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延岡高校の進学実績低迷への処方箋

2019.03.23(23:09) 626

 久しぶりの更新です。今年も受験シーズンが終わりました。うちの塾はここ二年、一人ずつ浪人を出していた(幸いどちらも一浪で雪辱を果たして元の志望大学に合格してくれた)のですが、一人後期にずれ込んだ生徒がいたものの、無事合格してそこに進学することになったので、今年はめでたく「浪人ゼロ」となりました。

 それはともかく、僕には一つ気になっていることがあります。それは塾の“顧客”のほとんどを占める延岡高校の大学合格実績の低迷です。生徒たちから話を聞いて、ここ数年悪くなってるなという感じがしていたのですが、データを見るとそれがはっきりする。それは一口に言えば、「成績上位層の不振」であり、「難関大合格率の著しい低下」です。

 こういうことを言うと、「大好きな母校の悪口を言われた!」とか何とか、すぐ怒ってくる人がたまにいるので困るのですが、そういうことは文を最後まで読んで、かつ内容を正しく理解してから言ってもらいたいので、これが「中傷」の類でないことは、学校が公表しているデータを見てもわかるのです。

 延岡高校のホームページを見ると、2014年以降しか情報は出ていないので、その年度以降に話を限定しますが、センターの国語の平均点が「史上最低」だったその年は、阪大に5人が一度に現役合格し、九大も6人いました。その年は京大と東北大が1人ずついたので、旧帝大現役合格者は計13人いたことになります。翌15年も、京大2人、東工大2人、東京外語大1人、九大5人(いずれも現役のみカウント)と、質的にはそれに劣らず豪華だった。その年は推薦ですが筑波の医学部もいたし、地方国立医学部の一般受験合格者も1人いたのです(二次免除の地域枠や推薦以外、一般入試での国立医の現役合格者は延岡高校にはほとんどいない)。

 ところが、翌16年から不振に陥り、上と同じくこれは現役のみのカウントですが、九大・神戸が上限となり、推薦を含めてもその総数は7人に減り、17年は、うちの塾で最も推薦進学組が多かった年(学校全体でも異常に多かった)ですが、「上がいない」と彼らが苦笑していた如く、国公立大の進学率こそ推薦で稼いで高かったとはいえ、難関大は九大・神戸が2人ずつで、計4人に減ったのです。そして去年18年は、難関大受験者の数は多く、塾で生徒たちから話を聞いて「みんな受かったら、君らの学年はかなり凄いことになるね」と言っていたのですが、蓋を開けてみると、前期はほぼ壊滅で、旧帝大レベルの合格者は京大の1人だけということになってしまったのです(九大も、推薦の2人を除けば現役は後期合格の1人だけ)。名古屋大の合格者2人はいわゆる「セあり推薦」の合格者です。

 そして今年はどうなったかといえば、前期の旧帝大現役合格者は九大の2人だけ(後期で1人増えて計3人になった)。東大・京大・阪大はゼロ(京大経済学部の合格者が一人いますが、これは去年失敗して雪辱を果たした生徒で、浪人です)。神戸もいない。むろん、東工大とか一橋とか、そのあたりもいません。医学部は、二次免除の宮大地域枠合格者の2人だけです。私立では早稲田が前年に引き続き1人いますが、これはいずれも指定校です。

 いかがですか? これには出ていない13年も、細かいデータはわかりませんが、僕の記憶ではよかったので、わが零細塾だけでもその年、京大が1人、九大が2人いたのです(「自分の手柄みたいに言うな!」と叱られそうですが、14年、18年の京大合格者もうちの塾生でした)。とにかく、15年までよかったのが、それ以降落ち込み始め、17年度は、上にも触れたように、飛び抜けた生徒がいなかった学年で、そういう年もたまにはあるわけですが、他の年はそうではなく、特に去年と今年は、トップ層が総崩れの状態で、「受けても受からない」傾向が顕著になっているのです。

