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女子高生お言葉集2

2012.01.01.16:19

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします(僕は不精で賀状を書かないので、まとめて代わりのご挨拶です)。
 古典落語に、「福の神が家の周りをぐるりと取り囲んでいて、貧乏神が外に出られない」というのがあったと記憶していますが、笑うが勝ちということがあって、笑えば貧乏神も福の神に変身するということがあるでしょう。というわけで、新年号はこれから行くことにします。

 受験生たちはもうすぐセンター試験で、緊張が高まっていることでしょう。だからまず、そちらについてのアドバイスを兼ねて少々。塾ではよく熱血教師による受験生対象の“正月特訓”などというものが行われるものですが、僕は正月三が日は断固として休みます。これは僕が冷血教師だからではなくて、本番に備えて受験生に十分な休養を与えようという周到な配慮に基づくものです。怠惰だからではなく、思いやり深いからです。

「でも、先生、私は不安なんですけど」
「フアン? 何で不安になどなるかね?」
「だって、センター失敗したら、終わりじゃないですか!」
「君は『人は成功からより失敗から学ぶものだ』という言葉を知らないのかね?『成功はシュークリームのようにあっけないが、失敗はスルメイカのように味わいがある』という格言もあるほどだよ」
「誰の言葉ですか? ゲーテか誰かがそう言ったんですか?」
「僕が今さっき作った格言だけど、百年後には有名になって、世界中で語り継がれることになるだろう。とにかく、つまらないことを心配しないことだよ」
「そんな…。私の将来がかかってるんですよ!」
「君の将来なんて、宇宙全体からすれば取るに足りないことだろ? もっと心を広くもつことだよ。僕なんか、人類が絶滅しても全然気にしないからね」
「自動販売機で10円の釣銭が出ないからって大騒ぎするような人に、そんなこと言われたくないんですけど」
「10円じゃない、30円だよ。僕は150円入れたんだから。そもそもの話、120円ってのが高すぎるのに、その上にお釣りが出ないってんじゃ、どんな寛大な人でも怒るのがあたりまえじゃないか。同じのがスーパーでは98円で売ってるんだから、差し引き52円の損失になる」
「先生がいつも飲んでいるあれ、安売店の○○じゃ48円ですよ」
「何!? それじゃ、そこで買ったら三本も買えたことになるじゃないか! 世の中にそんな理不尽なことがあっていいのか!」
「私が言いたいのは、そんなセコい話じゃなくて、今後の人生がかかった試験の話なんですけど。私の場合、第一志望には最低でも75%は必要なんですよ」
「医学部なら9割必要だから、それと較べれば君はまだ恵まれている。それにしても、五教科七科目の平均点が9割を超えるなんて、正気の沙汰ではない。医者になる連中はみんなキチガイかと思ってしまうね。僕が試験官なら、精神異常とみなして9割以上取る受験生は全部落としてしまうけどね。大体、平均点を6割に設定しているという、あのセンターがよくないんだよ」
「何でですか?」
「入試なんてものは、受験者の平均点が2~3割でいいんだよ。5割取れれば楽勝で合格できる試験にすればいい。そうすれば、受かってもマグレという奴がたくさんいて、多様な人材が確保される。落ちたからといって、それは運が悪かっただけだという言い訳も無理なく成立して、誰も傷つかなくてすむ。難問珍問奇問だらけなら、真面目に勉強するのも馬鹿らしいということになって、受験戦争は終わる。僕は今度文科省にそういう提言書を送ろうかと思ってるぐらいだよ」
「好きにして下さい。私は先生のような人に教わっていることに危機感を抱いたので、家に帰って勉強します」


お言葉2.リア充

【語義説明】
 「リアル充実」の略語。「りあじゅう」と読む。「realに充実している」という意味で、欧米ではreal fulfilmentとして知られ、あちらのティーンエイジャーの間では「リアふる」として広く用いられている(未確認情報)。恋でも部活でも勉強でも、思うことが皆成就して、「ふっふっふ」状態のときを指す言葉。対義語に「レア(rare)充」があり、こちらは失恋もしくはウザい男子にばかり言い寄られる、模試の偏差値が急降下する、身長はそのままなのに体重が二キロも増えてしまったなど、不快な、思うに任せぬ腹立たしいことのみ多くて、喜ばしいことはほとんどない状態を指す。

