コロナで塾を休みにした関係で、最近僕は世間の人並に割と早寝早起きになって比較的「健康的な生活」を送れるようになっているのですが、今朝ネットのニュースサイトを見ると、目立つところに次のような記事が出ていました。
・米国防総省、「UFO映像」3本を公開 正体不明と結論
3本のうち1本は2004年11月、残る2本は15年1月に撮影された。いずれも白黒の映像で、30~75秒ほどの長さ。物体が海上を高速で飛んだり、空中で回転したりする様子が撮影されている。
国防総省は声明で「過去に流出した映像の真偽や、映像に続きがあるのかなどの臆測を取り除くために公開に踏み切った」と説明。問題の物体については「依然として正体不明のままだ」と結論付けた。
この記事に出ているのは「画像」だけで「動画」ではないので、Youtube を足して検索してみると、驚いたことに、「皆さまのNHK」の動画付きニュース記事が出てきました。かねて僕は「全然見ていないのに、勝手に高い視聴料をとりやがって!」と腹を立てているのですが、あの人畜無害、突っ込みゼロで、メディアとして何の役にも立っていないように見えるNHKですら取り上げたというのは、それ自体がニュースかもしれません。
・“UFO映像” 米国防総省が公開 “物体が何かは不明”
この映像をめぐってはこれまで、アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズなどが独自に入手したとして伝えていました。
映像を公開した理由について国防総省は「出回っている映像が本物かどうかや、ほかに何か隠しているのではないか、という人々の誤解を解くためだ」と説明し、写っている物体が何なのかは依然わかっていないとしています。
アメリカ海軍では長年、正体がわからない飛行物体が目撃された場合、「不可解な現象」として記録に残してきませんでしたが、経験豊富で信頼できる多くのパイロットから目撃情報が寄せられていることから、去年、正式に記録に残すための報告手順を定めたガイドラインを作成しています。
アメリカではFBI=連邦捜査局も過去にUFOの目撃情報などを調べていたことが明らかになっていますが、地球外の物体が特定されたケースは確認されていません。
最後の「地球外の物体が特定されたケースは確認されていません」というところが、いかにも「皆さまのNHK」らしいところで、要するに、「世間ではこれをUFOなどと呼んでいますが、たんにこういう不可解なものが撮影されたというだけの話で、これが“地球外の物体”だとは当局も言っていないし、私たちもこれがUFO映像だなどとは決して言いません」ということなのです。じゃあ、何なのだ? 中国かロシアの最新秘密兵器なのか? いや、ですから、不明だと申し上げているわけで、今の人類のテクノロジーではこんな猛スピードで不可解な動き方をする飛行物体はまず考えられないと言っても、それがただちに宇宙人の乗物だとは言えないわけでして、観測気球や自然現象の類、または目の錯覚ではないとしても、それがただちに……。もうええわ、受信料、利子つけて返せよ。
話を戻して、米海軍はこれをUAP(Unidentified Aerial Phenomena)、「未確認航空現象」と呼んで、世間で「宇宙人の乗物」視されているUFOとは“差別化”をはかっているのですが、長く公式にUFOを否定してきた手前もあって、同じ用語を使うのには抵抗があるのでしょう。flying object(飛行物体)というふうに言ってしまうと、その「物質的な実在性」を認めることになってしまうので、それは避けたい。しかし、そうなるとあれは「霊現象」なのかということにもなって、かえってオカルト風味が強くなってしまうのですが、そこまでは考えていないのでしょう。それが明確な物質現象でないのなら、カメラやレーダーにもそれが把捉されるというのが不可解ですが、量子物理学では物心二元論が成立し難くなっているので、そのうち、何としてもそれを否定したい科学者が、「脳内の幻想が外部の物質世界に投影されて、それが集団幻想のレベルにまで高まった場合、レーダーのような機械装置も反応してしまい、通常の物理現象のような外観を呈することがある」というような説明をしてくれるかもしれません。
