今年最後の政治記事を書いておきたいと思います。
文在寅氏が大統領になってからというもの、日韓関係は悪化の一途を辿り、彼の退陣がないかぎり関係修復は不可能であるという認識が一般的になっていますが、事実認識をないがしろにした「初めに結論ありき」の例の大法院の徴用工判決(1965年の日韓協定破棄を意味する)、一方的な慰安婦財団の解散(その前の朴槿恵政権時の慰安婦合意の破棄を意味する)に驚き呆れた結果、日本では「一体あれはどういう国なんだ?」というので、韓国の政治や歴史について学習する人が増えました。そして李栄薫編著『反日種族主義』の日本語版が発売されるや、たちまちそれはベストセラーになったのですが、ネガティブな動機からとはいえ、とにかく日本では「韓国学習」の裾野がかつてなかったほど広がったのです(ついでに言うと、続編『反日種族主義との闘争』も出て、こちらも前作以上の力作です)。
僕もここで、文政権は「イデオロギーに頭をやられた左翼過激派が政権を取ったのと同じ」だとして、酷評してきましたが、その経済政策はことごとく失敗し、「いかにも韓国的」と言ってしまえばそれまでですが、李氏朝鮮時代の両班を彷彿させる私利私欲にまみれた身内の不祥事も跡を絶たず、韓国の世論調査機関リアルメーターの最新調査では、「岩盤」と呼ばれた40%の支持も崩れ、支持率は37%、これに対して不支持は59%と、ついに「危険水域」に入ったという話です。
その腐敗ぶりや、権力の職権乱用には、「近代国家でそこまで露骨な話があるのか?」と驚くようなことが多くて、昔、『悪の華』の詩人ボードレールは、自国社会を罵倒してやみませんでしたが、ベルギー旅行に出かけてそこの俗悪さに驚嘆し、「哀れなベルギー」という一文を草して、以後、いくらか母国(フランス)に対して“寛大”になったと伝えられますが、詩人のなり損ねの僕なども、いくらかこれに似たところがあって、韓国を見ていると、「あれよりはマシかもしれない」と、日本の政治に対していくぶん寛容な気持ちになってしまうのです。これは江戸時代の農民の「下見て暮らせ」心理と似たようなもので、社会を向上させるような性質のものではないと思われるのですが。
さてそれで、今の韓国の政治状況はどんなふうになっているのか? 次はJPpress掲載の李正宣氏の記事です。
・韓国与党、有罪判決の曺国夫人をなおも擁護の破廉恥~明らかになった不正の数々、でも「江南では誰もがやっている」
「曺国夫人」というのは、「疑惑のタマネギ男」と呼ばれ、言ってることとやってることが違いすぎる、そのあまりの二重人格ぶりに、さすがの文大統領も法相辞任を受け入れざるを得なかった、元々は「自分の跡継ぎ(次期大統領候補)」視して右腕として重用していた、日本でも有名になったソウル大法学部教授チョ・グク氏の奥さんのことです。それが「懲役4年に罰金5億ウォン(約4700万円)、さらに法廷拘束という一審判決」を受けた。これ自体、日本ではまずありえないことですが、これは韓国の裁判所が特殊だからではなくて、やっていたことがあまりにひどすぎたからです。しかもこの奥さんの方も、大学教授なのですよ。
このサブタイトルの「江南(富裕層が住む町)では誰もがやっている」というのも笑えるので、だから「昔の両班と同じ」だと言ったのですが、韓国ではステイタスの高さは、そのまま不正の多さを意味すると言っても過言ではないほどで、高潔な人がいれば、それはむしろ例外なのです。「韓国の嘘つき文化は国際的に広く知れ渡っています」というのは『反日種族主義』の書き出しですが、先日の朝鮮日報によれば、韓国で最も多い犯罪は詐欺罪(これは広義のそれを指すのだと思いますが)で、そんな国は世界に一つしか存在しないというのだから、チョ・グク夫人が数々の詐欺を働いても、それは「誰もがやっている」ことなのだから異とするに足りないと、お仲間には思えるのです。
