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北朝鮮――この世の地獄

2013.01.28.16:44

「北朝鮮で飢餓発生」のニュースはこれまでもたびたび目にしてきましたが、昨年来は金正恩政権発足や、人騒がせなミサイル発射・核実験の話ばかりで、その陰でそんなことが起きていたとは知らなかったので、昨日の産経新聞の次の記事には驚かされました。

飢餓地獄の北朝鮮で人肉食相次ぐ 親が子を釜ゆで 金正恩体制下で大量餓死発生

 全文は上をクリックしてごらんいただくとして、冒頭はこうなっています。

【北朝鮮南西部の穀倉地帯、黄海南北道で昨春来、数万人規模の餓死者が発生していたことが、北朝鮮の内部情勢を独自報道してきたアジアプレスの石丸次郎氏が率いる取材チームの調べで分かった。金正恩第一書記デビューの舞台となった首都平壌建設や、北朝鮮人民軍の掌握のための食糧調達を、穀倉地帯から強制収奪した結果の飢餓発生だったもようだ。目撃証言は一家自殺や人肉食など凄惨(せいさん)な内容で、石丸氏は飢餓の実態と背景について報告書にまとめ、今月中にも国連など国際機関に提出する。(久保田るり子)】

 この後に出てくる、聞き取りした人々の声はさらに生々しい。サンケイは「右翼の新聞」なので、僕はいつも一応そのへんは念頭に置いて記事を読みますが、情報元になっている「アジアプレスの石丸次郎氏」は信用の置ける人だ(と少なくとも僕は思っている)し、誇張された記事ではないのだろうと思います。

 こういうことが、海をちょっと隔てただけの隣国で起きているわけです。しかも「穀倉地帯」で起きていて、その理由の半ば以上が、政府と軍による「強制収奪」によるものだというのだから、事は深刻です。父親譲りの金正恩のあのしまりのないブクブク顔と、海外メディアまで呼んでの愚かしい軍事パフォーマンスは、「人民の飢餓」の犠牲のもとに維持されているのです。

 農業生産環境が比較的良好なアジアで、今も慢性的な飢餓に苦しめられているのは北朝鮮だけで、それは「政治がなってない」からですが、人々は農業技術の改善にも見放され、ひどい経済的貧困に据え置かれたままであるのみならず、新政権の見栄による無用なパフォーマンスのために、さらなる収奪を受けて人肉食にまで追い込まれるというのは、時計の針が中世にまで戻ったのを見せられるようで、何とも言えない気分にさせられます。

 こういう場合には、通常、革命を起こして政権を倒すしかありませんが、北朝鮮という国は、正恩の祖父の金日成の時代から、逆らう人間、逆らう“おそれのある”人間は悪名高い制収容所送りにして、片っ端から殺してきたので、「下からの革命」はほとんど不可能になってしまっているのだろうと思います。そもそも飢餓線上をさまよい、武器も何もない大半の一般庶民が、巨大な軍隊(今調べてみたら、装備はともかく、兵員数は120万にのぼるという)をしりぞけて、政権を倒すなんてことができるはずもない。

 そうすると方法は二つしかないことになって、(1)外部から政権を倒す、(2)政権が内に向かっても外に向かっても開放的な方向に転換し、独裁をやめて民主的な議会政治の採用に踏み切る、ということにならざるを得ません。
 日本も含めて、目下のところ世界はこの(2)の方を期待しているわけですが、いまだに“脅迫・おねだり”外交をやめようとしないわけで、議会政治まではともかく、もう少し開放的で柔軟な方向に行けないものかなと思いますが、その気配はないのです。

【「国中が疲弊するなかで平壌と軍の安定だけは金正恩体制の至上課題だった。黄海道から収奪されたのは、首都再開発事業に全国から動員された学生や青年同盟(金日成社会主義青年同盟)などを養う食糧と、平壌市民への配給用の『首都米』、軍部隊を維持するための軍糧米だ。地方幹部や警察など権力側がチームを組んで農村から強奪していた。一方、軍用は軍糧米の名目で、収奪は収穫前に田畑に入るケースや収穫後に持ち去るケース、さらになけなしの食糧を隠している住民も、家宅捜索までされて強奪された」(石丸氏)】