しかし、それはあくまで集団幻想の産物なので、「実際には存在していない」というわけです。それなら、あんたが見ているこの物理世界自体、あんたの肉体も含めて、脳内現象の産物なのでほんとは存在しないのだと言いたくなりますが、こういうのはいくらか高級な議論なので、理解されないかもしれません。絶対的なリアリティの見地からすれば、本当は空間も時間も存在しない(あのカント大先生も「(脳の)先験的な認識形式に規定されているから、通常の理性には“物自体”は認識できない」と言いました)。従って、この物理宇宙自体が二次的な実在性しかもたないと言えるので、森鷗外の「かのように哲学」ではないが、仮の約束として、「実在するかのように」しないと社会生活が営めず、下手するとわけがわからなくなって発狂する人も出てくるので、一応この物理世界は「実在」するものとして扱われるというだけの話なのです。この世があればあの世もあって、かつ、その「あの世」も一つではない。それはそのとき意識がどういう構成体、形態に宿るかによって、それに規定されて認識のあり方、見える世界も異なってくるからで、その意味ではUFOや宇宙人が別次元の世界からの訪問者である可能性もあるわけです。彼らはどのようにしてか、その異次元間通行を可能にするテクノロジーを開発した。映画『アバター』のように、彼らはこの世界にアバターを使って侵入し、従って宇宙船も宇宙人も、それは彼らの本体ではなくて、この物理世界に適合するよう作った乗物や乗員にすぎず、意識の投影によってそれを動かしているのかもしれない。彼らはそこにいるかのように見えるが、実際は違うのです。
そういうこともありうると僕は思っているので、この謎だらけの現象はそのようにも解釈できるのです。だから、「生命が存在する惑星」を今の物質科学の流儀でこの宇宙で探し回って、それが見つからないから、宇宙人なんてものは存在しないと結論づけても、それは一面的なものでしかなく、「あいつらは頭が悪いな」と彼らは思うかもしれない。
しかし、異次元宇宙からやってきているのだとすれば、彼らは何のためにそんなことをしているのか? 僕は「宇宙人の侵略」みたいなSFを一種の被害妄想心理の産物と見なして信用していませんが、おそらくそういうつまらないことのために彼らは面倒なことをして訪問しているのではなく、この物質宇宙、ことに地球という惑星には、その中で生物が進化し、それに宿った意識が進歩成長するという重要な意義があって、にもかかわらず、ヒトという地球生物のフロント・ランナーはそれを自覚せず、自然破壊を加速させて、意識にとっての「貴重な体験学習の場」を破壊し、生物が自然な進化を遂げるための期間を急速に縮めている。彼らはそれを憂慮していて、「あんたら、そういうことをやっとったんではあきまへんで」と、関西弁でそう言うかどうかは知りませんが、アラートを発して、「まともな生物としての自覚を促す」作業をやっているのではないかと思われるのです。
軍事施設周辺でとくに目撃情報が目立つのも、深刻な環境破壊に加えて、核戦争をおっ始めるなんてことになると、人類が自滅するのは自業自得としても、他の生物にとっては傍迷惑この上なく、おそらくそれは宇宙全体、そのメカニズムは不明ですが、異次元の宇宙にまで深刻な悪影響を及ぼして、「宇宙的大惨事」になると彼らは考えているのかもしれません。「万物の霊長」なんて自惚れているが、半端でなくジコチューで頭が悪いこの生物に彼らは手を焼いている(今や火星にまでその魔の手を伸ばそうとしている、何てことだ!)。エイリアンたちの多次元宇宙評議会(地球の「国連」に相当)ではこれまで幾度となくこの「有害な生物」が議題にのぼっていて、「一刻も早く駆除すべきだ!」というタカ派の意見も出ているが、「愚かなのはたしかだが、学習の機会を奪うのはよろしくない」と言う穏健派の意見が今のところは勝っていて、「幸いにしてWKY0028考案のアバターは『グレイ』と呼ばれて、あの攻撃的で未熟な生物の間でも『親しみがわく』として好評を博しており、あれを使うと聞く耳をもつ者もいるようだから、もう少し様子を見ようではないか」ということになっているのではないかと、僕は想像するのです。