 一体これはどういうわけなのか? 僕が塾の生徒から聞いている話では、彼らはたいへん優秀な子たちで、模試やセンターも概してよかったのです。原因として考えられるのは、やはり二次対策の不足でしょう。僕は延岡で塾を始めてからもう丸十六年になるのですが、最初、知人に集めてもらった一年生8人(4人ずつの二クラス)でスタートし、それが受験学年になったとき、九大を受験した生徒が2人いたのですが、1人を落としてしまったのです。もう1人は中高一貫私立校の理系の生徒で、こちらは順当に合格したが、法学部を受けた延岡高校の生徒の方が落ちてしまった(ちなみに、その生徒のセンター英語の得点は196点でした)。センター併用で受けた東京の、法学部で有名な私大も落ちてしまった。結局、センター利用で合格していた関西の有名私大の一つに進学したのですが、これは僕にはショックで、何がまずかったのかと考え、一つの結論に達しました。僕はその当時、課外に加え、学校の宿題が多すぎるので、可哀想だと思って、延岡高校の生徒たちのクラスでは宿題はあまり出さないようにして、かつ、学校と歩調を合わせて、同じ文法単元をやるなどし、大学の二次対策のようなことはほとんどしなかったのです。それが悪かったので、そこをちゃんとやっていれば、元が優秀な子だったので、その子は楽に合格していたはずです。

 これで文字どおり「頭にきた」僕は、学校を完全に無視してやるように塾の方針を切り替えました。具体的なやり方は試行錯誤しながら徐々に変えていったのですが、その生徒の弟の方は阪大に無事合格し、後でその子のお母さんが彼の二次の成績をメールで教えてくれました。こちらは理系の生徒でしたが、英語の得点が非常に高かったことがわかったのです。それなら、やっていたことは間違いではなかったわけだと、僕は意を強くしたのですが、その頃から、旧帝大にかぎって言えば、合格率は100%になったのです。受験者はのべ十何人いるはずですが、誰も落ちていない。さすがにEで受けた子は一人もいませんが、センター判定がCやDでも、落ちなくなったのです(全体でも、二次に英語がある国公立の受験成功率は75%を切ることはないはずです)。

 試験に運不運はつきものだし、これはたまたま幸運が重なっただけだと言えるかもしれません。たしかに100%は出来すぎです。しかし、当初のやり方を続けていれば、最初の失敗例のように、能力の高い子でも落ちるケースの方が圧倒的に多くなってしまったのではないかと思われるので、難関大はとくに二次比重が高いので、センターでいくら高得点を取っても、二次力が弱ければ絶対に合格しないのです。

 むろん、二次は英語だけではない。理系なら数学と理科、場合によっては国語も含まれ、文系なら国語と社会、難関大なら数学も当然入ってくる。英語だけできれば受かるというものではないので、げんに今年など、「理系なのに数学と理科が弱い」という、ある意味致命的な生徒がいました(うちの塾に来るより早く、高1の頃からずっと数学塾には通っていたようですが、「○○自習塾」などと陰口を叩かれているそこは、面倒見がよくないようで、数学はそのせいなのだろうと僕は思っています)。センターは8割ギリチョンでしたが、それは得意な英語と、今年易しかった国語で稼いだもので、元々は某旧帝大が志望でしたが、そこは数学と理科が各500点ずつの計1000点、対して英語は300点の配点しかないのです。とてもカバーしきれない。センターの総得点からすれば狙えるセンでも、センターで数学・理科が平均72%の得点率しかないのでは、その大学の、とくに数学には歯が立たない。それで相談の上、数学が比較的易しく、英語の配点比率もそこよりは高い、関東の某有名準難関国立に土壇場で切り替えたのです。仮にそのまま元の志望大に突っ込んでいれば、あえなく討ち死にという結果になっていたでしょう。