【用例】
 たとえば、このようなときに使われる。部活の大会で、対戦相手が(自分がではなく)不意に転倒する、ぎっくり腰になる、風邪の高熱で全く実力が発揮できなかった、等々の幸運が相次いで、個人戦(テニスなど)ですいすいと勝ち進み、いつのまにか県内ベストフォーに入って、学校で朝礼のときに表彰される。「一見ぼーっとしているように見えるのに、ほんとは俊敏で、運動神経が抜群だったのだな」と学校中で話題になる。たまたま試みた新しいヘアスタイルも好評で、可愛くなったと皆に言われる。その翌日、一ヶ月前に受けた模試の結果が返ってきて、いつもは全部外れるテキトーにマークした箇所が、なぜか全部当たっていて、偏差値が10以上アップし、「あの子はスポーツができるだけでなく、実は頭もよかったのだ!」と皆が思い込む。そうした中、われ先にと、男子から交際のオファーが殺到する。それを見て、以前は見向きもしなかった本命の男子が動揺して、皇女を前にしたごとく、丁重なおずおずとした様子で、交際を申し込んでくる(仕方なく受け入れてやるふりをする)。そうこうするうちに、父親が年末ジャンボ宝くじで大当たりを引き当て、それまでは地味ぃな地元の国公立大学以外は不可と言われていたのが、行きたかった“花の東京”のトレンディな私大も可と態度が大転換する。さらに、従者をしたがえる女王様然とした態度で本命男子と初詣に訪れた神社では「大吉」を引き当て、ほとんどあらゆる項目に「夢がかなう」と記されたお告げを読む。
 このような状態を「リア充」と呼び、周りの女友達は、「リア充やろ、このー」と言ってはやし立て、ひじでこづく。
【注意点】
 あんまり喜びすぎてはいけない。周りの女子たちは必ずしも快くは思っていないのであり、その祝福の笑顔の奥には全く別の感情が秘められていることを知らねばならないからである。友達にひじでこづかれた際のその妙に鋭い痛みには、「おまえだけいつもいい目が見られると思うなよ!」という暗黙のメッセージが込められているのであり、「レア充の恨み」とでも呼ぶべきものが十重二十重(とえはたえ)に自分の周りを取り囲む危機的状況になってしまったことを自覚しなければならない。大体、よく考えてみれば、少しばかりラッキーな偶然が重なりすぎたのであり、逆のこともありうるのだと知って、そのような「偶然のいたずら(プラス・マイナス両方)」から超然とした精神がもてるよう、“悟り”への道を邁進すべきである(但し、悟りすぎて尼さんになって出家してしまわないよう、注意しなければならない)。


お言葉3.どん引き

【語義説明】
「どん」はカツ丼、親子丼などの、どんぶり物の「どん」ではなく、「どん底」「どんビリ」などと同じく、強意の接頭辞である。英語のthe very~に相当する。「どんびき」と発音されるが、この「引き」は、「思わず引いてしまう」というときのあの「引き」である。用例の実際としては、しばしば「ど・ん・びきぃ…」というふうに用いられ、長く引き伸ばされればされるほど、「引き」の度合いが甚だしいことを含意する。

【用例(たくさんあるが最も恐ろしいものだけ紹介)】
 たとえば、このようなときに使われる。学校の清潔感あふれる若いイケメンの先生が、服装のセンスもよく、ユーモアに富み、教え方もうまくて生徒たちの大人気を博しているのを見て、メタボで風采の上がらない、気分屋でしばしば些細なことで怒鳴り散らす不人気な中年教師が、負けてはならじとにわかに派手仕立てになり、突然どんぐりの図柄のピンクのネクタイなどしてきて、生徒をのけぞらせ、笑いを取ろうと授業中必然性のない無理なおやじギャグを連発して、その都度生徒たちに凍りつくようなひきつった笑いを強い、さらに、元はハゲていたのに、次第に髪が増えていくなどのときである。なぜ髪が増えるのか? それはアートネーチャーの旧式の「漸次増毛法」というやつで、週ごとに人工植毛の数が増えるためである。それが今週より来週、来週より再来週という具合にだんだんハゲを埋めていくのを見て、生徒たちは名状しがたい恐怖に襲われる。もはや授業に集中するどころではない。このような逃れるすべのない恐ろしい状況にいたったときに、「どん引き」という。
【対処法】なし。