これはかなり説得力のある見方ではないかと、勝手に思っているのですが、どんなものでしょう? 前に僕は「エイリアン・アブダクション現象」を扱った本を訳していると書きましたが、それは準備万端整っているものの、版権申請を行なったというしらせはもらったものの、契約が正式に成立したという連絡はまだ届いていないので、「コロナ休み」の今が編集者とのやりとりには一番好都合なのですが、そこで止まったままです。
こういうニュースも出ていることだし、早く出せないかなと思うのですが、この段階に来たらもう書いてもいいかなと思うので書くと、それはアラビアのロレンスの評伝でピューリッツア賞を受賞したこともある、ハーバード大学医学部教授(当時)ジョン・E・マックの遺作になった本です。彼の専門は精神医学で、この方面の第一作『アブダクション』は訳が出ていたのですが、十年にわたる研究の集大成と言えるこちらの訳はまだ出ていなかった。日本の出版界の特徴の一つとして、UFO関係、エイリアン・アブダクション(いわゆる「第四種接近遭遇」)研究関連の本は驚くほど翻訳の点数が少ない。低級な冷やかし本の方は訳されているのに、です。それを僕は参考文献一覧の、日本語訳補充作業をしていてあらためて痛感させられたのですが、この問題はたんなる好奇の対象として扱われるべきではない明確な理由があるのです。その訳書が出れば、それがおわかりになるでしょうが、上に冗談めかして書いたことは、それも踏まえてのことです。
ちなみに、マック教授はこの一連の研究でハーバード大教授の地位を追われそうになりました。そのあたりについては訳者あとがきでかなり詳しく説明しておきましたが、その理由は、彼が直接多くの体験者から面接調査を行なって、ほとんどの人が精神的にも安定した健常者だし、それはたんなる「新たな精神医学的病態(妄想や幻覚)」ではなくて、「何らかの意味でリアルな現実的体験」であることはたしかだとして、真面目に研究しようとしたところにありました。それが保守的な一部のハーバードの同僚たちには不快で、査問委員会にかけるよう大学側に働きかけ、これは現代アメリカ版「異端審問」のようなものだったのですが、そのやり口が姑息だったので、内外から逆批判を浴びて、追放には失敗した。腹の虫がおさまらなかった彼らはその後、若手の女性研究者に中傷本を書かせて、それを大学の出版局から出版した。その中傷本の愚劣さについてもあとがきで触れておきましたが、そちらは日本語訳が先に出ていたので、この訳書はそのあたりの誤解も解くことになるだろうと思っています。
こういうふうに、日本ではこの方面の研究の紹介の仕方が不十分なだけでなく、アンフェアなかたちにもなっているわけです。頭ごなし「そんな奇怪な現象はありえない」と決めつけている人には何を言っても無駄でしょうが、今は大手メディアにもUFO関連のこういう記事が出るようになり、アメリカ軍当局も「不可解な航空現象」の存在を正面から認めるようになっているのだから、それを幻覚や誤認、妄想の類と決めつけることはもはや困難になった。興味のある方はその訳書が出たらお読み下さい。日本語訳タイトルとしては、これは僕が考えたもので、それが通るかどうかはまだわかりませんが、『エイリアン・アブダクションの深層』を予定しています。実際にその奇怪な現象の背後には何があるのかという「深層」を究明しようとしたものだからです。「こんな変わった話もあるんですよ」といったたんなる漫然たるエピソードの寄せ集めではない。僕はそんなものには興味がないので、それがエイリアンとは無縁に暮らす人たちにも根本的な世界観、人間観の問い直しを迫るものだからこそ訳す気になったのです。その本によれば、エイリアンたちは深刻な環境破壊に非常に心を痛めている。それが人類にとっても自殺行為であることがなぜわからないのか、彼らは憂慮にたえかねて、政治指導者に言っても「安全保障」がどうのといって聞かないので、一般人への働きかけを強化して、「草の根」運動を喚起しようとしているようです(アメリカで一番報告が多いのは、よくも悪くもそれが現代物質文明の中心地だからでしょう)。
だから、環境保護運動の活動家には、彼らがそれを公に認めているかどうかは別として、アブダクション体験者がかなりの数含まれている。じゃあ、そんな本を頼まれもしないのに訳すおまえのところにもエイリアンは来ているのかって? 「皆さまのNHK」の真似をするようですが、そのあたりはご想像にお任せします。