 近年は、生徒と二人で、二次得点のシミュレーションをやることも多いので、たとえば文系なら、英語6~7割、社会は7割、国語は6割から5割、数学は3割を切らないようにすれば、過去の最低点に照らしても、十分合格には足りる、というような一応の「予定」を立てるのです。あとで生徒に得点開示の報告をしてもらうと、社会と数学は目標を何点かずつ上回り、英語はその上限近くとれたが、国語がまさかの4割で、僕自身は、英語はそこの問題は手ごわいので、6割を切らなければいいと考えていたのが、仮に6割なら、国語のしくじりをカバーしきれずに落ちていたのがわかった、というようなことがあるのです。「危ないところだったね」と二人で笑ったのですが、その生徒は文系なのにたしかに国語に強い苦手意識をもっていたのです。だから英語7割を目指して頑張って、本人の狙い通りのパフォーマンスができたから、合格できた。同じ大学で、他の科目はよく似た得点分布だったが、国語が予想をだいぶ上回っていたために、全体でかなりの貯金ができ、仮に数学が零点でも受かっていたというケースもあります。理系で、先の阪大の受験生のように英語の高得点が効いて上位合格を果たしたというケース(本人は物理で大失敗したので落ちたと思い込んでいたが、他の受験生にとってもその年の物理は難しかったのです)もありますが、僕の方は過去問も十年分添削して「6割は行くはず」と見ていたのに、実際の英語の二次得点は52%で、その代わり数学で75%の高得点を叩き出したので、余裕で受かっていたという子もいます(彼の場合は、国語が零点でも足りた)。

 こういうのはむろん、過去問を一通り解いたうえで、実際にどれくらい取れそうかという自己査定に基づいて行うのです。希望的観測に基づいたそれでは、完全な「絵に描いた餅」で終わってしまって、意味はないことになる。そして今見たように、そこにはいくらかの「誤差」は出てくるが、ある程度余裕のある見積もりをしていれば、少しぐらいしくじりをしても、合格最低点を下回ることはなくて済むのです。

 僕は英語教師なので、ふだん教えている生徒の英語の得点については大体予想がつきますが、他は本人にどれぐらい取れそうか聞くのです。学力の高い生徒だと、かなり客観的な自己評価ができるので、その分見積もりも信頼の置けるものになる。「これでは足りない」となると、どの科目でどの程度上げればいいか、また上げられるか、目標を立てることもできるので、生徒にとってもやりやすいでしょう。最初は過去問を添削していて、「これでは5割に届かない。志望大を変えさせないと駄目か…」と思っていたものが、だんだんよくなってきて、「行ける!」というかなり明確な感触に変わることもあるのです。自己修正能力の高い、かつよく努力する生徒の場合には、そういうことが起こる。同業者ならわかるでしょうが、こういうときは塾教師としては嬉しいものです。

 むろん、志望大の過去問だけ解いていればいいというものではないので、ふだんの授業では他大のものをたくさんやっているのです。僕は内容のある、読んで面白いものは片っ端から使う主義で、そのテーマも多種多様に及ぶ。稀に、全く同じ英文が受験した大学に出たとか、そこで使われている話が前にやった英文に出ていたものと同じだったなんてこともありますが、そういうのは「おまけ」みたいなもので、知識と理解の幅を広げ、色々な構文やらイディオムやらが出てくるので、そういうのにあれこれ接していれば、読解力自体の底上げが期待できて、それはどこの大学を受けようと役に立つのです。

 あとは英作文ですが、これは添削するにかぎる。手間がかかるが、生徒にどういうところに気をつけなければならないか、わからせるにはこれが一番なのです。一人でやっている生徒は、だから、信頼できる学校の先生にお願いして、添削してもらうなどするとよいでしょう。そうすれば、確実に進歩する。自分に使える構文のストックが少なすぎるといい英文は書けないものですが、途中でそれに気づけば、英文を丸暗記する必要性なども感じて、自発的にそれをやるようになるでしょう。そうやって、今自分に必要なことが何なのかを把握しながら、勉強していくことが大切なのです。受け身で、あてがわれたものをただ機械的にこなしていくようなことは勉強ではない。そういうやり方では学力は伸びないのです。