これが娘(息子の件も別にあるようですが)の入試不正にまつわる犯罪が中心だというのも、いかにも韓国的です。韓国は「超学歴社会」で大学進学率も高く、その熾烈さ、競争の低年齢化にはすさまじいものがあって、それに較べれば日本など甘たるく見えるほどです。このあたり、詳しく知りたい読者は、金敬哲『韓国 行き過ぎた資本主義』(講談社現代新書 2019年11月)をお読みになるとよくわかります。最近の新書にはスカスカのものが多いが、金さんのこれは文章も丁寧でよく練られているし、中身も充実していて、名著だなと僕は読んで感心したものです。その中でこの問題は多くの紙数を割いて詳述されていて、それでなくとも富裕層はわが子に「スペック」と呼ばれる推薦(韓国では随時と呼ばれる推薦による入学者が大学入試でも7割を超える)に有利なプレミアをつけさせやすいのに、この親子はそれらを露骨に「偽造」までしていたので、世論の反発は大きかったのです。朴槿恵政権が倒されるきっかけになったのも、彼女の相談相手の崔順実の娘の名門大学不正入学にまつわるスキャンダルでした。権力があればその程度のことはあたりまえみたいな風潮が韓国にはあるのでしょう。崔順実の娘は愚かにも批判に対して、SNSで「力のない自分の親を恨め」などと居直って反論したものだから、手がつけられない騒ぎになってしまったのです。韓国大手航空会社の経営者の娘の「ナッツ・リターン事件(機内で添乗員のナッツの出し方が気に入らないと怒って、自分が乗った民間航空機を引き返させた)」なんてのも前にあって、一体何でそういうのが出てくるのだと呆れますが、かの国の富裕層には前近代的なおかしな特権意識をもつ者がそれだけ多いということなのでしょう。だから不正もその特権の一つみたいになってしまうわけです。
やたらと「カネに汚い」ことも彼らの特徴の一つで、上の記事にも「他に、娘を自分の研究員として虚偽登録し、教育部補助金320万ウォンを不当に受け取ったことは、『補助金法違反』や『詐欺』に当たると判決した」とありますが、資産家なのにそういうネコババもしているのです。これとは別に、出来の良くない娘をそうやって不正に大学院に入れて、二度も落第したのに、奨学金は打ち切られなかった、という報道もありました。金持ちならそもそも奨学金は必要なかったはずで、その意味で不正は二重になっているのです。
これが法務大臣の妻のやったことで、いくつかの犯罪は夫(何と11もの罪状が挙げられている)との「共謀」も認められるということなのだから、唖然とせざるを得ない。例の慰安婦支援団体、正義連(元挺対協)の代表の尹美香なども、虚偽の情報をふりまいて日韓の対立を煽っていただけでなく、本来慰安婦に渡るはずの寄付金や補助金を流用・ネコババするなどして私腹を肥やし、娘をアメリカの大学に留学させたりしていたのが、元慰安婦の告発がきっかけで暴露されましたが、今は国会議員様です。反日市民団体は文政権の大事な支持基盤なので、議員辞職の要請が強くなっても、ナアナアでお茶を濁して、庇わざるを得ない。
他方、この記事でも触れられていますが、「検察改革」を名分に、「そんなアホな…」と驚くようなつまらない嫌疑をかけて、「自分は権力にではなく、法に仕える」と公言する硬骨漢の尹検事総長の追い落としを二度も図ったが、いずれも失敗に終わって、かえって彼を次期大統領にと期待する世論が高まってしまったのです。こういうのは法務大臣(息子の兵役休暇問題で軍に圧力をかけた件で騒ぎになった秋美愛)のたんなる職権乱用でしかなく、文政権に対する疑惑捜査を妨げる目的から出たものであることは明白です。「積弊清算」を掲げる文政権の「積弊」とは要するに、あくまでこの政権から見た「敵の悪事」であって、身内の次から次へと噴出する明白な悪事や犯罪は、それにはカウントされず、またカウントしてはならないものなのです。だから、「検察改革」と言うが、要は検察を「政権の犬」にすることしか眼中になく、検事総長の配下を次々左遷して、しかし、彼がいるかぎり不十分だということで力づく辞任させようとした。ダブル・スタンダードもここまで来ればご立派と言う他ありません。