・米国防総省、「UFO映像」3本を公開 正体不明と結論
3本のうち1本は2004年11月、残る2本は15年1月に撮影された。いずれも白黒の映像で、30~75秒ほどの長さ。物体が海上を高速で飛んだり、空中で回転したりする様子が撮影されている。
国防総省は声明で「過去に流出した映像の真偽や、映像に続きがあるのかなどの臆測を取り除くために公開に踏み切った」と説明。問題の物体については「依然として正体不明のままだ」と結論付けた。
この記事に出ているのは「画像」だけで「動画」ではないので、Youtube を足して検索してみると、驚いたことに、「皆さまのNHK」の動画付きニュース記事が出てきました。かねて僕は「全然見ていないのに、勝手に高い視聴料をとりやがって!」と腹を立てているのですが、あの人畜無害、突っ込みゼロで、メディアとして何の役にも立っていないように見えるNHKですら取り上げたというのは、それ自体がニュースかもしれません。
・“UFO映像” 米国防総省が公開 “物体が何かは不明”
この映像をめぐってはこれまで、アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズなどが独自に入手したとして伝えていました。
映像を公開した理由について国防総省は「出回っている映像が本物かどうかや、ほかに何か隠しているのではないか、という人々の誤解を解くためだ」と説明し、写っている物体が何なのかは依然わかっていないとしています。
アメリカ海軍では長年、正体がわからない飛行物体が目撃された場合、「不可解な現象」として記録に残してきませんでしたが、経験豊富で信頼できる多くのパイロットから目撃情報が寄せられていることから、去年、正式に記録に残すための報告手順を定めたガイドラインを作成しています。
アメリカではFBI=連邦捜査局も過去にUFOの目撃情報などを調べていたことが明らかになっていますが、地球外の物体が特定されたケースは確認されていません。
最後の「地球外の物体が特定されたケースは確認されていません」というところが、いかにも「皆さまのNHK」らしいところで、要するに、「世間ではこれをUFOなどと呼んでいますが、たんにこういう不可解なものが撮影されたというだけの話で、これが“地球外の物体”だとは当局も言っていないし、私たちもこれがUFO映像だなどとは決して言いません」ということなのです。じゃあ、何なのだ? 中国かロシアの最新秘密兵器なのか? いや、ですから、不明だと申し上げているわけで、今の人類のテクノロジーではこんな猛スピードで不可解な動き方をする飛行物体はまず考えられないと言っても、それがただちに宇宙人の乗物だとは言えないわけでして、観測気球や自然現象の類、または目の錯覚ではないとしても、それがただちに……。もうええわ、受信料、利子つけて返せよ。
話を戻して、米海軍はこれをUAP(Unidentified Aerial Phenomena)、「未確認航空現象」と呼んで、世間で「宇宙人の乗物」視されているUFOとは“差別化”をはかっているのですが、長く公式にUFOを否定してきた手前もあって、同じ用語を使うのには抵抗があるのでしょう。flying object(飛行物体)というふうに言ってしまうと、その「物質的な実在性」を認めることになってしまうので、それは避けたい。しかし、そうなるとあれは「霊現象」なのかということにもなって、かえってオカルト風味が強くなってしまうのですが、そこまでは考えていないのでしょう。それが明確な物質現象でないのなら、カメラやレーダーにもそれが把捉されるというのが不可解ですが、量子物理学では物心二元論が成立し難くなっているので、そのうち、何としてもそれを否定したい科学者が、「脳内の幻想が外部の物質世界に投影されて、それが集団幻想のレベルにまで高まった場合、レーダーのような機械装置も反応してしまい、通常の物理現象のような外観を呈することがある」というような説明をしてくれるかもしれません。
