにタイホに向かいます!」
「おお! 動物愛護精神に則り、むやみと発砲しないようにな。しかし、噛まれないように十分注意すること!」

 そんな警察無線が交わされていたのでしょうか? どんなふうにして首尾よく「捕獲」したのかも知りたいところですが、この記事にはあいにくそこまでの情報はありません。
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