日本でも賭け麻雀事件で失職した黒川検事長問題というのがありました。安倍-菅のお友達の彼を次期検事総長に据えて、政権にダメージが及びそうな問題には検察に手をつけさせないようにしたかったわけで、「黒川検事総長」が実現していれば、今回の桜を見る会をめぐる不正の捜査などもなくてすんだことでしょう。「公安警察のドン」杉田とこの黒川がいれば、目障りな奴は潰し、ヤバイ事件からは手を引かせるということで、両輪が揃って、政権は安泰になる。総理になった菅は愚かにも杉田の使い方を間違えて、なくもがなのあの学術会議問題を引き起こしてしまったのですが(おかげで国民はこの政権がどういうものなのか、早い時点で気づくことができた)。
僕は前に、「嫌韓の安倍はなぜか韓国政治の真似が好きで、日本も韓国並の情実政治に近づきつつある」と書いたことがあります。森友、加計学園問題などその典型ですが、日銀やNHK会長・経営委員(あの百田尚樹も一時これになっていた)の人事は言うに及ばず、憲法解釈の変更を正当化するために内閣法局長官に外務省の小松一郎を“異例の抜擢”であて、さらに、“究極のお友達人事”と呼ばれたのは、あろうことか最高裁判事に加計学園の元監事、木澤克之を入れたことでした。これは、加計の理事長加計孝太郎が立教大出身で、木澤氏が同じ立教の出身で、「お友達のお友達」であったということ以外、何も理由はありません。ついでに言うと、安倍の女房のアッキーは専門学校卒(ふつうならエスカレーターで聖心に上がれたが、あまりにも出来が悪かったので専門学校になった)なのに、立教の大学院(学部ではない)に入っています(2011年、修士号を取得)。安倍が第一次内閣を病気を理由に放り投げて、第二次内閣で復活するまでの間の出来事のようですが、これなんかもお友達の加計孝太郎の口利きが大いにモノを言ったのであろうと理解されるのです。こういうの、実に「韓国的」ではありませんか? 一言で言えば、そういうクソみたいな公私混同を、安倍はふつうにやっていたのです。アッキーがそれを真似たのも何ら不思議ではない。元々そういうけじめのない夫婦なのです。
だから、韓国よりはマシかもしれないと言っても、両者は大いに接近しているのです。素晴らしいですねえ。それで、今の菅政権はどうかといえば、昔の自民の利権政治屋の悪いところを余すところなく身につけた、老害政治家の二階俊博の言いなりなので、ひとえに「二階のおかげ」で総理になれた菅義偉には抗うすべもない。次の記事をご参照ください。
・二階幹事長、なぜ総理を呼び出せるほどの権力者になったのか
こういうのが今の自民党と菅政権を牛耳っているわけです。だから「コロナ対策」と銘打って打ち出される経済対策が、旧態依然たる利権政治のそればかりになっても、何ら不思議ではない。僕の郷里は御坊ではありませんが、二階の選挙区なので、いくらか責任を感じるのですが、「あれはロクなもんじゃない」というのはそこでも大方の人の共通認識で、ただ有望な対抗馬が出てこないから、あんなマフィアと変わらないのが組織票で当選してしまうのです。前回、自民党議員の世襲問題に触れましたが、二階も世襲を目論んでいて、前にも書きましたが、足慣らしとして地元御坊市の市長選挙に長男(ずっと自分の秘書をやらせていた)を立て、ど田舎の市長選にもかかわらず、父の二階は権勢を利用して進次郎や稲田のともちんまで動員して必死になったものの、あまりにも横暴な長男の評判が悪いために、ダブルスコアで惨敗してしまったのが全国版のニュースになったほどです。だからその長男ではなく、次男か三男を立てるつもりのようですが、そんなのを当選させて、「利権政治の継承」なんかやられたのではたまったものではありません。