しかし、それはあくまで集団幻想の産物なので、「実際には存在していない」というわけです。それなら、あんたが見ているこの物理世界自体、あんたの肉体も含めて、脳内現象の産物なのでほんとは存在しないのだと言いたくなりますが、こういうのはいくらか高級な議論なので、理解されないかもしれません。絶対的なリアリティの見地からすれば、本当は空間も時間も存在しない(あのカント大先生も「(脳の)先験的な認識形式に規定されているから、通常の理性には“物自体”は認識できない」と言いました)。従って、この物理宇宙自体が二次的な実在性しかもたないと言えるので、森鷗外の「かのように哲学」ではないが、仮の約束として、「実在するかのように」しないと社会生活が営めず、下手するとわけがわからなくなって発狂する人も出てくるので、一応この物理世界は「実在」するものとして扱われるというだけの話なのです。この世があればあの世もあって、かつ、その「あの世」も一つではない。それはそのとき意識がどういう構成体、形態に宿るかによって、それに規定されて認識のあり方、見える世界も異なってくるからで、その意味ではUFOや宇宙人が別次元の世界からの訪問者である可能性もあるわけです。彼らはどのようにしてか、その異次元間通行を可能にするテクノロジーを開発した。映画『アバター』のように、彼らはこの世界にアバターを使って侵入し、従って宇宙船も宇宙人も、それは彼らの本体ではなくて、この物理世界に適合するよう作った乗物や乗員にすぎず、意識の投影によってそれを動かしているのかもしれない。彼らはそこにいるかのように見えるが、実際は違うのです。
そういうこともありうると僕は思っているので、この謎だらけの現象はそのようにも解釈できるのです。だから、「生命が存在する惑星」を今の物質科学の流儀でこの宇宙で探し回って、それが見つからないから、宇宙人なんてものは存在しないと結論づけても、それは一面的なものでしかなく、「あいつらは頭が悪いな」と彼らは思うかもしれない。
しかし、異次元宇宙からやってきているのだとすれば、彼らは何のためにそんなことをしているのか? 僕は「宇宙人の侵略」みたいなSFを一種の被害妄想心理の産物と見なして信用していませんが、おそらくそういうつまらないことのために彼らは面倒なことをして訪問しているのではなく、この物質宇宙、ことに地球という惑星には、その中で生物が進化し、それに宿った意識が進歩成長するという重要な意義があって、にもかかわらず、ヒトという地球生物のフロント・ランナーはそれを自覚せず、自然破壊を加速させて、意識にとっての「貴重な体験学習の場」を破壊し、生物が自然な進化を遂げるための期間を急速に縮めている。彼らはそれを憂慮していて、「あんたら、そういうことをやっとったんではあきまへんで」と、関西弁でそう言うかどうかは知りませんが、アラートを発して、「まともな生物としての自覚を促す」作業をやっているのではないかと思われるのです。
軍事施設周辺でとくに目撃情報が目立つのも、深刻な環境破壊に加えて、核戦争をおっ始めるなんてことになると、人類が自滅するのは自業自得としても、他の生物にとっては傍迷惑この上なく、おそらくそれは宇宙全体、そのメカニズムは不明ですが、異次元の宇宙にまで深刻な悪影響を及ぼして、「宇宙的大惨事」になると彼らは考えているのかもしれません。「万物の霊長」なんて自惚れているが、半端でなくジコチューで頭が悪いこの生物に彼らは手を焼いている(今や火星にまでその魔の手を伸ばそうとしている、何てことだ!)。エイリアンたちの多次元宇宙評議会(地球の「国連」に相当)ではこれまで幾度となくこの「有害な生物」が議題にのぼっていて、「一刻も早く駆除すべきだ!」というタカ派の意見も出ているが、「愚かなのはたしかだが、学習の機会を奪うのはよろしくない」と言う穏健派の意見が今のところは勝っていて、「幸いにしてWKY0028考案のアバターは『グレイ』と呼ばれて、あの攻撃的で未熟な生物の間でも『親しみがわく』として好評を博しており、あれを使うと聞く耳をもつ者もいるようだから、もう少し様子を見ようではないか」ということになっているのではないかと、僕は想像するのです。
これはかなり説得力のある見方ではないかと、勝手に思っているのですが、どんなものでしょう? 前に僕は「エイリアン・アブダクション現象」を扱った本を訳していると書きましたが、それは準備万端整っているものの、版権申請を行なったというしらせはもらったものの、契約が正式に成立したという連絡はまだ届いていないので、「コロナ休み」の今が編集者とのやりとりには一番好都合なのですが、そこで止まったままです。
