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校則をなくした校長先生の言い分

2019.04.11.18:27

 先日、面白い記事を見つけたので、ご紹介しておきます。

校則が消えた理由

 これは親御さんたちや生徒、最後に、いくら言ってもわからない頭のカタすぎる今どきの学校先生たちにも、必読の記事です。

 この校長先生のおっしゃることはいちいちご尤もという感じで、すべて良識にかなっていますが、学校というのはそれが最も通じにくいところなので、こういうことが公立中学で実現したというのは一つの驚きです(校長先生が10年変わらないというのも今は珍しい)。

 しかし、東京世田谷区の区立中だというところに、謎を解く一つの鍵があるような気が僕はしたので、ご存じかどうか、世田谷区の今の区長は元衆院議員の保坂展人氏で、保坂展人氏と言えば、かつて「内申書裁判」で有名になった人なのです。それはどういう事件であったのか、ウィキペディアの記事でかんたんにおさらいしておきましょう。

(麹町)中学在学中、当時世間を席巻していた学園闘争の影響を受け、「麹町中全共闘」を校内に結成。機関紙「砦」の発行やビラ配り、大学生ML派による集会への参加等、積極的な運動を行っていた。そうした学生運動をしていた事実について中学校での内申書に書かれ、高校受験の面接では面接官からの質問が思想にまつわるものに集中。受験した全日制高校は全て不合格であったため、東京都立新宿高等学校定時制に進学した(のちに同校を中退)。
 なお、自身が学生運動をしていた経歴が内申書に書かれたために全日制高校に入学できず、学習権が侵害されたとして千代田区と東京都を相手どり、国家賠償法に基づき、損害賠償請求訴訟を起こした。一審・東京地裁は慰謝料請求を認めたが、二審・東京高裁は内申書を執筆した教員の裁量を認め、保坂側が敗訴。最高裁判所に上告したが、最高裁は単に経歴を記載したにすぎず「思想、信条そのものを記載したものではないことは明らか」として上告を棄却した(麹町中学校内申書事件)。


 というものです。内申書にはどういうことが書かれていたかと言うと、

 担任教諭は内申書の「基本的な生活習慣」「公共心」「自省心」の欄にC評価(三段階の最下位)を付けるとともに、備考欄に「文化祭粉砕を叫んで他校生徒と共に校内に乱入し、ビラまきを行った。大学生ML派の集会に参加している」等の原告の学生運動に関する経歴を記述した。

 ということなので、担任の先生は半端でなくこの生徒(=保坂氏)を嫌っていたのです。「秩序」最優先の教師にはこの種の生徒は許しがたい。保守的な最高裁は訴えを退けましたが、保坂氏が受験した高校をことごとく落とされたのは間違いなくこの悪意ある人物評が関係するので、憲法の「思想、信条による差別」に当たるとするのがその後の通説的理解になっているはずです。サヨク嫌いの人たちは「そんな奴、落として当然ではないか!」と言うかもしれませんが、そういう人も「当該生徒にはネトウヨ的な偏向が顕著に認められる」と書かれて落とされたら、文句を言うでしょう。違いますか?

 ちなみに、今は内申書の開示請求ができるので、生徒の露骨な悪口を人物評価欄に書く教師はあまりいないはずです。それが可能になったのも、元はと言えば、この裁判が関係するので、これは明らかにその後の社会にプラスの影響を及ぼしたのです。

 保坂氏は僕と同世代(同じ1955年の生まれですが、早生まれの僕より学年は一つ下)ですが、中学でそういう活動をするというのは、早熟で多感な、頭のいい子だったからでしょう(幼稚な僕などはひたすら野良で遊んでいた)。昔はそういう政治少年もいたので、大学時代の僕のクラスメイトには、高校時代、中核派の活動家として政治活動をやりすぎて退学処分を受け、その後土木関係の飯場を転々としていたが、一念発起して大検(今の高卒資格認定試験)を受けて大学受験資格を取り、さらに勉強して25歳で大学に入ったというのがいました。えらくクソ真面目な男に見えたので、そんな過去があったとは思えないほどでしたが、のちに良き大人となる人にも、心の振幅が大きい十代の頃はそういう「逸脱」がありうるので、保坂氏や彼はその見本のようなものでしょう。保坂氏はその後政治家になったわけですが、そのクラスメイトは五年後、30歳で司法試験に合格し、検事を経てその筋では割と有名な人権派の弁護士になりました(僕が彼に関して憶えているのは、ふだんおとなしいし、毛色が違ってつきあいもあまりないのに、クラスの飲み会でからまれたことがあって、「今の法曹界にはおまえのようなアウトローが必要だ!」と耳元でがなり立て、熱心に司法試験の受験を勧められたことがあったことです。「おまえのようなアウトローが…」と何度も繰り返すので、僕はだんだん腹が立ってきました。アウトローというのは日本語に訳せば「無法者」です。おまえみたいな元左翼過激派の、退学処分を食らったような奴に無法者呼ばわりされる筋合いはない、と言い返したのですが、彼の目に当時の僕はどんなふうに見えていたのだろうと、今考えると可笑しくなります)。

 話を戻して、東京の世田谷区はその保坂氏が区長を務める地域です(2011年以降、現職)。だからリベラルと寛容の空気があって、こういう先生が、10年もの長きにわたって区立中学の校長を務めるなんてことも可能になったのではないかと思われたので、それは言及しておくだけの価値があると思って書いたのです。

 もう一つ、記事の筆者の前屋毅氏についても、この人は画面の右に出ていますが、『ブラック化する学校』(青春新書インテリジェンス)という著書がおありのようで、画面をクリックすると、好意的な書評が並んでいて、面白そうです。今は読まねばならない本がたくさんあって手が回りませんが、いずれ僕も読んでみるつもりです。皆さんもまだの方はぜひどうぞ。

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