 以上は、「こういうやり方もある」という一つの例示にすぎませんが、受験にもやはり戦略というものは必要なのです。しばらく前、僕は免許証の書き換えに行って、そのときの講習で宮崎県は「漫然運転」による事故がやたら多い県なのだという話を聞いて笑ってしまいました。全国でも一、二を争うほどだ、というのです。延岡高校の近年の大学受験実績の不振も、学校の以前からの「漫然指導」に加えて、生徒たちの「漫然受験」が増えているからではないかと、僕には疑われるので、そこを改善しないと挽回は難しいだろうということを言いたいのです。

 この問題で、僕が一番危惧しているのは、何でこういう結果になってしまうのかという分析はしないで、学校が「大変だ! 何とかしなければ!」ということで、焦って宿題を増やしたり、課外を強化したりしなければよいが、ということです。それは確実に事態を悪化させる。今でもすでにそういうことは目立っているようですが、ランクを下げての受験がさらに多くなって、東大・京大が九大になり、九大受験生は熊大に下げるとか、そういうことが常態化してしまうのです。前期で失敗してそうなるのはやむを得ないが、初めからそういう受験の仕方になってしまうのです。そして医学部の受験生は、初めから現役では受からないという構えになって、諦めムードが漂う。そして課外と、増えた宿題のせいでさらに寝不足は募り、自分の勉強をする時間もさらに削られて、学年が上がるにつれて疲労も蓄積し、模試の成績も全体が見事な“右肩下がり”になって、これではならじと焦った学校は、さらに「よけいなお世話」的管理を強化して、いっそう二次力を下げるだけではなく、センターすら満足にとれなくしてしまうのです(尤も、来年で現行センター試験は最後ですが)。

 前から課外はあり、無用な宿題も少なくなかったが、にもかかわらず難関大に首尾よく合格していた生徒たちは、賢く「学校を手抜き」して、合格に必要な手立てを自分で講じていたのです。前にも一度書いたことがありますが、あれは2012年のことだったか、延岡高校の男子生徒が2人、わざわざ塾に礼を言いに来てくれたことがあります。部活の後輩に塾の生徒がいて、大体の場所は聞いていたようですが、何しろ看板も何も出ていない、ネットにも電話帳にも情報は皆無の「謎の塾」なので、探し当てるのに苦労したようですが、彼らはこのブログに書いた関連記事を読んで、自分が日頃感じている学校に対する疑問が正当なものであることを確信し、自力救済しかないと、学校をうまく手抜きして、自分の勉強時間を確保し、ちゃんと戦略的にやって、現役合格を勝ちとったのです。それは九大と京大の合格者でした。わざわざ挨拶に来てくれるなんて律儀な若者ですが、僕はむろん喜びました。そこに書いた学校批判が生産的な結果を生み出したことがわかったのですから。

 有名大に進学した先輩が学校の招きで在校生相手に話をすることがあっても、学校側は「学校の言うことなんかおとなしく聞いていたのでは君らが行きたい大学には受からないので、うまく手抜きして自分で何とかしないと駄目だよ」なんて平気で言うような人間は絶対に呼びません。そのあたりの先生たちの嗅覚の鋭さには驚くべきものがあって、僕はいつも感心させられるのですが、だから真相がわからないのです。時々「先輩たちのメッセージ」なんて冊子が配られて、そこには「先生方の言うことを聞いていれば間違いない」なんてよく書かれているのですが、うちの塾の生徒たちは「これ、ホントですか?」と笑っているので、ホントのわけはないと思うのです。

 先に見た近年の難関大合格率の“激下がり”は、そういうことがよくわかっていなくて、表面的に過去の輝かしい合格実績だけ見て、「先輩たちは判定がCやDでも受かっている。だから自分も何とかなるかも…」なんて甘いことを考えて、周到な二次対策を怠るとか、学校の言いなりに忙しすぎる生活を送って、センター後にようやく過去問を見て、「とても間に合わない!」と半分パニック状態に陥ったまま、不安いっぱいで本番に突入したりしているからではないかと、僕は想像するのです(これはわかりきったことですが、模試の偏差値がいくらよくても、あれは同じ問題を全員に解かせているわけで、一番重要なのは「その大学の実際の問題がどれくらい解けるか」なのです。また、大学別の冠模試というのがありますが、あれも形式は似せているが、妙なところで難しすぎたり、採点基準にいくらか疑義があったりするので、「参考程度」の扱いが適切でしょう)。