ふがいないのは、こういうのをのさばらせている今の自民党ですが、幸い麻生は彼と仲がよくないようなので、知恵者がいれば、この二人の老害利権政治家を正面から戦わせて、共倒れになって引退に追い込めるような手がとれそうなものです。二世三世のお坊ちゃまが多い今の自民党では、そういう戦略家もいないということなのでしょうかね。とにかく、上の記事を読んだだけでも、どれほど深刻に二階が日本政治を害しているかわかろうというものです。彼のような節操のない三流の利権政治屋が国家権力の中枢にいて、絶大な権力をふるっているということ自体、どれほど日本の政治が劣化しているかを証拠立てています。
こう見てくると、日本も韓国をわらえない。先に紹介した『韓国 行き過ぎた資本主義』という本は、韓国の極端な格差と社会的不平等の拡大、国家の分断など、それは「新自由主義に向かってひた走る、日本の近未来の姿かも知れない」と述べて記述を締めくくっているのですが、それは的確な指摘であるように、僕には思われます。すでに今の日本政府のコロナ対策は、ナオミ・クラインの言う「ショック・ドクトリン」(惨事に便乗して権力と結託した利己的な資本が利潤拡大を目論む)の様相を色濃くしているという指摘が少数の識者によってなされていますが、それも正しいのです。
菅政権は使いものにはならないことがすでに判明したとして、次の政権も、劣化した自民の従来どおりのスポイルシステムから選ばれるのなら、期待は全くできない。国民の最大の武器は選挙での投票なので、来年の選挙では「国民をなめると恐ろしい目に遭う」ということを政治家たちに思い知らせてやるよい機会にしようではありませんか。野党も、政権批判だけではない、オルタナティブの政策見通し(たんなる絵空事ではない、将来ヴィジョンに裏打ちされたそれ)を明確に示してもらいたいものです。でないと「おまえらも同じ税金泥棒だ」と批判されても仕方がないことになる。
文在寅氏が大統領になってからというもの、日韓関係は悪化の一途を辿り、彼の退陣がないかぎり関係修復は不可能であるという認識が一般的になっていますが、事実認識をないがしろにした「初めに結論ありき」の例の大法院の徴用工判決(1965年の日韓協定破棄を意味する)、一方的な慰安婦財団の解散(その前の朴槿恵政権時の慰安婦合意の破棄を意味する)に驚き呆れた結果、日本では「一体あれはどういう国なんだ?」というので、韓国の政治や歴史について学習する人が増えました。そして李栄薫編著『反日種族主義』の日本語版が発売されるや、たちまちそれはベストセラーになったのですが、ネガティブな動機からとはいえ、とにかく日本では「韓国学習」の裾野がかつてなかったほど広がったのです(ついでに言うと、続編『反日種族主義との闘争』も出て、こちらも前作以上の力作です)。
僕もここで、文政権は「イデオロギーに頭をやられた左翼過激派が政権を取ったのと同じ」だとして、酷評してきましたが、その経済政策はことごとく失敗し、「いかにも韓国的」と言ってしまえばそれまでですが、李氏朝鮮時代の両班を彷彿させる私利私欲にまみれた身内の不祥事も跡を絶たず、韓国の世論調査機関リアルメーターの最新調査では、「岩盤」と呼ばれた40%の支持も崩れ、支持率は37%、これに対して不支持は59%と、ついに「危険水域」に入ったという話です。
その腐敗ぶりや、権力の職権乱用には、「近代国家でそこまで露骨な話があるのか?」と驚くようなことが多くて、昔、『悪の華』の詩人ボードレールは、自国社会を罵倒してやみませんでしたが、ベルギー旅行に出かけてそこの俗悪さに驚嘆し、「哀れなベルギー」という一文を草して、以後、いくらか母国(フランス)に対して“寛大”になったと伝えられますが、詩人のなり損ねの僕なども、いくらかこれに似たところがあって、韓国を見ていると、「あれよりはマシかもしれない」と、日本の政治に対していくぶん寛容な気持ちになってしまうのです。これは江戸時代の農民の「下見て暮らせ」心理と似たようなもので、社会を向上させるような性質のものではないと思われるのですが。