付録:「お言葉集1」の“誤字”について

 昨年末、日本コカコーラ・ボトリングの広報担当と名乗る人から電話があったので、そのときの会話をここに採録しておきます。何でも、商品名『爽健美茶』が誤って『壮健美茶』となっていたので、その訂正を求めたいとか。

「いいじゃありませんか、そんなもの。大して違わないでしょう?」
「そうは申しましても、商品イメージというものがございまして、あの商品にこめられた弊社のコンセプトは“爽やか”に“健康”で“美しい”というものでございますので…。若い女性が主なターゲットですので、何卒そのへんのご理解をたまわりたいのですが」
「しかし、“壮”だとどこがまずいんですか?」
「“壮”というのは、たとえば、“壮大”とか“壮烈”とか、“大言壮語”とか、何と申しましょうか、いささか大味な印象を与えると申しましょうか、若い女性の好むイメージとは違うわけでございまして…。とりわけ致命的なのは、“壮士”とか“壮年”とかいう言葉があることでして、それらは主にデリカシーに欠けるオヤジ族に用いられるものでございます」
「僕のような中年オヤジに向かってそんな傷つけるようなこと言っていいんですか?」
「たいへん失礼いたしました。そのような意図は微塵もないことをご理解下さい」
「まあ、いいでしょう。ソフトバンクのCMなんかでも、お父さんはイヌにされてしまって久しいですからね。あれが母親なら、けしからん!といって不買運動必至でしょうが、われわれオトーサンは犬にされようが粗大ゴミにされようが、力なく笑って耐えるのみです」
「ご理解いただき、有難うございます」
「しかし、考えようによっては、今はアレでしょう、“肉食女子”なんてのが増えているんでしょう? だったら、強さ、逞しさをイメージするのに、“壮”はいいんじゃありませんか?」
「そのへんの発想もオヤジ的に粗雑…いや、若い女性のメンタリティへの理解がいささか不十分かもしれませんので、肉食女子だからといって朝青龍みたいな感じになってはよろしくないわけです。可憐ではかなげな様子を装いながら、実は恐ろしいというのが肉食女子でございまして、猛禽女子といえども、見た目はプロレスラーや関取であってはならないのです」
「なるほど。それならヒマなとき直してもいいですが、宣伝してあげてるのに、抗議だけでお礼がないというのはよろしくないのではありませんか? いくら相手が無力なオヤジだからといって、あまりにも人を軽んじすぎた態度です。マルちゃん本舗なんか、すぐに新発売のみそラーメンを一ダース送って寄越しましたよ」
「ホントですか?」
「ホントですよ。僕はサッポロみそラーメン(野菜が多くてヘルシー)をふだんは食べるのですが、今はマルちゃんのみそラーメンを食べているのです。おたくもすぐ『缶コーヒーのボス』を一ダースぐらい送って寄越すべきでしょう。『ベストセラーの作り方2』に書いたように、僕は『缶コーヒーを飲む人は成功しない』なんて本は気にしてませんから」
「失礼ながら、それは他社の製品でございます」
「じゃあ、バイヤリースオレンジとか…。あれは僕も昔好きでよく飲んだし、塾の生徒たちも飲みそうですから」
「失礼ながら、それも他社の製品でございまして、今お話をうかがって、弊社の製品をよくご存じないのがわかりましたので、今度試供品のフルセットをお送りさせていただきます」
「おお! それにはチューハイの“氷結”なんかも入っているわけですね?」
「入ってませんって! もっとよく勉強なさってから記事はお書きになったらどうですか? あえて忠告させていただくなら、そういう無神経で不勉強なところが、オヤジの嫌われるゆえんなのです。私ども広報でも最も苦労させられるのがトンチンカンなことを言うオヤジどもでして、ロクな購買力もないのに、わけのわからない文句ばかり言って寄越すんですから」
「まあまあ。僕なんかこれでも、ものわかりのいいオヤジの部類ですよ。たまにはレストランで、『大盛りを注文したのに量が少なすぎる、50円値引きすべきだ!』なんて言うことはありますが、これはリーズナブルで控えめな要求です。とにかくその試供品のフルセットを送ってください。そしたら今度は、“六条麦茶”をおいしそうに飲む女子高生なんかを登場させますから」
「………」
「もしもし。もしも…(電話切れる)」
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