 だから学校が焦って管理を強化したりすると逆効果になるので、いつも言うように、慢性的睡眠不足の原因になっているだけの朝課外なんてものはさっさと廃止すればいいのですが、延岡星雲高校の方は廃止に踏み切ったのに、延岡高校の方は最近「月曜だけ朝課外をやめる」なんて中途半端な決定をしたそうで、意味がよくわからないのです。

 余談になりますが、僕はこの前それでジョークを言って生徒たちを笑わせたのですが、最近『東大・京大に合格する子は毎朝5時半に起きる』という本が出ているようです。アマゾンの内容紹介文には「長男は、東京大学理科Ⅰ類に現役合格、次男は京都大学理学部に現役合格、長女は、英国の高校へ単身留学中。そんな河村家の「子育ての秘密」とは?」と書かれています。前に『東大合格生のノートはかならず美しい』という本が出たときは、塾でも、ある日家に帰ったら、この本がさりげなく自分の机の上に置かれていて驚いたと言った生徒がいたので、僕は笑って「それで読んでみたわけ?」と訊くと、親御さんにはお気の毒ながら「そんなの、読むわけないじゃありませんか! 私とトーダイは何の関係もないので、そんなキモいもの、段ボールの一番下に押し込んで、二度と目に触れないようにしました」と答えていましたが、今回のこの『毎朝5時半に起きる』なんて本も、高校の先生たちは「だから朝課外は正しいのだ!」という思い込みの強化に利用するおそれがあるわけです(まさか学校で大量購入して、全生徒に配布するということはないでしょうが)。5時半に起きれば、7時半の朝課外には楽々間に合うわけで、何の問題があるか、というわけです。

 でもねえ、そういうのは早寝しているからで、部活を終えて夜の8時に帰宅し、遅い夕食とお風呂を済ませて、たくさんの宿題をやってたら毎日深夜の12時、1時、下手すると2時になってしまうというような生活を送っていて、朝5時半に起きたら、ティーンエイジャーにはとくに多くの睡眠時間が必要だと科学的にも証明されているのに、慢性的なひどい寝不足になってしまって、学校の授業も皆目頭に入らず、当然学力は全く伸びなくて、最悪の場合、Fラン大学にしか入れないということになってしまうのではありませんか?

 そもそも、朝の5時半に起きようと、7時半まで寝ていようと、東大・京大に入れるかどうかとは何の関係もない(嘘だと思うなら、東大・京大生に訊いてみればいい)。人間には朝型と夜型の違いもあって、哲学者のデカルトなんかは低血圧でなかなか朝起きられないので、学校の寄宿舎に入れられていたときも、彼だけ特別に遅くまで寝床にいることを許されたほどです。デカルトは数学の分野でも有名な天才ですよ。

 もう一つ、同じ早起きをしても、それを自分の時間として使えるかどうかが重要で、朝課外がなければ、そういう子たちももっと時間の有効活用ができるのです。朝課外は早起き生徒の妨害にもなっている。それも認識していただかないと困ります。

 あと、学校の授業+課外と部活と宿題だけで一日が終わり、ヘトヘトになって他には何もできないなんて生活を送っていると、世界の動きや社会問題などは何も知らないことになって、今の英語の入試問題はそういうものを反映した出題が多い(だから面白いのですが)のに、基礎知識が全くないから、日本語で読んでもよくわからないのに、英文ならなおさら、ということになりかねないのです。最近は英作文でもあるテーマを出して、それについての自分の意見を書けというのが多くなっているのですが、「何を書いていいのか全然わからない」と言う生徒が実に多いのです。大学としても、学校の教科書勉強以外には何も知らず、他のことには何の興味もないなんて学生は、大学入学後伸びないのがわかっているから、ほしくないのです。