さてそれで、今の韓国の政治状況はどんなふうになっているのか? 次はJPpress掲載の李正宣氏の記事です。
・韓国与党、有罪判決の曺国夫人をなおも擁護の破廉恥~明らかになった不正の数々、でも「江南では誰もがやっている」
「曺国夫人」というのは、「疑惑のタマネギ男」と呼ばれ、言ってることとやってることが違いすぎる、そのあまりの二重人格ぶりに、さすがの文大統領も法相辞任を受け入れざるを得なかった、元々は「自分の跡継ぎ(次期大統領候補)」視して右腕として重用していた、日本でも有名になったソウル大法学部教授チョ・グク氏の奥さんのことです。それが「懲役4年に罰金5億ウォン(約4700万円)、さらに法廷拘束という一審判決」を受けた。これ自体、日本ではまずありえないことですが、これは韓国の裁判所が特殊だからではなくて、やっていたことがあまりにひどすぎたからです。しかもこの奥さんの方も、大学教授なのですよ。
このサブタイトルの「江南(富裕層が住む町)では誰もがやっている」というのも笑えるので、だから「昔の両班と同じ」だと言ったのですが、韓国ではステイタスの高さは、そのまま不正の多さを意味すると言っても過言ではないほどで、高潔な人がいれば、それはむしろ例外なのです。「韓国の嘘つき文化は国際的に広く知れ渡っています」というのは『反日種族主義』の書き出しですが、先日の朝鮮日報によれば、韓国で最も多い犯罪は詐欺罪(これは広義のそれを指すのだと思いますが)で、そんな国は世界に一つしか存在しないというのだから、チョ・グク夫人が数々の詐欺を働いても、それは「誰もがやっている」ことなのだから異とするに足りないと、お仲間には思えるのです。
これが娘(息子の件も別にあるようですが)の入試不正にまつわる犯罪が中心だというのも、いかにも韓国的です。韓国は「超学歴社会」で大学進学率も高く、その熾烈さ、競争の低年齢化にはすさまじいものがあって、それに較べれば日本など甘たるく見えるほどです。このあたり、詳しく知りたい読者は、金敬哲『韓国 行き過ぎた資本主義』(講談社現代新書 2019年11月)をお読みになるとよくわかります。最近の新書にはスカスカのものが多いが、金さんのこれは文章も丁寧でよく練られているし、中身も充実していて、名著だなと僕は読んで感心したものです。その中でこの問題は多くの紙数を割いて詳述されていて、それでなくとも富裕層はわが子に「スペック」と呼ばれる推薦(韓国では随時と呼ばれる推薦による入学者が大学入試でも7割を超える)に有利なプレミアをつけさせやすいのに、この親子はそれらを露骨に「偽造」までしていたので、世論の反発は大きかったのです。朴槿恵政権が倒されるきっかけになったのも、彼女の相談相手の崔順実の娘の名門大学不正入学にまつわるスキャンダルでした。権力があればその程度のことはあたりまえみたいな風潮が韓国にはあるのでしょう。崔順実の娘は愚かにも批判に対して、SNSで「力のない自分の親を恨め」などと居直って反論したものだから、手がつけられない騒ぎになってしまったのです。韓国大手航空会社の経営者の娘の「ナッツ・リターン事件(機内で添乗員のナッツの出し方が気に入らないと怒って、自分が乗った民間航空機を引き返させた)」なんてのも前にあって、一体何でそういうのが出てくるのだと呆れますが、かの国の富裕層には前近代的なおかしな特権意識をもつ者がそれだけ多いということなのでしょう。だから不正もその特権の一つみたいになってしまうわけです。
やたらと「カネに汚い」ことも彼らの特徴の一つで、上の記事にも「他に、娘を自分の研究員として虚偽登録し、教育部補助金320万ウォンを不当に受け取ったことは、『補助金法違反』や『詐欺』に当たると判決した」とありますが、資産家なのにそういうネコババもしているのです。これとは別に、出来の良くない娘をそうやって不正に大学院に入れて、二度も落第したのに、奨学金は打ち切られなかった、という報道もありました。金持ちならそもそも奨学金は必要なかったはずで、その意味で不正は二重になっているのです。