こういうニュースも出ていることだし、早く出せないかなと思うのですが、この段階に来たらもう書いてもいいかなと思うので書くと、それはアラビアのロレンスの評伝でピューリッツア賞を受賞したこともある、ハーバード大学医学部教授(当時)ジョン・E・マックの遺作になった本です。彼の専門は精神医学で、この方面の第一作『アブダクション』は訳が出ていたのですが、十年にわたる研究の集大成と言えるこちらの訳はまだ出ていなかった。日本の出版界の特徴の一つとして、UFO関係、エイリアン・アブダクション(いわゆる「第四種接近遭遇」)研究関連の本は驚くほど翻訳の点数が少ない。低級な冷やかし本の方は訳されているのに、です。それを僕は参考文献一覧の、日本語訳補充作業をしていてあらためて痛感させられたのですが、この問題はたんなる好奇の対象として扱われるべきではない明確な理由があるのです。その訳書が出れば、それがおわかりになるでしょうが、上に冗談めかして書いたことは、それも踏まえてのことです。
ちなみに、マック教授はこの一連の研究でハーバード大教授の地位を追われそうになりました。そのあたりについては訳者あとがきでかなり詳しく説明しておきましたが、その理由は、彼が直接多くの体験者から面接調査を行なって、ほとんどの人が精神的にも安定した健常者だし、それはたんなる「新たな精神医学的病態(妄想や幻覚)」ではなくて、「何らかの意味でリアルな現実的体験」であることはたしかだとして、真面目に研究しようとしたところにありました。それが保守的な一部のハーバードの同僚たちには不快で、査問委員会にかけるよう大学側に働きかけ、これは現代アメリカ版「異端審問」のようなものだったのですが、そのやり口が姑息だったので、内外から逆批判を浴びて、追放には失敗した。腹の虫がおさまらなかった彼らはその後、若手の女性研究者に中傷本を書かせて、それを大学の出版局から出版した。その中傷本の愚劣さについてもあとがきで触れておきましたが、そちらは日本語訳が先に出ていたので、この訳書はそのあたりの誤解も解くことになるだろうと思っています。
こういうふうに、日本ではこの方面の研究の紹介の仕方が不十分なだけでなく、アンフェアなかたちにもなっているわけです。頭ごなし「そんな奇怪な現象はありえない」と決めつけている人には何を言っても無駄でしょうが、今は大手メディアにもUFO関連のこういう記事が出るようになり、アメリカ軍当局も「不可解な航空現象」の存在を正面から認めるようになっているのだから、それを幻覚や誤認、妄想の類と決めつけることはもはや困難になった。興味のある方はその訳書が出たらお読み下さい。日本語訳タイトルとしては、これは僕が考えたもので、それが通るかどうかはまだわかりませんが、『エイリアン・アブダクションの深層』を予定しています。実際にその奇怪な現象の背後には何があるのかという「深層」を究明しようとしたものだからです。「こんな変わった話もあるんですよ」といったたんなる漫然たるエピソードの寄せ集めではない。僕はそんなものには興味がないので、それがエイリアンとは無縁に暮らす人たちにも根本的な世界観、人間観の問い直しを迫るものだからこそ訳す気になったのです。その本によれば、エイリアンたちは深刻な環境破壊に非常に心を痛めている。それが人類にとっても自殺行為であることがなぜわからないのか、彼らは憂慮にたえかねて、政治指導者に言っても「安全保障」がどうのといって聞かないので、一般人への働きかけを強化して、「草の根」運動を喚起しようとしているようです(アメリカで一番報告が多いのは、よくも悪くもそれが現代物質文明の中心地だからでしょう)。
だから、環境保護運動の活動家には、彼らがそれを公に認めているかどうかは別として、アブダクション体験者がかなりの数含まれている。じゃあ、そんな本を頼まれもしないのに訳すおまえのところにもエイリアンは来ているのかって? 「皆さまのNHK」の真似をするようですが、そのあたりはご想像にお任せします。
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