 僕も、テストでいい点を取ることだけが生き甲斐なんて生徒の相手はしたくないので、ごく稀にですが、英文の内容が面白いかどうかなんてことには全く反応せず、答が合っているかどうかだけが重要なんて生徒がいるので、そういう人間味のない人のお相手はご免こうむりたいのです。そういうのが大学で教職を取って、学校の先生になるなんてことになると、悲劇はやがて彼または彼女の教え子たちに及ぶのです。僕が子供なら、そういう先生には教わりたくない。授業が面白くないにきまっているからです。

 部活に関しても、今のそれは時間が長すぎ、かつ休みが少なすぎる。オリンピック用の強化選手ではあるまいし、今の部活はしばしば度が過ぎ、その結果、「バランスの取れた心身の健全な発達」という本来の目的をかえって阻害することになっているのです。これに関しては最近、宮崎県でも、学校の先生たちの「ブラック職場化」解消策の一つとして、中高の部活の休養日を増やしたり、一日の部活の時間を短縮するなどの取り組みが始まっているようですが、これは歓迎すべき動きで、生徒たちにもそれは助けになるはずです。中にはそんなことにはおかまいなしの外部コーチがいて…というようなこともあるようですが、たんなるご本人の自己満足のためにそんなことをやられては迷惑なので、そういう人には学校側も保護者も改善を申し入れた方がいい。

 そうして、朝課外は率先廃止し、部活も無理のないものになって、宿題も必要最小限度のものになり、平常授業の質もアップしたとしましょう。それによって生徒はゆとりを回復し、自分のニーズに合った勉強ができるようになるので、基礎が不安な生徒は十分な復習をして、学力の底上げができるようになり、上位層は応用力を伸ばして、受験の際には過去問対策も万全で臨める、という状態にもっていけるのです。

 実にいいことづくめではありませんか? 先生たちも課外(それは時給1500~1800円程度のおいしい“副業”になっているそうですが)に無駄な時間を使っているヒマがあったら、自己研鑽に励んで学科指導能力を高め、平常授業の質をアップし、大学の入試問題も少しは研究して、もう少し効果的な受験指導ができるよう心掛けるべきなのです。受験大学を決める最終の三者面談で、ホッチキスでとめた予備校のセンターリサーチの一覧表を見ながら、二次の問題がどういうレベルかなんてことは何もご存じないまま、「ここはどう?」なんてテキトー過ぎるヤマカン指導をして生徒を不合格に導くなどという“事故”(僕の見るところ、それもけっこう起きている)も避けられるようになるでしょう。また、生徒に「全自動教科書読み上げ機」なんて不名誉なあだ名をつけられている先生は、そんな授業なら全部自習にしてくれた方がよほど生徒には親切ですが、課外がなくなった余力を活用して勉強に励み、汚名挽回を果たすことができるのです。

 長くなったのでこれくらいにしますが、塾などと違って公立高校は潰れる恐れがないから、漫然たる旧習墨守に陥って改革を怠りがちになるので、とくに田舎には脅威となるような有力私立も存在しないので、なおさらそれが助長されるのです。延岡星雲高校のフロンティア科の入試倍率は今年2倍になったそうですが、それは朝課外の廃止が好感されたことが一因だと僕に睨んでいるので、三年後、彼らが成果を出し、普通科の合格実績も「伸び伸び学習」のため大幅に改善したとなると、十年もたてば両者の進学実績は逆転しているかもしれない。その程度の危機感はおもちになったほうがいいのではありませんか。

〔尚、その前に仕上げておこうと急いで書き上げたこれですが、私用で一週間塾をお休みにし、その間はパソコンも開かないので、仮にこの件でメールを戴いても、ご返信は30日以降になります。その点はご諒承ください。〕


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祝子川通信 Hourigawa Tsushin


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