これが法務大臣の妻のやったことで、いくつかの犯罪は夫(何と11もの罪状が挙げられている)との「共謀」も認められるということなのだから、唖然とせざるを得ない。例の慰安婦支援団体、正義連(元挺対協)の代表の尹美香なども、虚偽の情報をふりまいて日韓の対立を煽っていただけでなく、本来慰安婦に渡るはずの寄付金や補助金を流用・ネコババするなどして私腹を肥やし、娘をアメリカの大学に留学させたりしていたのが、元慰安婦の告発がきっかけで暴露されましたが、今は国会議員様です。反日市民団体は文政権の大事な支持基盤なので、議員辞職の要請が強くなっても、ナアナアでお茶を濁して、庇わざるを得ない。
他方、この記事でも触れられていますが、「検察改革」を名分に、「そんなアホな…」と驚くようなつまらない嫌疑をかけて、「自分は権力にではなく、法に仕える」と公言する硬骨漢の尹検事総長の追い落としを二度も図ったが、いずれも失敗に終わって、かえって彼を次期大統領にと期待する世論が高まってしまったのです。こういうのは法務大臣(息子の兵役休暇問題で軍に圧力をかけた件で騒ぎになった秋美愛)のたんなる職権乱用でしかなく、文政権に対する疑惑捜査を妨げる目的から出たものであることは明白です。「積弊清算」を掲げる文政権の「積弊」とは要するに、あくまでこの政権から見た「敵の悪事」であって、身内の次から次へと噴出する明白な悪事や犯罪は、それにはカウントされず、またカウントしてはならないものなのです。だから、「検察改革」と言うが、要は検察を「政権の犬」にすることしか眼中になく、検事総長の配下を次々左遷して、しかし、彼がいるかぎり不十分だということで力づく辞任させようとした。ダブル・スタンダードもここまで来ればご立派と言う他ありません。
日本でも賭け麻雀事件で失職した黒川検事長問題というのがありました。安倍-菅のお友達の彼を次期検事総長に据えて、政権にダメージが及びそうな問題には検察に手をつけさせないようにしたかったわけで、「黒川検事総長」が実現していれば、今回の桜を見る会をめぐる不正の捜査などもなくてすんだことでしょう。「公安警察のドン」杉田とこの黒川がいれば、目障りな奴は潰し、ヤバイ事件からは手を引かせるということで、両輪が揃って、政権は安泰になる。総理になった菅は愚かにも杉田の使い方を間違えて、なくもがなのあの学術会議問題を引き起こしてしまったのですが(おかげで国民はこの政権がどういうものなのか、早い時点で気づくことができた)。
僕は前に、「嫌韓の安倍はなぜか韓国政治の真似が好きで、日本も韓国並の情実政治に近づきつつある」と書いたことがあります。森友、加計学園問題などその典型ですが、日銀やNHK会長・経営委員(あの百田尚樹も一時これになっていた)の人事は言うに及ばず、憲法解釈の変更を正当化するために内閣法局長官に外務省の小松一郎を“異例の抜擢”であて、さらに、“究極のお友達人事”と呼ばれたのは、あろうことか最高裁判事に加計学園の元監事、木澤克之を入れたことでした。これは、加計の理事長加計孝太郎が立教大出身で、木澤氏が同じ立教の出身で、「お友達のお友達」であったということ以外、何も理由はありません。ついでに言うと、安倍の女房のアッキーは専門学校卒(ふつうならエスカレーターで聖心に上がれたが、あまりにも出来が悪かったので専門学校になった)なのに、立教の大学院(学部ではない)に入っています(2011年、修士号を取得)。安倍が第一次内閣を病気を理由に放り投げて、第二次内閣で復活するまでの間の出来事のようですが、これなんかもお友達の加計孝太郎の口利きが大いにモノを言ったのであろうと理解されるのです。こういうの、実に「韓国的」ではありませんか? 一言で言えば、そういうクソみたいな公私混同を、安倍はふつうにやっていたのです。アッキーがそれを真似たのも何ら不思議ではない。元々そういうけじめのない夫婦なのです。