 要はやりたい放題なのです。それで今は、核実験の準備に大童というわけで、北朝鮮の国民は、ホンネのところ、「外部勢力でも何でもいいから、あの政権を倒し、軍を潰してくれ」と思っているのではないでしょうか? 前に金正日のときも飢餓報道がありましたが、僕の母親はそのニュースを見て、北朝鮮国民にいたく同情し、「アメリカのCIAは何をやっとる! いらんことしとるヒマがあったら、はよう(=早く)腹ボテのあのキム・ジュンイルを暗殺したらんかい!」と電話口で叫んでいました。「おふくろ、日本にも北朝鮮のスパイはいるから、あんまり大声でそんなこと言ってたら、自分が暗殺されるよ」と言ったのですが、「このトシで殺されて何のつらいことがあるか。それより、北朝鮮では子供まで飢え死にしとる。そんなことが許せるか!」と大変な剣幕でした(わが家の場合は両親揃ってこの調子なので、過激は血筋なのです)。

 軍事独裁政権の場合には、他国からの食糧支援なども、上のピンハネがきつくて、かんじんの末端庶民にまで行き渡らないのがふつうだと言われています。だから変わらなければ政権を倒すしかその国の人々を助ける手立てはないように思われますが、戦争は避け、通常の外交努力でも無理だとすれば、軍の若手幹部などの有力な反対勢力(いればですが)を内々に支援して、無血軍事クーデターでも起きるように仕向ける他はありません。

 しかし、目下のところ、そのような希望はなさそうに見えるので、“人災”である北朝鮮国民の筆舌に尽くしがたい苦難はこれからも続くのです。近隣諸国は、金政権の愚劣な「恫喝外交」があろうとなかろうと、罪のない民のことを思えば、その都度必要な食糧援助を繰り返すしかない。ちゃんと届くべきところに届いているのかを疑いながら…。

 こういうのは、申し分なく憂鬱な話です。支配層がおしなべて利己的になってしまった(昔もそうだったと言われるかも知れませんが、少なくともそれを恥じる気持ちはあった)今の世界では「格差の拡大」がキーワードみたいになっていますが、北朝鮮のような例は、犯罪と断じて差し支えのないもので、かの国自慢の「主体思想」なるものは、現実に照らせば笑えないブラックジョークでしかありません。

 もっとまとまな民主政権ができれば、他国からの技術支援も可能になり、農業生産性の飛躍的な向上も夢ではないでしょう。そうすれば必要な食糧備蓄もできて、不作でも飢餓の恐怖からは解放され、庶民の生活水準も確実に上がる。

 民のことを思わぬ愚かな独裁者は、取り巻きにもロクなのがいなくなって、いずれ支配力を失い、悲惨な末路を辿るというのが歴史のならいですが、北朝鮮の場合は少しばかり長続きしすぎているように思われるので、その間人々が塗炭の苦しみを舐めさせられるのが気の毒です。

 核実験がどうのこうのと、民が飢えて死んでいるのに、余裕こいてよくも下らんことをやってるなと呆れますが、経済制裁の類は、全部弱い立場の庶民に皺寄せされて、権力による搾取が強化されるだけだろうから、どうすればいいのかと思います。一般庶民が何十万、何百万と餓死するなり自殺するなりして、生産機構が崩壊すれば、政権も崩壊するだろうなんてのは、その国の人民に対してあまりに思いやりのない話ですが、現実問題としてどうすればいいのかは非常に難しい。

 この先も核カードをチラつかせて「恫喝外交」を続けるようなら、日米韓、それに国連軍も合わせて、総攻撃して、三日で叩き潰すぞと、真面目に脅してやったらどうなのかと、戦争反対論者の僕ですら言いたくなるほどです(その間、中国には「中立」という名目でおとなしくしていただく)。同時にビラでも空中散布して、余儀なき「解放」のための手段なのだということを告げれば、兵士たちも多くは貧しい農村の出身で人々の窮状はよく知っているだろうから、すぐに離反して、ジョンウンとその取り巻き、軍高官たちはいっぺんに孤立させられてしまう。そしたら終わるわけなので、それが一番効果的ではないかと思ってしまうのです。アメリカが始めたアホなイラク戦争などと違って、こちらには大義がある。その後が大変ですが、それは皆で支援すればいいのです。

 以上はむろん「感情論」なので、専門家たちには叱られそうですが、そう言いたくなるような、これは悲惨な記事だということです。
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