だから、韓国よりはマシかもしれないと言っても、両者は大いに接近しているのです。素晴らしいですねえ。それで、今の菅政権はどうかといえば、昔の自民の利権政治屋の悪いところを余すところなく身につけた、老害政治家の二階俊博の言いなりなので、ひとえに「二階のおかげ」で総理になれた菅義偉には抗うすべもない。次の記事をご参照ください。
・二階幹事長、なぜ総理を呼び出せるほどの権力者になったのか
こういうのが今の自民党と菅政権を牛耳っているわけです。だから「コロナ対策」と銘打って打ち出される経済対策が、旧態依然たる利権政治のそればかりになっても、何ら不思議ではない。僕の郷里は御坊ではありませんが、二階の選挙区なので、いくらか責任を感じるのですが、「あれはロクなもんじゃない」というのはそこでも大方の人の共通認識で、ただ有望な対抗馬が出てこないから、あんなマフィアと変わらないのが組織票で当選してしまうのです。前回、自民党議員の世襲問題に触れましたが、二階も世襲を目論んでいて、前にも書きましたが、足慣らしとして地元御坊市の市長選挙に長男(ずっと自分の秘書をやらせていた)を立て、ど田舎の市長選にもかかわらず、父の二階は権勢を利用して進次郎や稲田のともちんまで動員して必死になったものの、あまりにも横暴な長男の評判が悪いために、ダブルスコアで惨敗してしまったのが全国版のニュースになったほどです。だからその長男ではなく、次男か三男を立てるつもりのようですが、そんなのを当選させて、「利権政治の継承」なんかやられたのではたまったものではありません。
ふがいないのは、こういうのをのさばらせている今の自民党ですが、幸い麻生は彼と仲がよくないようなので、知恵者がいれば、この二人の老害利権政治家を正面から戦わせて、共倒れになって引退に追い込めるような手がとれそうなものです。二世三世のお坊ちゃまが多い今の自民党では、そういう戦略家もいないということなのでしょうかね。とにかく、上の記事を読んだだけでも、どれほど深刻に二階が日本政治を害しているかわかろうというものです。彼のような節操のない三流の利権政治屋が国家権力の中枢にいて、絶大な権力をふるっているということ自体、どれほど日本の政治が劣化しているかを証拠立てています。
こう見てくると、日本も韓国をわらえない。先に紹介した『韓国 行き過ぎた資本主義』という本は、韓国の極端な格差と社会的不平等の拡大、国家の分断など、それは「新自由主義に向かってひた走る、日本の近未来の姿かも知れない」と述べて記述を締めくくっているのですが、それは的確な指摘であるように、僕には思われます。すでに今の日本政府のコロナ対策は、ナオミ・クラインの言う「ショック・ドクトリン」(惨事に便乗して権力と結託した利己的な資本が利潤拡大を目論む)の様相を色濃くしているという指摘が少数の識者によってなされていますが、それも正しいのです。
菅政権は使いものにはならないことがすでに判明したとして、次の政権も、劣化した自民の従来どおりのスポイルシステムから選ばれるのなら、期待は全くできない。国民の最大の武器は選挙での投票なので、来年の選挙では「国民をなめると恐ろしい目に遭う」ということを政治家たちに思い知らせてやるよい機会にしようではありませんか。野党も、政権批判だけではない、オルタナティブの政策見通し(たんなる絵空事ではない、将来ヴィジョンに裏打ちされたそれ)を明確に示してもらいたいものです。でないと「おまえらも同じ税金泥棒だ」と批判されても仕方がないことになる。
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